てやんでい!!こちとら湘南ボーイでい!!

映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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死にはぐれた意味 220824

   

『恋する惑星』を川崎の劇場で観た。
平日昼間だが客席はけっこう埋まっていた。
映画の前半の展開があんまりよくわからなかった。
後半に繋がってくるのかなと思ったけど、後半には繋がってこなかった。
すっごい変な映画だけど面白かった。
脚本も、フェイ・ウォンが犯罪行為を喜々として行っているけど、彼女がワルくならないように工夫されているなと思った。
どうやってこんな変な映画を思い付くのだろう。
ウォンカーワイ映画、2045以外は全部鑑賞したいところである。
不思議な空気の映画。
映画に不思議な空気をパッキングすることは難しい。
どうやって考えるんだろう。
こういう空気の作品にしようと思って脚本を書いているのか、撮れた映像がそういう空気になっているから残したのか。わからん。

映画館を出たら雨が降っていた。
天気予報では雨が一時的に降ると書かれていたけど、家を出るときは天気が良かったので、折りたたみ傘しか持たずに出てきた。
自分は身体が平均よりも縦長なので、普通のサイズの傘だと足下が濡れてしまう。
そのため、大きめの傘を持っているのだけど、折りたたみ傘は、普通の傘よりも小さいものしかない。
けっこう雨脚は強かったので、足下が濡れる一日に成ることがここに確定した。
折りたたみ傘で、長いものなんてないと思うのだけど、折りたたみ傘なのに広げると80センチ以上のサイズになるものがあれば是非ほしい。でもそういうのって存在してても高いんだろうなぁ。

渋谷に「かこさとし」展を見に行った。
かこさとしさんの絵本を子供の頃に読んだことがあるという人は多いのだけど、僕は存在を知らなかった。
4年ぐらい前に、友だちと一緒にジブリ美術館に行った際に、美術館内で「図書館」という名称の部屋があって、そこは絵本や児童文学を扱う書店になっている。
そこで「からすのパン屋さん」が紹介されていたところ、友人が「有名な絵本ですよ」と教えてくれた。
その頃の僕は、親戚の子どもの知育によい絵本を探していたので、「かこさとし」の名前をメモって、後日地元の図書館で読んだりした。

今回、展示会があることを知って、「だるまちゃんとてんぐちゃん」の絵本を読んだ。
こちらの方が好きだなと思った。

展示会にあたって、「絵本を通して届けたかったこととは」といったキャッチフレーズがあったのだけど、それを見ると、「堅苦しい教義を押しつけられそう……」という懸念を抱いた。
多分、お堅い感じの「資料館」とか地元の「美術館」にあるような、堅い感じを想像していたのだと思う。
ただ、Bunkamuraの展覧会なので、やはり、その分野に疎い人でも入りやすいようになっていたっぽい。

かこさんは、幼い頃に航空士を目指していたが、その夢が叶わなかった。
しかし、第二次大戦を経て、戦争に加担しようとしていたことに罪悪感を持つようになったのだという。律儀なお方です……。

その後、(たしか)工場で仕事をするかたわら、紙芝居を作って子どもの前で読み聞かせるようになったとのこと。
子どもは、面白くなかったら全然見向きもしないけど、面白い時には黙って聞くしリアクションも大きくなる。
それを見て、子どもに、二度と戦争を起こすような間違いを犯してほしくないといった信念を絵本や紙芝居を通して伝えたいと思ったのだそう。
工学や化学の知識にも長けているので、そういったものを伝えるような絵本も多かったもよう。

有名な作品の可愛らしい絵柄のイメージを持っていたのだけど、そういった可愛らしさを確立させるまでの絵柄の変遷がわかって興味深かった。
やはり「自分のスタイル」を確立させるまでには試行錯誤や紆余曲折があるんだなと思った。
普通に、絵がめちゃくちゃ上手だった。
お笑いにしろ音楽にしろ、「自分のスタイルを確立している人」って、それだけでもう、そこに至るまでに時間を費やして努力してきたのだろうなと思う。

だるまちゃんとてんぐちゃんでは、てんぐちゃんのことを羨ましがっただるまちゃんが、家に帰ってだるまのお父さんに「天狗の鼻」「下駄」「うちわ」をせがむのだけど、お父さんが用意してくれるものが、だるまちゃんの欲しいものとはちょっと違うというおかしみのある展開が続く絵本だった。
だるまのお父さん(だるまどん)は、息子が欲しいものを用意してあげられたつもりだから、ちょっと満足げな笑みを浮かべている。その様が面白くてかわいかった。
解説によると、「かこは不器用だった自分の父を重ねていた」とのことだった。
不器用でも父親になっていいのかもな、と思った。

かこさんは、明確に、第二次大戦へと突き進んだ日本を間違っていたとの想いを持っていたようで(この世代の方はみんなそうだろう)、「子ども達には自分の頭でちゃんと考えるようになってほしい。その手伝いをするのなら死にはぐれた意味もある」との思いで、子どもに向けて作品を作り続けていたそうです。
「死にはぐれた」という言葉を初めて目にした気がする。『紅の豚』で、ポルコの仲間の飛行機がどんどん高度を上げていき、ポルコが取り残されるシーンを想起した。
『未来のだるまちゃんへ』という本からの発言の引用が多かったようなので、この本は後日図書館で借りるなどして読みたい。

僕は宮崎駿さんのことが大好きなのだけれど、似ているなと思った。
あの人は一族が飛行機の部品工場を営んでおり、戦時中にはお金が儲かっていたという。
そうして富める身であった自分に罪悪感を抱えながら思春期を過ごしていたとか。
「子どものための作品作り」をするようになったのはアニメーターとして就職して以降のことのようだけど、高畑勲さんとタッグを組んで作った「パンダコパンダ」などは、劇場で公開された時にどんな様子で受容されるかを覗きに行ったところ、子どもが大人しく画面に釘付けになり、面白いシーンでは笑いが起っていたことを、宮崎さんは喜んだという。
「子どもはつまらない映画だとじっとして居られずに劇場を駆け回る。面白い映画だと黙って観てくれる」とのような、子どものリアクションは信用出来るといった発言もあったと思う。
多くの子どもは作品に対して素直だ。(もちろんわざとらしい仕草をする子どももいるだろうが、ただ、劇場では、自分のリアクションを人に見せるような意識は働きにくいだろう)
この後書くけど、大人のリアクションは、「自分のリアクションがどう見られるか」を計算に入れていることが多いと思う。
特にお笑いの劇場だったり、狭いライブハウスだったりと、演者と受け手の距離感が近く「関係性」がほぼ可視化されているような状態では、なおさらそうだと思う。

僕が、「子どものために作品を作っている人」「子どもに向けて語りかける作家」が好きなのは、僕が子どもの頃に、親が僕に教養らしき物を与えてくれなかったことが一因なのかもしれないと思うことがよくある。
宮崎駿さん、高畑勲さん、ミヒャエル・ハネケ、ダルテンヌ兄弟、時々是枝さんなど。
みんな優しくて頭が良い。

展示の最後に、かこさんの晩年のインタビュー映像集のようなものがあった。
インタビュアーがかこさんに「この作品のメッセージは」と質問していた。
作品のメッセージは、という安易な質問は、多分、昔はなかったんじゃないかなと思った。
「一言にまとめろ」って、リクルートとか電通が広めた文化なんじゃないかって思ってしまったり。

お土産コーナーでお土産を買おうか迷った。
カラスのパン屋さんのぬいぐるみを買いそうだったけど、我慢した。
展示会の限定グッズが意外と少なかった気がするので、ほしくなったらネットとかでまたいつか買えそうだなと思ったりなどした。

総じて思ったのは、かこさんのように苦労しながらも努力を続けて、良い作品を残すべく生涯を捧げたような人がいる一方、あまり努力しない創作家もいる。
前者の方が多くの人から選ばれるのは当然と言える。残酷ながら。
とはいえ、どんな表現や創作物に触れるかは受け手が選ぶものであって、受け手が何を選ぶかの基準もそれぞれではある。
ただ研ぎ澄まされた表現や作品の方が、人に面白がられる確率は上がる。
また、研ぎ澄まそうとしたかどうかは、表現や作品そのものにも如実に表れると感じる。
僕は、質の高い表現や作品を追求している人の方が好きだ。
質の高さを追求しようともしていない表現や作品に触れている時間はないと思う。
「自分に合うかどうか」が基準でしかなく、質の高さをみんなが求めるわけではないことも理解はしている。

お店で夕ご飯を食べた。
注文した飲み物がティーカップに入れられていて「2~3分経ったらグラスに注いでください」と言われた。
2~3分を感覚で測るのが難しいなと思った。
インスタント麺食とか、電子レンジの温めとか、「3分」を測ろうとしても誤っていることが多い。
体内時計に自信がない。
スマホで時刻を確認したら「21分」だったので、23~24分ぐらいに注げばいいやと思った。
一緒に居た相手に「2~3分の感覚ってわかりますか?」と尋ねた。
相手は「わかる。測るのは任せて」と言った。
しかしその直後「お手洗いに行ってくる」と言って席を立ってしまった。
2~3分計測請負の直後の出来事であった。
3分が経過しても相手は戻らなかったので、僕は自分と相手の分を、それぞれカップに注いだ。
戻ってきた相手は「あれ?」と言った。
3分経過しても戻らなかったから、にがにがの飲み物を飲む姿を見たくなかったので、注いでしまったと言った。
「ちょっと濃い目のを飲みたかった」と言われた。
悪いことをしてしまった。

靴のサイズの話になって、「田中さんは足のサイズってどれくらい? 25センチくらい?」と聞かれた。
僕は身長が182センチある。
概ね足のサイズは身長に比例すると思う。体重重いのに足が小さいと、小さい面積で身体の重みを支えなければいけなくなるので。
「28から29の間くらい」と答えたら、相手はすごく驚いていた。

渋谷の劇場にナダルさんが出演するとのことだったので見に行った。
ナダル軍団の団員にあたる芸人プレゼンツ企画とのことだった。
芸人プレゼンツのイベントというものがあるのだなと思った。
女性が50~60人ぐらいいたと思うが、それに対して、男性客は僕を含めて3人だった。
オウ……。
これは、まぁ、「男客が付かないと本物ではない」とか言われるのもまぁ納得と言えば納得な状況だなと思った。
あと、舞台よりも客席が上にあるタイプの席だったのだけど、めっちゃ短いスカートはいてる人が多かった。
目のやり場に困るであろうと思った……。
若い女性も多かった。
懇意にしていたメンズエステのお姉さんが、劇場で出待ちして、某お笑いコンクール優勝芸人のカキタレになったという話を思い出して泣きそうになった。

ナダルさんは面白かった。
ただ、イベント全体で笑いが起っている時、僕は特に面白みを感じない瞬間も多かった。
笑っている人がみんな、どの程度面白くて笑っているんだろうと思った。
かこさんや宮崎さんの、「子どものリアクションは素直」というのがわかる気持ちだった。
舞台に立っている芸人さんも、本当に面白かったのがどこだったのか、わかるんだろうか。
インディーズナイーヴギターロックバンドのようなもので、熱烈な異性ファンを引き寄せてしまい、結果的に、何をやっても一定数のファンが絶賛してくれるがゆえに、表現したもの作ったものの善し悪しの判別がつかなくなってしまうような現象にも似ているだろう。
おそろしや。

自分の生活の中に、お笑いに高いお金を払うという習慣は根付かないだろうなと思った。
これから海外の音楽家の来日公演が、コロナ禍前と同じように開かれるようになる可能性が高いので、可処分所得はそちらに回さなければいけなくなりそう。

イベントは一時間あったのだけど、30分目ぐらいで客席の扉が開いて、一人のお客さんが入ってきた。
なんとなくだけど、「遅れて入ってくることで演者の視線を集めたい人っぽいな」と思った。
なんとなくですけど。
いろんな形で、「演者の興味を惹く」ことをしないといけないって大変だなと思った。
また、「同じ演者のことを愛好しているファン」にもなんらかのアピールをせねばならないわけであろうし。
不思議。世界って。

・今日聴いた曲
聴いてないんですけど。
『恋する惑星』というタイトルをパクってきて、「ラブリープラネット」ってコーラスを入れる神経はさすがに、冒涜しすぎだと思う。(しかもPVでは「ラブプラネット」と文字書きしてある。文字間違えとらん?)
日本のサブカル業界の、海外の作品や作家を安易にパロディする風潮って本当に嫌い……敬意がない。それどころかこき下ろしていると思う。サマソニの海外アクトをいじる日本のミュージシャン達の問題と根っこは同じなんだろうな。
あと花澤香菜さんは、初めて付き合った女の子に顔が似ているので、見ていると泣きそうになる。嗚呼。死にたい。

 - 日記

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