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女性を顔で選ぶ男が『寝ても覚めても』の感想を書いてみた

   

『寝ても覚めても』面白かったですよ!
僕は日本映画を観てると、「もうちょっと濃く作ってほしい~」「役者の演技うざい~」とか思ってしまうめんどくさい人間なのですけど、全然不満なく面白く鑑賞することができました
細かいところまでしっかり作ってあるなと思いましたよ。
内容も良かったと思います。
細かい感想については箇条書きしていきますね。

・掛け合いのテンポ感
この映画で一番好きだったのは、役者同士の台詞の掛け合いがとても自然で、しかも面白かったところです。
ストーリーの流れに直接関係しなさそうな台詞もとても自然に出てきて、あっという間に話題は流れていってしまうんですけど、そこに間延び感が全然ないんですよね。
たとえば、脇役の春代のプチ整形にかんするやりとりとか……べつにストーリーの流れには関係ないんですよね。
ストーリーが関西で展開している序盤のパートは、なんか僕が嫌いな日本映画感が出てて正直好きになれなかったのですが、亮平が登場してからは特にやりとりが軽妙で、けど時に冷静なツッコミが入ったりして、ふつーに笑っちゃいました。
劇場でも笑い声が上がってましたね。
笑えるシーンが上手く出来てる映画が大好きです。
すごく好きだったのが、串橋がマヤさんに煙草を吸ってないか疑われてるところに、亮平が「日ごろの行いやろ」ってさらっといじわるを言うところ。
ここは、脚本として非常に練り込まれていてよく出来ているとは言わないのですが、最後の亮平の台詞の「さらっと」感が良かったんです。
撮り方も、喋る人の顔をわざわざ写そうとせずに自然に撮られてて全然わざとらしくない。
監督は役者の演技や、演技の撮り方をすごくこだわる方のようなので、そのこだわりのなせる業なんですかね……。
この映画の「空気」、僕はすごく好きです。
けどこの褒め方、「減点している作品と比較すると、良い」みたいでなんか嫌ですね……(笑)。
純粋に、脚本と撮り方と演出のどれもが上手くいっていると感じたんですよ!

・途中まで、好きじゃない映画だと思ってました
くっしーという、主人公(?)の同僚の男の子が、マヤちゃんという役者の女の子のことを痛烈に批判するシーンがありました。
あのシーン、とても痛ましかったです……。
ただ僕は、ああいう、「すげー嫌な奴が主人公たちを叩く」というシーンが嫌いなのです。
浅野いにおっぽいというか、すごくわかりやすく「自分たちに対してすげー嫌なことを言う奴」が出てくる作品ってあまり好きではないんです。
日常で生活していて、そんなにダイレクトに「嫌なこと」を言われることってなくないか? と思うんですね。
(宮台真司さんが「平成は被害妄想と誇大妄想の時代だった」と発言されたそうですが、被害妄想が具現化する妄想をしているという意味では「被害妄想と誇大妄想」強いなーと思ってしまうんですね。私は)
あと日本に顕在化しているレイシズムの一種だと思います。
日本は単一民族国家だと思われているし、特定の宗教信仰がない国だと思っているようなので、(実際には違うと思いますが)
特定の属性(キャラと言ってもいいです)の人物像を悪役やいじり役に仕立てていて嫌なんですよ。
初期~中期の浅野いにお作品で言うとオヤジ・ヤンキー・オタク・中年サラリーマンの扱いはほとんど同じじゃないですか……。

話が大幅に逸れました!

ですがこの作品でうならされたのは、そのシーンを、主人公たちが大人っぽくおさめていくところです。
大人!
と思いました。
仲直りのシーンがわざとらしかったりすると興ざめしたりするものですが、ここはよかったですよ……。

抽象的な話ですが、この映画は「絆」が勝つ映画だと思うんですね。
「絆」がどんな過程を経て生まれて、育まれていくものなのか、このシーンは一つの象徴として描かれているはずです。
マヤさんはここで「思ったことがあるならはっきり言ってほしい」と言います。
「楽さ」を選ぶなら、ここで帰ろうとしたくっしーから言葉を引き出す必要はありません。
実際に、結果としてくっしーから痛烈な批判を受けます。
(くっしー、そんなに怒るか……?という疑問は正直あるんですけど……)
しかし朝子がそれに反論し、亮平がくっしーをいさめることで、くっしーは「自分が夢を挫折したせいでひどいことを言ったのかも」と告白します。
こうした修羅場をくぐってもなお繋がり続けていることで、絆は強固になっていくものなのだと言えます。
絆を築く≒人と繋がるということは、自分と向き合うことでもあるんですよね。
だからその後、二人はともに家庭を作るんですよね。(まぁよくある話っちゃ、よくある話)

この場面のことを思い出すと、多分最後のシーンの朝子と亮平も、その後はまたくっ付くんでしょうね。
「物語が終わったあとの二人はくっつくのか離れるのか?」と思わせる映画ではないので、別にそのことを書くまでもないのでしょうけど……(笑)
別れると思わせたいなら、ドアの鍵が開かないというところで終わらせたりすると思います。
家に入れてる時点で、二人が和解することを予見させます。
これも宮台真司さんがよく言うことですが、『「悪いことは何も起きませんよ」と言う奴よりも「悪いことが起きた時でもなんとかしてみせる」と言う奴の方が信用できる』とか、『トラブルが起きた時にこそ人の本性が出る』という話ですよね。

・ショッキングなシーン
朝子が、亮平との結婚を決めた後に、昔の恋人の麦と駆け落ちしてしまうシーン。
かなりショッキングな展開ですよね……。
正直僕は見ていてすごく嫌な気持ちになってしまいました……。
男にとっての悪夢でしょう、あれは……。

ただ、物語の流れの中で、あのシーンって上手く作られてるのかわからないんですよ。
「どちらの男を取るか」っていうテーマの映画とは思えない作りだったからなのかなぁ。
けどそういう意味では、「そういうテーマなんかい!?」って驚きを与えることに成功してるとも言えますし。
近年、映画では「そういう方向に行くんかい!?」みたいなジャンルをシャッフルしていくようなものも多いですし。

モノローグがないせいかもしれませんけど、朝子が麦のことをそんなに引きずる理由がわからないんですよね。。。
亮平と出会ったばかりのパートでは、麦のことを思い出すから亮平と逢うのを止めたのだと思うのですが、それは麦に去られてから2年しか経ってないし、わかるんですよ。
けど、亮平と付き合うようになってから5年、麦との別れから7年が経ったあそこで、ああいう選択をする理由がちょっとわかんないんです。

当然だけど麦のエピソードがすごく少ないし。。。(原作だと、もうちょっと麦のパートが長かったりするのかしら?)
「ふらっといなくなっちゃう生き物」として麦は猫っぽい生き物なのかな。
最終的には麦に別れを告げて、亮平のもとへ戻りますけど、そもそも最初から亮平から離れる理由が全然わかんないっす。
正直、朝子は麦のどこに惹かれてるのかわからない。
「強引なとこ≒グイグイ引っ張って行ってくれるところ」なんですかね。。。わからんわぁ。
なんとなく、防波堤の前でのやりとりを見ていて、麦の行動が行き当たりばったりでしかないってことがわかったのが離れる理由なのかなって気もするのですけど。
防波堤から海を眺めるっていうのは、亮平と一緒に住むはずだった部屋から河を眺めてたとこと被せてるのかな。
わかんない……。

・亮平の方がいいでしょ!
で、僕が言いたいのは、単純に考えて、亮平の方がイイ男ではないですか? ってことなんです。
「恋愛対象として見るならこっちだけど、結婚相手として選ぶならこっち」
とかって見方ができるものならわかるんですけど、恋愛でも結婚でも亮平でしょ!(笑)

ルッキズム丸出しでお恥ずかしいのですが、「麦のほうが亮平よりもカッコイイ」ならわかるんですよ。
けど映画では一人二役だし、朝子を迎えに来る時の麦は亮平と髪型とか服装もそんなに違わないんですよ。
原作だと、麦と亮平の容姿は本当に似ているのかわからないわけです。
文字媒体なので、朝子の主観で「似てる」だけなのかもしれないわけですし。
けど映画では一人二役なので、「似てる」どころか「同じ」なわけですよ。
そうなると、容姿ではなく、それぞれの「人間性」と、朝子との「関係性」や「共有している記憶」を秤にかけて選んだと捉えざるを得ない。

麦はすでに俳優としてブレイク中なので、「売れないDJやってる彼が好きなの!」みたいな、クリエイター志望を支えたがる女の真理が働いたとも考えられないし……。
いや、けど、「ついにブレイクした彼が私を迎えに来てくれた!」という夢が叶ってしまったということなのかな……。
麦が俳優として売れっ子になっているという情報も、純粋な「恋愛感情」を描く映画だとしたら必要ないわけですもんね。
麦が「社会的に認められた地位にいる」という情報が必要ないのであれば、あの辺は必要ないですもんね。
クリエイターとか自由っぽい仕事をしている男が好きって話なのかな……。

という点もあり、「朝子がなぜ亮平を捨ててまで麦と駆け落ちするか」がわからないんですよ……。
それこそ、朝子は亮平だけではなく、マヤや春代との「絆」まで断ち切てしまうわけですからそれほどの決意を持って麦を選んだはずです。
決意ではなく衝動なのかもしれませんが……。
映画を観ていて、朝子が麦にそれほど強烈に惹かれていることがわかるところが特に見当たらないので、僕は腑に落ちないんだと思います。
麦はめちゃくちゃ強引で自我が強くて他人なんておかまいなしで、しかも思考回路がどうなっているのかよくわからない……。
まあ、結局恋愛の話なので、「そういう男が好き」なのかもしれないですけどね。

・一人二役
「顔が似てる人が出てくる作品」を映画化するときっていくつか方法があると思うんですね。
今回みたいに一人二役で撮ることもあれば、ちょっと顔が似ている俳優を二人に演じさせるものもあります。
海外だと、役者に体格が似ている人に演じさせて、あとから顔だけCGで合成していくこともあるみたいですね。
ソーシャルネットワークのウィンクルボス兄弟とかそうして撮ったと聞きます。
(日本映画じゃそんなお金の使いかたはできなさそうだけど……)
そんな風にいくつか手法がある仲で、一人二役で撮ることにしたからには、そこには訳があると思います。
一人二役の方が作るの大変そうだし、麦と亮平それぞれに若干タイプの違うイケメンを配役すればその分集客を望めるんじゃないかと思いますし。。。

たとえばこの作品が「綾瀬はるかと上戸彩、どっちをとるか」みたいな映画にしてあったら、私はかなり悩んだと思います。。。
ルッキズム丸出しで申し訳ないのですけど(そしてパッと思い浮かんだ女優二人がどっちも巨乳なあたり私がおっぱい星人であることが丸出し)
もちろんそんな選択肢もあった中で、あえて「一人二役」で製作することを選んでいるはずです。

・俺が男だからショックなのか?
これは単純な話で、男が振られる映画だから、僕はショックを受けたのではないかという話です。
男として生きてきたので、男の目線から描かれる作品に触れることが多かったわけです。
だから、男が誠実に生きていても、女性から理不尽に別れを突き付けられることがある……という現実を見せつけられることに抵抗があったのかもしれないですよね。
そう、この映画がこんなにショックなのって、あのシーンに至るまでに、登場人物たちが現実にいそうで、起こっていることが現実に起こっていることのように感じさせることに成功しているからなんですよね。
何も感情移入できていなかったら、あのシーンだって、ただのフィクションなんだからい屁とも感じないはずなんですよ。
あそこでショックを与えることに成功した監督に拍手を送りたいです。
多分僕は、朝子の立場が男で、亮平の立場が女だったら、こんなに精神的なダメージを負わなかったはずです(笑)

・原作だと朝子は嫌な女?
原作を読んだ人に話を聞いてみると、原作では朝子が「嫌な女。行動原理が全然理解できないし感情移入もできない」とのことだったんです。
朝子の職場の女性を心の中で嘲笑うシーンなんかもあるみたいです。
考えてみるとこの映画は登場人物のモノローグはないし、わかりやすい説明台詞もないので、「本当に何を考えているのか」ははっきりとはわからないんですよね。
原作を読んでみると、朝子のことはもうちょっとよくわかるかも……。
けど原作には震災絡みのエピソードもないというし、映画の朝子と小説の朝子はもうすでに別人格なのかもしれないですね。

・プチ整形のエピソード
プチ整形について無理やり気味に解釈すると、春代は自分がもともと持っていた顔の造詣に執着がないから整形ができる……つまり自分が持つ固有の属性に執着をしない人と解釈できると思います。
だから、彼女は、朝子が劇中にかなりショッキングな行動を起こした時も、肯定的なメッセージを送ることができたのかもしれません。
ある意味で、軽いことを悪いことと捉えていないというか、一つの物をこだわって持ち続ける必要性を感じていない人だから、自分の感情次第で、パートナーを選択することを春代は否定しないのではないでしょうか。
結婚相手がシンガポール人だという話も、自分が生まれた国や土地にあまりこだわっていない性格や価値観だからできたことなのかなとも思います。
(「やっぱり子どもを育てるなら日本だなと思った」という台詞もあったので、今自分が書いた内容に反するようにも思うのですが……けど「日本だなと思った」のは「治安も良いし」という、メリットがあるからと語っていたから、別に大きく外れるわけではないか。

自分でも確たる根拠を持てないまま書いていますが、「同じ顔を持つ二人の男」への感情に引き裂かれる話なので、「顔を変える」というエピソードが挿入されることには意味があるはず。
そういえば、あそこで、亮平も親不知を抜きに行くみたいな話をしていましたよね。
親不知の抜歯も、広義では整形手術に入るのかも。
「自分の中にずっとあって、気になるもの」……朝子の麦への想いの暗喩なのかもしれないです。
それを抜くわけですからね。

・音楽
トーフビーツが音楽を作っていることも話題になっていましたね!
劇伴はフツーでした!(笑)
けどエンディングテーマはすごく良かったです。
意外と(というと失礼だけど)トーフビーツは歌詞が良いですよね。

・この映画は傑作なのか?
まぁ、そんなSNSの感想程度に感情を揺さぶられてしまう自分がちょっと嫌だったりはしますが……。
僕は特に傑作とは思わなかったです。
本当によくできていて、「足りない」と感じる箇所はなかったですし。
佳作といった言葉が自分としてはしっくりきます。
しかし大根仁とか福田雄一みたいなゴミ映画量産機が跋扈している日本映画業界においては、この監督の登場は僥倖だし、この映画がちゃんと話題に上ってくるあたりは希望が持てますね!
がんばれ!
日本映画!

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