てやんでい!!こちとら湘南ボーイでい!!

映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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ジブリ美術館とジブリパークの短編映画ランキング付け!

   

ジブリ美術館と、ジブリパークでのみ上映されているジブリの短編映画のおすすめランキングを作成しました。
全10作品のおすすめ度と、作品の概要を書いていきます!

まず手っ取り早く、短編それぞれを3つの視点からおすすめするランキングを書いておきます!
作品の詳細は下のほうに書いておくので、興味があれば各作品の詳細なども読んでみてください。
ただ先に書いておくと、どの作品もユニークなコンセプトに基づいて制作されており、クオリティはジブリの本領が存分に発揮されており申し分のない仕上がりです!

・子どもが喜ぶ短編
・大人でも楽しめる短編
・ジブリ好きな人に観てほしい短編

・子どもにおすすめ
1位 めいとこねこバス
2位 ちゅうずもう
3位 毛虫のボロ
4位 コロのおおさんぽ
5位 くじらとり
6位 たからさがし
7位 水グモもんもん
8位 やどさがし
9位 星をかった日
10位 パン種とタマゴ姫

・大人も楽しめる
1位 毛虫のボロ
2位 ちゅうずもう
3位 星をかった日
4位 めいとこねこバス
5位 くじらとり
6位 パン種とタマゴ姫
7位 コロのおおさんぽ
8位 たからさがし
9位 水グモもんもん
10位 やどさがし

・ジブリ好きにおすすめ
1位 めいとこねこバス
2位 星をかった日
3位 毛虫のボロ
4位 ちゅうずもう
5位 やどさがし
6位 パン種とタマゴ姫
7位 くじらとり
8位 水グモもんもん
9位 コロのおおさんぽ
10位 たからさがし

ひとまずここまで!

・おすすめランキングを作る理由
映画監督の名前でググると、その監督のおすすめ作品を紹介してくれるページが出るじゃないですか。
映画監督の名前でGoogle検索をかけると「おすすめ作品」とかって自動的にサジェストが表示されて、「⚪︎⚪︎監督おすすめ作品⚪︎選!」って出たりするあれです。
でもジブリ美術館の映画って、ジブリ美術館とジブリパークでしか上映されていない上に、1回の来館で1作品しか鑑賞できないので、全作品を鑑賞している人ってあんまりいないのですよね。
私は宮崎駿信者なので、これまでにジブリ美術館には30回以上通って、全ての作品を鑑賞しました。

と思ったけど、今調べたら、「全作品鑑賞しました」ってページが複数ありました。無念。
でもあんまり詳細にレビューしているって感じではなかったので、気を取り直します!

短編映画は予告編すらネットに上がっていないので、現代においても謎に満ちた作品として扱われております。
ジブリ美術館では毎月上映される作品が決まっているため、遠方から訪れる方などは「どの作品が上映されている月か」で、美術館への来館体験そのものが左右されかねないです。
「できることなら、面白い作品が上映されている月に行きたい」と思うのが人の心でしょう。
また、すでに行く月が決まっているという人であれば、「その作品の情報を事前に得ておきたい」と思うかもしれません。

そういうわけで前者の方に役立ててもらうために、各作品の私的なおすすめ度と、作品にまつわる情報を紹介したいと思います。
おすすめ度については好き嫌いがあるのは当然かと思うのですが、可能な限り面白ポイントとかも書きます!
このページでは作品についてさらっと紹介するコメントを記載します。
作品のネタバレを含む詳細情報については、各作品のページを用意してそちらに書いていくことにします。

そもそもの話ですが、ジブリ美術館自体がめちゃくちゃ面白い施設なんですよ。
入館料1000円で、宮崎駿さんが設計した建物を探訪できるし、世界屈指の技術を誇るスタジオジブリのオリジナル短編アニメを鑑賞できるのですから、破格という他ありません。

ただ、現在日本は驚愕の円安国家になっていることも相まって、海外からの観光客がとても多いです。
また、ジブリは海外での知名度も高いので、ジブリ美術館には多くのお客さんが押し寄せています。
平日に行くと、8割は外国からの観光客ですね…私の目算でしかありませんが。
そういうわけで、現在チケットの入手は非常に難しいです。
昔は当日にふらっと行って入館することもできたようなのですが、今ではチケット発売日には月前半の土日は完売していることがほとんどです。
チケットを購入したい場合、発売日の販売開始時刻にアクセスするのが吉です。
なので、ジブリ美術館に興味を持っている方が、美術館のチケットをすぐに購入する決心ができるような手助けをできればとも思っています!
私が記載した内容以外に知りたいことがあればコメントいただけると助かります。
随時情報を補足していきたいと思います。

ジブリ美術館の細かいことを紹介するエントリは、後日別途作成します!
(おすすめ食事など)

・全作品に共通すること
上映時間は15分前後です。
そもそも美術館自体が子どもに楽しんでもらえる施設を目指したという経緯もあってか、子どもでも楽しめるようなテイストのアニメが多いです。
また、これも意図的なものかは不明ですが、セリフがない、もしくは少ない作品も多いです。
これはセリフが多く入ることで説明的になることを避け、子どもにもわかりやすくしているのかもしれないです。
外国の方も多く訪れるようになっているので、日本語がわからない人でも楽しんでいるように見えます。
もしかしたら、言葉に頼らない表現としてのアニメーション制作に挑戦し、それが結果的に海外の方にも届きやすくなっているのかもしれません。
そしておそらく、既存の短編作品と似ないように意識して作られているようで、どれも異なった方向に尖った作りになっています。
なので刺さらない作品を観ると、「美術館でしか上映しないから手抜きしているのかな」といった印象になりかねないところ…。

それでは各作品を私のおすすめ順に紹介していきます!
パンフレットに明確な記載があるクリエイター情報はこのページにも書きます。
パンフレットに記載がないものは公式サイトに準ずる記載をします。
そうそう、ジブリ美術館の短編映画はパンフレットも充実の出来です。
値上がりしていなければですが、フルカラーで500円くらいで販売されており、子どものためなのか、劇中の絵がたくさん収録されていて、絵本のように物語の説明やセリフの抜粋が優しい言葉で添えられています。
さらに制作者のインタビューや、作中で描かれる文化の紹介も記載されているので理解も深まります。
お手頃価格で出来がいいのでほんとにおすすめです!
鑑賞前の作品のパンフレットを買っても楽しめると思いますよ!
もちろんネタバレを避けたい人は絶対に見ない方がよいですが、短編なのでストーリーの展開の妙で魅せるものも少ないので、そんなにネタバレを恐れなくてもいいかも。

また、短編上映前には、アニメーションのことを紹介するショートフィルムが上映されていて、実質アニメの二本立ての構成になっていました。
しかしショートフィルム上映は、おそらくコロナ禍以降はなくなっているもようです…。
このショートフィルムは再上映などされていないようで、パンフレットの販売もされておらず、実質的に封印された状態になっています。
私は未見なのですが、庵野秀明さんが監督を務めた作品もあったとのことで、ファン的には何がなんでも観たいと思われるのですが…再上映やパッケージ化を求めます…。

10位 パン種とタマゴ姫(2010年公開)
上映時間 11分37秒
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
いばらの森のその奥の水車小屋に暮らす、バーバヤーガに召し使いにされた「タマゴ姫」は水車小屋に閉じ込められ、重労働に追われるつらい毎日でした。
ある夜、バーバヤーガの言いつけでこねていたパン種が、突然生命を持ち、動き出します。
その「パン種」とともに、恐ろしいバーバヤーガから逃げ出すタマゴ姫。
二人のこの先はどうなるのでしょう。

・見どころ
宮崎さんお得意の、ヘンテコだけど愛らしいキャラクターと、西洋絵画のような背景美術の融合が面白い。
ほぼ無声作品であり、BGMはヴィヴァルディの『ラ・フォリア』というクラシックが一曲丸々使われるというユニークな試みもあります。
健気に頑張る主人公タマゴちゃんと、寡黙な護衛のパン種くんの関係性がかわいらしいです。

しかし私としてのおすすめ度は実質的に最終位、個人的に、あまり惹かれない作品です…。
好きな人がいたら申し訳ないのですが。
私はジブリ美術館に初めて行った時に観たのがこの作品だったのですが、「なんか実験っぽいことをやってる習作が多いのかな…」と思い、その後美術館に行くモチベーションがそんなに湧きませんでした。
脚本・監督ともに宮崎駿さんですが、公開時期が2010年と、氏がわかりやすいエンターテイメントを志すことへの関心が薄れていた時期とも言えるので、「やっていないこと」への挑戦の1つなのかなぁと思ったりします。

テイストとしては、千と千尋みたいな「働かされる少女」と、主人公によって命を宿される「ナウシカの巨神兵」と、パンダコパンダの「異類婚姻譚」がミックスされているかなと思います。
ハウルなどでもわかりやすいのですが、「異なる出自を持つ者たちが共同体を構成していく」ことを描いている感じ。
ただ、音楽や画風も相まって「笑い」の要素が少ないので、おすすめはしにくいです。
映画館で三回観たのですが、この映画で笑いが起きていた記憶はありませんね…。
小さな動きが面白かったり、タマゴ姫が勇気を持って行動し始めるところなどは面白いんですが、正直曲が暗くて重いので、そこにコメディっぽい要素が打ち消されてしまっています。
宮崎さんといえば笑えるアニメーションの名手なので、そこはもったいないところです。

また、どのキャラクターも一応ポップな宮崎駿さんデザインではあるのですが、パン種やバーバヤーガはけっこう怪物っぽくて怖いんですよね…。
ただ、おとぎ話での定番である「魔女からの逃亡」って、ジブリではこれまで描かれてこなかった内容ではあるので、そういった宮崎さんの挑戦を楽しむことはできます。
言うなれば、宮崎さんが感銘を受けたアニメーション映画「氷の女王」などの系譜にも連なる作品です。
なので、宮崎さんのおとぎ話への取り組みを見るという意味では非常に面白いです。
ただ、アニメーションとして普通に観て面白いかというと、私は首を傾げてしまうというか…。
正直、「音楽が暗いしキャラクターもそこまで魅力的ではないし、どう楽しんでいいかわからない」という感じです。
音楽の荘厳さと悲壮さ、絵画の中をキャラクターが歩き回るという絵面が、どうにもポップとはかけ離れています。
個人的にはオチの付け方も微妙に意味がわからなかったかな…私の観察眼が弱視なだけかもしれませんが…。

そんなわけで、総合的には正直「おすすめはしない」という評価になってしまいます。
ただ嫌いではないですよ、もちろん観る価値はあるのですが、いわゆる「楽しいジブリ!」を想像していると、言葉がないことも相まってわかりにくくはあるという感じです。
実際、劇場でも「わかりにくいかった」という感想がちらほら漏れてきたりします…まぁ美術館に来るお客さんの客層や、短編に対する期待値もそれぞれだったりしますからね。

9位 くじらとり(2001年公開)
上映時間 約16分
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
ちゅーりっぷ保育園にかようしげるくん。
年上のほしぐみの男の子たちが積み木で船を作っているのをみて、仲間に入れてもらいたいしげるですがなかなか入れてもらえません。
とうとう完成した船は「ぞうとライオン丸」と名付けられ、くじらとりに出かけていきました。

・みどころ
ジブリとは縁の深い中川李枝子さんと大村百合子さんの絵本が原作で、原作の絵本の絵柄を再現するように作られています。
描き込みが少なく、柔らかい線と温かみのある色彩で描かれる、絵本のような作品です。
色使いも暖かい色味で統一されていて、見ているだけで癒されるような世界に仕上がっています。
冒頭以外は全編にわたって保育園児しか出てこないので、幼年の子どもの動きが丁寧にアニメーションとして動かされていて、とてもかわいらしいです。
また、セリフや、細かな仕草にも子どもらしさが随所に見られます。
声優も実際に幼稚園生ぐらいの子どもが起用されています。
美術館の短編で唯一、エンドクレジットで歌が流れるのですが、ここでも子どもだけで合唱していて微笑ましい締めくくりかたになっています。

また、幼稚園の空間のほのぼのした様子と、子どもの空想が融解していく様には驚かされ、引き込まれていくこと必死です。
ここで培った表現を進化させたのがポニョや、短編たからさがしにあると言えるでしょう。

脚本・監督が宮崎駿さんです。
原作がある作品ですが、オリジナルのパートが追加されているので、その辺りを見ると監督の意図や趣向を感じることができると思います。
あと、原画にはさりげなく湯浅政明さんの名前も。
湯浅さんが得意とするサイケデリック・パースを崩した動きなどは見られなかった気がしますが、ジブリ作品が優秀なアニメーターに支えられて出来ていることが実感できたポイントでした。
タイトルの文字は、原作の挿絵を手がけた山脇百合子さんによるもの。
山脇さんは中川さんの実妹で、大村百合子さんの名でクレジットされていることも多い方です。

ごっこ遊びをしているうちに現実化していくところがユーモラスです。
突然ファンタジーの要素が入ってくる、不思議なお話です。マジックリアリズム的。

子どもの想像力によって作られた世界観を、見事にアニメーションにしてあるなと思いますよ。
「子どもは繰り返しが大好き」と言われますが、この作品ではそれが実践されているように思います。
もともと長く読み継がれている原作なので、原作好きの方にも嬉しい作りになっていると思います。

ただゆっくりとしたテンポなので、現代的な映像(YouTubeにせよアニメにせよ)に慣れた子どもが、この作品のテンポ感で満足するかはわからないところではあります。
あと、刺激があんまりないので、良くも悪くものぺっとした印象です。
そのためこの順位にします。
とは言え、面白いし、見る価値は十分にあります。

大人が見ると、「子どもから見たら世界ってこうなっているのかもな」と思ったりはするのですが、当の子どもがこれを喜ぶのか、正直わからないですね…。
もはやジブリ美術館も、来館者の過半数は大人なので、子どもがどう見るのかはちょっとわからないところです。(そんな私も立派な大人なのですが)
もともと宮崎さんの意図としては、子どもが楽しく過ごせる場所としてジブリ美術館を作っているはずなので、子どもに向けた映画として作っているのかもしれません。
私自身はほかの作品が好きすぎるので、敢えてランク付けをするならここになる、という話でしかないので、決して外れとは思わないのです。
あと、宮崎さんも短編アニメを手がけるのが久しぶりなので、ちょっと感覚を取り戻すのに時間を要しているのかもなー、と思ったりします。
というか、フィルモグラフィーを見ると、純粋に短編の監督を手がけるのって初めてっぽいですね。
テレビCMの『そらいろのたね』(これも中川李枝子さん作の絵本)は無声作品だし、『オンユアマーク』も無声のビデオクリップですね。

8位 やどさがし(2006年公開)
上映時間 約12分
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
元気な女の子のフキは、新しい家をさがしに旅に出ます。大きなリュックにいるものはみんなつめて、さあ出発。
次々と出会う奇妙なものたちをフキはどうやって切り抜けていくでしょう。

・見どころ
ストーリーの要約が大変短いことからもわかるのですが、お話はあんまりないに等く、童話・寓話成分が強いオリジナル作品です。
また、ほぼセリフがなく、登場人物の「感情」を表現する音声を発するのみです。
この点はパン種とタマゴ姫とも共通しています。
しかしこちらの作品ではBGMや効果音も廃し、環境音や効果音を声優さんが声でオノマトペを付けていて、しかもそのオノマトペが画面上文字として出てくるというマンガっぽい演出になっています。
その文字も、場面ごとに形や動きがあるので、子どもにもわかりやすく面白いかもしれないです。
動く漫画・絵本といったテイストの作品です。
口で音を表現する手法は、後に長編『風立ちぬ』にも流用されますが、BGMがない分こちらのほうが際立っていると言えるでしょう。
しかも起用されている二人の声優が、なんと矢野顕子さんとタモリさんです…二人の即興芸が大いに盛り込まれているので、ファンにはたまりません。
声優さんの名前が画面に映された瞬間、「えっ!?」と驚く声が毎回場内から聞こえてきます笑

個人的には強くおすすめしようとは思いませんが、ユニークでありポップな映像作品だと思います。
子どもは好きなんじゃないかなぁ…と思う心と、大人が観てもストーリーがわかりやすいものではないので、子どもはどう観るんだろうという疑問がなくはない。
というのも、やはり、わかりやすいストーリーがない分、作品を「どう観たらよいかわからない」という人も多い気がするんですよね。
それが子どもです。
現代は小さな子どもでも、YouTubeのショート動画を1日にいくつも浴びるような時代なので。
ただ実験的な要素がありつつも、ちゃんと面白みが伝わる作品になっているので、好印象ではあります。
矢野顕子さんはもちろんタモリさんもその後のジブリ短編でも重用されるので、宮崎さんが二人との競作に手応えを感じていることは間違いないです。
ただ、音の少ない作品なので、ちょっと集中しにくいかもしれないです。
普段のジブリ作品は細かいところまで音が入っているので、尚更そう感じる。

7位 水グモもんもん(2006年公開)
上映時間 14分54秒
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
水グモのもんもんはある日、水面を自由に滑るアメンボのお嬢さんと出会います。
なんて愛らしく、スマートなんだろう、と、もんもんはすっかり心を奪われてしまいます。
果たして、もんもんの思いは通じるのでしょうか…。

・見どころ
宮崎さんが強く関心を寄せる「昆虫」を主人公とした映画です。
後に制作される『毛虫のボロ』と同様ですが、虫の世界を虫の視点で描くことに徹底しているため、台詞はありません。
描かれる昆虫の生態は実際の水グモとは違う部分もあるようですが、ユニークなものがあり興味深く観ることができます。
「どこにでもある沼地」が舞台なのですが、これを観ると自分たちが普段気にかけずにいる自然の中では、生き物たちがこんな風に暮らしているのかな…と想像するようになるかもしれません。
ストーリーらしきものもありますが、シンプルなボーイ・ミーツ・ガールものなのでわかりやすいと思います。

そもそも、この水グモという昆虫自体が、水中で生活しているけれど、自分が水上から持ってきた空気の泡の中で眠ったりするというユニークな生き物です。
それを言葉を使わずに説明しているところなど、宮崎さんの手腕が冴え渡っているというほかありません。
また、宮崎さんお得意の「飛行」シーンを見ることもできるので、けっこう面白い表現が詰め込まれています。
一般的にはあまり触れられませんが、宮崎さんは「水中」を表現する名手でもあるので、水中で暮らすもんもんと、もんもんが水中から空を見上げる構図などはとても美しいですね。
「水中から見上げる地上の風景」はパンダコパンダ、ラピュタ、未来少年コナンと宮崎では繰り返し描かれてきたものですが、ここでも面白い絵を見ることができます。
ただ個人的には、ストーリーは興味を惹かれるもののすごく面白いというほどではなく、また、映像もとても面白いというほどではないため、無理をおしてでも見るべきとまでは言わないです。

6位 コロのおおさんぽ(2001年公開)
上映時間 約15分
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
東京郊外の住宅街をモデルにした仔犬のコロの冒険物語。
コロは、学校へ出かけたサワ子を追いかけて、戸締りがされていなかった扉から外へ出てしまいます。
あちこちを走り回っていろいろな人に出会うコロ。
一方帰宅したサワ子は、コロがいなくなっていることに気がつき、一生懸命探すのですが…。

・見どころ

可愛らしい子犬を主人公としたお話です。
子犬はいわゆるキャラクターっぽいものではなく、本物の犬のように自由奔放に振る舞います。
そのため、人間も大勢出てくるのですが、人間が話しかけてもコロちゃんは自由気ままに歩き回ります。
おそらく「犬派」の宮崎さんが、人間の思うように動いてくれないペットに対する愛情を注ぎ込んだようなあたたかい作品です。
舞台は東京の東小金井駅近辺で、スタジオジブリがあるところです。
街並みが若干古いものに見えるのですが、舞台が「昭和」であるといったようなことが示される部分はありません。
絵コンテが描かれたのが99年とのことなので、まだその頃にはこの作品のような街並みが残っていたのかもしれません。

映像の特徴として、背景が色鉛筆で描かれているという手の込んだ実験が行われています。
人物の絵は通常のアニメーションになっているので、相性が悪いのでは…と鑑賞前は思っていたのですが、特に違和感なく溶け込んでいます。
時期的に、もののけ姫や千と千尋でデジタル作画を導入していた頃に制作された作品なので、宮崎さんなりに、アナログの面白さを追求しようという意欲があったのかもしれません。

ジブリの全盛期とも言えるような時期に作られたものなので、それはもう圧倒的な画力です。

お話自体は正直、そんなに目を見張るものがありませんが、主人公を子犬にしてもちゃんと成長を描いているし、いわゆる「往きて帰し物語」の構成になっているところを観ると、宮崎さんは作品を見た人に物語ることを強く意識している作家なのだと改めて思い知らされます。

子どもは好きなんじゃないかな、という気がします。
いろんな人が子犬にあったかく世話を焼いてくれたりするので、下町人情ものとしても楽しめます。

5位 たからさがし(2011年公開)
上映時間 8分40秒
企画・構成 宮崎駿

・ストーリー
小さな男の子ゆうじと、うさぎのギック。
ふたりは同時に見つけた棒の持ち主を決めようと、競いあいをはじめます。
かけっこをしたり、幅跳びをしたり、お相撲をしたり。
でも結果はいつもおんなじ。
そこで、ギックのおばあちゃんに知恵を借りることにします。
おばあちゃんの決めた勝負は、「たからさがし」。
さて、ふたりの勝負はどうなるのでしょうか。

・みどころ
おなじみ中川李枝子さんと大山百合子さん原作の絵本を映像化した作品で、絵本のような世界がそのまま映像になっています。
いうなれば、子どもが野原で遊ぶだけの映画です。
しかし、追いかけっこや相撲など、子どもの体つきが生かされたユニークな映像は見ものです。
子どもの頃は、ただ原っぱで遊んでいるだけの時でもこの作品のように躍動感のあるものの見え方だったかもなーと思ったりします。
爆笑するシーンはないのですけど、アニメーションと音楽のマッチ具合が楽しいし、アニメーションも子どもの体の動きを丁寧にスケッチしている印象を受けます。
子どもが走ったりジャンプしたり、棒を振ったり。
また、宮崎さんお得意の、「男の子が並走してかけっこする」シチュエーションがありますが、それもかなり突き詰めた形で表現されていて面白いですよ。
子どもは自分に親近感を覚えるかもしれないし、大人が観たら「子どもってこういうところあるよね」見守るような目線になれるだろうし、おすすめできます。

台詞はほとんどなく、登場人物の表情や動きで感情が伝えられます。
ほかの作品とは異なり、感情をあらわす小さな声なども入りません。
しかし、作品の中盤のある場面では突然人物が台詞を発し、その後また無声に戻ります。
パンフレットによると、もともと音声の収録までしたものの、声が無くても作品が成立するのでは? と思いほとんどのシーンで音声をカットしたのだそうです。
音楽はシーンにとても合っており、また、アニメの動きに合わせた効果音のような音まで入っています。
トトロで、めいちゃんが一人で遊んでいてトトロを見つけるシーンのように、登場人物の動きに合わせて音が鳴らされたりしていてとても楽しいです。
音楽の面白さでいえば、ジブリ美術館の作品でも一二を争う出来です。

企画・構成が宮崎駿さん。
色彩は保田道世さん、演出アニメーターは稲村武志さんなので、主要スタッフも『くじらとり』と共通しています。
ただ、脚本と監督がクレジットされていません。
そのあたりの事情については、ちょっと考察します。

短い時間に、子どもの身体を使って非常に多くのアクションを描いていて映像を見ているだけでも面白いです。
オチも温かい気持ちになるような作品で、ジブリの作画力の真骨頂とも言える映像が味わえるのでかなりおすすめ度は高いです。
「子どもを面白く動かす」ことへの執念が結晶化しています。

4位 星をかった日(2006年公開)
上映時間 16分3秒
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
ノナ少年はいつの間にか誰もいない砂漠をひとりで歩いていました。
ノナは、そこでふしぎな女性ニーニャと出会い、彼女の農園の小屋で暮らし始めます。
そんなある日、ノナは野菜とひきかえに星の種を手に入れて育てることにします。

・見どころ
原作がある作品ですが、あくまで着想を得たのみであり、ストーリーはほぼオリジナルです。
この映画は『ハウルの動く城』の前日譚として公式的に認定されています。
美術館で上映される短編アニメの中でもストーリー性が特に強い作品です。
全てをセリフで語っているわけではありませんが、ジブリの長編アニメではあまり描かれないような街並み、「星」の描写、ストーリー終盤に登場するユニークな舞台設定など、絵でも常に見どころがあるので飽きない作りになっていると思います。
とても面白いイメージがたくさん出てくるし、音楽も相まって幻想的・神秘的なムードがあるので、大人も子どもも、印象に残る場面があるんじゃないかな…。
また、前日譚とは言え直接的につながりについて言及されていないので、別にハウルを観ていなくても楽しめる作品になっています。

原作は井上直久さんという作家が展開している「イバラード」の漫画、絵本、画集を基にしているのですが、これは耳をすませばで雫が作った世界を映像化しているパートでも引用されているものなので、あのパートが好きな方はこの短編を見たら歓喜するのではないかと思います。
どこか退廃的なムードがあり、宮崎さんがSFを作ったらこんな世界観なのかもなと思ったりなどします。

お話として面白く、また、宮崎さんが抱えていて、後の作品でも描かれるテーマの萌芽も見えます。
ほかの短編とは異なり、実験性があまりなく、作品としての完成度が追求されているように思います。
コミカルな要素はあまりありませんが、「大人も楽しめる」的なジブリの一側面から観るとだいぶ高く評価できるためおすすめです。

3位 めいとこねこバス(2002年公開)
上映時間 13分43秒
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
風のつよい日、メイがキャラメルを食べていると、つむじ風があらわれ、追いかけてきました。
メイはつむじ風をつかまえます。
つむじ風の正体はコネコバス。
メイとコネコバスはともだちになり、その夜、森へと出かけます。

・みどころ
鉄板コンテンツだと思います。
心なしか、こねこバスが上映される月は美術館のチケット完売が早い気がします。
セリフはありますが、子どもでもわかるような簡単な単語ぐらいしか出てこないし、後半はセリフもほぼありません。
なので外国の方が観ても面白いと思われます。
全年齢におすすめできます。
トトロを観ていたほうが楽しいと思うけど、観ていなくても7割方楽しめるとは思います。
とは言えとなりのトトロは映画史においても大変重要な作品だし、一時間半程度で鑑賞できるので事前に観ておくことを推奨ではあります。
笑いどころもあるし、ちょっとだけ怖いというか不気味なシーンがあるし、安心できるシーンもあるし、子どもなら余計にワクワクするであろう仕掛けもあるし、いわゆる「往きて帰し物語」の構成だし、子どもは絶対に喜ぶと思います。
タイトルはめいとこねこばすなので、主軸はその二人ではあるのですが、ちゃんとトトロも出てきます。
まぁ鉄板です。
だが1位ではないです。

作画については、トトロ製作時に表現したくてもできなかった風の表現を徹底して描いているようで、むしろもとのトトロよりもいわゆる「作画力」は優っていると言えます。
作中で風が吹いているシーンがとても多いのですが、その風の吹き方がかなり特徴的です。
木々や草や稲がなびく、ものが舞い上がる、家が揺れるなど、とても丁寧で美しい描写が続きます。
ちょっとネタバレになるので言えませんが、本家トトロ同様にコミカルな要素が盛りだくさんで、劇中何度も笑いが起こります。

もちろん宮崎駿さんが脚本と監督を務めています。
音楽は久石譲さん。
メイちゃんの声優さんも坂本千夏さんが続投しているので、まんま、あのトトロの続編です。
信じ難いことに、「トトロのラストでメイとサツキは死んでいる」という都市伝説を信じ込んでいる愚劣な人がいるようなのですが、普通にこんなふうに続編があるので、明確に否定されるしかないものですよね…というか本編のエンドクレジットで普通に二人は元気にしているんだから、なぜあんな話が流布されるのかがわからないのですが…。

そして個人的に感慨深いところとして、メイちゃんが、本編のラストから成長して、ちょっとお姉ちゃんになっています。
身体的な成長は見られないのですが、性格がちゃんと成長しているんですよね。
私は口酸っぱく言っているのですが、トトロはめいちゃんの成長物語なので、宮崎さんがその成長をリセットさせずにちゃんとお姉ちゃんになっためいちゃんを描いてくれたところに感動を覚えます…。

宮崎さんの深い関係にある押井守監督をして、宮崎駿さんの最高傑作であると言わしめるのが本作です。
特に、夜の田園風景を飛行するシーンなどは、宮崎さんの全キャリアでも飛行シーンとして最高の出来かもしれません。
宮崎さんがトトロを制作した際に、「稲穂が揺れる表現を諦めざるを得なかった」と語っていたのですが、その雪辱を果たすかのような素晴らしい出来。

お話、映像、音楽、楽しさなどなど、どれをとっても凄まじい強度があります。
まぁ間違いないコンテンツなので、観たいと思っている人は絶対に観たほうがよいです。

2位 毛虫のボロ(2018年公開)
上映時間 14分20秒
脚本・監督 宮崎駿

・ストーリー
草むらのなか、夜が明ける前に卵からかえった毛虫のボロ。
初めて見る朝陽はとてもまぶしくて、世界はおいしそうな空気にあふれていました。
ボロは、ボロギクの根元に降り立ち、毛虫の先輩や外敵が行き来する世界へと踏み出します。

・見どころ
宮崎駿短編最新作であり、宮崎駿最後の傑作になる可能性があるアニメです。
絶対に観た方がいいです。
子どもも大人も笑いながら見ています。
セリフのない映画なので、外国のお客さんも笑いながら鑑賞しています。
虫の赤ちゃんが卵から孵るシーンから始まるのですが、その「小さな虫」から見る世界がとにかく楽しい。
なぜ70を超えた人間の老人が、生まれたばかりの虫の目線で世界を生き生きと描くことができるのか、全く理解が及びません。

で、そういった世界を前衛的ではなく、誰が見ても分かるように画面に表現する技能がとにかくすごいです。
天才です。
『君たちはどう生きるか』が公開されるまでは、この作品が最新作だった時期が6年ほどあったのですが、この作品を観てしまうと、宮崎さんは一つでも多くの作品を世に出さなければいけないと改めて思わされました。
観たことのない映像の嵐。
時代を反映させたテーマ設定。
生命への慈しみ。
「子ども」に何を語るべきかという逡巡を経て表現される一つ一つのシーン、展開。
子どもにわかりやすくなるように、ちゃんと笑いをこめているところも宮崎さんらしいし、その腕が全く衰えていないのがすごいのです。

ただこの企画は宮崎駿さんがずっと温めていたものなので、かなり気合が入っていることが伺えます。
また、当時は長編アニメーション監督から引退すると本気で公言して、記者会見まで開いていたくらいなので、ほかの短編よりも本作には宮崎さんが込める思いも強かったのでしょう。
そしてそれが見事に結実している。

たしかもののけ姫を作っている頃から、「虫の目線から描いたお話を作りたい」という話は漏らしていて、長編で想定していたとのこと。
毛虫が街路樹から隣の街路樹に移動するだけのお話で長編を想定していたとのことで、それはまぁ、頓挫するだろうなぁと…。
しかし、小さな生き物(寿命が短い生き物)だと、人間よりも体感の時間経過が遅く、例えば雨粒が落ちるのもとてもゆっくり見えるはずだ…との仮説を基にしているため、非常にゆっくりゆっくり描かれるはずだったのかもしれませんね。

お話自体はしっかり作られており、親のない子が一人で世界を知っていくというお話です。
また、私の見立てでは千と千尋のように「親世代は貪欲に食い荒らしていくことだけを考えていて、子どもをほったらかし」にしている存在として描かれています。
まぁそういった意味でも、親子で観てみるとお互い考えることや感じることにも違いがあって面白いかもしれません。

1位 ちゅうずもう(2010年公開)
上映時間12分55秒
企画・脚本 宮崎駿
監督 山下明彦

・ストーリー
むかしむかし山奥に住んでいたジイとバアは、くる日もくる日も山の畑を登ったり下りたりしながら、ぐだぐだにくたびれて暮らしていました。
ある晩ジイが外に出ると、どこかへと向かうねずみたちを見かけます。
こっそり後をついていったところ、ねずみたちは集まって相撲をしていました。
自分の家のねずみたちが負けてばかりいるのを知ったジイとバアは、ねずみたちのためにサンマの団子や豆腐の田楽を用意します。
さあ、今度の勝負はどうなるでしょう。

・見どころ
死ぬほど面白い日本昔ばなしみたいなアニメです。
面白いと言ってもストーリー自体は本当に、地方に伝わる昔ばなしのようなものなのですが、アニメーションの面白さがこれでもかと詰めこまれた怪作でした。
正直なところ、あんまり期待せずに観た映画だったのですが、とんだ伏兵でした。
美術館の短編では、この映画が一番面白いと思います。
私のように、子ども向けのアニメだろうなーと思っていたであろう大人が、子どもと一緒に笑い声をあげだすという回を何度も見てきました。
「相撲」という外国にも知られている日本の文化を題材にしているところも、海外の人にとって親しみやす要因になっているかもしれません。
ストーリーは別になんてことないのですが、それがまたいいんですよ。

日本昔ばなしっぽいと思う所以として、阿川佐和子さんによる語りが全編入っているところがあるのですが、まぁ、語りがわからなくても絵を見ていれば内容は理解できます!
お話の展開もわかりやすく、どんどんとテンションが高まっていく構成もよいです。
ジブリ全盛期の技が投入されています。
宮崎さんが企画と脚本として参加していますが、監督はジブリで様々な名シーンを手がけてきたアニメーター山下明彦さんです。
高畑・宮崎さんではない作家が監督したジブリ映画としても最高傑作に挙げてもいいような出来です。
ジブリ全盛期の底力をここに見た…という感じです。
この短編が制作された時期というのは、おそらくジブリが、宮崎さんではない作家の監督作を作る計画を立てていた頃だと思うのですが、このまま山下さん監督作品が企画されていかなかったのは残念なところですね。
結局ジブリはその後散開することになるので、二度とこのような作品を見ることはできません。

お相撲がお話のハイライトになっていて、相撲シーンのあまりの面白さが、この作品をトップに置く理由です。
しかしそのシーンを盛り立てるために、しっかりと登場人物たちへの愛着が湧くように作られています。

音楽は渡野辺マントさんが手がけており、全編打楽器を中心に演奏されています。
マントさんは『平成たぬき合戦ぽんぽこ』の劇伴を手がけた上々颱風のドラマーであり、アレンジの中心的存在とのこと。

美術館の短編の中で一番好きな作品だし、放っておいたら、この地味そうな作品を見たがる人がいないのでは…という想いもあり、私はこの作品をおすすめの最上位としました。

以上が私のジブリ美術館とジブリパークで上映される短編アニメーション映画の紹介でした!
各作品の詳細情報は別のページに書きます!
また、ジブリ美術館のおすすめの楽しみ方なども書きます!

 - ジブリ作品, ジブリ美術館, 映画

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