てやんでい!!こちとら湘南ボーイでい!!

映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

*

MIKAインタビュー2007年(2)

   

ミーカのインタビュー転載、第二弾です。

前回→MIKAインタビュー2007年

日本版リリース前だった前回ではミーカのイントロダクション的な話を聞いていましたが、こちらではもう少し踏み込んだ内容になっています。

インタビューは基本そのまま文字起こしをしますが、僕の感想を(※)として文中に書き入れ、インタビューの文字起こしの下に感想を書きます。
原文のインタビューのテンポ感を失いたくないので……。

SNOOZER #61
インタビュアー:萩原麻理氏

●前回は、あなたの音楽がいかにこんなに折衷的になったか、という話をしました。実際、オペラからディスコ、ピアノ・バラッドまで、ありとあらゆるスタイルをポップに料理しているのに、不思議とビートルズ風の60sロックンロールだけがない。それは意識的に避けてるの?
「そうだね、意識的っていうよりは、本能的なものだと思う。僕にはビートルズへのオブセッションがなくて、むしろ何も感じないんだ。だってさ、考えてもみてよ。大阪でも東京でもNYでもロンドンでも、街を歩いたり、ごく普通に生活してたら、四六時中ビートルズの音楽にさらされて、攻撃されるじゃない? ビートルズへ引用や、ビートルズの歌詞、メロディ。一日何度もそういうのにぶつかるんだ。iPodのコマーシャルに映画のBGM、雑誌のフレーズ。そういうのに四六時中さらされて育つと、感覚を失っちゃうんだよね。で、そこから自分を切り離したくなるんだ。でも、僕の年齢だったら、同じように感じてる人達が大勢いるんじゃないかな。まあ、僕の音楽にはビートルズから取ってきてるものもあるんだけど。ビートルズで本当にエキサイティングだったのは……やっぱり、あのソングライティングのシンプルさは認めなきゃね。だって、それによって彼らは歌詞に力を与えたんだよ。ものすごく複雑なことを語ってるのに、すっごくシンプルな言葉と直接的なフレーズなんだよね。しかも、それがキャッチーなメロディに乗せられてる。そういったコンビネーションがメッセージを効果的に、パワフルに伝えるんだ。すると突然、すべての人々を包括するようなものになる。クリエイティヴなヴィジョンを妥協させることなしに。それってすごいことなんだよ。あと、プロダクションだよね。ビートルズは非常に多様なサウンドスケープを進化させていった。すごく洗練されてるのに、彼らはそれをオーガニックにやり遂げたんだ。僕が好きなのは、ビッグなサウンドのラジオ・フレンドリーなポップ・ミュージックなのに、すごくオーガニックだってところ。僕自身、永遠にそこからは離れないと思う。絶対にエレクトロニックなアルバムなんて作らないね。興味がない。僕にはオーガニックで伝統的なレコーディング・メソッドが必要なんだ。ヒューマンな感触を与えるために。たぶん、僕が取り入れてるのはそこだな。そう、僕は……ビートルズみたいに聞こえないポップ・ミュージックを作ってるけど、同時にすごく似た方法でレコーディングしてる。実際、彼らが使った同じスタジオで録った曲もあるんだ(笑)。LAのスタジオでね」
●あなたは独学で音楽を学んだんですよね?
「うん、ほとんどは。ロンドンの王立音楽院には入学したんだけど。でも僕、難読症があって、楽譜が読めないんだ。自分で読み書きするのも普段は難しいんだよ。だからピアノを弾くにも、自分でメロディを作らなきゃ、そもそも弾けなかった。そうやって作曲するようになったんだ。だってさ、僕の妹なんて楽譜をさらっと見てモーツァルトがぱらぱらって弾けるんだよ? 僕、すっごく嫉妬してさ。だから代わりに、自分でちょっとした曲を書いて。ひどい曲もあったけど……ありがたいことに、ちょっとずつ上手くなってきたんだよね(笑)(※1)」
●あなたの音楽はすごくハッピーでアップビートなポップ・ミュージックに聞こえますが、歌詞や歌い方には怒りや悲しみ、孤独感が溢れていたりもします。
「そういうものを曲の中で並列させるのって、すごく重要だと思うんだ。さっきも言ったけど、それによってメッセージがパワフルになるから(※2)。例えば、ものすごく悲しいこととか、落ち込むくらいシリアスなことを語ろうとするよね? そしたら、みんなが聴きたいと思うようなやり方で語らなきゃダメだ。だって、自分のメッセージなんてそもそも、誰も聴きたがってないから。自分が言いたいことに耳を傾けさせるためには、人を騙して引き込まなきゃいけないんだよ(※3)。例えば僕が“ロリポップ”を書いた時だけど、あれは僕の妹に『簡単にセックスしちゃだめだ』って言うための曲でさ。でもさ、ポップ・ソングで一番聴きたくないことって、『セックスするな』だろ?」

●(笑)。
「むしろみんながポップ・ソングで聴きたいのは、『セックスして、ドラッグやればいいじゃん。めちゃくちゃやったっていいんだ』ってことじゃん。で、僕がどうしたかっていうと、それを可能な限りダーティに聞こえる曲にしたんだ。『ロリポップを吸ってハイになれ、恋をしたら落ち込むんだから』って(笑)。ダーティにやったら、突然そのメッセージがパワフルになったんだ。『何退屈なこと言ってやがる、うっとおしいんだよ』って言われる代わりにね」
●そういったあなたのソングライティングは、どこから出てきたんでしょうか? すごくつらい子ども時代を過ごしたって聞いたけど……。
「そう、子ども時代のトラブルって、即座に人にパースペクティヴを与えるんだよ。何もかもスムーズにいってたら、何について書く?(※4) つまり、パースペクティヴの感覚とともに、サヴァイヴァルの感覚も出来るんだ。生き延びようとすると、自分の防御本能が働くだろ? その一つが、ミジメな時間をなんとかやりすごして、ちょっとマシなものにしようとすることで。そこから僕は、日常に魅了されるようになった。だって僕はずっと、自分の人生はあまりにもノーマルじゃないと思ってて。僕自身も全然普通じゃなくて……例えば、僕が学校で何か言うと、変人扱いされたりね(※5)。登校初日って、一列に並んで自己紹介したりするじゃない? 全員がそれをなんとかやっちゃうのに、僕は……自分ではノーマルなことを言ってるつもりでも、みんなに笑われたり、そのせいでイジメられたり。だからすぐに、僕は一緒のクラスにされた同級生から仲間外れになっちゃったんだよ。で、僕は『普通とされることって何だ?』って考えに魅了された。僕のインスピレーションはほとんど全部、毎日の生活から浮かぶんだ。前にも話したけど、僕はアンダードッグ、負け犬っていうのに惹かれてて。みんなの注目を集めるような人間じゃないけど、実際は周りにいるどんな人よりもスペシャルな人間にね。たとえ普通は目に入らなくても……そういう人って隅っこに隠れてるから。そう、僕は普通の人、気付かれないような人を取り上げて、ファンタスティックな存在にしたいんだ。ほとんどアニメやマンガみたいな、現実よりずっと素晴らしい別世界の住人に。たとえそれが3分半のポップ・ソングの中でもね。僕には彼らをそんな風にする義務がある気がする。それって、僕が僕自身にしてきたことだから。生まれてからずっと、僕はもう一つの世界を作り出してきたんだよ。だってさ、もし僕に音楽がなかったら、誰もこうやって僕にインタヴューしようなんて思わないよ! 僕は、誰かが話しかけたいと思うような人間じゃない」
●そんなことはないと思うけどな。
「でも、僕はつねに変人扱いされてきたんだ。ちょっと変な奴、ってね。だから僕は自分が住むためもう一つの世界をクリエイトしてきた。で、ありがたいことに、今はそれがうまくいってるみたいで(笑)」
●そう、あなたは「自分は孤独でちょっと変わってる」といった気持ちを書いているのに、それがあらゆる人、マスにアピールしてる。やっぱり、誰でも内側にフリークを抱えているというか。
「そう、僕……18歳になるまで僕をイビり続けてた連中のことを時々振り返るんだよね。彼らのせいで、僕の毎日は地獄だった。歩いてるとものを投げられるんだよ? うん、そういうのってひどいんだけど、今振り返ると変な感じなんだよね。だって、僕、彼らのことは憎んでいないんだ。むしろ、自分の生活を地獄にした人達にオブセッションを感じるくらい。どうしてかわかんないけど、すっごく魅力を感じるんだよ。たぶん、彼らが僕をイジメたのは、僕がすぐに人の一番弱いところを見抜いてたからなんだろうな。それがものすごい脅威だったんだ。だってさ、僕自身はものすごく自分の弱さに対してオープンだった。今でもそう。でも、彼らはそこに対してすごく閉鎖的で。だからある意味、僕は自分をイジメてたような連中に魅了されてるわけ。気付いたんだよね。イジメっ子さえ、内側で葛藤してるものがあるんだ、って。だからこそ、そういうフィーリングにありとあらゆる人が共感出来るんだと思う。ある意味、僕らはみんな人間なんだよ。池のアヒルじゃない」
●なんでアヒル?
「だってさ、僕、昔は公園に行って、『ああ、あのアヒルの一羽だったらよかったのに』って思ってたんだ」
●(笑)。
「本気だよ! アヒルだったらなんていいのに、って(笑)。特に学校に通ってる頃。僕、日曜の午後には父と母に連れられて公園に行ってたんだよね。家族の習慣で。で、『ああ、明日学校に行きたくないなあ。あのアヒルになりたい!』って思ってて」
●でも、今は醜いアヒルの子が白鳥になったじゃないですか。
「(にやっと笑って)でもさ、白鳥ってすごく獰猛なんだよね。怖い鳥なんだ。指を出すと、指を噛みちぎっちゃうんだから!」
●なるほど(笑)。でも、自分をイジメた人にまでそんな風に思えるなんて、やっぱりあながの音楽はスウィートなリヴェンジ、優雅な復讐なんですね。
「うん、スウィートなリヴェンジであり、分別のある復讐でもあるよね。こんなにすごい効果をもたらしたんだから(笑)(※6)」
●このアルバムで、私が好きな曲は“エニイ・アザー・ワールド”なんですが。この曲の前と後ろには、婚約者が他の女性と結婚し、その後爆弾で目を失う女性の語りが入っています。これを入れようと思った理由は?
「僕があの曲、“エニイ・アザー・ワールド”を書いたのは……ロンドンの大学の経済学部に入部して、1日で中退しちゃった頃なんだけど。それから僕は王立学院に入学した。自分はポップ・ミュージックを作りたいんだ、ってわかったから。でも僕はクラシック音楽の教育機関に入って……すごく才能のあるクラシックの音楽家達と一緒のクラスで、その状況を向き合わなきゃいけなかったんだ。成績なんて最低で、到底うまくやってるとは言えなかった。だって、僕にはクラシックミュージシャンになる気なんてさらさらなくて。単に時間を稼ぐために嘘をついてたんだよ。なんとかきっかけを掴んで、ポップ・レコードを作るまでの時間をね。だから学校ではつらい思いをしてて、デモをレコーディングしてはありとあらゆるところに送り付けてた。で、大抵はゴミ扱いされてさ。それに僕は無一文だったから、スタジオ代や生活費を稼ぐために夜はウェイターをやってたんだ。みんなが外に遊びに行ってるのに僕は家にいて、大学も普通の学校じゃなかったから友達がそんなにいなくて。ほんとにつらい時期だったんだよ。で、気付いたんだ。『僕は20歳だけど、今決めなきゃ。大人になるのと折り合いをつけるために、生活全部を変えなきゃいけないんだ』って。簡単じゃなかったよ。すごく大変だった。と同時に、僕はそれを歌にしたかったんだ。でも、わかりやすい曲にはしたくなかった。『ああ、僕は20代(トゥエンティ・サムシング)で、大変だ』みたいなことは歌いたくなくて」
●ええ。
「えーと、誰だっけ? ジェイミー・カラム(Jamie Cullum)だ。彼に、“トゥエンティ・サムシング(Twentysomething)”って曲があるよね?」

「いい曲なんだけど、やっぱり……全部そのまんまっていうか、何も訊くことがない感じでさ。それってつまり、歌詞を解釈する方法が一つしかないってことだよね? それはとにかく避けたかった。何をしてでもね。で……そのアイデアを形にしようとしてる時に、レバノン人の女性、ラファの物語を聞いたんだよ。戦争で目を失ってしまった女性の話をね。それで気付いたのは、人には何もかも変えてしまわなきゃいけないポイントが人生でやって来る、ってこと。当然と思ってたことが突然意味を失って、生き延びるためには再び適応しなきゃいけないんだ。僕自身は20歳で、生まれて初めてお金のこととかいろんな問題を抱えて、それをなんとかしなきゃいけないところに来てた。でも、38歳の女性が突然目を失って、家を失って、戦争のせいで母国を追われることだってある。彼女はまったく一人きりで、ロンドンで暮らしてたんだ。それでもサヴァイヴしなきゃいけないんだよ! それは同じフィーリングなんだ。誰の人生でもどこかのポイントでやって来るもんだと思う。当たり前と思ってたものすべてが奪われて、そのことに自分をもう一度合わせなきゃいけない。僕は、そのことをとらえたかった。ポラロイド写真みたいにさっくりとね。だって、結局のところ、クラシックの楽曲であれ、ポップ・ソングであれ、曲に与えられる深みなんてそんなにはないんだ。実際、期待できる深さっていうのは、唯一……その曲を聴いて、誰かがその人なりに解釈することなんだよ。だからこそ、最小のリリックしかないシンプルな曲が、大勢の人達にディープな効果をもたらしたりする。それしか期待出来ることはないんだ」
●つまり、あなたの曲はすごくパーソナルなところから生まれていながらも、それをシンプルで普遍的なものにしようとしているということ?
「そう。自分の作品をパーソナルなものにしすぎるのは、すごく危険だと思う(※7)。そう、僕には素晴らしい先生がいてね。美術の先生だったんだけど、彼には二つのことを習ったんだ。まず、いい絵を描こうと思ったら、その前の数ヶ月というプロセスの結果でしかないと。普通アートを見ると、『いい絵だな』と思って、自分でも描いてみるじゃん? そしたら最低な絵しか描けなくて。なんで他の人の絵は良くて、自分の絵はゴミなんだろうって考えるわけだけど、いい絵はその前の4ヶ月の努力の結果だからなんだよ。だから、まずはそのプロセスという考え方。と同時に、彼に教えてもらったのは、『me』や『I』という言葉を避けろということ(※8)。話すときに使うのはいいけど、書くとまた違う効果を持つんだ。そのアティテュードは絵を描く時でも同じ。自分じゃなくて、別の場所から見ようとしなきゃいけないんだよ。少なくとも、自分を自分のやってることから切り離そうとしなきゃダメ。それは曲を書く時も同じだと思う」
●でも、例えば他の人のストーリーを書く時、そこのフィクションと現実のバランスはどうなってるの?
「僕が書くのはフィクションなんだけど、全部どっか現実に根差してる。今、こんなにグローバルなコミュニティが発達してることの長所は、ものすごくクレイジーでイカれたストーリーを書いても、必ず誰かがそれを経験してるってこと。その人をインターネットで見つけられるんだよ。僕、そこが好きなんだ。だからフィクションなんだけど、全部が全部フィクションじゃない。誰かに起きたことだって僕にはわかってるからね。うん、僕、”フィクション”っていうのはもうありえないと思う。何であれ、実際の人々の身の上に起きてきたことだから。唯一の違いは、自分に起きたことか、他の人に起きたかだけだよ。フィクションは90年代に死んだんだ」
●なるほど。あなた自身が曲を書くときのきっかけになるものは何なんですか?
「テレビを観ててもインスピレーションはあるし、街を歩いててもある。僕は絶対に、アーティでヒッピーなインドに行ってインスパイアされる、なんてことはないね」
●(笑)。
「曲のきっかけなんて、バスに乗ってる時の方がたくさん転がってるから」
●じゃあ、最後に。“グレース・ケリー”で最後にあなたが言う「カチィーンガ」、あれは何?
「“グレース・ケリー”を僕がどうして書いたか、知ってるよね?」
●当時契約を結んでいたレコード会社にあれこれ指示されて、ムカついたっていう話ですよね?
「うん。いくら僕が仕事をしても、まともに取り合ってもらえなくて。つまり、とにかく必要なのはヒット曲なんだろ、って思ってたんだよ。ずーっと、『ヒットする曲を書け!』って言われてたから。僕はもう『あんた達アタマ悪いんじゃない?』っていう感じで。だって、ヒット曲なんて書けって言われて出来るもんじゃないしさ。で、僕、『とにかくカネの音がするものが聞きたいってことだろ? じゃあ書いてやるよ』って。つまり、音楽業界に対する僕のシニシズムから、『曲の中にカネの音を入れれば、お前らも満足だろ?』ってことであれを入れたんだ。ジョークなんだよ。でも残念なのは、それが実際、効果を持ったことで」
●ほんとにね(笑)。
「僕は怒ってあれを入れたのに。なのに今じゃ、それがヒットして、“カチンガ”効果を発揮してるんだ。うん、実に残念だよ(笑)」

※1 この難読症の話は次のインタビューでも出てきますが、ミーカにとって大きな困難だったのでしょうね……。
ましてや身近に、楽譜からすぐに学習できてしまう音楽家がいたらなおさら。
でもそれをバネにして努力してきたことも同時に伝わってきます。
同じくゲイであることをカミングアウトしているアーティストのルーファス・ウェインライトの来日公演に行ったことがあるのですが、MCで、「音楽の学校に通っていた時には、僕はピアノの成績が一番悪かった。でも今ではこうして、ピアノと歌だけのアルバムを作ったし、ピアノの弾き語りでコンサートをすることができている」といったことを話してくれたことがありました。
継続は力なり、の良い例ですね。
動画は、ルーファスがピアノの弾き語りのみで作ったアルバムの曲を、コロナ渦の「ステイホーム」で彼自身が演奏したものです。

※2 『パレイド』を筆頭に、夏川さんのいくつかの楽曲でも同じことが言えると思います。ただ、ミーカの方が、技術的には高等な印象。

※3 ミーカの方が高等だと思うのは、このように「多くの人に聴かせるための仕組み」をうまく取り入れているから。もちろん多くの人に聴かせる工夫をしない創作物があってもいいと思います。ミーカがこういう工夫を凝らすようになったのは、デビュー前のソングライターとして活動している時代に、「誰からも見向きもされない」経験をしているからではないかと推測します。対して夏川さんは、自身の名前で音楽活動を始める前から、声優としての活動やトライセールや歌モノコンテンツを通して「注目を浴びている」状態なので、双方の出発点は大きく異なるので、音楽を作る際の着想が違うのは当然ですよね。

※4 ここは、夏川さんも同じなのではないかなぁ。彼女は「スムーズではない」ことをそのまま歌にしていて、そこが僕は面白いと思うのだけど、もっとラフな曲が出てきても面白いと思うんですよね……。もっとラフに、どうでもいいことを歌う曲とかも聴いてみたいところ。「些細なことでも面白い作品に出来る」というのは優れた作家の条件だと思うので。

※5 ミーカはこんな風に、具体的に「傷」について言葉で語ります。
いじめの被害も具体的です。
夏川さんのインタビューとか全然読んでいないんですけど、彼女は『パレイド』で歌ったようなことを、どこかで具体的に語っているんでしょうか。
あるいは今も彼女を取り巻く「圧力」について、公の場所で語っているのかな。
あるいは近しい人にオフレコの場で打ち明けることができているんでしょうか。
彼女の歌詞の「抽象度の高さ」は少し気になります。
いや、もちろん、語りたくない経験なんて誰にでもあるので、表現者だからといった具体的に自分のことを語る必要なんてないのですけど、彼女の「見せるようで見せていない」スタンスって、あんまり他の人がやっているのを観たことがないので、気になるんですよね……。

※6 夏川さんは、1stでは「過去との決別」を試みているように思えますが、EPでは「復讐心」が芽生えているように感じます。
EPでは今彼女を取り巻いている状況への敵対心がチラついてきているので……。
でも多分、継続して担当している声優としての仕事を絶ったり、トライセールを止めたりしてでも「闘う」という選択は取らないと思うんですよね。
そこがなんかちょっと、EPに半端さや、ただの愚痴っぽさを感じてしまうゆえん。

※7 今の夏川さんに「ちょっとこの子危ういな」と思うのも、この辺がゆえん……。ミーカには「素晴らしい先生がいてね」とのことだけど、夏川さんにはそういうアートの導師はいるんでしょうか。
まぁ、音楽はうまくいかなくてもいいけど、彼女のことを理解して支えてくれる(ポーズじゃない)人がいてくれるといいのだけど。

※8 夏川さんはあんまり「私」とは言わないけど、歌の内容がかなりむき出しになっていますよね……。一人称は「僕」なのは一つの面白い特徴だとは思うけど。

第二弾の転載は以上です!
続いて、作品のクオリティを向上させることに成功した傑作2ndアルバムのインタビューとなります。

次→MIKAインタビュー2009年

 - ミーカ(MIKA), 夏川椎菜とTrysail, 音楽

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