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【元カレソングの名曲4選】アデル、テイラー・スイフト、アリアナ・グランデ、矢野顕子

      2020/03/17

女性音楽家の作る「元カレソング」って、名曲が多い気がしたので、そのことを書きます。
よく「男の恋愛はフォルダごとに保存、女の恋愛は上書き保存」なんて言われたりしますよね。
男は昔の恋愛の記憶を後生大事にとっておくけれど、女性は終わった恋愛のことは思い出さないでパッパと忘れてしまうっていうのが定説のようです。
しかし女性アーティストが昔の恋愛を歌うと、かなりユニークなものになるのです。
そう考えると、別に女性も昔の恋愛を忘れるわけではないんじゃないかなぁと。
僕がそう思い込みたいだけなのかもしれませんけど……(笑)。
まぁ、「女性は」「男性は」なんてくくり方がそもそも雑すぎるものなんですけどね。

まずはアデルの名曲『Someone like you』について書きます。
この曲は、彼女が21歳の時にリリースしたアルバム『21』の最終曲です。

このアルバムはCD不況のご時世に3000万枚以上の売り上げを記録した怪物的な作品。
アデルは若干21歳、二枚目のアルバムにして伝説的なシンガーとなりました。
多くの大ヒット作品がそうであるように、このアルバムはアデルの非常にパーソナルなモチーフで埋め尽くされています。
彼女はアルバム制作前に失恋し、その彼への想いが中心となる曲が並んでいるのです。
最終曲の『サムワン・ライク・ユー』は直訳すると「あなたに似た誰か」。
曲名はサビにも登場し、「私のことは気にしなくていい あなたに似た誰かを見つけるから」とアデルは歌います。

楽曲のシチュエーションは、かつて愛した男が、新しい恋人と結婚することを知り、主人公はその結婚式の場に足を運ぶというもの。
で、「私も新しい男見つけるんでw」と宣言する。
(あるいは、独白であって、彼のことを遠巻きに眺めて声をかけずに帰って行ったのかも……)
歌の中では、彼の方は主人公に「新しい相手を見つける」ことを願っていることも表現されます。
それに対して「あなたに似た人」を見つけると歌っているわけで……それって、彼が主人公に対しての想いが微塵もないってことですよね、多分。
名残惜しいけれど彼女のためを想ってそう言っているのかもしれないけど、彼女にとっては彼がオンリーワンであり続けてしまっている。
一つの曲の中で、人物の感情とシチュエーションがこんなにもねじれていることって、なかなかないですよ。
泣けてくる……。
で、サビのピークの部分で、彼女は彼に「忘れないで」と懇願する。
アデルの声質って、若いのに渋いところがあって、低音も多様しています。
そんな彼女が、このパートを歌う時は、高くて細い声でしゃくりあげるような歌唱になります。
それが、曲中では感情を抑えて平静を装っているけど、本心では彼が自分のもとを離れていった現実をいまだに受け入れることができていないのだとわかります。
つらい……。
このしゃくりあげるような歌い方は、プロデューサーの提案によって生まれたものだそう。
彼女が喋るとき、感情が高ぶってくると声が上ずるクセに気づいたプロデューサーは、それを曲に取り入れてみては? とアドバイスしました。
そして生まれたのがこのパート。
このプロデューサーは、セミソニックというロックバンドでボーカルを務めていた人物。
そんな人だから、歌手のしゃべり方のクセを活かした歌唱というアイデアを思いつけたのでしょうね。

この歌い方はとても特別なもののようで、おそらく簡単に歌いこなすことができないものです。
だからこの上ずり声はライブでは再現されず、キーを低温に下げて歌われます。
アルバムリリース直後のライブからずっとそう歌われているので、加齢による声質の変化とかではないはず。

僕はライブと音源は別物だと思っていて、曲を作るときはライブで再現できるかどうかなんて度外視でいいと思うんです。
ライブで絶対に失敗しないような曲だけを作るとすると、やれる音楽が狭いものになってしまう。
それよりは、ライブで再現するのが難しくても、アーティストがやりたいことをやってほしいです。
この曲みたいに、「ライブで再現するのは難しい……けど、この曲には、この上ずり声が必要だ!」と判断されることがあってもいいんですよね。
まぁ、アデルは飛行機めちゃくちゃ嫌いらしいので、ツアーというツアーをほとんどやらない人なんですが……(笑)
多分日本には一生来ないのでは……洋楽不況が叫ばれる今の状況では、なおさら日本に来るメリットとかないしな。
どっちにしろアデルのライブ、多分一生観れねぇ!

ところで、『21』の三曲目では『don’t you remember』という曲すらあるのです。

失恋のすべてを刻み込んだアルバムで、彼女は繰り返し、相手に対して「私のことを(私を愛したことを)忘れるな」と語りかけます。
それにしてもここで歌われた彼は、どんな気持ちなんでしょうね……振った女の人が、自分への執念でアルバムを一枚作り上げてしまい、それが史上最高クラスの売り上げになっているんですもの……(笑)。

このアルバムをリリースしたあと、アデルは新しい恋人と結婚し、男の子を設けます。
『21』の日本盤では、この最終曲のあとに『I Found A Boy』という曲が収録されていました。

曲がこういう風に並ぶと、失恋で傷つきまくっていたメンヘラ気味な女の子が、母親になることで心の平穏を見つけるという構成にも思えるので、面白いものですね。
いや、曲中のBoyとは、多分新しいボーイフレンドのことなのだろうと思うんですけど、そのことは明言されていない気がするので、赤ちゃんと解釈することもできるなぁと……。
ボーイフレンドのことなのだと解釈すると、別れたアデルにまたアプローチをかけてきているってことになりますよね、これは……。
現実に起こったことかどうかはわからないけど、この曲をアルバムに収録しなかったのは、「失恋のアルバム」として統一感を出すためなのでしょうね。
やっぱり、アルバムとしては、『サムワン・ライク・ユー』で幕を閉じるのがふさわしいと思います。
アルバムの中では、クラシカルながら多様なアレンジの楽曲が多かったのに、この曲はピアノ弾き語りです。
めちゃくちゃ肝が据わっていると思いませんか?
アルバムのクライマックスが、ピアノと声だけで構成されているというシンプルさ。
そしてその楽曲が、これだけ広く聴かれることになったわけですからねぇ……名采配ですよ。
Jポップだったら絶対にストリングスとか入れまくってごちゃごちゃした音に仕上げていると思います(笑)。

ところでこの「元カレがヨリ戻したがっててめんどくさい」という決別をモチーフにするところは、テイラー・スウィフトの『we are never ever getting back together』にも近いかもしれませんね。

超名曲ですね。
テイラーの持つカントリーの歌唱法も取り入れながら、完璧なポップソングに仕上げている。
タイトル通りの内容の曲ですけど、間奏で歌われる
I used to think that we were forever ever(私たちはずっと一緒だって思っていたし)
And I used to say, “Never say never”(「絶対に諦めない」って言ってた)
という歌詞や、その後に続く「NO」というシャウトを聞くと、心の隅っこには彼を愛していた記憶に後ろ髪引かれる想いもあるんじゃないかと思うんですよね。
で、歌の中で、そんな過去の美しい思い出さえも振り切っていく様が描かれている。
あぁ……恋人と別れた後の恋人の振る舞いによって、思い出すらも汚れてしまうことってありますよね(笑)。

こういう曲がイギリスとアメリカという海を隔てたところから同時代的に出てくるのって、女の人が独身で社会の中で活躍するのが当たり前の時代になったからってこともあるのかなぁ。
男に足引っ張られてウンザリしているところに、かつての恋人すらも重しになってきやがるという(笑)。

その系譜にアリアナ・グランデの『thank u next』が連なってくるのかなと思います。
元彼たちに「ありがとう」を歌う曲。

この曲のことは詳しくないので、ほとんど語る言葉を持っていませんが……(笑)。
確か田中宗一郎さんがこの曲について、テイラー・スイフトみたいな「強い女性」像を確立するために男からの独立のモチーフを強調する必要があったけれど、アリアナはリスペクトを込めつつ絶妙な距離感を体現しているみたいな話をしていた気がします。
うろ覚えですが。。。

そうそう、アデルと同じと言うと、『we are never ever getting back together』もプロデューサーとの何気ない会話から生まれたものなのだそう。
レコーディングのランチ休憩中に、テイラーが「元彼がヨリを戻したがっているんだけど、絶対、絶対、そんなことしない」と口にしたところ、「それをそのまま曲にしない?」とプロデューサーが提案したとか。
プロデューサーがすごいですよね……面白い曲になりそうなアイデアに常に目を光らせていて、アーティストが内に秘める曲の種を発芽させる術を知っている。
彼がいなかったら、この稀代の名曲は誕生していなかったんでしょうね。
アーティスト自身、作品のネタ探しはずっとやっていることなのでしょうけど、自分にとっては当たり前のこと過ぎてそれを作品にするなんて発想をできないこともあるはずですからね。
「元彼が電話してきてウザい」って出来事・想いを曲にするなんて、確かに思いつけないと思う……(笑)。

そんなわけで、女性が自分の恋愛経験を生々しく反映させた曲たちを紹介しました。
元カレをモチーフにした名曲って、面白いもんですね。
矢野顕子さんも『また会おね』という名曲があります。
昔ブログにも書きました。

『また会おね』というおかしなうた

男が作った「元カノ」モチーフの曲って、そんなに思いつきません。
元カノのことばっかり歌っている人はいますが…山崎まさよし、UVERworld、フジファブリック、岡村靖幸さんなど。小沢健二さんも、その中に入るかも。
僕が男だから、女の人が元カレのことを歌っているところにグッとくるだけなのだろうか……。

全く関係ない話なんですけど、英語圏で育った知人が参加した結婚式で、生バンドが『サムワン・ライク・ユー』を歌っていたそうなんです。
結婚式の新郎新婦のどちらかがリクエストしたわけですが、これほど「結婚式に似合わない曲」、他にあるかってぐらいの曲が、なぜ歌われたのだろう……(笑)。
もしかしたらみんな、歌の内容のことをちゃんと理解しないで聴いているのかもなぁ……と思った出来事でした。
関係ない話終わり。

 - ラブソング, 音楽

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