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【マーベル参加前のルッソ兄弟】トラブル・マリッジ 彼と私とデュプリーの場合【テッドの元ネタ?】

   

マーベル・シネマティック・ユニバース作品を手掛けたクリエイターが、MCUに参加する以前に作った映画をいろいろ観ていこうと思ってるんです。
この作品はルッソ兄弟が監督を務め、2006年に公開されたコメディ映画です。
ルッソ兄弟のキャリアは、むしろTVドラマ業界での方が目立った活躍があるようなのですが、映画好きの私としては映画から攻めていくしかありません……。
私もそのうち、ドラマを楽しむようになるのでしょうか。
日本語のタイトルはが主人公のラブコメっぽくなっていますが、原題は『You,Me and Dupree』なので、誰が主人公なのかはっきりわからない。
ですが映画を観れば、この「ME」が主人公のことであるのは明白。(いや、「あなたとデュプリー」を観察する女子視点なのかな……)
ラブコメを観るのは女性が多い、という判断で付いた邦題なんでしょうか……。


日本語版のトレーラーが見つからなかった……。

・ざっくりしたあらすじ
主人公はハワイで幸せな結婚式を迎えたばかりの男。
花嫁のパパの不動産会社で仕事をしており、義父となった社長にナメられている主人公。
仕事でも、彼の住宅地開発計画を評価するフリをしながら、中身は換骨奪胎して自分の好きなように企画内容を変更しながら進めようとする。
そんな中、親友のダメ男デュプリーが仕事をクビになり、アパートからも追い出されてしまう。
主人公は仕方なく、新婚生活を始めたばかりの我が家に彼を居候させることになるが、デュプリーの想像以上のダメ男ぶりに夫婦共々絶望させられる……。

というコメディ映画です。
すごく上手く出来てる映画だと思いました。
全然無駄がない。
ギャグの切れとか、シナリオそのものはふつー……と感じるところも多かったのですが、高い品質の作品。
テーマとなる「成長を強要する社会へのアンチ」も明確でしたし。

・面白かったところ
義父が、主人公が名付けたリゾート地の名前にこだわる描写のあとに、主人公に名前を継がせようとするシーンが入る。
うまいですねぇ……。
あと、デュプリー以外にも主人公の悪友が出てきて、彼は家庭も持ってるのですが、飲み屋で
「酒臭い? オッケー。煙草とマリファナをごまかせる」
という名言を残します。
また、奥さんが残業で遅くなる予定だった日に、主人公の家で野郎どもを集めてどんちゃん騒ぎを繰り広げていたのですが、奥さんが予定よりも早く帰宅します。
野郎共は引き上げていくのですが、その悪友は奥さんに
「妻には黙っててくれ。もし言うなら黙っててくれって言ったことは黙ってくれ」
と言います。
この台詞、めちゃくちゃ好きです……(笑)。
やっぱり、ことコメディ映画でいえば、ハリウッドの作品の練り込み方って世界でも頂点ですよね……。
日本のコメディ映画はもうダメだ。
福田雄一的な「ノリ」だけで笑わそうとしてくる質の低いコメディにはうんざりだ。
なにかしら「ヒネったもの」を上手くいれてきてくれるものじゃないと、お金を払った価値を感じられないよ。

・テッドにパクられてる?
一つ気になったのが……この映画、テッドにパクられてるな!?ということ(笑)。
映画を観ながら、「成長神話の否定」というエッセンスがあると思ったんです。
劇中で、デュプリーのスピーチで語られるように、社会で成功している人をピックアップして「こうあらねばならない」と仕向けるのがメディアや、ドラマだと思うんです。
ハリウッド映画もおおむねがそうです。
主人公が最初はしょぼくても、どんどん成功・自己実現に向かっていくようにできています。
そんな「成功しなければいけない」に対して、明確なノーを掲げる作品があるんですよね。
このトラブル・マリッジもそうですし、テッドもそうです。

あれはイマジナリーフレンドであるテッドを、やっぱり捨てられないという形で、成功へのNOが語られます。
わざわざ、主人公の彼女に言い寄る男という形で、いわゆる「成功者」を出して、しかもバカにしている(笑)。
テッドで否定されているのは「大人にならないといけない」「仕事で成功しなくてはいけない」「そのためには同性の友だちとバカなパーティをやって仕事をおろそかにしてはいけない」といったテーゼかと。
テッド1では結婚を迎えるカップルですが、2では無残に別れてますね……(笑)。
男の持つ「ダメな部分」の象徴が、テッドという憎めない悪友なんですね。
なんでもそうですが、圧力が強いほうが、それに対する反発も強い形で表れてくる。
テッドという作品が大ヒットした背景には、「30過ぎたら仕事での昇進を目指さなければいけない」「家庭を持つには経済的に成功していなければいけない」という圧力にアンチテーゼを突き付けている。
「成功しなければいけない」レースから、降りるエンディングを迎えています。

トラブル・マリッジでも、デュプリーという悪友に「成功しなければならない神話」へのアンチテーゼが象徴されています。
けど、デュプリーは、最後には持ち前のスピーチ力で大きな会場での講演会を成功させていますね……社会的な成功を手にしている(笑)。
やっぱりシナリオを作るにあたっては、登場人物がビジュアル的にわかりやすい「成功」を手にするほうがやりやすいんですよね。
なんかでもあのオチはあんまりしっくりこなかったですね……。
デュプリーが、人を鼓舞する力がある人だということはわかったんですけど、彼自身があんな形での成功を望んでいるって思えるシーンがなかったので……。
あれ、観たはいいけど、主人公がどんなエンディングを迎えたのか思い出せない……。
父親に立ち向かって、和解したのは覚えているんですが……。

ほか、テッドとトラブル・マリッジが似ている点として
「悪友のウンチに困らされる」
「女に振られてやけになっている主人公を鼓舞する悪友」
「好きな昔の映画を繰り返し鑑賞して楽しんでいる」
など、被っている描写が盛りだくさんです。
「悪友がスーパーの仕事の面接に行く」
もありますが、失業した人がまず受けに行く仕事の定番がスーパーなのかもしれないので、被ってしまうのは必然なのかも。
あと、主人公の吹き替えをしている声優さんも一緒。
咲野俊介さんという方で、若すぎず、コミカルな演技も上手な声優さんですよね。
どちらも俳優の方が細身ではなくがっちりしているので、そんな容姿に合う声質でもある。
うんうん。
しかしたとえパクリであっても、私はTEDへの愛を捨てられません……。

・三幕構成の一幕目の作られ方
この映画を観ていて気付いたのですが、いわゆる三幕構成って、一幕目の半分くらいで、物語が進んでいく基盤が作られてきて、転機が一度訪れるのかなと思いました。
僕がなんとなく知っていた三幕構成の大雑把な特徴としては、
物語スタートから上映時間25%程度で、主人公が何らかの新しい世界に入っていく。
新しい世界での主人公が描かれる二幕目で、上映時間75%程度で「どん底」「大ピンチ」に陥り、精神的な死を迎える。
残りの25%の時間で、主人公の魂の復活と、敵を倒すなりといった形での強敵や困難の打破が描かれる。
というくらいの認識だったんですね。
一幕目では主人公が現在身を置いている世界が描かれる、というくらいの認識だったのですが、その一幕目の半分辺り……つまり映画全体の時間の12.5%あたりのところで、新しい世界への扉が半分開かれる。
で、あとの12.5%を使って、主人公の世界の紹介の残りをこなしたり、新しい世界への扉をくぐるとどんなことがあるのかが提示されるという。
MCU映画の全体を見ていても、これはあるなーと思ったので、自分的には発見でした。

・キャプテンアメリカとウインターソルジャーに引き継がれるダメ友だちを切り捨てられない映画の系譜
これはちょっとうがった見方ではあるのですが、キャプテンアメリカが回りからどれほど非難されてもウインターソルジャー=バッキーを見捨てられない姿って、このトラブルマリッジの主人公とデュプリーとも被ってくるなって思いました(笑)。
MCU参加以前のルッソ兄弟の映画で、日本で観られるのは、これと『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』だけ。
二作に共通しているのは、ダメ男しか出てこないというところでした(笑)。
主人公とデュプリー、あとエロくれクサもやる悪友はいわずもがな、義父も押しの強い性悪自己中野郎でしたからね(笑)。
コリンウッドも観たので、そっちはそっちでまたエントリを書きます!
あとMCU作品の総ざらい的な感想を書こうとも思いますー
MCU面白いっす……。

 - 映画

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