【野生の呼び声】に期待する理由
ハリソン・フォード主演の映画『野生の呼び声』が2月28日に公開となりました。
小説を原作とする作品で、なんとこれまですでに5回映画化されており、今回が6度目になるそうです。どんだけ~。
前情報を知らずに観たいので、映画について全然調べていないのですが、ワンちゃんと人間のおじいちゃんが大自然を冒険する映画だと思ってます!(真相やいかに)
ただ、僕はこの映画の公開を去年から待ち望んでいたので、「なぜこの映画に期待をかけているのか」と書きたいと思います。
今後映画館に観に行くつもりなので、映画を観たら感想を書いていこうと思います。
・監督が「動物」アニメーション映画の達人
この映画で監督を務めるのはクリス・サンダース氏です。
彼はキャリアの初期から多数のディズニーアニメーション作品に関わる、アニメーション制作出身のクリエイター。
最も有名な作品は監督・脚本をディーン・デュボア氏と共に務めた『リロ・アンド・スティッチ』でしょう。
日本での人気は特に高くて、スティッチが日本で暮らすオリジナルアニメも作られましたね。
ちなみにクリス氏はスティッチの声優も務めています。
ゲームのキングダムハーツとかで聞けるのも、クリス氏の声なんです。
へぇ~へぇ~。
クリス氏はディズニーを離れた後も、ドリームワークスアニメーション製作の傑作CGアニメシリーズ『ヒックとドラゴン』のシリーズ初作品を手がけました。
その後のシリーズでも製作総指揮としてかかわっています。
僕はこのヒックとドラゴンが、CGアニメの中で一番好きなんです。
おすすめするブログまで書いてしまいました。。。
クリス氏のキャリアを眺めてみると、スティッチのようなミュータント、ヒックとドラゴンでのドラゴンのような、動物が主役級の扱いになっている作品が並んでいます。
そしてどちらの作品も、人と動物という言葉を交わせない二つの存在が、苦楽を共にして心友情を深めていく作品です。
日本の予告編を観ていると、「犬っていいよね」というニュアンスで推そうとしている気がしますが、多分いろいろあって仲良くなっていくんじゃないかなぁと。。。
タレントの坂上忍さんが、愛犬との絆について語る宣伝が流れていますね。
クリス氏の代表作を見ていると、動物の側も問題を抱えているという内容だったので、そんなふうに予想します。
クリス氏が『野生の呼び声』の監督をすることになったのは、そんな創作の経歴が理由なのかもしれません。
・クリス氏が特異とする作風
この人は作中のコメディ描写がめちゃくちゃうまいです!
リロ&スティッチも、ヒックとドラゴンも、序盤はすごく笑えるんですよね。
「笑える」という話だと、日本では公開されずDVDで発売された劇場CGアニメ『クルードさんちのはじめての冒険』は全編コメディ。
派手ではないけれど、ユニークな世界観で変わり者家族が繰り広げるドタバタの冒険劇はめちゃくちゃ面白いです。
そして僕が一番評価したいところとして、クリス氏はそういったギャグの中で提示した要素が、後半になって重要な役割を果たすという展開を作るのが上手いんです。
伏線の達人です。
ほんとに自然にネタを仕込んでいるから、後半になって、「あっ!」と言わされること請け合いです。
そうそう、クルードさんちでは家族の大黒柱パパが主人公なのですが、この人があんまり頼りにならなくって、頭のネジが外れてるのに頑固で、「家族を守らねば!」という家長の責任が空回りしてだんだん家族に相手にされなくなっちゃうお話なのです。
コメディとして描かれてるのでかなり笑えるのですが、そんな「中年の悲哀」の描き方もすごく上手い人だったので、「野生の呼び声」でもその辺の手腕が生かされていそうな気がします!
そしてキャラクターの欠点をしっかりと描きます。
日本とは違って、西洋の物語作品だと、ほとんどの主人公は道徳的・倫理的な欠陥を抱えています。
それが原因で窮地に陥り、自分の欠点を直すことで物語がいい方へ向かっていく、という「メリハリ作り」がはっきりしているんですね。
この人の作品ではその傾向が如実に表れていて、登場する子どもにも「罪と罰」があります。
だから多分、『野生の呼び声』でも、そういうところをうまいこと描いてくれるんじゃないでしょうか。
多分「ワンちゃんかわいいかわいい映画」ではないはず。
・クリス氏初の実写映画
アニメーションで優れた作品を残してきたクリス氏が、今回が初の実写作品の製作にチャレンジしているわけです。
しかし、「初」とは言っても僕は心配はしていません。
というのも、『ヒックとドラゴン』はCGアニメながら映像においては実写作品のようなアプローチを取っていたからです。
シリーズの劇場版3作品すべてで、天才撮影監督のロジャー・ディーキンス氏が映像のコンサルタントに入っているのです。
ロジャー氏は『ブレードランナー 2049』や、先日公開された『1917』でアカデミー賞の撮影賞も受賞している巨匠です。
撮影監督を手がけると、ほぼほぼ撮影賞にはノミネーションされる凄腕です。
「撮影監督」の肩書きで、最もファンの多い人ではないでしょうか。。。
そんなロジャー氏は、ヒックとドラゴンの製作にもがっつり関わっており、映像は「ロジャー節」すら感じられる仕上がりになっています。
また、ドリームワークスでクリス氏が監督したクルードさんちでもロジャー氏はコンサルタントとして関わっています。
そんなスーパー撮影監督の薫陶を受けているので、クリス氏が実写だからうまく製作できない、ということはあんまり考えられないのです。
予告編を観ると、動物はCGになっているところも多そうですし、これは上手くいくのでは。
大ファンの僕としては、熟練の技を持つクリス氏が、実写でどんな映像を作ったのかが楽しみ過ぎるんですよね。
・ディズニーを追い出されたクリス氏、再びディズニーに……
これは作品自体とは別の話になるのですが、クリス・サンダースファンとしてはどうしても気になってしまうトピックがあります。
前述しましたが、クリス氏はキャリア初期からディズニー作品の製作に関わっており、『リロ・アンド・スティッチ』というヒット作を生むことに成功しました。
しかしその後、ピクサーのトップだったジョン・ラセターがディズニーのクリエイティブ部門を統括することになった際に、クリス氏とディーン・デュボア氏が準備していた作品の製作は打ち切られることになってしまいます。
つまり、一度ディズニーをクビになっているんですよね。。。
社員だったのか、外部のクリエイターとして携わっていたのかわからないのですが、作品の監督まで務めたというのに……無慈悲。
その後、クリス氏はドリームワークスでヒックとドラゴンの製作をスタートさせ、途中でディーン・デュボア氏に声をかけて、彼が合流することになったのだそうです。
その後、ドリームワークスに移った際も、社員だったのか外部クリエイターだったのかわからないのですが、FOX製作・配給作品である『野生の呼び声』の監督になっています。
そして2017年にディズニーがFOXを買収します。
ディズニー側からしたら、儲かるためにやっただけのことなのでしょうけど、FOX側の社員やクリエイターにしてみたら相当複雑な心境なのでは。。。
特にクリス氏、一度追放された会社の傘下でまた映画を作ることになるなんて思わなかったでしょうねぇ(笑)。
いや、もしかしたらルンルン気分でやってるかもしれないけど。
本人のみぞ知るところ。。。
いや、監督のインタビューとか読みたいんですけど、この映画は日本ではパンフレットが制作されていないようなんですよね。
なんでだ。
売れないのかな。。。
金のためならなんでもやるよなぁ、ディズニー。。。。
しかし、そんなディズニーの内側で作品を作る人たちが、作品の中でディズニーの負の側面を炙り出すこともあるので、面白いことは面白いんですよ。
アナ雪2とか。
そんなわけで、『野生の呼び声』は、そのうち観ます!
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