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映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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ローズが魂を解放させるパニックムービー タイタニック

   

・『ロミオとジュリエット』+『ポセイドン・アドベンチャー』=タイタニック
よく言われるのは、タイタニックが「ロミオとジュリエット」+「パニックムービー」ということ。
大きな社会格差に隔てられた若い二人の悲恋の物語の典型であるロミジュリがベースになっているのではないかと。
パニックムービーの類例として、超高層ビルの炎上では『タワーリング・インフェルノ』があるし、船の沈没では『ポセイドン・アドベンチャー』があります。
映画を観なおした際に時間を確認したら、映画のぴったり真ん中で二人は愛の契りを結んで、氷山と衝突するんです。
つまりキャメロンは意識的に、前半:ロミジュリ型ラブストーリー、後半:船沈没型パニック映画として構成していたということですね。
この構成が、本当にピッタリ時間計算されているのが、脚本家の腕なんですよねぇ。

・タイタニックはローズが心を解放させて強くなる話

映画の最初、ローズの性格は破たんしています。
没落貴族に生まれて、自分の思うままに行動することや発言することが許されておらず、それゆえにワガママで毒舌にふるまってしまっている。
でも本当は、全然好きでもない許嫁と結婚なんてしたくない。
けれど落ちぶれつつあるとはいえ貴族のプライドを捨てられないままに背くこともできずにいる。
そしてローズは冷たい海に身を投げて死のうとする。
(正直、死にたいほどの辛さを抱えているって思えるシーンはありませんでしたが……)
そんな時にジャックと出会って、彼に命を救われて、そのお金はないけれど自由な生き方に惹かれていく……というお話ですよね。

彼女が、縛り付けられながら生きているということがよくわかるシーンがあります。
ローズの母が、彼女にコルセットを付けながら会話するシーンです。
コルセットをぐいぐい締め付けるということが、娘に貴族階級としての振舞いを強要すること、ひいては自分の思いのままに生きることを強いるメタファーなはず。
そこで交わされる会話は、貴族にふさわしく振る舞うこと、ローズが結婚しなければ母である自分も不幸になるということです。

しかしローズは、ジャックと一緒にいることで、自分の心の声に素直に耳を傾けるようになっていきます。
ジャックがローズの心を開いていくのです。
映画の中盤に、ローズが、船がアメリカに付いたらジャックについていきたいと告げるシーンがあります。
二人とも、輝かんばかりの笑顔を湛えている素敵なシーンです。
思い出すだけでちょっと泣けてきます……(笑)。
そこでジャックは「君、本気かい?」と問います。
ローズは「理屈なんかないの。だから信じられる!」とはっきりと答えます。
これ、人間の魂について語った言葉の中でも最高のものだと思います。
キャメロン監督は、シナリオも音楽も美術も完ぺきだけれど、詩人でもあるからすごいっす……。
いい作家って、言葉を扱うのが本当に上手だと思わされます。
人間の魂って、理屈じゃ説明できないんですよね。
理屈というのは、それまでの人生で蓄積された経験や、あるいは他の人から言われたことや、都合の蓄積ですよね。
ローズの母ちゃんが言うことだって、理に敵っていないとも言えない。
彼女たちが生きていくためには、ローズが金持ちと結婚するしかない。
ローズはその言葉が間違っていないこともないと思うから、貴族として振る舞っている。
けれど心の中では、別の生き方をしてみたいと感じているから、それが過剰な浪費や他者を見下す態度として表れてしまっている。
問題のある行動を取る人って、心の中にねじれている部分があることがほとんどなんですよね。現実の世界でも。
ジャックと共にいる時のローズの表情がきらきらしているのって、本当にすごいんですよね……。
表情を見るだけで、彼女が愛を見つけた喜びが湧き上がっていることがありありと伝わってくるんですよ……本当に名画。

その後、「理屈なんかないの。だから信じられる」という言葉は、行動にも表れます。
タイタニックが沈んでいく時に、彼女がボートに乗って、ジャックと婚約者がそれを見届けていく……。
婚約者は、ジャックの分の席も確保してあると嘘をつき、ローズを安心させてボートに乗せる。
ジャックは彼の嘘を見抜いているけど、ローズに生きのびてほしいから、彼女を行かせる。
このジャックの行動がもう愛過ぎて、もう愛しかないのですが、この後ローズがボートから船に飛び移ってしまうところなんて、もう本当に愛ですよ……。
理屈で考えると、ローズはそこに乗らないといけないのですが、彼女はそうすることしかできなかった。
彼女がそこまで悲痛な思いを胸に船に飛び移ったけれど、二人で一緒に生還することは叶わない。
つらい……。
ローズが本当に欲しいものを手に入れることができなかったという意味で、彼女にとって真に挫折としての経験になります。
彼女はこれまできっと、何かを欲しいと熱望することなどなかったはずですから。
やっぱり人の胸を打つ映画って、行動によって感情を表現することを重ねていくものなんですよねぇ。
愛……。

彼女が強くなっていきます。
それは、ジャックを救いに向かったり、手錠を外すために斧を振りかぶったり、婚約者の顔に唾を吐きかけるシーンに現れています。
自分が属していた貴族社会の傲慢や、差別的な態度が、貧しい人々の命を奪おうとしていることへの憤りを隠さなくなります。
きっと、ジャックと出会っていなければ、彼女も救命ボートに乗って、海で溺れる人々から目を背ける側にいたことでしょう。

こんな風に、タイタニックは、一人の箱入り娘が、どんどん行動的になっていく映画なんです。
最後には、最愛の人の死を乗り越えて、彼の言葉のとおりに生き抜いていこうとする物語です。
それは、彼女が自分の心の声に素直に耳を傾けて、魂のままに生きる道を選ぶ物語です。
最高……。

・人間の魂の深淵に迫る作家、キャメロン
タイニックがド級のヒットを飛ばしたのって、ただのラブストーリーではないからなんですよね。当然。
一人の女性が、自分の心を解放させていく様を丹念に、現実的に描いているからなのです。
ローズの変化には、恋愛に強い関心がない人でも、一人の人が自由を得ていく過程に共感できるようになっているんだと思うんですよ。
自分の知らない楽しい所へ連れて行ってくれる人って、とても素敵ですよね……ジャックがローズを連れて行った場末のダンスホール?ってすごく楽しそう。
その後にあるパニックムービー展開も、それぞれの人物の魂がむき出しになったような場面が多くって、本当に泣かされます。
前半の一時間半をかけて、それぞれの人物をちゃんと見せているから、後半のちょっとした場面でも強烈な印象を残す。
危機的な局面でこそ人の本性があらわになるもの。
それはこんな風に絶命の危機にあるパニックではなくてもそうですよね。
宮台真司さんが「トラブルが起きた時にこそ人の本当の顔が見れるのだから、そういう姿を見たことがない男と付き合ったりしてはいけないよ」的なことを話していたはず。
ジャックはもちろんですが、他の全ての登場人物たちの「本当の姿」が後半ではどんどん見えてきます。
醜いものもあれば、憧れてしまうほど美しい生き様もある。
人の魂のありのままの姿が押し寄せてくる映画だからこそ、人の心を打つのです。
パニック映画のフォーマットを利用して、そんな深淵に到達してみせたのがタイタニックなのです。

・宝石とスケッチの交換
子どもの頃に観た時は、彼女がなぜ宝石を海に放るのかわからなかったのですが、見直してみて、ジャックが時を越えてローズのスケッチを届けてくれたことへのお返しだったのではないかと思いました。
あとキャメロン的な、資本主義社会へのアンチテーゼとして、めちゃめちゃ高価とされるものをやすやすと手放すシーンを作りたかったのでしょうね。
だってローズは、もっと大事なものを手に入れたのですから……(泣)。

でもあれをやると、ジャックの絵画と、超高価とされる宝石(≒金銭的価値の高いもの)を売買するってニュアンスになっちゃう気もするんだよなぁ。
ローズは絵画の鑑賞方法も全然知らないのに、高値が付けられているからといって買ってしまうような人なので、自分自身で芸術の価値を見極めることができないはずなんですよ。
ジャックがヌードデッサンをしているシーンでも、  が人物画を描かないということを知らない。
うーん、なんでああいうシーンを入れたんだろう……超名シーンなことには変わりないのですが。
あのシーンのデッサンを描いたのってキャメロン自身なんですよ。
あの人は絵画の才能も秀でているのです。
だから主人公のジャックって、キャメロンの投影なんだと思うんです。
本当はキャメロンの中にも、お金儲けなんて気にせず、気ままに好きなものだけを作っていたいって気持ちがあるんじゃないかなぁと。
しかしそのタイタニックで、世界最高の興行記録を打ち立ててしまうというのも矛盾ですよね。
解釈してみると、お金儲けを気にせず、無心にものづくりを続けていたら、すっごいお金も入ってくるようになったよ! というメッセージなのかもですね。

ストーリー上で解釈してみると、ローズは、タイタニック号についてのニュースを見る時に陶芸をやっている。
つまり芸術創作をする人になっている。
タイタニック沈没後は舞台女優をやるようにもなったということなので、芸術を嗜む人になった。
これは一つの変化ですよね。
あれ、でも、ジャックが船のデッキでスケッチしていた絵を観た時のローズは感銘を受けていましたよね。
そう考えると、芸術に心を打たれる完成は持っていたことになるな。
けどスケッチのような荒々しくてシンプルなものに惹かれるけど、凝った油絵の見方がよくわからないって話か。
それこそ、質素なものでよいのではないかっていう感覚なんですかね。
キャメロンの映画も「わかりやすい」という点では徹底しているので、そういう話なんでしょうか。
ちょっともう一回ぐらい見直してみないと精度が低いな!(笑)
申し訳ないずら……。

タイタニックの最高ぶりについてはまだまだ話したいところがありますが、こんな感じっすね。
あぁ、エッチする前にヌードデッサンを描いちゃうシーンについても書きたい……。
あんな綺麗なシーン、他にねぇっすよ。
なんだあの美しい生命体二人は。

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