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映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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ジュラシック・ワールド炎の王国に見る、映画作家は劇場公開映画だけを作り続けるべきか?問題

   

やっと、ジュラシック・ワールドについて書きます。
ちょっと自分でも解釈が固まっていないので、これから書いていくことは論理的にはガタガタかもしれません……。
部分部分では「ハマった」と感じられるけれど、作品全体として軸を通して見ると整合性が取れていない気がして、なんかちょっともどかしいんですね……。
けど確信を持てるまで待っていたらいつまでも書けないので、とりあえず書きます!

僕はジュラシック・ワールド 炎の王国って、映画と映画監督と映画製作で金もうけをしようとしている人たちについての映画なのでは? と思いました。
なのでその解釈をちょっと書いていきます。
ただ、ピクサーの作品と同じように、この映画も作家個人というより会社全体の成り立ちを把握していたほうが理解が深まるものだと思うので、まずは製作会社であるレジェンダリ・ピクチャーズについて解説します。

・レジェンダリー・ピクチャーズ
そもそもレジェンダリーピクチャーズとは、2005年に設立されたかなり若い会社です。
設立者はトーマス・タルという人で、「投資で儲けた金を自分たちが子どもの頃に大好きだった怪獣映画製作に投入しよう!」という理念で映画製作を始めたのだそうです。
町山智浩さんがそう言っていた気がします!
彼のおかげで我々は、パシフィックリムのような、日本の少年の夢が凝縮されたような映画を観ることができたわけですね。
パシフィックリムを映画館で鑑賞した時の興奮を、私は今でも覚えています。。。震えましたよ。
ダークナイトやマン・オブ・スティールや300などのアメコミ原作モノもあれば、ゴジラシリーズのような日本の怪獣映画も手掛けています。
オタクの夢のような会社ですね……。
ジュラシック・パークのシリーズは、前作のジュラシック・ワールドからこの会社で作られています。
ジュラシック・ワールドはご存知の通り、映画史に残る興行収入を記録した大ヒット作です。
設立からわずか十年程度でそんな記録を残したわけですから、トーマスさんは映画制作でも大成功を収めているといえますね。
タルだけに、信頼するに足る人物なわけですね。
しかしそんなレジェンダリ・ピクチャーズの前途に、暗雲が垂れ込めてきました……。

・レジェンダリが中国びいきに
僕が最初に異変を感じたのは、16年に公開されたグレート・ウォールでした。
僕は本編を未鑑賞で、予告編を観ただけなのですけど、万里の長城を舞台にした中世の映画のようでした。
そこになぜかマット・デイモンが出ていて、怪物たちとのバトルを繰り広げる映画になっているようでした。
「なんじゃそりゃ?」という感想しかないです……。
ただ近年、中国はハリウッドへガンガン投資を進めていて、ハリウッド映画に中華要素が入ってくるのは当たり前になりました。
特にリーマンショック以降、ハリウッドは自分たちだけで資金調達をするのが難しいので、中国やインドなどの経済的に大きく飛躍したところから投資を受けることが多いのです。
中国は映画館もどんどん増えているので、単純に映画産業の市場として優先される場所になっているということですね。
まぁ80年代から90年代にかけての日本も、そのような状態だったと思うんですけども。
なので、グレート・ウォールの予告編を観ても、そのような中国への媚売り、もしくは中国自画自賛映画の一つにすぎないだろうと思って特に気にしませんでした。
面白くなさそうだったし……。
しかし、17年に公開されたキング・コングを鑑賞したところ、これはかなりまずい事態になっているのでは……? と思わされたんですね。

・何もしゃべらん中国人ついてきとるやないか!
キング・コングの舞台は1973年。
めちゃくちゃ怖い怪物たちが住む島に人間が調査に入るという内容なのですが……調査隊に中国人女性がいるんですね。
この時代って中国からの移民はそんなにポピュラーな存在だったのでしょうか……。
まぁ、そこは置いておくことにします。
ハリウッド映画に白人85%、黒人15%くらいの割合の人物しか登場しないような時代はもう終わったのです。
実写映画の美女と野獣では、中世のヨーロッパが舞台なのに黒人がたくさん出てくるという、史実を丸々無視するという事態が起きていたようです。
これからの時代は、過去を舞台にした映画でも、そこにいなかったはずの人種が続々と配役されるでしょう。
でも、おかしいのが、この女の人は台詞がほとんどないのに画面に出ずっぱりなんですね。
正直違和感しかなかったです……。
最後の最後まで、このキャラクターは「いてもいなくてもいい」んですよ。
たまに喋ったと思ったらどうでもいいセリフだし……。
かなりおかしいので、この映画についてネットで少し調べたんです。

・買収劇
そうしたらなんと、レジェンダリ・ピクチャーズは、16年に中国の企業に買収されていることがわかったんです。
大連万達グループという超巨大企業で、事業内容も多岐にわたるようです。
中国国内で映画館を買収したり、新しく建てたりということを繰り返しているようです。
僕の想像ですけど、自分たちが所有している映画館で上映する映画を作るためにレジェンダリーを買収したのではないでしょうか……。(ウィキによると、打倒ディズニーを掲げている企業のようです。打倒の目標がでけぇ……)
パシフィック・リムも中国では大ヒットだったようですし、ゴジラシリーズも当然中国での人気は高いので、それを製作できれば強力な武器になるのではないでしょうか。
16年に買収されているということなので、それ以前からレジェンダリーとの資本関係はあったのではないかと思います。
そういうポジションであれば、脇役に自分たちが押したい女優を突っ込むぐらいのことはできるのではないでしょうか。
(それにしてもこの女優さんに良い台詞が与えられていないところを見ると、脚本を書き替える暇もないくらい唐突に突っ込まれたんでしょうね、この役……(笑))
で、このジン・ティエンさんという女優は、グレート・ウォールにも出演していたそうです。

・トーマス・タル退社
まぁこの女優については置いておくとして、なんとレジェンダリ・ピクチャーズからトーマス・タルが退社したというニュースまでついていたのです。
今後もレジェンダリーで製作する映画に関わることもあると声明が出ていますが、設立者自身が去るということですから、方針は大きく変わっていかざるを得ないですよね……。
ていうか一体どんな内情があったんでしょうか……このお家騒動への興味は尽きません。
しかしなんにせよ、危惧されることは、中国万歳な内容になってしまって、そこにゴジラやパシフィック・リムが使われてしまうことでしょうか……。
僕はドラゴンボールのハリウッド版の製作者の名前に、中国系の名前がズラリと並んでいたことを今でもよく覚えています。
かなり右寄りな言い方になってしまって自分でも嫌なんですけど、日本のコンテンツを貶めるためだけに作られたんじゃないの? と思ってしまうんです。
まぁ、中国の人たちから見たら、「西遊記の人物の名前使ってんじゃねーよ!」という話なのかもしれないですけど。

・アップ・ライジング
で、18年にパシフィック・リムの続編が公開されました。
ここにもジン・ティエンさんが出演するとのことだったんですね。
いくら推したいからって、ここまであからさまに出演ラッシュにしますかね(笑)。
ちょっと不安だったのが、このジンさんと、前作から続投する菊地凛子さんって、ちょっと顔立ちが似てるんですよ。
どうすんねん……と思ったら、菊地凛子さんは映画の序盤で事故死させられてました。
日本人への嫌がらせか!? と思うような唐突な展開でした……。
まぁ映画自体はそんなに面白くなかったので、特にこれといった感想はないのですけど……。(ロボットアニメとしての考察を楽しむ余地はありますけど、作品自体はやっぱり、ちょっと……)
しかしやはり、このジンさんがアップで映るシーンは多かったように感じます。
特にクライマックスでは、不自然なくらいにアップで撮られていましたね。
(このジンさん、大連万達グループの重役の愛人という噂がありますね……。まぁ特別な理由がない限り、こうして一人の女性をやたらとプッシュする必要はないですもんね)
このように、ジュラシック・ワールドの製作会社であるレジェンダリ・ピクチャーズは、中国企業による買収のあおりを大きく受けています。
経済的な面だけでなく、(推測ですが)脚本やキャスティングにも親会社からの介入が入っているとみてよいと思います。
レジェンダリ・ピクチャーズは一つの象徴的な会社ですが、ハリウッド映画のように大きな資本で製作する企業であればこういった制約は当たり前のこととも言えます。
とりあえず僕が炎の王国について思うことを書くにあたっての前提は、ここまでで広げることができました。
本題の、炎の王国について書いていきます。

にしてもパシフィック・リム……1は惜しい展開やツッコミどころの多い作品でしたけど、2の「薄味」なところを見ると、1が如何に監督のフェティシズムによって面白い作品になっていたかがよくわかりますね。
逆に言えばフェチが強すぎてわからない人にはわからないものになっちゃってたかもしれませんけど……。

・炎の王国のあらすじ
前作では、とある孤島に恐竜たちを復活させたテーマパークを建てました。
そこで遺伝子操作をしてめちゃくちゃ怖くて強くて頭の良い恐竜を作ったところ、彼は知恵を駆使して人間達を出し抜いて、脱走し、パークは大混乱に陥る……という誰もが予測できる展開となりました。
いつものシリーズと少し違うところは、主人公のオーウェンがラプトルを調教し、手なずけることができており、ラプトルが人間を守ろうとする点でしょうか。
で、このパークの責任者を任されていたクレアとのラブストーリーなどもある……というお話でした。

で、炎の王国はパークに人間が寄り付かなくなり廃墟と化した後の話。
パークがある島で火山の噴火が始まり、島が滅んでしまうという事態になりました。
クレアは恐竜保護のNPOとして活動しており、恐竜を救い出すべく奔走します。
で、前作のあとに別れたオーウェンに、恐竜を救う手伝いを要請します。
「あなたはブルーのことを育てたのだから責任があるわよ」的な……。
オーウェンはしぶしぶそれを引き受けます。

そして島にたどり着き、オーウェンはブルーを見つけます。
オーウェンはブルーに自分のことを思い出してもらおうと、慎重に接しますが……
近くで控えていたハンターたちはブルーを睡眠剤で射撃してけがを負わせます。
そしてなんとオーウェンのことも眠らせます……。

島で乱暴にハンティングされる恐竜たち。
しかし噴火が始まってしまい、止むなく撤退することになります。
いろいろ取り残されそうになるハラハラはありますが、人間は全員船に乗り込んで脱出します。
溶岩に飲み込まれていく恐竜たちの悲鳴を聞きながら、島を後にします。

アメリカへ向かう船の中で、治療を受けているブルーの失血が多く、生命の危機にさらされます。
船に積まれているティラノサウルスの血液はブルーの身体にも適合することがわかり、オーウェンは命からがらティラノサウルスの血を抜きに取ってきます。

そんな彼らの行動の裏で、クレアを支援するお金持ちおじいさんの屋敷でもいろいろ起こっています。
お金持ちおじいさんは、ジュラシック・パークの設立者の友だちで、彼の意思を継ぐためにもパークから恐竜を救い出してほしいとクレアに願いを託します。
彼には孫娘のメイジーちゃんがいます。
彼女は恐竜が大好きで、大人の言うことを聞かないやんちゃな子です。
おじいさんの側近のビジネスマンもいます。
側近は、投資家にそそのかされて、恐竜を使った悪事に手を染めています。
その悪事がおじいさんにバレて怒られるのですが、側近はなんとおじいさんを殺してしまいます。

オーウェンたちは屋敷に幽閉され、メイジーちゃんと一緒に恐竜を助けつつ屋敷を逃げ出すことになります。
屋敷では世界各国から悪いお金持ちたちが集まり、恐竜のオークションが始まります。

その後の色々パニックが起こり、恐竜が屋敷に囚われたまま、屋敷にガスみたいなものが充満していきます。
恐竜を外に出すわけにはいかないので、オーウェンたちはそのまま恐竜を見殺しにするしかないと決断。
しかしメイジーちゃんは、屋敷の外に恐竜を出してしまいます。
パニックの最中、メイジーちゃんは、自分がクローン技術によって生み出された人工生命だと知ったのです。
恐竜が人間の世界に入っていったことを示して、映画は終わります。

恐竜の研究をしている中国人がいた気がするのですが、どんな役どころだったか上手く思い出せないです……(笑)。
中国企業傘下に入っているので、中国人をどこかに出す必要があったのだとは思うのですが……。
けどあんまりいい人の役ではなかったと思います。

あらすじにまとめるのが難しいです(笑)。
炎の王国が、いかに展開の多いジェットコースター型の作品になっているのか、こうして書上げていってよくわかりました。
それに比べてピクサー作品の、なんと整理されていることか。
あちらは、子どもが観てもちゃんとわかるように作られているんでしょうね。

本作を監督したバヨナさんは「現実よ夢(想像の世界)の境を越えて戻ってこない」タイプのストーリーを好んで作っています。
細かいネタバレは書きませんが……。
なのでこの「遊園地に行けば会える非日常的娯楽だった恐竜が、人間の世界にはなたれる」という最後も、バヨナ映画的と言えます。
バヨナ監督の師匠筋にあたるデルトロ監督も、夢と現の境があいまいになっていく作品を好みますが……メキシコの風土がそうさせるのですかね。
不思議な共通項です。
しかしバヨナ監督が脚本を書いたわけではなく、トレボロウがバヨナ監督に寄せて脚本を書いたと語っているみたいですね。
作風を寄せて書けるなんて、すごいですね。

・これらは何の象徴か?
ここでの恐竜は映画作家、もしくは作品そのものではないかと思ったのです。
レジェンダリ・ピクチャーズの沿革について書く中で、映画業界が変革の時を迎えていることにも触れました。
『滅んでいきそうな存在』として、『映画』があるのではないかと……。

まず放っておけば滅んでしまう映画を、『他の場所へ移す』という役目を仰せつかった主人公……これは『スピルバーグ』もしくは『コリン・トレヴォロウ』ではないでしょうか。
正直、このジュラシック・ワールドの製作者たちの内情についてほとんど知らないので憶測ばかりにはなってしまうのですが……。
何故スピルバーグの名を出すのかといえば、彼はかつてシリーズの1と2で監督を務めたのちは「製作指揮」としてクレジットされるようになったからです。
つまり、作品を実際に製作する「監督」からは一歩引く形になったということですね。
その後、3から十年以上の期間が空いてジュラシック・ワールドがリブートするとなった時に、スピルバーグは何も手を出さないという選択もあったと思うのです。
彼は自分でも映画監督を続けつつ、他のプロジェクトの製作にも乗り出していますからね……超ワーカホリックですよ。
しかし、自分が製作にかかわらなかったら、金儲けしか頭にない連中に好き放題されてしまうかもしれない……そんな想いから、ジュラシック・ワールドの製作にも入ったのではないでしょうか。
前作のパンフレットによれば、コリン・トレヴォロウを監督として抜擢したのはスピルバーグとのことでした。

もしくは、トレヴォロウ監督をもとにしているのかもしれません。
前作で監督を務めたトレヴォロウですが、今作の前に『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』という作品を作りました。
これが興行的にも批評的にも大コケに終わりました……。
そのため、今作では監督を下ろされてしまい、脚本と製作総指揮(スピルバーグと同じポジション)になったのだそうです。
そんな彼が監督を誰にするか考えて、バヨナさんに白羽の矢を立てた……ということと考えれば、オーウェンがブルーを助けに行くシーンの理解も出来るように思います。

・ブルーを捕獲するところ
あのシーン、最初はブルーのことをよく知っているオーウェンが、説得をして連れ出そうと試みます。
ところが途中で、ハンターたちが乱暴な方法でブルーを捕獲し、オーウェンに対しても暴力を振るいます。
オーウェンはブルーの理解者であり、彼女の心を開こうと努力する……しかし、ハンター(=芸術の理解のない投資家や業界人の揶揄?)たちはブルーの心情などを鑑みようとせずに力づくに連行していきます。
これは芸術に理解のない人間達が、芸術家たちを無理やり別の業界で働かせようとするさまを示しているのかもしれません。
オーウェンがスピルバーグかトレヴォロウなのだとしたら、彼らは自分自身も作品を作る側なので、なんとか理解を得ながら関係を築こうと努力していた……が、無理解な連中からの横やりですごく苦労した、ということをにおわせているのかもしれませんね。

・みんなを救うことはできない
その後、噴火が始まってしまい恐竜たちを救いきれないさま……。
これはきっと、映画業界が経済的な要因で崩壊して以降としているのに、みんなを脱出させようという奮闘もむなしく、ハンター(=金目当ての人間達)が跋扈するし、映画業界の人間達もオペレーション通りに避難してくれないという事態を予測しているのでしょう。
また、救いきれずにそこで滅んでいってしまう人たちも出てくる……という描写ではないでしょうか。
首の長い恐竜が煙と溶岩に巻き込まれて消えていくさま……これは本作で最も美しいシーンと言ってよいと思います。
すごいシーンですよ……バヨナ監督ほんとにすごい。

・ティラノサウルスから血を頂く
その後、船の中で「ティラノサウルスから血を抜いて、ブルーに輸血する」という展開があります。
恐竜≒映画もしくは映画作家になぞらえて見るなら、偉大な作家が残した作品からの引用を行うという話ではないでしょうか。
特定の作品から影響を受けて自分の作品に反映したり、作家のもとで創作術を学ぶ……といったことを暗示しているのではないでしょうか。
作家に近付くということは、時に自分の個性を潰されてしまうことや(喰われる)、創作意欲の消失に陥ってしまうことすらあるのでは?
あるいは、トレヴォロウの視点から見た時、このティラノサウルスはスピルバーグではないでしょうか。
スピルバーグっぽいエッセンスを作品に注入しなければいけない……とか、スピルバーグから映画作りのノウハウを盗まねばならないと……とか。
また、バヨナ監督はこの作品を「スピルバーグっぽく撮る」ことを心がけたと語っています。
詳しくは町山智浩さんの映画無駄話をお聴きください!

・おじいちゃんはトーマス・タル?
お屋敷で、お金持ちのおじいちゃんが殺されてしまい、ビジネスマンたちによって恐竜が競売にかけられてしまうところ……。
ここで殺されたおじいちゃんはトーマス・タルではないでしょうか。
前作では製作総指揮にトーマスがクレジットされていましたが、今作に彼の名前は入っていません……。
ジュラシック・パークの創設者が途中で「殺されてしまう」のは、トーマス退社のお家騒動をトレヴォロウから見たさまを表しているのかもしれないですね……。
投資家たちにそそのかされながらも、トーマスという最後の砦が作品を守っていた、という暗示ではないでしょうか。
しかしそんな彼も投資家たちによって会社を追い出されてしまい、作家を守る人がいなくなってしまったということでは。
そんな中で奮闘しようとしているのが主人公たちなのですから、やっぱりオーウェンはトレボロウ監督なのかもしれませんね。
そう考えると、彼の闘いを応援したくなってしまいます……。

・競売にかけられる映像作品製作者たち
その後……島で育まれてきた珍しい生き物たちが競売にかけられているところは、そのものズバリで、世界各国で芸術に理解のない成金たちが映画業界の才能を買いたたいていくことを描いているはずです。
もちろん、トーマス・タルみたいに、子どもの頃に大好きだった映画を作ってほしい! という純粋な映画好きのお金持ちや企業もいるのかもしれませんけどね。
この映画を作った人たちには「金目当て」に見えているということがシンプルに伝わるシーンです。

・映画業界の外に解き放たれる
で、最後には、メイジーちゃんが、恐竜たちを世界に解き放ちます。
このメイジーがクローン技術によって誕生した存在だということも大事だとは思うのですが……具体的にどんな意味があるのか、自分の中で固まっていません。
ただ庵野秀明さんなんかも言っている、「自分たちは映画に影響を受けて映画を作っている。自分の思いつきがオリジナルに思えても、ある時にそれが何かのコピーだったことに気付いて愕然とすることがある」という話と共通するのではないかと思います。
スピルバーグも映画史から見れば若い作家ではありますが、ジョーズやETや未知との遭遇のような「新しい」作品を作った人ではありますもんね。
トレボロウやバヨナ監督が、庵野さんと同じような悩みを抱えながらも映画を作っているということなのではないでしょうか。
映像作品に影響を受けて映像作品を作る……という世代。
いや……書いてて気づいたけど、トレボロウがオーウェンなら、メイジーちゃんはバヨナなのか。
しかし恐竜がそもそもDNAを操作して作られた人工生命だし、ブルーはティラノサウルスから血を注入されているし、「遺伝子を受け継ぐ」ということが重要なモチーフになっているのは間違いないことです。

・映画業界の外って?
で、この、恐竜を世界に解き放つというのは、才能のあるクリエイターたちが映画業界の外に出て行く様を示しているのではないかと思います。
24シリーズがブームを起こした00年代から、ドラマの人気が上がってきています。
もちろん昔から、TVドラマで腕を磨いた人物が映画業界に活動の場を移すということはありました。
けれどそれが活性化していったのが00年代から現在に至るまでの大きな変化ではないかと思うのです。

・映画とTVドラマ
何かのクリエイターが語っていた気がするのですが、「映画にエピソードを詰め込むのには限界があるが、ドラマだと映画の数倍の情報量を詰め込める」のです。
どこで書かれていたか失念しました……。
しかしこれも周知の事実だと思うのですが、今の時代の人って物語コンテンツの過剰摂取があるのではないかと思うんですね。
マッド・マックスの監督がフューリー・ロードのパンフレットで語っていましたけど、15年前と比べて映画のカット数が倍程度になっているそうなんですね。
それは、観客が物語の意味を飲み込む速度が速くなっているということです。
この辺の話について語り出すとキリがなくなってしまうので、「そういうこと」として進めさせてください(笑)。
ちょっと観念的な話に聞こえるかもしれませんが、これも人間の脳の「進化」の一つと捉えることができると思うんですね。
これはドラマに限らず、音楽でもそうだと思います。
今の日本のポップミュージックって鳴る音が多ければ、展開の変化も多いです。
情報量が飛躍的に上がっていると思うんですね。
恐竜をテーマに扱う映画なので、人間の「進化」が要因で起こっている環境の変化について描いているのも納得がいくというか。

観客の理解の速度が早まっていることに対して、映画の尺というのは一時間半から二時間程度が一般的。
まれに二時間を超す大作もありますが……会社や映画館としては上映時間が短いほうが嬉しい。
上映時間が長いと、上映できる回数が減ってしまうからです。
映画作家は、その限られた上映時間の中で完結する物語を作らねばなりません。
しかも、観客を驚かせなければいけないというハードルもあります……つらいですよね(笑)。
そこに出てきたのが、映画並みの予算を投入できるドラマという場です。
もちろんドラマにも、毎回オチをつけることが求められるというようなハードルがありますが、盛り込める要素、登場人物の数などは映画とは段違いです。
ドラマをちゃんと追いかけて興奮したことが今のところないので、ドラマを追いかけたことによる深い感動というのは未体験なのですが……。
ドラマの事情にあまり詳しくないので、この程度のことしか書けないのですが……。
しかし著名な映画作家がTVドラマを手掛けることは、もはやまったく珍しくないんです。
ドラマで名を上げた作家が、大作映画を任されることだって多いです。
アベンジャーズシリーズのルッソ兄弟などはその典型ですね。

このように、「優秀な映像作品クリエイター」の活躍の場はもはや映画業界だけではなくなったのです。
そこに来てさらに、映画館で上映されない映画作品も登場してきました。

・映画館で上映されない映画
ここ数年の間に、動画配信サイトがユーザー数を伸ばしてきたのは皆さんご存知の通りですね。
ネットフリックスやHulu、アマゾンプライムなどですね。
既存の映画作品の配信はもちろんですが、近年、サイトが映画作品に出資、製作を行い独占配信をするといったケースが増えています。
作品制作の顔ぶれには、ハリウッドで活躍している作家の名前もちらほら。
そんな中で、ネットフリックス出資により製作された『マイヤーウィッツ家の人々』という映画をめぐって、ある騒動が起こりました。
作品の監督はノア・バームバック……『イカとクジラ』『フランシス・ハ』といった作品を手掛けています。大好きな作品です……。
ウェス・アンダーソン監督の作品に脚本で参加したりもしていますね。『ファンタスティック・ミスターフォックス』最高です……。
カンヌ国際映画祭で上映されたおりに、フランス国内の劇場公開が決まっていないことから、審査委員長を務めたペドロ・アルモドバル監督に「賞を与えられない」旨の発言が飛び出てしまったのです。
映画祭側は批判の声を受けて「来年度からはフランス国内で上映された映画でなければコンペには出品出来ない」という制度を作ってしまいました。
まぁ、ガンコ者のフランス人らしいといえば、らしい対応ですね……(苦笑)。
もちろん、動画配信サイトが出資して、映画館で上映される作品だってあります。
Amazonスタジオは、映画館で上映する事には積極的な姿勢だそう。
もしかしたら動画サイトで人気になった作品が、あとになって映画館上映されることもあるかも……。
何を持って映画とするか……そんな議論が今、海外では起こっています。

正直なところ、僕もまだ配信サイトにアレルギーを持っている人間だったりはします。
「ドラマってなんか内容が薄いのが多くて嫌……」
「映画館で上映されない映画って画面の細部とかへのこだわりがなさそうで嫌……」
「動画配信サイトは芸術性よりも大衆性や娯楽の方向に傾いてそうで嫌……」
などなど。
(けど最近ネットフリックスが、オーソン・ウェルズの未完成映画を完成させたと聞いて、アートへの理解がある企業なのかなと思い始めました)
けれど、予算が減り業界が縮小していこうとしている映画業界に、映画作家を閉じ込めておくことも正解とは思えないです。
ただのファンとして見ている僕から見ても苦しそうなのだから、業界の内側にいる人たちは本当に苦しいでしょう。

だからもう、「映画館で公開される予定のある映画の製作」という仕事に、才能を持った人たちを閉じ込めるのはやめにしようという表明が、映画のラストにはあるのではないかと思ったんです。
別に本人の技術を活かせるなら、You Tuberでもいいわけですしね。

・おわり
このように、ジュラシック・ワールド 炎の王国には、製作者の『映画』に対する思いが込められているのではないかと思いました。
僕は映画館で映画を観るのが好きなので、こういう製作費がバカ高い映画であっても、その作家の情熱が迸っているようなものが観たいのです……。
マーベル映画やレジェンダリー映画なんて、本当に好きなんです……。
なので、映画に投資をする人たちも、どうか映画作家を守ってあげてください。
まぁ、自分のお金を何億も投資するのであれば「売れるもんにしてくれや! 頼むぜ!」って言いたい気持ちもわかるんですけどね。
うーん、経済もモノづくりも、どちらも難しいですよね。

しかしそれにしても、この映画はこんな奇跡みたいな面白さに着地してくれたから、本当に嬉しいです。
子どもの頃に映画館でジュラシック・パークを観たことは、僕が映画を好きになった原体験のようなものなのです。
そんな映画のシリーズ最新作が、こんなに美しくて、信念が貫かれたいい映画になっていてくれたことが、たまらなく嬉しいです。

 - 映画

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