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映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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【ダメ親父スティーヴ・マーティン映画】花嫁のパパ リメイク版

   

原題は『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』。
ヴィンセント・ミネリ監督が手掛けたものが原作。
ハートフルコメディという部類になるのかなと思います。
ヴァンパイア・ウィークエンドの新作のタイトルの引用元作品だと知ったので、観てみたのです。
私のウチの近くのレンタルショップでは、このリメイク作しかありませんでした……。
原作で観賞することにこだわろうとも思ったのですが、リメイク版の主演はスティーヴ・マーティンだったので、こっちでもいいかと思いました。
愛すべきダメ男といえば、この人じゃないですか?

・あらすじ
タイトルからなんとなく想像できちゃう気はしますが、自分の娘が結婚するパパがあれこれと騒動を起こすというお話でした。
学校を卒業したばかりの娘が留学に出ているパパ。
パパは地元のアットホームな工場で仕事をしていて、つつましい一軒家を建てて暮らしている。
娘が帰ってくると、留学先でアメリカ人の青年と知り合って、すでに結婚を決めてしまったと報告を受ける。
紹介された青年は裏表のない誠実な青年で、実家は豪邸。
娘とは親友のように仲良しだったパパは、彼女の結婚を認めることができない。
しかしそんな彼の想いをよそに、結婚の準備は進んでいくのだった。

面白いのは、このパパの「子どもを持っていい年してるのにガキっぽいところがある」という設定で、自分の娘が家を出て行くことを受け入れられていないというところ。
彼氏がうちに来る前にも「久しぶりにやるか」と言って、娘とガレージの前のバスケットコートで遊んだりしている。
多分娘も、さばさばしててボーイッシュなタイプだったので、なおさら結婚するのがしばらく先の出来事と思えていたのだろうなと。
シチュエーションは面白かったです。

一番好きだったシーンは、娘と婚約者を見送る時に
「シートベルトをするんだぞ」

「コンドームをするんだぞ」
と言ってしまうシーン。
ホットドッグに関する食品会社の陰謀を暴こうとするシーンも好きだったな……なんであんなのおもいつくのだろう。

・めちゃくちゃ感動するシーン
あと、感動という意味でもすごく好きなシーンがありました。
これって物語のクライマックスに当たる名場面だと思います……。
結婚式前夜、寝付けずにいる娘と一緒に、主人公はバスケットコートに出て来ます。
そこで二人は思い出を語り合います。
すると、雪が降ってくるんです。
主人公は
「雪なんて9つの時以来だ」
って言うんですよ。それも、さらっと。
娘ちゃんとの思い出を、全部しっかりと、いつのことだったかはっきり覚えてるんですよ!
娘ちゃんへの愛を一番強く感じたのはこのシーンでした……。
このシーンの演出、さりげなくって大好きです……。
そういえばこの映画、娘ちゃんが幼かったころの回想を挟んでもよさそうなものを、すべて現代のシーンで構成していました。
多分映画を観るパパたちが、それぞれの思い出を当てはめながらストーリーに入っていけるようにしたんじゃないかな……。
ちなみにここ、字幕では「子どもの時以来だ」なんですね。
絶対「9つの時」のほうがいいでしょう……なんだ、子どものときっていう雑なくくりは。
やっぱり英語の映画は英語を理解できたほうが楽しめますね……。

そのあとも、雪を眺めている主人公に
「雪のせいで出費がかさんじゃう」
と娘ちゃんは言います。
結婚の出費で主人公の財布がカラカラになっていることを気にしていたんですね……。
吹き替えでは
「雪のおかげでますます思い出に残るよ」
字幕では
「いや 今この時のことは一生忘れないだろうと思ってね」
でした。
どっちもいいような気がするけど、お金のことを気にしてるんじゃないよ、ってニュアンスが入ってる字幕のほうが適している感はある……!
英語がわかれば、原語ではどんな表現だったのかわかるのですけどね……無念。
やはり英語を学ぶしかないか。

ヴァンパイア・ウィークエンドのアルバム一曲目に
「僕はただ最後のねじれた一夜の思い出を大切にするよ」
という一節があるんですね。
それって、このシーンのことなんじゃないかなぁ……。
ねじれた夜やでぇ……。

・映画としては微妙なもやもやするところも……!
ただ、設定を特段面白く活かせたわけではないかな、というところ……。
いや、活かせてはいたのかな……でも、すごく面白くはなかったんですよ。
正直、当初に想定で来ていたところを全然外れない感じです。

パパが、娘が出て行くことを受け入れられないことから、様々なドタバタが起こるのですが、その行動がマジで嫌なやつになってしまってるっていうところはありますね……。
婚約者の実家に行った時に、家の中を嗅ぎまわって、父親の書斎に入ったりとか……。
で、最後まで嫌なやつなところはあんまり変わってなかった印象なんですね。

なんか各登場人物が、どんな人物なのかあんまりわかんないまま終わってしまった感じがします。
登場人物全員「裏」の部分がない。
最初に出てきた印象のまま物語が終わる。
裏表がないといけないってことじゃなくて、誰しも隠している部分とか、自分でも気付いていない部分があったりすると思うんです。
映画のような長い物語って、そういう、普段は見えない顔が露わになるものだと思うのですが……いや、もちろんそうじゃない物語もありますけど(笑)。
娘とパパについて、そんな部分が見えてくるところを期待していたのですが、特になかったですね……。
あんまり人間の深い所に入っていかなかったというか……。

まぁ、強いて言うなら、パパの顔は二面あるのかな。
普段は子どもっぽいところもあるけど良いパパなのが、娘の結婚の話を聞いてバカな部分も出てくるっていう。
弟のキャラとか、いなくてもよかったんじゃない……?
って気がしてしまいます。
2を観ても弟は全然活躍しないので、本当にいらなかったんじゃないかな……。
婚約者のキャラも、「典型的な好青年キャラ」でしかなかったので、なんかもうちょっとあってほしくはあります……。

パパが特に成長したように見えなかったのも、あんまり好ましくないポイントです。
欠点は明確に示されているわけですよ。
「娘が結婚して家を出て行くことを認められずに騒動を起こす」という部分。
そもそも娘の結婚をそんなに嫌がるということは、綺麗な終着点としては「娘を笑顔で送りだす」ことができるようになるべきなんじゃないかなと。
2は娘が妊娠を報告するところから始まるのですが、彼女が言い出せずにいると「この近くに家を買ったのか?そうだろ?」と言うんですよね。
全然娘離れできてない、っていう……(笑)。
いや、2で真の娘離れを果たすという話になっていたならよかったと思うんですけど、そうでもないような感じがして……。
詳しくは2のエントリで書きます。
いや、1で出した問いはよほどのことがない限り、1で解を出さないといけませんよね。
物語作りって難しいなー……!

まぁ、コメディって、登場人物が成長していないことを示して終わるのも定石ではあるんですけど……。
結局1は「結婚式の日が来ちゃったからしょうがないよね」くらいの心境としか感じられなかったんですよ。
だから、パパがもっと、パパとして成長してほしかったです。
「結婚してもすぐ会えるし」くらいの「しょうがない」程度の受け入れにしか見えなかった。
というか妥協か。
「娘がさらに幸せになれるんだったら心配させないように笑顔で送りだそう!」くらいの心境になってたらもっともっと良かった。
まぁ、そういうパパ像も必要かとは思うんですけど、最初にパパが醸し出す拒否感が強かった分、同じくらいの強さで娘を送りだしてほしかったんですね。
作品内の感情の力学的に!(笑)
作品内で「嫌な行動」をとった人への印象をひっくり返したくば、それ以上もしくは最低でも同等の「良い行動」をとらせねばならないでしょう……。
嫌なことをした分の報いを受けたり、嫌なことをしていたと気付かされたりしてほしい。

まぁ、人間ドラマではなくて、あくまでシチュエーションを楽しむコメディでしかないと言えばそれまでなんですけどね。
コメディとしてめちゃくちゃ面白いうえ、ドラマとしてもレベルが高い作品もたくさんあるので、この作品にも期待してしまうところがあったのです。
いや、ヴァンパイア・ウィークエンドがタイトルに持ってきたということもあって、そういうドラマ部分での期待値が上がってたということもあるんでしょうね。

でもやっぱり思い返すと惜しいシーンも多くって……。
結婚式の前に、夫婦に両親たちが贈り物をするシーンがあるんですよ。
パパは最初、ジューサー(コーヒーミキサーだったかな……?)を買って、「あいつ喜ぶぞ」って自信満々なんですよ。
そしたら、旦那の両親が新車をプレゼントするんです。
それを見て、自分との経済格差を見せつけられたように感じた主人公はいじけてしまい、家のキッチンに引っ込んでしまうんです。
そしたら娘がやってきて、パパが抱えているプレゼントを見つける。
しぶしぶ、プレゼントを渡すパパ。
「新車とは比べ物にならないけど……」というのですが、娘は
「世界一の贈り物よ」
って満面の笑みで返すんです。
ここ、展開も台詞もすごくよかったんだけど、娘のこの台詞でシーンは終わっちゃうんです。
これがもったいない気がしてしまって……。
主人公と娘が二人っきりになれて、かつ、主人公のコンプレックスを娘が気付けたシーンだったはずなんですね。
であればここで、もうちょっと、主人公と娘が近付けてもよかったような気がするんです……。

いや、お話の構成上、ここで近付いてもしょうがない気がする。

想うのは、主人公の悩みを複数作ってしまったところにあると思うんです。
「大好きだった娘が突然結婚」
「相手は嫌味なくらいイイやつ」
「相手の実家は超金持ち」
「結婚式の費用で金が飛んでいく」
物語って基本的には、主人公の悩みや欠点が解消されていくようにできている。
この映画のスタートではまず「娘が結婚を勝手に決めてきた」という悩みが生じる。
そこを起点に、雪だるま式に悩みが増えていくので、観ている側は、主人公のどんな気持ちを追いかけて行けばいいのかわからなくなってきてしまうのではないかと。
もちろんこれはシンプルなやり方で、複数の感情を追いかけなければならないけれど面白い作品もあるのですが、この映画はそれがどっちつかずな感じで進んでいった気がします。
途中まではどっちつかずでも構わないんです!
けれど、「どっちつかずだからこそ起こる展開」などが用意されていないと、結局最後にあんまりカタルシスがない。
もちろん、あんまりカタルシスがない物語があってもいいのですが、この映画は悪い意味で混とんとしていたなぁという印象……。
原作は1と2がヴィンセント監督によって立て続けに製作されているので、リメイク版も「売れれば2があるし」と思いながら作られたのかもしれないけれど、1で生まれたもやもやは2でもあんまり解消されないです(笑)。

なんかあれやこれや僕が悩んでいてもしょうがないですね!
原作を観てみたほうが、いろいろスッキリする気がしました。
にしても、ほんとに素敵なタイトルの映画ですよね。
娘の結婚をパパの視点から描く、というコンセプトはほんとに素敵だと思います。
やっぱりコンセプトって大事だよなぁ。

 - 映画

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