てやんでい!!こちとら湘南ボーイでい!!

映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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私的ベストアルバム邦楽編 120-91

      2020/04/16

150番から120番はこちら

120 ザ・ブーム/THE_BOOM_2(1997)

気を付けていないと「『島唄』の一発屋バンド」のようなイメージを抱いてしまうかもしれないが、とんでもない。
デビュー初期のスカ・パンク期を経て、沖縄~南米の音楽に傾倒していた時代のベスト盤。
ワールドミュージックなのに、都会的な響きを帯びるのは、ひとえに宮沢和史さんの持つ洗練具合の成せる業か。
彼は、矢野顕子さんがコラボレーションしていることからもわかるように、ずば抜けたメロディセンスと、理想的なポップ・ソングのリリックを書ける男でもある。
バンドとしての特長をあげるならば、すべての楽器の音が良いということ。
『カルナヴァル』のイントロの音など、耳元で演奏されているかのような錯覚に陥る。
デビュー初期からの、いわゆるバンドブーム期の曲も、悪くない出来である。
コミックバンドっぽい歌い方をしつつも、笑ってしまうくらい直接的な政治風刺もある。
その時期もあわせて収録されているベスト盤もあるが、上記の『カルナヴァル』が収録されていないので、このベスト盤を挙げた。
収録曲の被りまくったベスト盤が複数あるのも困りものです。

119 トクマルシューゴ/EXIT(2007)

ブライアン・ウィルソンばりの、ポップミュージック実験家である。
彼自身が本当に音楽が好きで、音楽を作る行為によって幸福になっていることが如実に伝わる。
凡百の実験愛好家たちとの最大の違いは、彼自身が確かなテクニックを持つプレイヤーであるというところか。
日本では10年代に入り、ポスト・ロックやフォー・テットを筆頭とするエレクトロニカの流行があり、楽器を演奏することにとらわれずに、面白い音をサンプリングして楽曲に取り入れる「音で遊ぶ」ミュージシャンが増えたが、トクマルさんはその先駆けだったといえよう。
その点ではコーネリアスに近い趣もあるが、トクマルさんのほうはどこか生の音を使うことに長けている印象だ。
もっと評価が高くてもいいミュージシャンだと思う。
一曲目の『Parachute』が好きすぎるので、このアルバムを挙げます。

118 平沢進/SWITCHED-ON LOTUS (スイッチト・オン・ロータス)(2004)

シンセサイザーの普及が始まって間もない頃、(ウェンディ)ウォルター・カーロスという音楽家が、バッハの楽曲をシンセで再現する『スイッチト・オン・バッハ』という作品を発表した。
平沢先生はその作品に感銘を受けたとのこと。
そして本アルバムは、90年代中期の平沢先生の創造力の源泉であったタイのニューハーフたち(カトゥーイ)のうち、幾人かがこの世を去っていたことが制作の契機になったという。
自身の過去の曲をリメイクしたアルバムであり、彼女たちが愛聴していたものがセレクトされた。
本人にとっても特別な作品らしく、彼の公式通信販売サイトか、中野ブロードウェイのショップメカノでしか販売していない。
ベンチャーズやスプートニクス等、意外にもサーフ・ロックがルーツにあるという平沢先生だが、ここに収められた『アーキタイプ・エンジン』は、かなりそんな感じである。
そのような特殊な成り立ちのアルバムだが、作品単体で言えば、キャリアでも屈指の出来。
ただ、他の作品と楽曲の重複が起こってしまうからランクは下げて入れています。
ある意味では重すぎるので気軽に聴くことはできないのだけど、このアルバムでなければ……!
というタイミングがある。
そういう時は、他の音楽を聴いても換えになってくれない。
また、リメイクとは言ってもアレンジはあまり変わっていない曲も多い。
しかし表題曲を聴くためだけにも、手に取る価値は大いにある。
とにかく音が綺麗ですよ。

117 竹原ピストル/PEACE OUT(2017)

正直言って、実際に聴くまでは暑苦しそうで敬遠していた。
しかしブルーハーブのボスさんが、『ママさんそう言った』を絶賛していたので、ついに手を出した。
実際に暑苦しい部分もあるが、無骨で、不器用で、誠実な音楽だ。
武士のような、高倉健のようなストイシズムも感じさせる。
個人的にベスト・トラックは、交流のあったファンの自殺を歌った『例えばヒロ、お前がそうだったように』だ。
イントロから躍動感のある、スケール感の大きなロック・チューンが展開される。
歌の内容は混濁としている。
他の人が、統一感を出すために削るような言葉も、そのまま叩き込んでいる。
醜い言葉、見苦しい生き方、軽薄な人間たち、泥にまみれて転げまわっている自分たち……ままならない事柄の多さ。
しかし、それらが、ままならないままサビに突入していく時に、開けた風景が目の前に広がってくる。
しかしそれこそがこの人なのだと思う。
おさまらないことのかっこよさを痛感する。
実直で嘘が付けない人柄がそのまま現れている。
こういう曲は、ちょっと、なかなかお目にかかれるものではない。
ライブを観てみたいと思ったのだけど、東京近郊の会場ではソールドアウトするようになっているもよう。
この音楽がちゃんと売れてるのって、いいなと思いました。

116 ソウル・フラワー・ユニオン/エレクトロ・アジール・バップ(ELECTRO ASYL-BOP)(1996年)

メスカリンドライブと、ニューエストモデルという二つのバンドが合体、ソウルフラワーユニオンが完成した。
近年の、SNS上での政治的な活動だけは知っている…という人も多いのでは。
しかしその正体は、あらゆるジャンルの音楽を飲み込んでいくモンスターバンドである。
このアルバムではタイトル通り、アジアの音楽を大々的に取り入れながら、ラモーンズのように難しくならないパンクを鳴らしているところだ。
そもそもオリジナルパンク世代でも最大のアイコンであるクラッシュの活動だって、スカやレゲエを雑食的にパクりまくっていたのだから、パンクは節操なしにいろんな音楽を取り入れまくるのがよいのである。
歌詞には『宗教時代鼻で笑い でも従う日々がある』というすさまじいラインもある。
フロントマンの中川さんの、社会を見据えて、歌詞に落とし込んでいく能力はずば抜けていると思う。
SNSでの発信も社会的に大きな意義があることだとは思うのだけど、それをもっとたくさん曲にしてほしいと思ったりもします。
上記した前進バンドにも傑作多数。
聴き逃すべからず。

115 ZABADAK(ザバダック)/創世紀~ザ・ベスト・オブ・ザバダック+2(1996)

上野洋子と吉良さんの二人体制時代のザバダックを総括できるアルバムがないのは無念である。
このアルバムも、重要な曲をいくつも取りこぼしている。
ジャンルとしてざっくりと表現するなら、ケルト音楽+プログレ。
歌詞の世界観も、北欧の伝説や神話、昔話を思わせる雰囲気。
ゲーム音楽への影響は大きい。
バンプ・オブ・チキンもこのバンドが好きなのでは? と睨んでいます。
この時期に出たライブ盤、『ザバダック・ライヴ』も必聴の出来。
レコーディングに特化したバンドかと思いきや、ライブでの再現度の高さや、生ならではのアレンジのひねりのうまさがわかる。
やはり唯一無二のバンドであった。
音楽担当の男一人か二人と、ボーカル兼マスコットの女が一人というグループは乱立しているが、ザバダックのような本格派はなかなかいない。
それは上野洋子さん自身も、プロフェッショナルな音楽家であることの証明かもしれない。
詳しい事情は明かされていない(と思います。僕が勉強不足なだけだったら申し訳ない)が、上野さんと吉良さんは離別。
上野さんはソロ活動を開始し、吉良さんは一人でザバダックに残留することになる。
二人ザバダック時代は良い作品ばかりです。
上野さんが「こんな時に電話をかけてきてくれたら 恋がはじまるのに」といったことを歌っていて、無性に現実的だった。
コトリンゴさんにもそんな感じの歌があった気がする。
女の人が何考えてるのか、わかんないっすねぇ……。

114 SEEDA/HEAVEN(ヘヴン)(2008)

引退宣言から、わりとすぐに復帰をするというラッパーの定番を経て現在も活動を続けているが、ラップブームによって少し影が薄れた感が。
薬物中毒の、バッドトリップしている最中の視点と、冷静に覚醒している視点を、曲をまたいでラップする『ホームボーイ・ドープボーイ』と『サン・ガッタ・シー・トゥモロー』で見せつける構成の妙は、半端なラッパーではできないものだろう。
彼の曲におけるリアリティを成立させているのは、やはり、観察眼とラップの鋭さによるものだ。
とんでもない勢いで発表を続けていたシーダだが、最もよく聴くのはこのアルバムです。
彼の面白いところは、ラッパーの仲間内で閉じこもるのではなく、外に対して訴えかけようとする訴求力にあるのでは。
アルバムのクライマックス『Nyce Dream』もいいです……。
SEEDAさんの曲は泣けるのが多いよ。

113 CORNELIUS(コーネリアス)/FANTASMA(ファンタズマ)(1997)

みんなが評価しているほどはこの作品を愛聴してきてはいないのだけど、それでもやはりバケモンみたいなアルバムだと思っている。
HDレコーディングの多様という時代性もあるのだろうし。
しかしコーネリアスの真価は、風景全てを音に変換しようという試みにあると思う。
フィールドレコーディング音源が、いつの間にか、音楽にすり替わっていたり。
そして言葉へのこだわりのなさ。
頭で考えるよりも、視覚的な音楽を発露している感じですかね。

112 七尾旅人/911FANTASIA(911ファンタジア)(2007年)

三枚組アルバム。
9.11世界情勢を話して聞かせる男性と、物語を音楽にした語りのパートと、その風景を楽曲にしたものが交互に繰り返していく。
そんな風に、ディスク三枚を通して一つの物語が描かれているので、通して聴くのがベスト。
ぜひ、CDで手にとってほしい。
物語として、驚かされる展開がある。
インディペンデントで、かつ独力でこれを作り上げる信念の強さって、他の人は持ちえないほどのものではないだろうか。
七尾さんなので、音楽的にも果敢な挑戦が見られる。
七尾さんは、たしか、漫画家を夢見ていた時期もあったということで、物語作家として非常に秀でた能力を持っている。
ミュージシャンとして活動しながら小説や映画や、絵画を描く人もいるがこの人はどんな時でも「音楽」として表現し続けている。
それゆえに、産みの苦しみに囚われ続けているようにも思われるが、しかし、いつも傑作を作っていてすごい。
かつて七尾さんは、歌の登場人物を、救いたいのに救えないというジレンマを語っていたことがあったが、どん底から再生していく過程がこのアルバムではしっかり描かれている。

111 BOREDOMS(ボアダムス)/Super Are(スーパー・アー)(1998年)

覚醒しきった音楽である。
こんなにバキバキな音もなかなかない。
という証拠に、ボアダムスは海外でも大きな人気を誇っている。
ぜんぜん言語化できないのだけれど、死ぬほどかっこいいと思います。
マジで何なんだこの音楽は……。

110  P-MODEL/ワン・パターン(1986)

皮肉なアルバムタイトル。
ジャケットでは、部屋の中に一人たたずむ平沢先生の姿。
オリジナルメンバーは誰も残らなかったバンドの状況をそのまま示している。
アルバム冒頭のいくつかの曲は、これまでになかった境地を開いているが、レコーディングメンバーとの関係は長続きせず、バンドは結局活動を休止させる。
平沢先生ほど、音楽的発展を続けながら、活動のペースを落とさずにいる音楽家なんていないだろう。
音楽的には素人に近い人たちをメンバーに入れて、演奏はかなり打ち込みで行われているという。
平沢先生、フレッシュな感性を取り入れるための実験をしていたのではないだろうか。
ファンからの人気も高い『ゼブラ』も収録されている。
レコーディング機材の進歩も影響しているのだろうけど、このアルバムはドラムを叩くことへのこだわりを捨てて、かなりおかしな太鼓のリズムが目立つ。
『OH! MAMA』や『おやすみDOG』の意味不明なビートとか、何度聴いても最高にカッコイイです。
現行で手に入る音源では、『モンスター』というアルバムに収録を予定されていた楽曲が入っているのだが、完成させられていたらとんでもないものになったであろうことがよくわかる。

109 FIRE BALL(ファイアー・ボール)/THE BEST OF FB(ザ・ベスト・オブ・FB)(2007)

世界一のトラックメイカーであることが証明されてしまった集団。
その絶頂期をベスト盤にして収録。
いわゆるダンスホールレゲエ的な楽曲を収めたディスク1、ラガーマンたちの純粋な歌心を楽しめるディスク2、どちらもレゲエ。
そしてなにより、四人がしのぎを削りあうかのように最高の詩を書きまくった奇跡は最高に楽しめる。
個人的にはディスク1が好きです……韻の踏み方、ビートへの乗せ方が痺れるほどかっこいいです。
語彙力も半端じゃなくて、うっとりさせられます。
「固い覚悟高く掲げろ」を「かたかくごたっかくかっかげっろっ」と歌うのですけど、どれだけカ行を使うんですか!? かっこいい!!

108 斉藤和義/歌うたい15 SINGLES BEST 1993〜2007(2008)

二度ブレイクを果たしたのがすごい。
『彼女』の「君に聞きたいことが 一つあるけどいいかい 今も彼女が好きだ ねえ君はどう思う」というリリックが突き刺さった。
あとは定番っぽいけど『幸福な朝食 退屈な夕食』と『ベリーベリーストロング』が好きです。
どんな曲でも何かしら面白いところがあるのがすごいところだと思います。

107 eastern youth(イースタン・ユース)/感受性応答セヨ(2001)

決して歌が上手いボーカリストではないが、それでも自身で綴った言葉を叫ぶ様はまさにエモ……とは言っても、エモなんて言葉が使われ始める以前からこのバンドは活動している。
声質や歌唱法が、詞と音と噛み合わせる力がとんでもなく高いバンドである。
アルバムとしては『孤立無援の花』の、出口なしの閉塞感や、文学的に寄りすぎている歌詞も好きだ。
しかし、『素晴らしい世界』が凄まじい曲なのでこちらを挙げる。
無骨で無頼な世界観を、喉から血が滲むような声で歌っていたバンドが、このような曲を描くようになったというドラマが好きです。

106 平沢進/救済の技法(1998)

タイトルからしてメッセージ性の強いアルバム。
冒頭の『TOWN-0 PHASE-5』が傑作曲。
詞も、わかりやすくすごい。
「この世の人 気は確かか 天使をまた飢餓にさらして」
平沢先生の現代社会を揶揄する際の詞のセンスって尋常ではないと思います……本当にどうなっているの。
コーラスワークもさえ渡っています。
シンセが弦楽風にならされている曲が多いためか、クラシカルな風格すら漂っている。気がする。

105 くるり/THE WORLD IS MINE(ワールド・イズ・マイン)(2002)

未だに進化し続ける怪物バンドの四作目。
もっとも電子音楽的に接近していた時期の作品。
低温でブレイクビーツを刻み続ける『ワールズ・エンド・スーパーノヴァ』だが、アルバムでは『バターサンド/ピアノルガン』という曲に繋がっているので、もしシングル盤しか聴いたことがない人がいれば必聴。
この曲の最後の辺り、聴いていると毎回死にたくなります。なんでだ?
爆発的な人気を誇る『ばらの花』も収録。
ちなみに奥田民生にも『のばら』という曲あり。
音楽的にも変化し続けているが、こういう、モラトリアムな若者の心の機微を描写する作風からも遠ざかっていく。
潔い人たちだと思う。

104 でんぱ組.inc/ WWDBEST 〜電波良好!〜(2016)

セカンドを入れたいけど、『でんでんぱっしょん』が入っていないのでベスト盤を挙げる。
要するに玉屋2060%氏の仕事が僕にはドンズバなのだ。
あの人、本当に天才だと思います。
特に『WWDD』におけるあの人の仕事、「でんぱ組には悲しいことを明るく歌ってほしい」と語っていたようですが、本当にすごいと思う。
光GENJIでASKA氏が担った仕事のように、アイドルという存在の宿命についてアイドルに歌わせるという芸当が、凄まじいクオリティで具現化されている。
アイドル戦国時代というものもどうやら終焉を告げたようで、結局強く興味を惹かれたのはこのでんぱ組だけだったのだけど、このでんぱ組も含めて、アイドルの楽曲というのはどうしても楽曲単位で印象を残すものが多く、アルバムごと愛そうとするとなかなか困難が生じますね。
もちろんアイドルに限らず、00年代後半から、音楽をアルバム単位で聴くという行為は一般的でなくなっていたと感じる。(もっと昔からそうなのかも。特にここ日本では)
しかし、アイドルの「闇」を開陳して、それをきちんとヒアリングしたうえで歌詞に込めるというのは逆に新しいことだったのではないだろうか。
逆に、と書いたのは、普通の曲であればそれが当たり前だろうし、昔のアイドルは普通にそういった曲を歌っていたからです。
メンバーが流動的になりがちなアイドルグループにおいて(特に、メジャーでないならなおさら)、メンバーの個性を曲に反映させるというのは大きな賭けだったことだろう。
僕は浅野いにおさんのことが嫌いなのだけど、氏と「推しメン」が被っているのが悔しい……そう、えいたそのことである。

103 尾崎豊/愛すべきものすべてに(1996)

ベスト盤です。
時にナルシスティックになりすぎるきらいはあるが、僕が尾崎豊を聴くのは、その繊細なセンス、メランコリックなメロディ、美しい声、社会を鋭く切りとる言語センスである。
正直、超有名な曲以外はあんまり面白くない……ブルース・スプリングスティーン丸出しの曲調には失笑してしまう。
『街角の風の中へ』のような、普通のシンガーソングライターっぽい曲を作っても、言葉のセンスは輝いている。
ただ、僕が尾崎をどうしても一介のネタとして扱えないのは、代表曲『卒業』のせいだ。
「先生 あなたは か弱き大人の 代弁者なのか」自分を抑圧する相手への理解を示すセンテンスだ。
「あと何度自分自身卒業すれば 本当に自分にたどり着けるだろう」。アイデンティティの不確かさを、こんな言葉で表現した彼はこのとき若干二十歳である。
いつの時代にも「十代の代弁者」を担うミュージシャンはいるが、尾崎以降でそのポジションに就く連中のなんと薄く浅いことか。
YUIが曲の中で尾崎の詞を引いて「でも私のはそんなんじゃないんだ」とか言っていたけど、尾崎は尾崎でマジで苦しんでいたことが、彼の歌からはうかがえる。(というわけで僕はYUIめっちゃ嫌いです)
一度、聴いてみてもよいかもしれないです。
何度も聴きたくなるかは、あなた次第。

102  UVERworld (ウーバーワールド)/BUGRIGHT(バグライト)(2007)

次作からは、「主語が大きい」「大文字の」スタジアム・バンドを目指し始めるウーバーの2ndアルバム。
1stは粗すぎるので全然聴かないが、このアルバムは楽曲のジャンルも幅広く展開されているし、ウーバーの方向性もかなりくっきり出てきているので、良作と言える。
また、『きみの好きなうた』を筆頭に、パーソナルな歌も聴きどころ。
本作におけるベストトラック『51%』は、その象徴。
別れる理由が49%あっても、付き合っている理由が51%あるならば、「やりなおすきっかけを探そう」と想う男の歌である。
「駐車場に向かう途中『寒いねって』僕のポケットに手をしのばせる 『たまには私に運転させて』 キーホルダーと鍵を指で鳴らす カーステレオから流れてくる恋愛の最後のストーリーと 思いつくだけ 思いつくだけ 重ならない理由を探す」
これがAメロだが、こんな秀逸な描写ができるライターでもあったのだ。
もちろん、普段は運転をしない彼女がハンドルを握るということは、彼女が、二人の関係をハンドリングしようとする意志のあらわれである。
もしくはすでに別れを視野に入れているのだろう。
タクヤ∞さんは、こんなふうに、男の弱さも描ける人だったのだが……。
大きなものを背負い、それに応え続けているウーバーだが、こういう等身大の男の声も聴きたいものである。
スタジアムロックにアレルギーのある人にも聴いてほしいアルバム。
ところでこの時期のウーバーは、なぜかゴリラズのモロパクリのアートワークだった。
不評だったのか、すぐにやめてたけど……なぜこんな有様になったんだろう(笑)。

101 UVERworld/LAST(2010)

スタジアムロック路線のウーバーでは一番好きなアルバム。
アルバムの流れもきれい。
大仰なバラードパートはそんなに好きではないんだけど、ロックバンドとしての基礎筋力がもっとも発揮されている。
『ハイ!問題作』って、タイトルを見た時にどんな曲かと思ったけど、そんなに問題作ではないよな。
最終曲『GO-ON』とかめちゃくちゃ好きなのだけど、こういう無邪気な曲って最近のウーバーはあんまりやらなくなってしまった。
たしか、ミスタービッグのライブを見て∞さんが打ちひしがれた経験が本作には反映されているのだと思うけど、こういうハードロック大好きな少年のようなウーバーが僕は好きですね。

100 BUMP OF CHICKEN (バンプ・オブ・チキン)/ユグドラシル(2004年

ある意味、ファンタジーゲーム好きが高じて作られたアルバム。
Jロックファンが待望したアルバム。
前作よりも主語がデカくなり、より多くの人々を引き付ける歌が増えた。
かと思えば『車輪の唄』や『スノースマイル』のような曲も作れるあたり、藤原基央さんは優れた書き手なのだと思う。
アレンジも、難しくはないけれどカッコいいので、学生コピバンが死ぬほど存在していたのも頷ける。

99 MO’SOME TONEBENDER (モーサム・トーンベンダー)/TRIGGER HAPPY(トリガー・ハッピー)(2003)

135位に挙げた前作とは打って変わって、デジタル処理が多用されたアルバム。
モーサムの躁的な面が強調されている。
『BIG-S』は、日本パンク黎明期に活躍したフリクションのカバーだが、完全にモノにしている。
それにしても『エンドレス・D』のような歌詞って、いったいどうやって書かれるのだろう。
本当に意味が解らないです。
モーサムの最高傑作はこれじゃないかと思う。
モーサムはずっといいバンドなのだけど、この時期の凄みを知ってしまうと、『スーパーナイス』以降の作品にどこか物足りなさを覚えることもある。
この時代、ジェリーリーファントム等もそうだけど、パンクをルーツに持つバンドがダンス・ミュージックに接近することが多かった。

98 ZAZEN BOYS(ザゼン・ボーイズ)/ZAZEN BOYS 4(ザゼン・ボーイズ4)(2004)

「法衣を着たツェッペリン」を称したのは向井さん自身だったか、スヌーザー誌だったか、どっちなのかよく覚えていないが、言い得て妙なフレーズだった。
しかし法衣を着ていたのは『Ⅲ』までで、大胆にナイトクラビングの装いとなった感のある4thである。
数字の表記がローマ数字ではなくなったことからもそれがわかる。
ザゼンのアルバムはⅢ以外、どれも傑作だと思うのだけど、活動の中で培われたスタジオレコーディングの技術と、本人たちのポテンシャルが相まって、とてつもない完成度に至っている。
どの音も、めっちゃくちゃいい。
向井秀徳さんの曲はデビュー当時から音の入れ方も構成も美しいが、このアルバムの曲はどれも音が削ぎ落とされていて洗練されている。
向井さんってほんとに、やれば何でもできる人なのだと痛感する。
このアルバムの音で、もっとたくさんスタジオレコーディングをしてくれたら、ファンとしては本望なのだが……。
ナンバー・ガール時代から、アルバムに入らない良い曲をたくさん作るミュージシャンだが、このアルバムの先行シングルとなった『アイ・ドント・ワナ・ビー・ウィズ・ユー』も素晴らしい出来なので必聴。

97 スピッツ/インディゴ地平線(1996)

スピッツで一番好きな曲はチェリーなので、このアルバムを挙げざるを得ないです。
僕自身の童貞時代(チェリー)の過ちをまざまざと見せつけられているような歌詞……。
「愛してるの響きだけで 強くなれる気がしたよ」
なれる気がしただけなのであって、それは錯覚なのだけど、童貞なだけあってそんな状態は初めての経験なので、そうではないということに気付けない。
冒頭で「君を忘れない」と歌っているわけで、君とは、放っておけば忘れてしまうような間柄になった後の回想なのだとわかる。
ところで僕は学生時代に小学生の家庭教師をしたことがあるのだけど、合唱祭でこの曲が歌われたと聞いて驚いたことがある。
そこで歌うの、全員チェリーやないか。

96 米津玄師/YANKEE(ヤンキー)(2014)

本作が、ギターロックアルバムであるところが好きなのだと思う。
このアルバム以降、米津玄師はいわゆる邦ロック的なアプローチを逃れて、多彩なジャンル、アレンジ、リズムを作るようになる。
あと、「僕ら」という言葉を多用するようになり、歌の規模も大きくなりますね。
米津さんは「呪い」という言葉で表現しているが(内田樹さんの『呪いの時代』の影響か?)しがらみの中でがんじがらめになっている人に向けた曲が多い。
「いらんもんから全部捨てていけ」という歌詞なんかも非常に良いと思う。
米津さんの曲の中で一番好きな『TOXIC BOY』が収録されているのもこのアルバム。
サビの部分の「心ここにあらずのままでオーライオーライ」の「こころここに」の音が良すぎる。
長い歌詞を一息で歌いきっていくところもよい。
米津さんの曲って大人びた言葉が多いと思うのだが、この曲は等身大の彼を感じる。
本人名義でのデビューアルバム『ジオラマ』、ボカロP時代の延長線上ともいえる「世界観」の中でコンセプトアルバム的な作品に仕上がっていたが、二作目のこちらでは「世界観」をはぎ取って、生身の米津玄師があらわになっている。
その後、10年代を代表するような音楽家へと躍進をする青年の、おずおずと世界に顔を出して、本当の自分の声で歌い始めた、克明なドキュメントとしての一枚。

95 湘南乃風/Single Best(シングル・ベスト)(2011)

00年代最大級のアンセム『純恋歌』を生んだグループの、絶頂期を収めたベスト盤。
マイルドヤンキー文化を規定するかのような世界観も特徴的。
グループの首謀者的存在である若旦那は、自分たちの世代についての歌を作ることに執心していた。
世代の代弁者であろうとする姿などは、ドラゴン・アッシュとも似る。
湘南乃風のリリカルスキルの妙は『純恋歌』と、その双子の弟のように産み落とされた『曖歌』を聴けばはっきりとわかるはず。
自分たちがバブル経済の残滓にすらありつけないであろうことを理解している彼らは
「俺も男だから 一生かけて飛び立つ浪漫飛行」
と、バブル期の流行歌を引用しながら、
「なんて妄想も暴走して ニヤケてる昨日も今日も でも現実は余裕もゼロ なのに見てる大きな夢を」
「でも現実は貯金もゼロ 見せてやれない小さな夢も」
と続ける。
こんなにはっきりとした言葉で現実を描きながら、Jポップシーンのど真ん中に果敢に切り込んだことは快挙だろう。
そして悲観に暮れるだけではなく、
「今 二人で見ている夢には届かないのかも それでも俺たちサイズの幸せ 探しに行こうぜ!」
と曲を結ぶ。
優れたポップソングは、結論まで出しきるもの。
わたしはこの歌を聴くたびに、いろんなことを思って泣けてきます。
『純恋歌』は未だにネットミームとしてネタにされ続けているが、それだけ強い印象を残すことができるミュージシャンなんてなかなかいるものではない。

94 ZABADAK(ザバダック)/IKON(イコン)(2000)

上野さんと別れてからふてくされていたという吉良さんが、このアルバムの前後で開き直って、自身のルーツであるプログレッシヴ・ロックを大々的に打ち出すようになる。
『リング』を世に送り出した鈴木光司の『楽園』という小説をもとに作られたアルバム。
全曲のクオリティが尋常ではない高さだが、アルバム二曲目の『風の巨人』が白眉。
これは吉良さんと上野さんの二人ザバダック時代に、キャノンのTVCM用に作られた『Videokid』という曲をリメイクしたもの。
(昔はいろんなミュージシャンが、歌無しの曲をCMやTV番組に提供していたものだ……00年代以降はミュージシャンの曲をタイアップとして付けるのが当たり前になってしまいましたね)
原曲のメロディを残しながら、強靭なリズムと、圧倒的な高みに到達していく展開には鳥肌モノである。
とてつもない筋力を備えたバンドへと成長してしまったことがよくわかる。
吉良さんが、ゲーム『クロノ・クロス』のテーマ曲のギター演奏として招かれていることや、『狼と香辛料』のオープニング曲を担当していることからも、日本のエンターテイメント業界におけるファンタジー作品と抜群の相性を見せていたことがわかる。
しかしそういったエンタメ系の仕事に焦点を絞ったわけでもなく、「プログレ」「ニューエイジ」「ケルティック」というような安易なジャンル分けを拒みながら、自分たちのペースで「作るべき音楽」を作り続けていた孤高のバンドだった。

93 P-MODEL/イン・ア・モデル・ルーム(1979)

前身のプログレバンドを経て、平沢先生がついにメジャーデビュー。
英国で、XTCやウルトラヴォックスなどのバンドが登場し、ニューウェーブが勃興するのを目の当たりにし、プログレからポップ・バンドに鞍替えするという稀有な存在である。
プログレバンドとしても名の知れた存在であった彼らの演奏は当然プロフェッショナルなもので、それにしてもやはりすでに作詞・作曲・演奏のどれもが群を抜いて上手い。
サイコな歌詞が有名な『美術館で会った人だろ』は今でも語り草ではあるが、この曲は特権主義的で技術志向なプログレバンドたちを揶揄する内容だと思う。
先人たちが開拓した域を出てはいないが、このアルバム以降はレコード会社とモメたり、エンジニアとモメたり、メンバーが抜けたりとトラブルが続き、けっこう病んだ歌詞や曲が増えてくる気がするので、メジャーデビューの喜びが楽曲のムードや、奔放な実験性にも影響しているように思える。
アルバムとしてのバランスもとても良い。
テクノ・ポップバンドとしてのP-MODEL入門に最適なのはこのアルバム。
ところで、アルバムで歌われる亀有やサンシャインシティといった地名。
同世代のリザードなども、「浅草六区」と地名を掲げていたが、この当時は東京の土地名などもよく歌われていたのだなと思う。
遠藤賢司さんも東京について熱を込めて歌っていたが、きっと東京以外でも、みんなが、日本が変質していくことを肌で感じ取っていたのだろう。

92  YELLOW MAGIC ORCHESTRA(イエロー・マジック・オーケストラ)/ソリッド・ステート・サバイバー(1979

問答無用のポップレコード。
『ビハインド・ザ・マスク』の切ないムードがすごく好きです。
表題曲の「デケデケデケデケデケーケーケーケ」というシンセの音が、気持ち悪いのに楽しくて、何度も聴いてしまいます。
こんな先鋭的な音楽がお茶の間をにぎわせて、レコード大賞を獲ってしまったのは面白い話だと思う。
作っている人たちが楽しそうなのも、よいことである。
しかし前作と比べてメロディが前面に出ており、全員がすぐれたメロディ・メイカーであったことを証明している。
それにしても、やろうと思って、こんなに都市的な音楽になるということが凄まじい。
楽曲も4分前後。
売れようと思って実際に売れることができるというのは、大きな才能と、それを世に伝えるための努力がないと達成できないことだ。

91 NUMBER GIRL(ナンバーガール)/NUM-HEAVYMETALLIC(ナム・ヘヴィメタリック)(2002)

ナンバーガール、最終作。
前作で見られた疾走感のある楽曲は減り、重く深いダブへの傾倒が見られる。
ポップ・グループを筆頭に、英国のポストパンクやニューウェーブにおけるレゲエ・ダブからの影響がくっきりと現れている。
この辺りの音作りをデイヴ・フリッドマンとの共同作業した経験は、ザゼンの四枚目に生かされているのでは。
「音」としては向井さんの作品の中で一番好きです。
何はなくとも、『MANGA SICK』のイントロのギターの音は永久に飽きる気がしない。
触れると擦り切れてしまいそうな、ざらついた音。
『CIBICCOさん』『性的少女』はベースで印象的なフレーズが鳴らされており、中尾さんの本領が発揮されたアルバムではないか。
右翼っぽい言葉をあえて張り巡らせた『INUZINI』『NUM-AMI-DABUTZ』など、言葉の面では童貞っぽさのある前作の反動でハードコアになっているのでしょうか……。
向井さんのこういった言説はどう受け止めていいかわからなくなるのだが、音は重くて荒いのにエクスペリメンタルな仕上がりになっていてキャリア史上最高にかっこいい。
ナンバガでは、このアルバムが一番好きかも。

90番から61番はこちら

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