パンダコパンダを映画館で観る 221005
ジブリ美術館に行った。
外国人のお客さんが増えていた。すごい。
あと、別に長期休みとかではないのに、小さな子連れの日本人家族も多かった。別に祝日でもないし。なんでだろう。
おそらく今月上映されている短編が、ハウルの動く城の前日譚的なストーリーだからだと思う。
入場時にもらえるフィルムは、コクリコ坂からのものだった。
やっぱり比較的近年の作品のフィルムが多い。コクリコ坂からばかりがたまっていく。
『星をかった日』
去年に一度観ていたが、もう一度観たくなった。
やっぱり面白い作品。
妙齢の女性が、髪をとかしているシーンで、そばにクリームのような缶が置かれているなと思った。
女であることに手間暇をかけている女性の描写って、宮崎さんの作品ではあんまり見かけないような気がした。
新宿で人と会って食事を摂る。
青山の話になり、「洒落者ばかりが集う街ですよね」と言ったら、ふふっと笑った。
洒落者というワードが好きなのかなと思って、もう一度「洒落者」と言ったら、またふふっと笑った。
特定のワードがツボに入る感じなのかなと思ったら面白かった。
食事を終えて喫茶店に移動した。
お茶を飲んだ後にリップクリームを塗った。
「唇がすぐにガサガサになるから、何かを食べた後はリップクリームを塗ります」と言うと、その人は自分の唇に触れながら「ガサガサしてる…けど今リップを持ってない」と言った。
その人の唇は薄いように見える。
「リップを貸してあげたいけど、そういうわけにはいかないですよね…すみません」と言った。
その人は笑ってくれた。
僕は唇が厚く、消化器官が悪いために口唇周辺が荒れやすい。(口唇周辺が荒れている時は口内もしくは消化器官が荒れている可能性が高い)
人の顔を見るとき、その人の「口」ってあんまり印象に残らない。
喫茶店を出て、映画館でパンダコパンダを観た。
公開50周年で映画館で公開されるのだった。
残念なことに二週間のみの限定公開なのだが、新宿では、夜7時からの一日一回上映となっていた。
もっと子どもが観に来やすい時間に上映してほしかった。
劇場には子ども連れの夫婦っぽいお客が二組くらいいた。
一人の子どもはとても退屈そうにしていた。
もう一人の子どもは僕たちよりも後ろにいて、様子は見えなかったが、お子さん
パンダコパンダ、フルで観るのはけっこう久しぶりのことだった。
パンダコパンダは異類婚姻譚のはず。
ミミ子ちゃんが、パンちゃんのママになることを提案した後、「パパは抱っこもしてくれるのよ」と頬を赤らめ、パパンダもそれを頬を染めつつ受け入れるところは婚姻の儀式として機能している。でなければ頬を染める演出は必要ない。
映画館で観直してみると、その辺がけっこう生々しくてゾッとさせられた。
姪っ子が小さい頃にこの映画をよく見せていた。
子どもの素直なリアクションを見るのは面白い。
パンちゃんがミミ子ちゃんの学校に付いてきてしまうシーンで、パンちゃんは校庭の隅で「ここにいるのよ」と言いつけられ、「僕ここにいるよ」と答える。
しかしミミ子ちゃんが授業に戻っていくと、パンちゃんは美味しそうなにおいに誘われてすぐに動きだしてしまう。
言いつけられたことは反故にされる。物語の鉄則と言っていい。
しかし子どもは、物語に慣れていないものだから、そんなセオリーがわからない。
姪はパンちゃんがトトトッと駆け出すと、「わー、行っちゃだめ!」と危機を訴えるような顔をして僕の袖をぐいぐい引っ張った。こんなことでこんなリアクションをするのか、と、子どもの反応の面白さを強く感じた。
面白い。
映画館にいた子どもはこのシーンで「ぎゃーっ」と泣き出していた。
姪っ子よりも強烈なリアクション。
パンダコパンダは、子どもがどう感じるかを計算しながら作ったもので、それが成功しているんだろうなと思った。
続けて観ると、1と2で同じようなシーンや展開が多く観られるので、若干退屈ではあった。
でも子どもは繰り返しが好きだという話を小澤俊夫が書いておられた。確かポニョの解説文でのことだったと思う。小澤俊夫さんにジブリ作品の全作品解説とかしてほしいんですけど…。
・今日聴いた曲
吉祥寺に到着してから、七尾旅人さんの『ロングボヤージュ』を聴き始めた。
一時間以上ある大作アルバムだけれど、通して聴きたいと思っていたので、一時間以上途切れずに音楽を聴いていられるタイミングを選ぶ必要があった。
吉祥寺駅から井之頭公園を抜けてジブリ美術館に至る。
この道を歩くのは何度目になるんだろう。多分20回以上は来ていると思うのだが…。
七尾旅人さんの1stと2ndは好きすぎておいそれと聴き返せない。
それ以降の作品も好きなのだけれど、何度も繰り返し聴くには至らない。
ああ、いや、正直に言うと、『リトルメロディ』がリリースされた時には金がなかった。
あとこのころ、七尾旅人さんが、けっこう脚光を浴びてきた感じがあった。
俺がその頃好きではなかったサブカル圏内で知名度をメキメキと増していったように思えた。
俺の七尾旅人さんじゃない、と俺は思った。あほすぎるんですよね、俺。
そんなわけで七尾さんから離れた。
前作Stray DogsはSpotifyで何回か聴いた。
大切な友人が「このアルバム良かったですよ」と教えてくれたから。
俺は「へヴンリィパンクというアルバムが死ぬほどいいんですよ」と言いたかったが、スノッブ感が出すぎると思うし、その頃Spotifyにはそのアルバムが上がっていなかったので、言わなかった。
でもいいんだよ、へヴンリィパンク。人生の一番つらい時期に一番聴いてた。
ジブリ美術館の土産物コーナーを巡回している時に、『停泊』という語りの曲が流れてた。
ウクライナの話に触れていた。
涙が溢れそうになった。自分でもわかってる、ウクライナのことを考えてないようにしていた自分がいることを。
何が正しいのかわからない。
逃げてはいけないことなんだと思っていたけど、自分で受け止めきれない。
みんながウクライナのことをどう考えているかわからない。
みんなこういう思いをしながら生きてるんだろうか。そうは思えない。
自分だけが、みんなに関係しているはずの問題について悩んでいるのは損失が大きいのではないかと思った。
考えないことにした。
けれど七尾さんは、そういうことを考え続けていたんだろうな、と思った。
宮崎駿さんもきっと考えているだろうなと思った。
けどジブリ美術館には人がぎちぎちに詰めかけている。海の向こうからも。
そして土産ものをたくさん買い込んで帰っていく。
多分ここにいる誰もがウクライナのことを考えてなどいないだろうなと思った。
どこにいても自分は孤独だなと思った。
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