目ん玉でかでか戦闘美少女映画アリータ:バトル・エンジェルの感想 +キャメロン論
2020/03/16
3月にアリータを観に行ったんです。
特別面白い映画じゃないだろうとは思っていたのですが、予告編がカッコよかったので、バトルシーンは映画館で観たほうがよさそうであると判断したためです。
内容自体はおおむね予想通りでした(笑)。
アリータはまぁまぁ面白かったよ、というのが感想になります。
すっげぇおすすめするわけではないけど、気になった人は観て損はないと思いますねぇ。
バトルシーンについても、超先鋭的ということはありません。
ただスピーディに展開するところは目にもとまらぬ速さで動くし、要所要所でスローな動きになるとこは面白いっすよね。
本作ではジェームズ・キャメロンが制作に名を連ねていますが、脚本は彼が書いたものをもとに作られているため、キャメロンっぽい部分が散見しました。
なんだか懐かしくなり、しばらく観ていなかったタイタニックとアバターを観返してみました。
あと、アビスは観たことがなかったので、初めて鑑賞しました。
そういうわけで、アリータの脚本で面白かったところと、キャメロン作品について書こうと思います。
キャメロンってすごい監督だったんだなぁと、あらためて実感しました。
タイタニック、めちゃくちゃ良い映画ですね。
だいぶ古い作品なので、あの映画の優れている部分もちょっとピックアップしたいと思います。
・娘を愛する父が、娘の可能性を抑制する
シュガーラッシュ・オンラインと、キャプテン・マーベル、あとアリースター誕生もそんな感じでしたけど、「父親が女の子の能力を制限しようとする映画」でしたね。(アリーとはタイトルも近いな)
近いモチーフを持つ作品が近い時期に公開されることってたまにありますけど、こういうのって偶然なんでしょうか。
社会が……特にアホな男が……女性が自分の可能性を広げることを阻もうとしている、ということなんでしょうかね。
ハリウッド映画って、公開される何年も前に企画を立てられるし、撮影されるずいぶん前に脚本が完成しているものです。
それが、2017年秋に端を発したハリウッドでのセクハラ被害者が声をあげる「Me Too」のような社会の流れと連動するというのは面白いことですよね。
面白いって言うと良くない事象ですけど……。
しかも面白いのは、アリータは脚本自体はずいぶん前に完成していたものであるというところです。
具体的に、映画のもととなる形に仕上がったのがいつかはわからないのですが、かなり古いのだそう。
それこそ2000年頃には、現在のタイトル名でインターネットのドメインが登録されていたそうなので、その時期には製作を進めていく目途が立っていたのではないかと。
・キャメロン映画の女性像は先進的?
それなのに、こんな先進的な女性観が示されているというのは、キャメロンのクリエイターとしての先見の明が尋常ではないことの証明でしょう。
パンフレットを読むと、キャメロン監督には三人の娘がいるので、父親としての女の子への想いがあらわれているということ。
父親は娘の能力を信じようとせず、彼女が自分の感情の赴くままに動くことを止めようとする。
けれど彼女は、彼氏と一緒に世界の様々な面を見て、自分のやるべきことに気付き始める。
彼女はパパが止めるのを振り払って、自分の判断で走り始める。
キャメロン監督、いいパパなんやなぁ……。
キャメロン監督は「少女が自分の衝撃的な過去に気付き、運命に向き合っていく物語は、同時に父と娘のラブ・ストーリーでもある」とコメントしています。
そうなんですよね、これってラブ・ストーリーなんですよね……。
本作で、お医者さん役のクリストフ・ヴァルツは、アリータのことを「エンジェル」とか「スウィーティー」と呼んでいるんですよ。
けっこうはじめの方から。
なぜ彼がアリータにそこまで入れ込むのかは後々明かされていきますが、これってちょっと泣けますよね……。
字幕を観ていると、エンジェルやスウィーティーのあたりは省かれて表現されていたので、ちょっと残念なポイントではありました。
・男はアホでヘタレ
アリータが恋に落ちた男の子が、サイボーグ化されて、勝手にじたばたあがいて死んでいってしまう展開……これはタイタニックにかなり似ていますよね(笑)。
最後の最後、天空のユートピアを繋ぐベルトから男の子が落下してしまうシーンなんて、構図がまんまタイタニックでした……。
男の子が上流の世界に行こうとして、死んでしまうというのはキャメロンの好きな展開なんでしょうか……。
男は高望みをするアホで、女は地に足を付けてしっかり生きていくっていうテーマ性が多いような。
いや、ジャックはそんなにアホではなかったけど、上流の世界に何度も侵入していって大変な目に遭うので……。
・別れかけてた男と女がくっつく話好きすぎ説
あと、キャメロンはなぜ男と女が分かれた状態でストーリーをはじめるんでしょうか……(笑)。
アビスがそうだし、トゥルー・ライズもそうだし……。
これってキャメロンの初監督作の『殺人魚フライング・キラー』もそうなんですよね。
フライングキラーは別の人が書いた脚本がもとになっているので、キャメロンがどの程度ストーリーにかかわっているのかは不明なのですが……。
初監督でキャメロンのストーリー展開の原型が出来上がってしまって、それがけっこう続いていたのでしょうかね。
トゥルー・ライズでは冷え切っていた夫婦関係が修復していく展開もあったので、「心が離れていた状態で始まるラブストーリーもの」はある意味完結したのかと思うのですが。
冷え切った二人が大混乱を経て、仲直りする……という展開はフライング・キラー時代から変わらないですね。
アバターも2から5まで製作が決定しているので、1でくっついた主人公とヒロインがどこかで一旦別れるかもしれないですね(笑)。
そう考えると、タイタニックで、ローズは初めから婚約者のことが好きではなかったんですよね。
その婚約者はローズを振り向かせようと(自分なりに)奮闘するけれど、それもむなしく彼女は去っていきます。
彼の立場から見てみると、けっこう寂しいラブストーリーではあるんですよね。
アリータの話が思ったより長くなってしまったので、いったんここまでにします!
そんなんありーた!?
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