目
自分の目が好きになれない。
そもそも顔全体が好きではないのだが、特に目だ。
自分の顔面は左右が非対称になっていて、歪んだ形をしているのだけど、それは目に顕著で、左が二重っぽく、右が一重っぽくて腫れぼったい。
人の顔面を見る時に顔面の左右対称性に注目する人はあまりいないとは思うが、自分では気になる。
人の顔の中で一番印象が強いのは目だと思う。(欧米では口元の方が見られるとかも言いますね)
自分も人の顔を見る時は、目をよく見ている。
まぁ、この2年は常時マスクを装着しているので、否応なしに目の印象は強まっているとは思うのだが。
自分が自分の目の形について初めて意識するようになったのは、小学校低学年の頃だったと思う。
僕の父と兄は家の中で日常的に暴力を振るっていて、いつも些細なきっかけで殴る蹴るの暴行に発展していたものだった。
暴行が始まるきっかけは本当に些細なことばかりなので思い出すことすらできないし、ただ一度殴られたら終わりではなく、だいたい何十分もその時間は続いて、僕は声が枯れるまで泣かされ続けることになる。
今にして考えてみたら、あの家庭はもっと早く解体されるべきだったし、誰か周囲の大人が僕をあの家から引き離すべきだったと思うのだけど、そうはならず、僕はそんな風に「お前に非があるからこうされて当然だ」という彼らの理屈を受け入れながら育ち、大人になるまでそれが異常な環境だと判断することができなかった。(昭和は今よりも暴力がもっと一般的であったようにも思うので、今のような暴力が超異常行為と認識される風潮になる節目の時期だったのかもなとも思う)
虐待を受けている子どもが「自分は虐待を受けていない」と本気で思い込んでしまうということは、よくあることらしい。
そんなわけで僕はその日も、いつものように兄から理不尽な理由で殴られて問い詰められていたが、その時に「睨んでんじゃねーよ」とさらに殴打された。
その後父親が仲裁に入ってきたのだが、「怒ってる相手のことを睨みつけるお前が悪いよ。駅でたむろしてるチンピラのことわざわざ睨みつけたら、相手は怒るだろ。それと一緒だよ。だいいちお前は目つきが悪い」と話していた。
その理屈に対しては子どもながらに、言っていることがおかしいと感じた。
目つきが悪いのはもともとのことだろうし、今にして思うと僕の目は泣きはらしたせいで腫れていただろうし、いつ殴ってくるかわからない相手と向き合わないといけない時に、顔をまっすぐ相手に向けることはリスクが大きい。
自分の記憶だと、そういう状態では少し顔を下に向けていたと思うので、その状態で兄の顔を見た時には睨むような目つきに見られたのかも知れない。
だいたい理不尽な理由で暴力に曝されている状態で、どうやって、相手に対しての敵意を隠せというのだろう。
その後、別の日に父親殴られていた時にも「お前の目が気にくわないんだよ」と言われた。
多分僕は父の遺伝子を継いでいるはずなので、僕の目がこういう形をしているのは彼と母のせいだと思うのだが、彼の中ではそういう理屈は成り立たないようであった。
もしかしたら僕が本当に自分の子であるかを疑るような心境もあったのかもしれないが、それはもう確かめようのないことだ。
自分が自分の目のことを意識するようになったのは、二人からのそのような言葉がきっかけだったと思う。
今にして考えてみると、だいたいの場合家には両親と祖父母がいたはずだが、どうして誰も僕のことを助けなかったのだろうと思う。
今さら家族全員に「どうして暴力を振るわれている子どもを助けようとしなかったのか」と確認するわけにもいかない。(いや、確認すればいいのか。気になってるなら)
けれどたまに父に対して、母と祖父母が三人がかりで反抗するようなことがあり、家族が全員怒鳴り合っているような事態にも発展していた。
子どもながらにものすごく恐ろしい状態だった。
子どもは何かよくないことが起こると、それがどのような事象であれ、「自分のせいで起きているのかもしれない」と思うようだ。(ブルーハーツのチェインギャングはまさにそんな心境を歌っているはず)
僕が家族のことを信頼できない理由はこういうところにあるのかもしれない。
大人になってから、宮崎駿さんがもののけ姫を作った動機として「子どもたちが、自分の存在を世界から祝福されていないと感じている」という想いがあったと本で読んだが、僕は家族の状態からそんなことを感じたのかもしれない。
多分父は僕と兄のことが心の底から憎かったのだと思う。
(父が僕と兄に向けて「お前らが殺し合えば済むんだよ」と言ったことすらある。普通の神経では言えない言葉だと思う)
自分の目のコンプレックス一つとってみても、こんな風に嫌な記憶と結びついている。
人のコンプレックスには、大なり小なり、このような刷り込みがあるのではないかと思う。
たとえば、女の人に「かわいい」と言うと、「でも私、親からは「あなたはぶちゃいくだね」って言われてましたよ」と返ってくることがある。
「私スタイル悪いから」と自己申告してきた女性に「別に悪くないと思うけど」と返すと、「私足短いんですよね。この前も家に帰るのが遅くなったら、親から「お前は足が短いから歩くのが遅いんだよな」って言われました」と言われたことがある。
ショートヘアーにしてきた女性に「ショートが頭の形に合ってますね」と言うと、「お母さんからは頭がボコボコしてるなって言われるよ」って話が出たこともあった。
女性の方が、ルックスについてネガティヴな言及を受けることが多いのだろうと思う。
自分が子どもと接するときに、容姿について何か思うことがあったとしても、マイナスなことは特に伝えようとは思わない。
岡田斗司夫さんが、「美人は親から呪いを掛けられる」と話していたことがあった。
親は自分がこれから老いて美しさを失っていくので、子どもが美しい容姿をしていると恨めしい気持ちが湧いてきて、ネガティブな言葉をかけてしまうのだとか。
そのロジックが正しいかはわからないけれど、女性の方がそのようなけなしを受けた人は多いなとは思う。
話が逸れた。
人から「目が優しいですね」と言われた時に、「目つきが悪いって言われて育ったよ」ととっさに返した自分がいた。
その人に、自分が父と兄から言われたことを話すと、「えー、それかわいそうですね」と相手は言ってくれた。
僕は自分が許されたような気がした。
自分がかわいそうだったと、自分でも思う。
そんな風に、言葉で傷つけられた心が、いつか誰かが、直接僕に向けてくれた言葉で癒やされる瞬間がある。
僕は頭が悪くて性格も悪いから、人からの言葉を素直に受け取れずに、一度その言葉と距離を取って時間を空けなければ、その言葉が自分にとって本当はどんな意味を持つのかを判断することができない。
有り難いことを言ってもらえたなと今では思うけど、その人に感謝が伝わるような反応ができていたか、記憶は定かじゃない。
ただ僕は、自分の容姿を好意的に見てくれる女性に惹かれる傾向があるように思う。
本当は自分の容姿のことなど気にせずに、人が自分の容姿のことをどう思っているかなんて想像をせずに生きていられればいいのだろうけど、そうはなれない。
34歳になってもこんな記憶に捕らわれ続けているのもどうなのだろうと自分では思うが、他人から「そんなことまだ恨んでるの?」とか「昔のことなんて忘れたほうがいい」とか言われると、あなたは同じ経験をしていないだろうと言いたくなる。
人の容姿を完全に否定する気持ちが自分の中に起こることがある。
自分がされて嫌だと思ったことを、僕は他者に対してしでかしそうになってしまう時がある。
醜くて邪な心の持ち主だと認めざるを得ない。
僕はいつもこういう、自分の中にあるどうしようもない嫌な記憶に捕らわれていて、思考する時間のほとんどはこういった負の感情に費やされている。
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