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楽しかった『100日後に死ぬワニ』

   

きくちゆうきさんが12月からTwitterで発表していた漫画『100日後に死ぬワニ』が完結しましたね!
しかし炎上しました。
すごく燃えましたね……こんなに燃えることってなかなかありません。
きっと天国の織田信長も「本能寺でもこんなに燃えなかったよ!?」と突っ込みを入れていることでしょう。

炎上の概要

作者のきくちさんはイラストレーター・漫画家として活動するクリエイターです。
そんなきくちさんが、『100日後に死ぬワニ』と題した四コマ漫画を12月から毎日アップしていました。
僕は途中でその存在を知りましたが、回を増すごとにRTされる数がどんどん増えていき、かつワニ君が死んでしまう日も近づいてくるということで、その内容に注目する人も増えていった印象です。
当初はきくちさんも「出版されるといいなぁ」とつぶやいていたので、「クリエイターが自発的に発表している作品」と認識している人が大多数だったのではないかと思います。
それが、ワニ君が死ぬ直前になり、4月に書籍版が発売されることが発表されます。
書籍版には、「100日後の後日譚など、ここでしか読めない描きおろしも28ページ収録!」されるとのこと。
ここでネットではちょっと不穏な空気が漂い始めた気がします。
「大事なところは本を買わなきゃ楽しめないの?」という……。

そしてついに迎えた「100日目」、Twitterでの注目度はめちゃくちゃ高かったと思います。
僕は一人でラーメン屋にいながらその時を迎えましたが、両隣の客がきくちさんのTwitterを更新しまくっていました(笑)。

更新された「100目」の内容は、これまで1枚の画像で4コマ漫画として更新されたきたのに対し、画像4枚分に及びました。
3枚目までが4コマで、4枚目は大きな一枚のイラスト。
ワニ君の姿はハッキリと描かれず、彼の生死も不明瞭。
ネット上では、公開から3日が経った今に至るまで、内容の考察が繰り広げられています。

「考察を要する」「曖昧な表現」なだけであれば、別に炎上することはないと思います。
しかし本件はここからが大変です……。

漫画の公開からおよそ30分後に『生きる』と題された動画がYou tubeにアップされます。
人気ポップグループのいきものがかりが作った楽曲でした。
なんでもワニとのコラボムービーなのだそうです。
そこにはきくちさんが書き下ろしたと思われるイラストも添えてあります。
それだけなら別に炎上することもないでしょう。
注目度が高い作品だったことは明白なので、コラボレーションしたがる人が多いのは当然ですから。
しかし本当の騒動はこれからです!

『100日後に死ぬワニ 公式』なるアカウントが作られて、そこから驚くべき情報が発信されました。

「書籍化決定 映画化決定 グッズ情報など続々」
という画像付きのツイートが流れてきたのです。
しかも、やけに明るい雰囲気の画像でした。
あっ、けっこうがっつりと商業展開がはじまるのね……と、みんなぽかーんとしてしまったことでしょう。
さらにはネット通販でグッズの販売が開始され、雑貨ショップのロフトでは店舗での「追悼」ポップアップコーナーが展開されることが発表されました。
ワニくんの死から一時間も経たないうちに、津波のようにワニくんのグッズが押し寄せてきたのでした。
しかも、みんなに愛されたワニくんの死という悲劇を目の当たりにしたばかりの読者たちに、たくさん作られた楽しそうなワニくんたちのイラストが突きつけられることになってしまったので、そこもミスマッチだったと言わざるを得ません。

が、ネットではこの後も過去の記録から燃料を見つけてくる人たちが後を絶ちませんでした。
いわく、「電通案件で、はじめから仕組まれていたことだった」など。

そして100日目が公開された翌日、作者のきくちさんと、いきものがかりのメンバーであり作曲を担った水野さんがTwitterで動画を配信。
電通の関与を否定しました。

以上が顛末です。
この先も漫画の発表があるし、きくちさんの口から何か語られることがあるかもしれませんが、3/23の時点ではこんな感じですね。

ここから、この件に関しての僕の感想を書きます!

漫画として、面白かった

僕がワニくんの漫画をはじめに読んだのは、1月の終わりか2月の頭頃だった気がします。
ワニくんが子どもをあやしてあげるのを、先輩ワニが見かけるところだったかなぁと……。
漫画を見る前から、「なんかワニの漫画が流行ってる」と言うことは知っていたのですが、僕は流行り物嫌いなので避けていたのでした。
「100日後に死ぬとかいうギミックで興味を引こうとしていやがる……気に食わねぇ」とすら思っていました(笑)。
しかし実際に漫画を読んでみると、ポップな絵柄と、「さりげない日常」を本当にさりげなく切り取って漫画にするセンスの高さに驚かされました。
シンプルに、面白かったんですよね。
で、どの漫画にも、「死まであと○○日」と書かれているので、否が応でも緊張感は高まっていきます。
「こんなにふつーの若者風な生活を送っているワニくん、なんで死ぬことになってしまうんだ……?」と、思うと、ワニくん漫画の更新を心待ちにするようになってしまいました。

ワニくんの100日目を知ってから読み返してみても、面白かったんですよ。
若者の日常の描き方がすごく上手いと思うのです。
ぐだぐだと無為に時間を過ごす、無駄遣いをしてしまう、いつもの仲間と集まって益体もないことをして解散する……。
ひとことで言うとモラトリアムな生活を送るワニくん。
ささいな一言で仲間との関係にヒビが入りかけたり、ささいなきっかけで仲直りしたり。
ワニくんは先のことを何も考えていないけれど、まわりの仲間は少しずつ、社会に溶け込んでいく。
いわゆる日常系の4コマですら、ここまで「なにもない」作品はあんまりないですよ。
しかし「100日後に死ぬ」ということを読者は知っているので、彼の普通の暮らしぶりに愛着が湧いてくるんですよね。
あとは「死なないでほしい」と思ったりするようになる。

「○日後に死ぬ」ということを最初に明記するというテクニックは、漫画では山本直樹さんの『レッド』で使われていますね。

赤軍派の実話を漫画にしていますが、めちゃくちゃ後味の悪い嫌な末路を迎える人物が多いので、読んでいる間はずっと緊張状態を強いられますね……。
あとは、個人的に思うのは、先にも挙げた「日常系漫画」が十年以上の間オタク界ではあふれかえっているので、そこも逆手に取ったのかなという気はしています。
日常系漫画は4コマに多く、美少女たちが延々「日常」を送る作風が多く見られます。
基本的に登場人物が新しく登場してくることは少なく、作品から退場していく登場人物も少ないです。
登場人物が転校していったり、進学によって離別したり、就職によって別々の世界に進んだりすることはほとんどなく、半永久的に一つの箱庭の中で戯れ続けます。
対してワニくんは、あらかじめ100日後に終わりが訪れることがわかっているし、ストーリーの中でもそれぞれの登場人物に「転機」が訪れます。
諸行無常であることがそこかしこで描かれているんですよね。
当たり前だけれど、フィクションの中では排除されがちなところをきちんとすくい上げている作り方に好感を抱いた人も多いはず。

きくちさん自身の「後悔」から作られた漫画?

Twitterで「ネズミくんはきくちさん本人なのか?」という考察があり、きくちさんが受けたインタビューでも「死生観を描きたい」という発言があったりしました。
なんでも、きくちさん本人が、幼なじみを交通事故で亡くした過去があり、しばらく立ち直ることができないぐらいの喪失感だったのだそうです。
また、いきものがかりの人と一緒に話している動画では、その友人が事故にあったのは、自分のせいかもしれないという想いに今でもとらわれていると話していました。
つらいですよね……。
そんな経験を持つきくちさんだからこそ、「毎日が大切な日」だというテーマから漫画を描いたのかもしれません。

ラストシーンで、ワニくんの死を直接描けなかったのは、きくちさんが「それを描くのはつらすぎる」からだったのかもなぁ……と思ったりしました。
アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』で、主人公にとって大切な人が亡くなってしまう展開があるんです。
その映画でも、その人の死は直接描かれません。
観ていると、「あれ、死んだの? 出てこなくなっただけなの?」と思ってしまうような展開でした。

ムーンライトは作家にとって実話に近いストーリーになっていて、作家もやはり大切な人を亡くした経験があります。
しかし、物語にしたものの、作家はその人物を亡くした経験から立ち直ることができておらず、「辛すぎてそれを描くことができなかった」ために、観るものにとってわかりにくい描き方をせざるをえなかったのだとか。
「つらすぎて描けない」問題って、あるんでしょうね……。
けど、それを主題にして作品を作らざるを得ないのは、作家の業と言うべきか、作ることを通して世の中に伝えようとしたり自身が癒やされようとするからなのでしょうね。

きくちさんの別の漫画作品とか、ホームページに載っているイラストを観ると、ちょっとグロいというか、気持ち悪い作風だったりするんですね。(悪口ではなくて)
でも、ワニくんをポップな絵柄や色使いで描いたというのは、それだけ「広い範囲に届けたい」という腹を括ったのでしょうし、広い範囲に届けたいと思うのって、その作品のテーマを多くの人に受け取ってほしいからでしょう。
それってつまり、きくちさん自身の中でずっと醸成されてきたテーマなのだろうと思うのです。

あと、きくちさんはワニくんが100日目で「死んだ」ことを明言していました。
ワニくんが自分で選んだことなのだとも言っていたので、3日目にヒヨコちゃんを助けたように、100日目でも助けようとして亡くなったのだということなのでしょう。つらい……。
多分、きくちさんが作品を通して伝えようとしたことは、読んでいた人にちゃんと伝わったと思います。

その後のことがなければもっと良かったんですけどね……。
長くなってきたので、ここまででエントリを区切ります!

次のエントリでは、漫画についての話を外れて、その後の「商売」とか「言い訳臭さ」について書きます!

 - 文化

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