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MIKAインタビュー2007年

      2020/08/06

ミーカの紹介エントリに続いて、スヌーザー誌で行われたミーカのインタビュー転載、第一弾です。

夏川椎菜ソロを考察するフレームとしてMIKAを紹介します
「愛」を肯定できず悩み続けるMIKA

日本盤リリース前ということもあり、イントロダクション的な内容になっております。
ミーカ、テンション高くてかわいいです。
インタビューは基本そのまま文字起こしをしますが、僕の感想を(※)として文中に書き入れ、インタビューの文字起こしの下に感想を書きます。
原文のインタビューのテンポ感を失いたくないので……。

SNOOZER #61
インタビュアー:田中宗一郎氏

(序文)
5オクターブの声域を持ち、驚異のハイトーン・ヴォイスを駆使する、このレバノン人の母とアメリカ人の父の間に生まれた、エキゾチックな顔立ちのベイルート出身の23歳のポップ・シンガーの噂は、もはやあなたの耳にも届いているだろう。もしかすると、このミーカという風変わりな名前のアーティストが英国ナショナル・チャートのナンバー1に送り込んだ、彼の1stアルバム『ライフ・イン・カートゥーン・モーション』をもう既に手にしているかもしれない。「アニメみたいにめまぐるしい人生」というタイトル通り、このアルバムに収録された十数曲のポップ・ソングは、バロック・ポップ、オペラ、ディキシーランド、キャバレー音楽、ディスコ、ピアノ・バラッドと――ビートルズに象徴される60年代ロックンロールだけは周到に回避しながら――めまぐるしくジャンルの壁を横断していく。流行りのインディ・ロックよりはカラフルすぎて、安っぽいポップ・ソングに比べると、はるかに奇妙で、ねじ曲がったミーカの音楽は、現在の英国ポップ・シーンにおいて、どうにも居場所がなく、明らかに異彩を放っていたと同時に、だからこそ、熱狂的に受け入れられた。
アルバムに先立ち、本国イギリスのナショナル・チャートのトップに輝いたデビュー・シングル“グレース・ケリー”は、まだ駆け出しのソングライターだった時代のミーカが、レコード会社のA&Rから、「ありのままの自分でいること」を否定されたことに寄るアイデンティティ・クライシスが表現されている。この曲を筆頭に、彼が書くキャラクター達の大半は、所謂スタンダードから食み出したマイノリティばかり。プリンスがそうであったように、モリシーがそうであったように、フレディ・マーキュリーがそうであったように、ミーカもまた、すべてのマイノリティの守護神なのだ。(※1)でも、やっぱゲイなんだろうな、この人。(※2)だって、最近のインディ・バンドの中じゃ、断トツにゴシップが好きだって言うんだもん。

(インタビュー本文)
●それにしても、現在みたいに未曾有のインディ・ロック・ブームが巻き起こっている英国において、当初から自分の曲がこんな風に熱烈に受け入れられることになることは、予想していましたか?
「いや。だって、こうやって、いろんなことがうまくいく前は、僕はインディ・シーンからあからさまに拒否されたからね。それも、僕がメロディに取り憑かれ過ぎているという理由でね。と同時に、僕は商業的な音楽シーンのレコード会社からも拒否されたんだ。ていうのも、ポップ・ソングでは歌うべきではないような奇妙なことを歌っているし、とにかく僕はおかしな奴すぎると思われていたんだよ(※3)。ま、実際に、そういう風に何度も言われ続けたわけさ(笑)。そう、僕はどのシーンにも育てられなかった。ほぼ強制的に、『ポップ・ミュージックとはどうあるべきか』、そして、『音楽とはどうあるべきか』について、僕自身の考えをまとめていかなきゃいけなかった。でも、こうしてようやく僕の音楽が受け入れられることになった理由は、これがすっごく正直に作られたポップ・ミュージックだからだと思う」

(中略)日本でも輸入盤しかリリースされていないのに、かなり話題になっているという話の流れ。

「それって本当にグレイトだよ。特に、僕みたいな人間にとっては。ていうのも、日本のことがホントに好きなんだ、僕。日本のポップ・ミュージックと日本のアニメのサウンドトラックの一大コレクションを持っててさ(笑)」
●そうなんですか?
「うん、ホント世界でも僕が一番好きなレコード・メイカーの一人が、『カウボーイビバップ』の菅野よう子でさ。『カウボーイビバップ』、知ってる?」
●(笑)アニメですよね。名前だけは。
「それに、日本のおもちゃや本もいっぱい集めてるんだ.グレイトだよ。自分が凄く熱中しているものがあって、その場所で、僕自身がキャリアを持てるかもしれないんだから。ラッキーだよね、僕」

●現在の英国ポップ・シーンに対して、あなたの音楽は、どういった種類の新たなオプションを提供したんだと思いますか?
「えーと、どう言えばいいのかな……。うん、そうだな、僕の音楽は、『興味深いポップ・ミュージックも作れるんだ』ってことを示せたんじゃないかな。ていうのも、90年代以降には、ある種のスティグマ、一般的になってしまった考えがあって。つまり、『ポップっていうのは何であれ、でっち上げられた薄っぺらなもので、商業的だ』って思われてきたんだ――ビジネスマンが作って、操り人形が歌ってきた音楽のせいでね。そう、僕がやってることは、『ポップの感性を持っていて、しかも、信頼出来る音楽もあるんだ』ってことを示してると思う。エキサイティングで、しかもアクセスしやすい音楽なんだ。ポップ・ミュージックの“取っつき易さ”っていうのを、僕は完全に受け入れてる。そこで怯んだりは絶対にしない。実際、ポップ・ミュージックのというジャンルの一番の強みだと思ってるからね。ポップ・ミュージックのアクセスし易さを取り出して、きちんとした方法で使ったら、音楽が持っているあらゆるメッセージのパワーをさらに強められると思う。そこで語られていることや――内容、キャラクター、普通なら絶対に語ることが出来ないようなタイプの人々――ポップ・ソングが持つメッセージに力を持たせられるんだ。これって、僕としては、すごくビートルズ的なアプローチだと思ってる。と同時に……うん、やっぱりそこだね。音楽の中で自分が考えていることを話せると、人に力を与えるんだ。同時に、本当に大勢の人達がそれを耳にすることになる。勿論、あらゆる種類の音楽で出来ることなんだよ。でも、自分のメッセージを妥協させずに、ポピュラリティに到達出来る野は素晴らしいことなんだ」

●では、あなたの音楽がとても折衷的なのは、あなたの出自、生い立ち、音楽的指向性、主に、何にもっとも影響を受けてのことだと思いますか?
「多分、僕の出自だと思う。それとやっぱり、さっきも言ったけど、どのシーンにも属してなかったのが理由じゃないかな。僕はどんな特定のサウンドからも生まれてきてないんだ。だから、あるサウンドやシーンに従わなきゃいけないってプレッシャーがまったくない。その結果、僕は純粋にソングライターとしてものが考えられる。有るサウンドで定義される人間としてじゃなく。音楽制作におけるプロダクションっていうのは、自分のストーリーを語るための単なるツールだと思うんだ。優先順位はそこにある。例えば、僕が、アメリカのナイトクラブにいる太った女性の物語を語ろうとすると、その曲のサウンドをある響き方にしようとする。で、もし別のストーリーに使用とすると――まあ、例えば、戦争で片目を失った後、苦労して生きていく女性の物語とか――そしたら、僕は、またその話を音楽的に語るサウンドを見つけようとするだろう。そこに限界はないんだ。音楽のプロデュースに関する僕自身のアティテュードによって、僕はアドヴァンテージが与えられてるんじゃないかな。すべてを越えたところで制作が出来るし、スタイル的にいろんなことが試せる。他の人なら縛りがあって、「これは許されない」と思うようなことが僕にはないんだ。むしろ、僕はそこがすごく楽しいところなんだ。僕にとっては、その方がずーっと音楽的に興味深いんだよ。それに、僕のキャリアに希望をもたらすポイントでもあるよね? だって、つまり、これから25年間でもなんでも、僕はやりたいことが出来るってことだから」
●では、あなた自身が考える理想のポップ・レコードの定義を教えて下さい。具体的には、あなたにとっての理想のポップ・レコードを3枚挙げてもらえますか?
「そうだな、いろんな意味で、僕が3枚選ばなきゃいけないとすると……。うん、僕が愛するレコードと言えば、絶対に、まず1枚はベックのレコードだね」
●ああ、そうなんだ。
「うん、彼の大ファンなんだ。だからこそ、どれか1枚を選べって言われると、すごく困るんだけど。それから2枚目は、(セルジュ・)ゲンズブールが作ったレコード、多分、フランス・ギャルかな。で、3枚目は何がいいかな……。フランス・ギャルにベック……。ちょっと待ってね。あ、プリンスの『パープル・レイン』! どれもすごくオリジナルで、しかも、アクセスできるレコードだよね?」

●今も名前が出ましたが、あなたが影響を受けたという、プリンス、ハリー・ニルソン、エルトン・ジョンといったソングライター達からは、そうしたポップの在り方に対して、どんな風に学んだのか、教えて下さい。
「まず、プリンスからもらったアイデアは……。だって、プリンスのキャリアを見ればわかるけど、シンガー・ソングライターであると同時に、彼は音楽的に自分が作り出すものに縛られてないよね? 何もかもやってしまったアーティストなんだ。セクシーなブラックのR&Bものから、ソウル、スウィング、何もかもね。彼のバラッドをボーイ・バンド(※4)がカヴァーしたことさえある。だから、僕が学んだのは、彼の音楽的幅広さ、音楽的自由だね。そして、パフォーマンス的な側面も。彼の場合、それがぴったり合ってるんだよ。彼の場合は誰も、プリンス以外にはパフォーム出来ないっていう。唯一、プリンスだけなんだ。それから、ハリー・ニルソンからは、ソングライティングの才能だな。つまり、彼には本当にストーリーを語りかけるメロディを編み出す才能があって。それってすごくパワフルなんだよね」

●もう一人、エルトン・ジョンは?
「エルトン・ジョンは……とにかく、フックが書けるんだよね。音楽的に妥協することなく、フックのあるメロディを曲に乗せるのがうまい人なんだ」

●この三人というのは、天才的なアーティストであると同時に、世間の常識から食み出してしまうような人々でもあるわけですが、あなた自身、彼らの音楽と接することで、自らのエキセントリシティを祝福されたような感覚を感じたことはありましたか?(※5)
「ああ、勿論!! だって、僕の場合、ホント生まれたその日から、『自分は他とは違う』って感じてたから(笑)。だから、そんな風に感じるのに、他の人達のレコードを聴く必要なんてなかった。だって、価値のある人間になる唯一の方法は、ただただ、自分自身になることしかないんだよ。だから、僕は万が一にも、絶対にそこを犠牲にはしない。どんな理由があってもね」
●それは、あなたのソングライティング、リリックとも関係していますよね? 例えばあなたの曲は、3分間の中で、個性的なキャラクターのある人生の一断面を切り取ったノヴェルティ・ソングが大半です。
「僕は自分の身の周りにあるものを書こうとしてるんじゃないかな。何よりも、僕はリアリティを取り上げて、それをもっと生きやすいもの、ハイパー・アクティヴで、エキサイティングなものにしたいんだよ。それでも、リアルであることに変わりはない――そのアイデアが好きなんだ。そう、僕はアンダードッグ、負け犬っていう考えが好きでさ。フリーク、アウトキャスト、外れ者。つまり、自分がエキセントリックであることで、いつも惨めな思いをしている人達。そう、僕は、例えば、太ってる女性――“ビッグ・ガール”や、“ビリー・ブラウン”みたいな人達を取り上げて、彼女や彼を王座に上げちゃって、マルチカラーの背景で飾り付けて、褒め称えたいんだ。うん、僕がやろうとしてるのは、そういうこと。たとえ、それが3分半の間だけだとしても、少なくとも、僕にはそれが出来る。僕は自分の治療法、レメディとして曲を書いてるけど、心温まるのは……僕が気付いたのは、世界には僕と同じように感じてる人達が、実際、大勢いるってこと(笑)」
●じゃあ、あなたの音楽がリスナーにオファーしている最大の価値観とは、何だと思いますか? やっぱり「自分自身でいていいんだ」ということ?
「ああ。自分自身であっていいし、しかも、それをすっごく誇張したっていいんだってこと(笑)。多分僕はエスケーピズム、逃避主義って考え方が嫌いなんだよ。ほら、エスケーピズムに浸ると、その後、ダメになっちゃうから。二日酔いや副作用みたいにね」
●なるほど。
「普通は、ダンス・ミュージックなんかが逃避的だと思われてるわけだけど、僕が思うに、むしろヒップホップのヴィデオみたいなのの方が、まさに逃避的なんじゃないかな。ほら、僕が外に出たら、ファーギーみたいな格好の人が、何百万ドルものダイヤモンドを付けて、フェラーリから飛び出してくることなんて、実際には、目にすることなんてないよね? あんなの、ホントに馬鹿げてるよ。実際に、僕らの目に飛び込んでくるのは、もっと普通の人達だろ? ちょっと太ってて、それに居心地が悪いと思ってるような女の人とか、道を歩いてるのは、そういう普通のキャラクターなんだ。だから、僕は現実をファンタスティックなものにしたいんだよね。日常にあるものから、魔法を作り出したい。“アメリ効果”っていうんだけど。ね、映画の『アメリ』は観た?」

●ええ、あれは日本でも大ヒットしました。
「あの映画がヒットしたのは、日常から魔法を生み出したことが理由だろ? 僕はそういうところが大好きなんだ。だって、実際の生活でも出来ることだから」
●では、最後の質問です。もしあなたたちが今の音楽シーンなり、社会なりに、何かしらの変化を促したいと感じているとすれば、それはどのような変化ですか?
「どうかな? 僕は、変化を起こすために外へ出て行ってるんじゃないと思うな。っていうのも、“外へ出て行くこと”で、変化は絶対に起こせないと思うんだよ。つまり、声高に何か言っても、みんな即座にしらけさせちゃうだけだろ? それよりも、僕はむしろ、それぞれの個性のために語っているだけなんだ。誰がどんな生き方を選ぼうとも、その生き方が許されることを求めてるんだ。そして、音楽っていうのは、そこに到達するにはグレイトな道具、ツールなんだよね」
●わかりました。じゃあ、また日本で詳しく話を聞かせて下さい。
「サンキュー。僕、ほんとに、ほんっとに楽しみにしてるんだ。日本に行って、いろいろ楽しみたいな。あ、そうだ、ね、菅野よう子と僕が一緒に仕事ができるようにしてよ! 誰かに話しておいて! 約束だからね!」

※1 日本で「マイノリティに寄り添う音楽」って、あんまり大々的に出てきませんね。インディーやアンダーグラウンドには存在するだろうけど。ミーカをはじめとする英米のポップミュージックでは、アーティスト自身がちゃんと社会を見据えていて、具体的な事象について曲を作っているので、「どんなマイノリティに寄り添うか」が明確なんでしょうね。

※2 今だったらこの物言い、まぁまぁアウトですよね……(笑)。ただもちろん田中さんには同性愛をからかおうとする意図はないはずです。ゲイのアーティストが、LGBTQの当事者という立場から創作するとき、独自に力を持った表現が生まれてくることがある……という印象はあるのです。作家自身のジェンダー性を知らずに作品に触れていても、どこか、特徴的なニュアンスを感じ取ることもあります。根拠はわかりませんが……(もちろん、LGBTQ当事者がジェンダー問題について発言しなければいけないとは思いません)

※3 夏川さんが音楽作品を作る時に、具体的にレコード会社とどんなやりとりをしているのかはわかりませんけど、「アイドル声優がやるべきじゃないこと」とされていそうなことをやってて面白いですよね。あと、作品をリリースした後、業界やファンからはどんなフィードバックが着ているんだろう。

※4 ボーイバンドとはおそらく、「アイドルグループ」的な存在のこと。海外では「アイドル」と称されるグループはないのです……自ら「アイドル」というのは日本の慣習ですね。ところで、プリンスのCDのリンクも付けていますが、プリンスは良いベスト盤があんまりないので、ぜひオリジナル作品から聴いていってほしいです。名盤だらけ、名曲だらけのバケモンです。

※5 夏川さんがミーカに感じていることって、そのまんまこういうことなんじゃないかと思うんですよね……。

初インタビューの転載は以上となります!
1st日本リリース後のインタビューに続きます。
次→MIKAインタビュー2007年(2)

 - ミーカ(MIKA), 夏川椎菜とTrysail, 音楽

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