Friday I’m In Love「私もついてっていいですか?」
メンズエステのセラピストさんとのことについての防備録です。
前回→不実の愛、かくも燃え
彼女も九月のコロチキライブのチケットを買ったとのことで、ライブの数日前からやりとりをしていた。
また、彼女とは別に、コロチキのオンラインサロンの会員さんの何名かとも、当日会場で会えたら会いましょう的な話をしていた。
女性会員が多いせいもあってか、会員で集まれたら写真を撮る習慣ができつつあった。
彼女もオンラインサロンの会員なので、会員さんと集まる場に彼女が顔を出しても全然おかしくないことではある。
ただ、この時は緊急事態宣言のさなか。
ライブ会場である新宿のルミネはライブが終わる時間には閉店しているし、会場も客をすぐに追い出して、たむろさせないようにしている。
そのうえ、ルミネの出口は駅の改札のそばで、人の往来が凄まじく、やはりここもたむろするには向かない。
コロナ前だと、イベントの会場付近で人と会って立ち話していたら、そこに別の人も合流してくるといったことがよくあったが、そういう集合体が成り立ちにくい状況になっている。
「会いましょう!」という確約を取り付けていれば会うことを目的に動くことができるが、「会えたら会いましょう」ぐらいの感じではよほど運が良くなければ会えなさそうな感じ。
おそらく他のお笑いファンの方々も同じ状態だろう。
そんな中、僕と彼女も「会えたら会おう」ぐらいの感じだったので、どうなるかはその時になってみないと全くわからなかった。
僕はオンラインサロンの会員ではない友人と一緒に行くことになっていたので、彼女と会えたとしても、立ち話をする程度だろうと思っていた。
ここ数年、スペースを空けておく必要性について考えるようになった。
本棚を用意する時に、今所有している分がちょうど入るサイズのものを選ぶと、これから先に欲しいものが出てきた時に新しいものを収容することができなくなる。
空間に余白を作っておかないと、新しいものを入れることができない。
今持っている何かを手放さないと、新しいものを手に入れることはできないって話なので、まぁ、当たり前のことだ。
その取捨選択ってけっこう労力を使うし、決定をくだすまでに時間もかかるので、「新しいものを手に入れるようとする」意思が薄れていってしまうこともあると思う。
そうこうしている間に、手に入ったかもしれない新しい何かは、他の人の手に渡って行ってしまう。
なので、新しいなにかと出会ったときに備えて、あらかじめ余白を作っておくのがよいのだと思う。
一度の大きな決断ではなく、定期的に断捨離をするなどして、日々の中で小さな取捨選択をしていくのが良いと思う。
溜め込むのではなく習慣にするということが大事。
スケジュールや約束にも近いことを思う。
いつも予定をがちがちに詰める人っていますよね。
何か突発的な誘いを受けたり面白い催しを知っても、がちがちに詰め込んでいると動けない。
で、同様のことを人間関係…特に恋愛関係について思う。
昔の自分を思い返すと、「とりあえず彼女いないし」と思って、性愛のパートナーを探していた。
けど「とりあえず」で彼女を作った場合、一時的に満足感は得られるかもしれないが、機会を損失していたのかもなー、と最近は思う。
「とりあえず」で恋人を持っている場合、新しい出会いが生まれにくくなるはず。
恋人がいる相手にアプローチをかけることができる人って、そう多くはないと思うし、恋人がいる相手からアプローチを受けた場合「自分と付き合った時も、こうして同時進行で新しいパートナー探しをされるのかも」と思われてしまうはずなので…。
(パートナーがいることを隠して新しいパートナーを探す・新しい人からのアプローチを待つ人種もいることは承知しているが、それは例外とする)
もちろん、CDや本などの「もの」と、関係する人間という「人」とでは比べるべくもない。
でも、心のキャパシティ管理という意味では通じるものがあるはず。
以前知人たちと、「恋人がいる間に他の人と恋愛関係が発展することってあるか」「恋人が被る期間ってあるものか」という話をしていた時のこと。
一人の女性が「私はダメになってきたら、もう他を探し始めるね」とのことだった。
「でもそれだと進行形で付き合っている相手に悪くないですか?」と問うと、「だって、別れてから他の相手を探し始めるんじゃ、恋人いない期間ができちゃうじゃん」
正直な話、これには吐き気を催した。
まぁ、この人みたいに利己的で小狡い精神性で生きていたら、きっといろんなものを逃してしまうのだろうし、これもある意味では因果応報なのだろう。
そして迎えたライブの当日。
新宿ルミネは駅ビルのルミネに吉本の劇場が入っているというかたち。
会場のあるフロアにはエントランス兼吉本のグッズ販売コーナーがあり、開場前はそこで待ち合わせをしている人がけっこういる。(と言ってもやはり狭いのですが)
一緒にチケットを買った友人は仕事を終えてから新宿に来るので、開演のギリギリに到着するとのことだった。
駅の改札近くで待ち合わせると、かえって合流が遅れそうという判断から、ルミネの劇場階のエントランスで落ち合うことになっていた。
他の地域でどうなっているかはわからないが、東京での吉本の公演に行くと、コロナウイルスの濃厚接触者追跡の名目で、氏名・電話番号・メールアドレス・会場での座席番号といった情報を記入する用紙の提出が求められる。
なんで紙に手書きでこんなことしないとならないんだろう…と、毎回思う…。
友人が到着してから書き始めたら間に合わないかもしれないので、僕と彼の分を合わせて記入しておくことにした。
エレベーターの前に置かれた用紙記入のための台が低かったので、僕は屈んで用紙に情報を記入した。
用紙への記入を終えて立ち上がると、少し離れたところでこっちを見ている女性がいた。
「田中さん!」
彼女だった。
まさかこのタイミングで遭遇するとは思っていなかったので、一瞬彼女のことをなんと呼んでいいかわからなかった。
あと、最初に観た時に彼女だと気づかなかった。
その理由を考えるに、彼女と立って並ぶことがあまりなかったし、この時彼女はヒールを履いていたので部屋で会う時より大きく、彼女として認識することができなかった。
また、僕が彼女を見た時は二度とも身体のラインが浮き出るようなワンピース姿だったが、この時は私服だったので、これもやはり彼女として視認できなかった。
あとは、コロチキのオンラインサロンの会員さん…?とか思ったことも要因かもしれなかった。
なんとなくZOOMの画面では顔を見たことがある、という人がたくさんいるのです。
僕が振り返った瞬間には彼女はこっちを見ていたので、「よく見つけられましたね」と言うと、「この後頭部は田中さんかなーって思って、見てました(笑)」とのことだった。
(後頭部だけで俺のこと見分けるなんて……俺のこと好きなんちゃうか……?)
気持ち悪いだろうとは思いますが、そんな想いがよぎらなかったと言ったら嘘になる。
僕は身長が180センチちょっとあるので、立っているとわりと目立つのだが、座っている姿で僕と認識できるのはけっこうすごいことだと思ったのである。
まぁ、彼女はうつぶせに寝そべっている僕を見ている時間が長いので、僕の後頭部を見分ける術に長けているのかもしれない。
あと、会場で会っても会釈交わすぐらいかなーと思っていたので、こうして向こうから声をかけてもらえたことが嬉しかった。
だって、実際に声をかけてもらえるまでは、「会えたら会いましょう!」がマジなのかお世辞なのかなんて、判断できないじゃないですか!
ほんで、僕の後姿を見かけてから声をかけてくれたってことは、「声をかけようという意思があった」ということにはなるじゃないですか。
だって、会いましょうっていうのがお世辞だったとしたら、僕っぽい後ろ姿を見かけた時点で立ち去ればよいのだから…。
彼女の髪の毛がつやつやしていたので、「髪の毛すごくつやつやですね」と言うと、「美容院に行ってきました」と言っていた。
顔がめちゃくちゃ綺麗だったので「めっちゃ綺麗…」と言うと、「ちょっと。やめてくださいって」と、彼女は僕の腕に触れてそう言った。
距離感が近くてどきどきした。
そんで、いいにおいもした。
こうして、普通に見ると、やはりこの人は綺麗なお姉さん感が尋常ではない。
もともと身長が160センチ台の真ん中程度はあるので大きいのだが、ヒールを履くとなお大きく見える。
で、身体が細くて(と言っても細すぎず)、顔が小さくて、髪の毛が鬼のようにさらさらでつやつやしている。
マスクをしていても「美人」なのがはっきりとわかる容姿だ。
そうこうしているうちに友人が到着したので、「ライブが終わったらまた会いましょう」と言って、彼女と別れた。
そう、ここに同行してくれた友人には僕がメンズエステにはまりつつあることも、彼女が会場に来ることも話してあった。
ライブが終わり、コロチキオンラインサロンの会員さんたちと、ルミネの下になんとなく集まるような感じになった。
数名で集まって挨拶を交わしていたところ、彼女も合流してくれた。
彼女のことを知っている女性会員さんが「ほんもの!?」みたいなリアクションになっていてちょっと面白かった。
写真を撮るという目的を果たし、解散していく流れになった。
僕は友人と、どこか店を探して飲食しながらライブの感想を語り合う約束をしていた。
この友人とは、僕が創作活動をしていたころに知り合っており、彼は今でも創作活動を続けている。
僕も友人もシナリオを書いていた人間なので、コロチキのライブの感想をけっこういろいろな面から語れるだろうと思い、今回この人をライブに誘っていたのだった。
彼女は「この後ってお二人はどうするんですか?」と尋ねてくれた。
「僕らはどこかで飲もうかなって話してました」と僕。
「私もついていっていいですか? お邪魔じゃなければ」と、いつもみたいなかわいすぎる笑顔で言ってのけた。
僕たちが拒否するわけはなく、「え、よければぜひ!」と即答した。
言うまでもないことだろうが、あわよくば彼女含めて、飲みに行けはしないものか……
そういうことを一切期待していなかったと言えば、嘘になる。
だが客とサービス提供者という間柄で、「ライブの後一緒に飲み行きましょう~」とか、言い出せるか?
ずうずうしく、関係性をわきまえられない人間だと思われたくないので、そんなこと僕にはできないですよ。
そんなわけなので、彼女がこんな風に、さらにプライベートの時間を共有しようとしてくれたことは、嬉しい誤算であった。
思えば、この時なのかもしれない。
僕が彼女との関係性をはき違え、勘違いを起こすようになった瞬間は。
そういうわけで三人で入れる店を探すことにしたものの、時期は緊急事態宣言のさなか。
自分から飲みに行くことを提案しておいてなんなのだが、僕は神奈川県民なので新宿の飲み屋事情に疎かった。
友人と彼女とで少し話し合い、「西口のほうでちょっと探してみましょう」ということになった。
その日は雨が降っていた。
彼女はライブの前に買い物をしていたようで、大きめの紙袋を手から下げていた。
まぁまぁ歩きそうだったので、僕は彼女の荷物に手を伸ばして「持ちますよ」と言ったが「いいですいいです」とのことだった。
何回かそう言ったが、なんか押しても「じゃあ…いいですか」ってならなそうな雰囲気を感じたので、結局僕は彼女の荷物に干渉することをよした。
僕も彼女も友人も傘は持っていたが、風を伴う降雨なので、傘はあまり雨水を防いでくれなかった。
彼女の荷物と上着は濡れていた。
僕は身長が高いほうなので、傘も少し大きめの物を持つようにしている。
小さい傘だと足元をカバーしてくれないので、少しでも濡れる範囲を小さくするために大きめ傘を選ぶのです。(大きめ傘になると、風の抵抗を強く受けるため、骨も強いものを選ばねばならない…そのような傘へのこだわりがある)
それに対して、彼女の傘は普通のサイズだ。
今にして考えれば、彼女とせめて傘だけでもとっかえっこしていれば、彼女は濡れずに済んだのではないだろうか。
いや、ていうか、その近距離であってもタクシーとか使うべきだったんだろうか。
いや、如何に新宿駅がデカいとはいえ、駅の反対口に行くためだけにタクシーは使わないよね…
あーわかんない…。
ただしかし、僕の機転が利かなかったような気がしないでもない……。
女性関係以外の場でも、こういった細かい部分での「あの時こうしていればよかったー」という一人反省が絶えない。
嫌な記憶について、「忘れるのが一番」というけれど、忘れようとしても忘れられないからつらいのである。
「嫌なことは忘れる」って記憶力が低い人間だけに許される特権なのではないかと思う。
あるいは、人間はそもそも必要に駆られて「忘却」という能力を体得したが、その「忘却」の能力が低い自分のような人間が苦しんでいるだけなのか。
わからない。
それに「忘れるのが一番」って言ってる人間って、覚える必要なことや省みるべきことも忘れてることが大半ではないだろうか。
忘れることと覚えておきたいことって、自身で好きに取捨選択できるものではないと思う。
話がまた脱線した。
西口近辺に到着したが、開いているお店は全然見つからなかった。
そらそうや。
飲食店は営業を自粛しているところが多いうえ、この日は金曜日だったのだ。
一軒見つけたが、40分は待たないと入店できないとのことだった。
友人とは「とりあえず飲み屋の多いところをうろついてればどこかに入れるでしょう」くらいの軽いスタンスでいたことを後悔した…女性が同行してくれる可能性がゼロでないのなら、このタイミングでも営業しているお店の検討を付けておくとか、できることはあったはず。
数分歩き回ったのち、3人で入れる店が見つかった。
店内は満席、がやがやうるさかったし煙草くさかったが、雨の中での店探しをこれ以上続けたくなかったので、そこに腰を落ち着けることにした。
手際を悪いと思われてはいないだろうかと、内心緊張していたが、彼女はにこにこしていた。
コロチキのライブについては、全員が、「そこまで面白くはなかった」で意見が一致した。
今回行われたライブは「新ネタ漫才ライブ」で、1時間で漫才が4本、コントが2本披露された(たしか)。
その間にトークコーナーが10分くらいあるという構成。
コロチキといえばキングオブコントを取って一躍有名になったコンビなのでコントのイメージが強いが、2020年くらいから漫才にも力を入れているという話だった。
というのも、M-1グランプリでチャンピオンになりたいそうである。
コロチキいわく、「今のところキングオブコントとM-1の二冠を穫ったコンビはいないので、自分たちが初二冠になりたい」という感じの話である。
もともと、キングオブコントを穫った頃、西野さんの方が25歳と、当時のキングオブコント史上最年少のチャンピオンという側面を取り沙汰されたようである。(本人達いわく)
しかしその後、ナダルさんのクズキャラが目立ちはしたものの、西野さんはフィーチャーされず、ナダルさん人気が落ち着いてくるとともにコンビの存在も忘れられていった。
そんな状態だったので先行きに不安を感じたナダルさんが、西野さんを漫才に注力するようたきつけたという経緯があるようだ。(コロチキのネタ作りは99%が西野さんによるもの)
そのため2021年の単独ライブはトークライブが1回、漫才ライブはほぼ2か月に1回新ネタライブを慣行するという力の入れようで、二人は「絶対にM-1とってみせます!」と息巻いていた。
…が、2021年の漫才ライブをすべて会場で観てきた身からしてみても、漫才は別に面白くない。
ナダルさんいわく、「新ネタライブって荒いもんですよ。そこで作ったものを磨いていってもっと良くしていくもんやから」とのこと。
ただ、それにしても、荒いかなとは思う……。
この9月のライブの終幕の挨拶の時に、西野さんが「M-1目指してやっているんですけどもね、他のことにもまたチャレンジをしていきたいです」的なことを話していた。
ブレッブレだな、というのが、その発言を聞いた僕の感想。
いや、目標を変えたりすることってどうしてもあることだと思うし、それ自体は全然いいんですけど…。
邪推でしかないのだけど、同期の霜降り明星がキングオブコントも受賞してしまうのではないかという危惧があったが、それがとりあえずは晴れたものだから、気が緩んだということもあるんじゃないだろうか。
あと、多分思ったよりもテレビの露出などが増えて忙しくなっているのだろうなとも思う。
コロチキがYouTubeを本格的に始めたのは2020年に入ってからのこと。
で、いくつかの動画がバズったことでファンが増えたし、業界でもちょっと話題になったらしくテレビの出演も増えたのである。
オンラインサロンに入った人の話を聞いてみても、YouTubeの動画でコロチキにはまったという人がほとんどである。これは大多数がそう。
自分の実感としては、テレビで稀代のクズキャラとして扱われるナダルさんが、YouTubeで見るとけっこう真面目でいい人な部分があるというギャップに心打たれた面がある。
で、ナダルさんはエピソードトークが面白い。
意外と話術があるし、ナダルさんが変な仕事を受けることが多いためか話のネタ面白い。(この面白さはオンラインサロンの日記でも遺憾なく発揮されている)
そんで、二人とも楽しそうに企画にチャレンジしたりしている様もいい。
(これもYouTube時代に強い傾向だろう……楽しそうにしている人達を見てるだけでけっこう楽しい気分になる、というもの)
いい意味で、メディアで使われがちな部分とは違う面をアピールできたということなのだろう。
で、ここは僕の推測でしかないけれど、ちょっと忙しくなったことでネタ作りや練習に充てる時間が思ったよりも取れていないのではないかと思う。
また、仕事が入ってきたことで飢餓感が薄れ、「二冠獲ったるねんで!」というモチベーションも減ってしまったんじゃないかなぁと……。
そんな背景もあってか、ライブの感想は褒め2割程度、批判や改善点についての意見が8割程度となっていた。
なんか批判とか後ろ向きな意見が出るだけで煙たがられる風潮ってありますけど、良くするために問題や改善点を見つける必要があるので……。
SNSなんかだと、マイナスな意見は封じ込めねばならなくなってしまいますよね。
この時に出た(自分が出しただけかも)問題点としては、以下のようなもの。
・ネタが荒すぎる(作り込まれていない)
・展開が先読みできる
・喋りとかが自然でなくたどたどしい
・普通にボケもツッコミもそんなに面白くない
・小ボケを繰り返す展開で、オチに向けての仕掛けが何もない
・オチが唐突
・ネタ自体が毒にも薬にもならない低刺激なネタ
・悪いことを言う対象の取り上げが雑
「ネタ作りに時間かけてないのが丸出し」これは、ライブの数日前までサロン内の日記で「ネタが仕上がってない」という内容で書かれることも多かったので、まぁ事実としてあんまり時間をかけていないのだろう。
「テレビの仕事もけっこう入っている。これによって時間が作りにくい。また、安心感が出てネタ作りへのモチベーションが薄まっているのでは」
(僕自身の意見だけど、「最高のパフォーマンスを見せたい」とか言ってるのはめちゃめちゃだせーと思う……)
「オチが弱いのでしまりがわるい。オチやクライマックスが良いと、いい印象で終われる」
コロチキの漫才はパターンを作って小ボケを繰り返すものが多い。
これは本人達も「このパターンが多い」とは認めている。
同じパターンを繰り返すネタが多いし、しかも正直想定の範囲内の展開が多い
導入部分や設定はヒネってるけど、その後に出てくるボケが正直ヒネりが少なくて退屈。あとボケも突っ込みも想定の範囲内すぎ。
そんでオチ近辺で大きく盛り上がるポイントもなく、「ども、ありがとございましたー」が唐突に訪れるので、あ、これで終わりなの? 感が強い。
「なんかネタが尖ってなくてお利口さんな感じ。毒にも薬にもならないテイスト(テレビでも使いたいというスケベ心も透けて見える)」
これも本人達が一年以上前の動画で語っていた。
先輩芸人から「西野が良い子過ぎ。そんなに良い子ちゃうやろ」と指摘を受けたらしいのだが、そのスタンスは変わっていないようだ。
僕もそういうスタンスが透けて見えて気持ち悪い。(この「気持ち悪い」については後述するかも知れない)
テンポがあんまり良くない。
細かい一言に対して突っ込みを入れたりするけど、ツッコミのワードが長いし、「そんなに細かくボケ説明しなくてもよいのでは」と疑問に思うこともしばしばある。
もちろん、受け手に「どこまで考えさせるか」という問題はどの芸人もそれなりに考えるものだろうけど、コロチキはちょっと「説明多いなー」と顕著に感じる。
説明が長い、というのはここ10年ぐらいマンガやドラマやアニメにも感じる特徴。銀魂とかが先鞭を打ってた気がする。なので今の若い子にはウケてて僕が乗れていないだけかもしれない。それにしても「そこは言葉にしなくてもいいんじゃないの」とは思う。
うまく説明できて時間を短縮できれば、それだけ他のボケを詰め込んで情報量を上げることができるけど、今のコロチキは情報量低くてテンポが悪いと感じる。
あんまりパワーのあるワードがない。
言葉の使い方に重きを置くタイプではないんだろうなと思う。
あとは一つの定型を作って、そこに小ボケを繰り返す展開になる漫才が多いが、序盤で提示された「お題」から、容易に想像できるボケが来るし、ツッコミもほぼ予想できてしまう範囲に収まっているので、何も驚きがない。
驚きがない・裏切られる感覚がないので、当然笑えない。
若い人は笑うのかも知れないが、ここで話していた三人は34歳の僕を最高齢にして、みな20代の半ばを過ぎているので、ある程度お笑いを見慣れているというところも加味しなければないだろう。
7月に行われた漫才のライブの直前に、オンラインサロンで「ネタ作りをする会」というイベントが行われた。
500円を払ったファンのみが参加できるオンラインイベントで、参加したファンが、全く何もないところからアイデアを出していく流れだった。
細かいところについてサロン外で書いてしまうと問題があるかもしれないので詳細については触れないが、30人ぐらいの会員が参加していたので、質もピンキリだがたくさんのアデアが出た。
それをコロチキがまとめて、実際にライブで披露するというものだったが、全然面白くなくってちょっと感動してしまったほど。
漫才って、本当に細かい部分を磨き上げていくことが大事だなと思わされた。
そんなに面白くないボケでも言い方やツッコミで面白くなることがあるし、逆もまたしかり。
オチが読める。
半端な「伏線」「どんでん返し」はいらん気がするけど、そういうヒネったものが好きな人もいるのだろうなとも思う。
すげー中途半端なストーリー性を披露してくれて、「いやそんなんお笑いには求めてないわ」とは思う……でもそれが「好き!」と言っている人もいるので刺さる層はあるんでしょうけど。
でもお笑いにそんな伏線とかどんでん返し求めてどうするんだろう、とは思う。
「悪いこと言ってる」感じの雰囲気を作るけどそこまで悪いこと言ってない。
攻めの姿勢を全然感じない。
まぁその辺を言い出すとちょっと切りがないんですけど、僕はコロチキのネタが好きではないのです……。
そんな具合で、見てきたネタについての意見を交換し合った。
三人で集まるのは初めてなのに、一時間も同じネタライブを見たあとだったので、各々が思ったことを話すだけで盛り上がった。
彼女も「イベントの後に、同じ物が好きな人と語る時間が好きなんですよね」と行っていた。
彼女は学生時代からお笑いのイベントに通っていたらしく、いろいろなことを話してくれた。
「新宿ルミネでも昔はオールナイトのイベントとかもやってたんですよ。怪談イベントとかもありました」
「ワンコインで夜に始まって電車の始発までやるトークライブとか」
その流れで、「お笑いのライブっていくらぐらいが訂正価格なのか」という話になったが、漫才の単独ライブで2000円超えって、感覚としては高いよなーと思った。
彼女は「私アイドルも好きでライブとか行きますけど、二時間ライブやってくれて八千円とかですからね。ちょっと高い感じはします(笑)」と話していた。
まぁそうですよね。
お笑いの話になると、僕は最近のお笑いに疎くて、友人と彼女が話題に挙げる芸人や番組について知らないことが多々あった。
これにはちょっと寝取られ感で胸がぞわぞわした。
(そしてこの後に、彼女との共有の話題を増やすために、見逃していた過去のM-1視聴したことは言うまでもない)
彼女は今わりとテレビでも見る、コロチキよりも少し上の世代のお笑い芸人と関係を持っていたことがあると話してくれた。
「劇場でその人のことを見かけて、もう『この人だー!』ってなって。その日に出待ちして、劇場から出て行ったところを追いかけていって連絡先聞いちゃって。ほんとにかわいいんですよ。今ナダルさんのことが好きなのも、キャラクターっぽいからだと思うんですよね。ナダルさんめっちゃかわいいじゃないですか」
「でも○○も優しいんですよ。私が住んでるところの近くまで来てくれて、ご飯代とか絶対出してくれましたし。その頃売れてなかったから、お金なかったと思うんですけど」
「でもある時急に連絡があんまり返って来なくなって。で、その少し後に結婚したって発表があって、数ヶ月後には子どもが産まれてました。私以外にも○○が関係を持っていた女はいたはずなんですよ。その中の一人が妊娠したから、多分他の女たちを切ったのかなーと思いました」
概ねそんな内容の話だった。
こんなに綺麗な女の人から肉体関係を許すようなアプローチを受けたのに、どうして○○さんは、他の人とも関係を持とうと思ったのだろう。芸人やっていると綺麗な女性ファンが多く付くみたいだけど、そんなによりどりみどり状態になるものなのだろうか。
(もちろん綺麗さで女性の価値を計ろうとする僕の価値観は愚かであるし、女性への強い偏見やルッキズムが根底にあるだろう)
こういう値踏みするような自分の卑しさには吐き気がする。
ただの嫉妬かもしれないけど。
ナダルさんの嫁さんの話をした。
有名な話だが、ナダルさんの奥さんは交際していた頃、年齢を13歳さば読んでいた。
そもそもの出会いはナダルさんがカラオケで奥さんになる女性をナンパしたことだったので、年齢を聞かれた時に奥さんは「27歳」と答えたが、のちに交際に発展し、ナダルさんが「今度実家に帰るときに、結婚したい人がいるって親に言ってくる」と話したところ、彼女が泣きながら電話を掛けてきて「ずっと隠してたことがある……27歳って言ってたけど……本当は今年40歳です」と。
ナダルさんは状況が読み込めなかったものの、最終的に「まぁ6個下が6個上になっただけやん」と、彼女を許したそう。
僕は「6個下が6個上になっただけやん」という許し方が大好きだ。
そのエピソードを話したところ、彼女は、「そんなこと言われたら、私はその人のこと一生大事にしようって思いますよ」と言った。
(いや、私、あなたが相手だったらどんな打ち明け話があっても全力で受け止めますけど…)
そう思いました。
彼女が最近親知らずを抜いたという話になった。
もともと顔が小さいのに、さらに小さくなるのでは……と思って聞いてみたのだけど、「大人になってから抜くと顔の形はあんまり変わらないみたいです」とのことだった。
しかしそれにしても顔が小さいので、「顔小さいですね……」と言うと「普通です」と彼女。
そこに友人も「いや、小さいですよ」と加勢してくれた。
「ねぇ、この人褒めすぎじゃないですか?」と友人に尋ねる彼女。
「たしかに、この人褒め言葉いっぱい言いますね」と友人。
この時一緒にいた友人は、僕が昔創作活動をしていたころに知り合った男だった。
そもそも僕が活動していた界隈で、彼が作った作品が話題になっており、彼本人と知り合う前にその作品に触れて、めちゃくちゃに感銘を受けていたのだった。
本当にすごかった。
今思い出してもすごい。
今でもこの人のことは尊敬している。
けっこう年下なのだけど、本当にすごい。
どうすごいのか説明しようとすると、具体的な内容になってしまうので触れずにおくが、好きすぎてその作品についてのミニコミまで作ってしまったほど。
打ちのめされました。
「前に田中さんがエステに来てくれた後に、『いつもお仕事頑張っていて偉いです』ってメッセージくれたじゃないですか。それ読んで、『私仕事してるだけで偉いのか!』って思って、次の日お仕事に行けました。そのメッセージスクショしてます」と彼女。
いろんな人から労われているだろうし、報酬だってしっかり得ているのだろうけど、僕ごときの言葉が彼女の心に留まったのなら、それは嬉しいことだった。不思議なもんだと思う。
彼女にとってなかなか巡り合わない言葉だったのか、それとも、彼女にはスクショしたくなるような言葉が日常の中にたくさんあるのかわからない。
スクショしたって言っといたら客が喜ぶということを心得てそのように言っただけなのかもしれない。
僕にはもう何もわからないが、彼女はお昼には普通の仕事があって、メンズエステの仕事も副業にしているなら、とても忙しいだろうと思う。
身体が心配だ。
僕がだらけた生活を送りすぎなのかもしれないが…。
彼女のことを褒めて、その言葉を受け入れてもらえると嬉しい。
綺麗な女の人に綺麗だと言えるのはいいと思う。
僕がそういう目で見ていることを表明して、相手はそれを拒否せず受け入れてくれる。
そしてそれを否定しないでくれるであろう相手を選んでいる自分に吐き気がする。
これは僕だけにあるものなのだろうか。
容姿が優れている人に対して、「容姿が優れている」と言いたい。
そしてそれを受け入れて欲しい
自分がルッキズムにビットビトに漬っていることを発露したいのかもしれない。
人の顔をまじまじ見つめている自分を受け入れて欲しいのかもしれない。
これに関しては見返りを特に求めていないと思う。
昨今、異性の容姿の話をすることがハラスメントになるという流れがあり、自分もその奔流の中にいることを自覚しているので、あまり人の容姿に触れることはない。
そうでなくても「なんで容姿褒めてくるねん、身体目的なんか?」という警戒をされそうでもあるので、あんまり容姿の話を出すことがない。
しかし本当はめちゃくちゃ美醜についての関心がある。(今の若い人達は、美醜についての感心が我々よりも薄れた価値観を持つようになり、僕が抱えるような葛藤を理解することすらないのかもしれない。過渡期が今ということかもしれない)
そんな風に抑圧された美醜についての意見を彼女に受け止めてもらいたいのかも知れない。
本当は美醜についてばっかり考えている人間でござい、ということを表明したいのかも知れない。
彼女に「綺麗だ」と言うことが、本当に晴れがましい気分になるというか、すっきりする。
欲を言えば、「そんなことないです」といった否定的ではない言葉を返して欲しかった。
欲を言いすぎだという自覚はある。
お店を出る段になり、僕と友人で会計を持とうとしたところ、彼女は財布からお金を出して「私も出しますよ!」とお金を払おうとしまくってきた。
「いやいやいいです!ナダルさんに顔向けできませんから!」と言って戻そうとしても、「女に出させた方がナダルさんは喜びます!!!」と頑として譲ろうとせず、僕のポケットにねじ込んだりしてきた。
(そういえばこの時友人もお金持ってなかったとのことで、僕が一人で全部支払ってる……友人から徴収しないと……)
「田中さん、わかってると思いますけど、私稼いでますから! 全然出します!」と彼女は言っていた。
「私稼いでます」の一言に淡くときめきを覚えた。
それでも受け取らずに戻してもらっていたら、彼女は折りたたんだ千円札を指の間に挟み、くノ一がくないを構えるようなポーズを決めてて面白かったです。
……わかりますかね、僕が言わんとしているような状態。
こういう、短い言葉で表現できず、文字にしようとすると長くなってしまう状態が得意ではない。
顔がかわいかった……。
なんかこの人、ちょっと顔芸っぽいことをするフシがあって、顔を見ていると表情がころころと変わって、飽きないんですよね。過去の話をしてくれるときでも、「すごく驚いて」って言う時に、驚いた顔を再現してくれたりとかする。
多分、彼女の中では、その時の感情もそのまま記憶していて、記憶を思い返すとそきの感情も蘇るのではないだろうか。
店を出て、新宿駅に向かった。
三人ともJRを使って帰る。
改札の前で、「他の会員さんたちに自慢したいから写真撮っていいですか?」と聞いたら、「いいですよ」とのことだったので、三人で写真を撮った。
友人は改札を抜けてすぐの路線を使用するとのことだったので、彼を見送って僕と彼女がほんのわずかな間だけ二人になった。
Aesopの香水みたいな香りがしたので、「Aesopの香水付けてます?」と聞いたら、「違いますねぇ」とのことだった。
世の中には無数の香水があるわけで、自分がたまたま嗅いだことのある香水を付けている可能性なんて非常に低いと思う。
こんなことを聞くものではない。
だいたい「匂い嗅いでくるんかいこいつ、きっついわ……」と思われてしまうリスクすらある。
においには言及しないで置く方が無難だ。
と、理性的に考えたらそのような結論には鳴るものの、わたしはそのような発言をしてしまった。
「香水とかのかおりに気付いてくれるのね……キュン!」
「わあ、Aesopの香水のにおいわかるんですね……キュン!」
なんてリアクションを期待していたんだろうか。
自分自身が気持ち悪くて吐きそうになった。
もう終わりですよ……。
彼女が使う路線のホームに上がる階段の前にたどり着いて、少しだけ話をして、「またお話ししましょうね」と言って別れた。
「じゃあ、山賊とかに襲われないように気をつけて帰ってくださいね」と言って見送ろうとしたところ、「私、そっちから上がります」と、彼女は僕の後方を指差した。
振り返ると、そちらにはホームへ上がるエレスカレーターがあった。
僕が彼女を見送ろうとしていた側には階段しかなく、通路を挟んだ向かい側にはエスカレーターがあった。
さすが新宿駅、ちゃんとエスカレーターも完備されているんだな!
「そっちから上がります」と言った彼女の表情は少しだけこわばっていた気がした。
そもそも僕が「こっちにエスカレーターがあるよ。ここから行きな」と誘導してあげるべきだったのではないかと思う。
それともホームまで送るのが正解だったのだろうか。
彼女があの時に何を思っていたのか、もう確かめる術はない。
確かめる術があったとして、そんな細かいことを覚えているだろうか。
もし覚えていたとして「あの時にどう思っていたの?」なんて聞けるだろうか。
「あの時ってどう思ってたの?」を聞けるのって、恋人関係に発展させることができた場合しかないだろう。
ここ何年も自分は恋愛をしていないが、こういう、「あの時どう思ってたの?」って確認し合う行為って、なんかめちゃくちゃ楽しいですよね。なんなんですかあれの楽しさって。
自分のしたことをこうして思い出して、書いてみて、「あの時のあれってどういう意味だったんだろう」「どうすればよかったんだろう」と考えてみる。
しかし当然答えなど出ない。
フジファブリックの『笑ってサヨナラ』という曲にに「間違い探しをしている どうしてなんだろう どうしてなんだろう」という歌詞があるけど、まさにあれですね。
志村正彦がその曲を書いた年齢よりも、今の僕は10歳ほど年を取っていると思うが、自分はまだそういう次元をうろうろさまよっている。
別れた後に「楽しかったです! 山賊には襲われませんでした(笑)」とDMがきた。
後日、彼女は「コロチキのライブに行ってきました。お笑いについて熱く語った(笑)」とツイートしていた。
そういえば、ライブの直前に「お休みをとって、楽しみなイベントに行ってきます。なんでしょう(笑)」ともツイートしていた。
あまり私用についてのツイートをしていなかったはずなので、それはもう、僕は大いに勘違いと興奮を覚えた。
そうなるしかないでしょう……?
彼女と一緒に映った写真を、遠方に住むコロチキオンラインサロンの知り合いに見せたら「げんにやにやしすぎ」といじられた。
覚えているけれど、したことを悔いるようなやりとりを6つ程削除した。
こんなことがあったので、これはサービス利用者と提供者の域を少し超えたんじゃないかと思う。
しかし「普通に飲みに行こうぜ」と言えるほどの仲ではないだろう。
それは普通に考えて、そうだと言える。
「サービス利用者と提供者」として知り合ったが、そこに「同じオンラインサロンの会員同士」という関係性が加わり、さらには「(一応)一緒に飲みに行った」という仲になってしまった。
そうなると、この先彼女のサービスを受けに行くことがいいのかどうか、という問題が出てくることと也、僕としては嬉しいやら、どう接していけばいいのやら、判断が難しい状況だった。
それが9月3日に起きたこと。
プライベートで一緒に過ごせたことで、僕の勘違いは加速度的に進行していく。
しかしながら、言っても、まだ外で一度会ったことがあるだけの、同じ趣味を持つ人でしかないことも確かだ。
同じオンラインサロンに入会しているという間柄であり、僕が紙パンツからチンポコをはみ出させている姿を見ている。
そんな相手に、今後も乳首を刺激してもらって快感を得たりしてもよいのかという倫理的な問題もある。
そもそも僕は、女性から性的なサービス提供を受けるという行為自体にも抵抗がなくはない。
付き合っていない女性に対して、付き合っている女性からしてもらうべきであろうことをしてもらうという行為の是非についても考えなければならない。
そんなふうに悩んでいたけれど、僕は彼女にもう一度会いに行く。
9月27日……このライブから一ヶ月も経っていない。
そう考えると、僕は完全に自制心を失っていたことがわかる。
しかしその時の自分は平常心を保っているつもりだった。
我ながらばかな人間だ。
「私も田中さんのことばかだなーって思いましたよ」
という彼女の言葉がリフレインする。
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