洋楽至上主義キモオタがTrysailにドはまりした話
2020/06/15
私は硬派な映画ファンであり硬派な音楽リスナーぶっているんですが、2~3年に一回くらいのペースで、女性声優の音楽を聴きたくなる時期があるんですよ。
普段硬派ぶっている男たちの休息として「萌え萌え」を求めちゃうんだと思います。
逆に普段は音楽や映画に「萌え」を求める人を糾弾する過激派です。
いろんな女性声優の曲を聴いて、声のかわいさと楽曲がマッチしていたら、その人の曲をヘビロテで聴くのです。
前回の声優聴き期には、花澤香菜さんの曲をよく聴きましたね……。
今年もそんな時期がやってきたので、Spotifyに上がっている音源をちょいちょい聴いていたんですよ。
これまではツタヤでレンタルしていたというのに、便利な時代になったものですよね……。
まだまだ配信解禁となっていないアーティストもいますが、Spotifyで聴けるものもだいぶ増えました。
まず聴いたのが、若手の三人組女性声優ユニットTrysailさんです。
ソニーがオーディションで集めたグループなだけあって、個々の歌唱力は高いし、楽曲のクオリティも高いです。
クオリティ高くても、聴いてて楽しくはない曲もありましたが……。
彼女たちはこれまでの3枚のアルバムをリリースしていますが、今年(2019年)に発表された『TryAgein』がダントツで良かったですね。
収録曲がバラエティに富んでいて、かつ、アニソンっぽくないものも多かったんです。
自分から進んでアニソン・声優の曲を聴いているくせに、私は、アニソンっぽくない曲の方が好きなのです……(笑)。
我ながらめんどくさくて頭がおかしいのですが、これが私。
でも、かわいい声で歌われる曲を求めると必然的にアニソンを聴くことになるじゃないですか。
かわいい声だけど、音楽としてもいい感じのものが聴きたいんですよ。
そんなものはないのでしょうか。
中でも、特に面白かったのが『Sunsetカンフー』という曲でした。
歌詞は中国拳法っぽいことを並べているだけであんまり意味は無い感じなのですが、それがかえって良かったです(笑)。(海外だったら文化盗用問題の指摘を受けそうなものですが、それはガラパゴスニッポン、特にそんな意見は出ていないようですね。良いのか悪いのかわかんないけど)
オリエンタルなメロディや楽器を使っているものの、曲自体はテンションアゲアゲな四つ打ちのダンスミュージックでした。
「存在証明」って言葉を入れているのは、アジアンカンフージェネレーションへのオマージュでしょうか(笑)。
水の流れ、っていうのはブルースリーの思想?
「花鳥風月」は日本のことわざですよね……?
なぜここで使われるのでしょう。
調べてみたら世阿弥が残した本から広まった言葉みたいですね。
なんでやねん。
他の曲も良かったんです。
抽象的な書き方になってしまうのですが、音が「アニソンっぽくない」感じでした。
歌詞の方も、「別れ」「終わり」をテーマにしたものが多かったのが印象的。
私がアニソンを好きになれないのって、「永遠」とか「無限」とかっていう現実では想像できないような抽象的かつ壮大(誇大妄想的)な歌ばっかりなところ……。
「日常系漫画」に象徴されるような、「終わりなき都合の良い日常」が前提となっている歌が多いじゃないですか。
このアルバムがよかったのは、それを否定するためなのか、それとももともと「都合の良い日常」を提供するつもりがないのか、何かが終わろうとしていることを受け入れる曲がたくさんあったところ。
また、「終わり」って言っても、それが悲しみや苦しみを生むものとしてではなく、前向きなものとして歌われている印象でした。
好き……そういう歌……。
あと、アニソンで多いなって思うのは「応援ソング」「恋愛疑似体験ソング(一途に相手を思っている女性ソング)」。
応援ソングが多いのって、声優さんから応援されないとモチベーションを保てない人が多いと言うことでは……(笑)。
家族や友人、あるいは仕事で関わる人から労われたり褒められたりする機会が少ないのって、悲しいですよね……とはいえ、その不足を音楽で補填しないといけないものなんでしょうか。
日本の闇を垣間見ている気になってしまう(笑)。
恋愛疑似体験ソングも、実生活でパートナーから愛情を十分に受け取ることができていないという問題に感じます……。
パートナーがいないのか、いるけど愛情を向けてくれないのか、愛情を向けてもらえているのに自分が満足できていない(願望の水準が高すぎる)のか、謎ですが、音楽で補填しないといけないものなの? と感じてしまうのです……「聴くポルノ」みたいな気がして、好きじゃないんですよね……。
音についてだと、やたらとメタル・ハードロックな曲調も少なくって良かったですね。
トライセールの曲は、二十代の女性の等身大な歌が多くて良かったです。
やたらと「少女性」を前提とした楽曲とか、ありますやんか……私そういうの苦手……。
言うて声優さんだって現役女子高生さんばかりじゃないのに、十代くらいの女性の心情を歌った曲ばっかりなのって、なんかオカシイじゃないですか……(笑)。
というわけで、いろんな面でトライセールのことが好きになったのです。
『TryAgein』は傑作アルバムですねぇ。
このタイトルからして「アゲイン」と入っているわけなので、何かを仕切り直そうとしているわけですよね。
あんまり彼女たちのバイオグラフィーを知らないのだけど、なにか活動に一区切りがあったのでしょうか。
そうなってくると、メンバーそれぞれのソロ曲も聴いてみようという気になってきます。
トライセールは雨宮天さん、麻倉ももさん、夏川椎菜さんの三名から成るユニットです。
雨宮天さん
雨宮天さんはずいぶん前から名前を知っていたんです。
なのでこの人のソロ作から聴くことにしました!
声優でありロックバンドのボーカルもやっている谷山紀章さんらしき男性と雨宮天さんらしき女性が一緒にバーにいるところを、たまたまテレビの中継カメラが写してしまったり、谷山紀章がツイッターのアカウントで「雨宮天 スッキリ」とツイートして、その後すぐに削除したり……という特異な経緯で名前だけは存じていたのでした。
谷山さんは声優界屈指のヤリチンとして有名……そしてツイートはおそらく、エゴサしようとして間違えてツイートしてしまったのでしょう……。
南無……。
そんな雨宮さんのソロ作品ですが、すでにアルバムも2枚リリースされているんです。
ソロ活動が順調なことがうかがえますね!
僕の感想としては、『水樹奈々さんもどき』といったところ……。
曲調も歌詞も壮大で、自分の胸に響くポイントは皆無でした。
シングル曲はアニメとのタイアップになることが多いためか、やたらとハードロッキン……前述したように、メタルっぽいアニソンは本当に好きじゃないんです。
好きじゃない声優さんソングの特徴が網羅されている感じで、なんともかんとも……。
そう、歌唱力をアピールするために壮大でドラマティックでシンフォニックな曲調になってたり、演技力見せつけるために曲を変わった設定にしてみたり、曲調が被らないようにめくらめっぽうに歌い手自身が聴いたこともなかったようなジャンルの曲を入れてみたり……。
すまん……僕は、雨宮天さんのソロ作ではスッキリできませんでした……。
麻倉ももさん
この人に対する前知識は一切なかったのですが、『Sunsetカンフー』で僕のハートに一番ぐっときた「咲かせましょう」のパートを歌っていたのがこの方なので、この方のソロ作を二番目に聴きました!
かわいい声の歌を聴きたい僕のためにあるような音楽なのでは……?
実際聴いてみたところ、声はめちゃくちゃかわいいです。
歌唱力も安定していて、そのうえ歌い方もバリエーション豊かで、ちょっとした息づかいや、歌声のアクセントの付け方なんかで色気を感じさせるというユニークな歌手だと思います!
ただ、松田聖子っぽい曲多いな……という印象。
『恋のプレリュード』『星空を想えば』とかモロな気がする。
後で調べてみたら、麻倉さんが松田聖子ファンのようですね。
でも、アルバムの楽曲を制作していた頃の麻倉さんは22歳~24歳だったと思うのですが、松田聖子さんが名曲を連発していたのは十代後半から二十代前半にかけて。
今でもTVから流れてくるような名曲のほとんどがそんな短期間で作られたなんて、にわかには信じがたいことですよ……。
これは、プロデューサーであり作詞家である松本隆さんが、「質と量を両立させてみたい」と考えていたことから、リリースペースを落とさずに活動していたのだそうです。
『赤いスイートピー』『制服』のリリース時は19歳。
https://youtu.be/g3FUVF62Z78
『SWEET MEMORIES』リリース時が21歳。
マジかよ聖子……って思いませんか?
曲の良さもさることながら、松田聖子さんの歌手としての力が神がかっていますね。
前述の松本隆さんが面白いエピソードを披露したことがあります。
「レコーディングの直前までわざと歌詞を渡さずにいて、十分前に歌詞を渡したことがあった。それでもレコーディングブースに入ると、細かいニュアンスまで完璧に歌いこなした。彼女は本物の天才だった」
というもの。(たしか)
そんな風に、彼女は若い頃から常人離れした才能の持ち主であり、同時に若いからこそぴったりとハマる歌詞の名曲を歌いこなす姿が、当時の若い人たちに受け入れられたのだと思います。
なので、正直「純粋聖処女」の役割をハタチ過ぎている麻倉さんに負わせてしまうのは……キビシくないかな……。
松田聖子さん自身も後に郷ひろみさんといろいろやらかしたり、二度の離婚をカマしていたりと(もちろん何回離婚していようが創造性には何ら関わり有りませんが)、全盛期の「清純派」なイメージを覆すようなことがたくさんありますね。
あと『制服』をブリブリアイドルな衣装で披露したりしているのも、いいのかわるいのかわかんないっすね……。
麻倉ももさん、かわいい声を聴くのはすごく楽しかったのですが、そこ以外に「他の歌手と比べて特別変わったところ」が特に見いだせませんでした……。
この前セカンドソロアルバムが出たもようなので、今度ちゃんと聴いてみます!
(あと『明日は君と。』が一番かわいいので何度か聴いたんですけど、「走る」理由が見当たりませんでした。なにか「もう会えなくなっちゃう」理由がないと、「走る」という行動につながらないですよね? だって「今日しか会えない」わけじゃないなら、「明日も会えるし明日言えばいい」わけだし……なんなのあれ)
夏川椎菜さん
最後に聴いたのはこの人。
この方に関しては、前知識は本当に皆無だったし、作品のジャケット写真を見ても、特に何の印象も抱かなかったんです。
綺麗な顔をしているんだけど、髪型とか服装とか表情を見ても、「普通の子っぽい」って印象で、特徴を見つけられなかった。
で、先だって二人のソロを聴いていたので、「まぁ声優さんってこんな感じの曲をやるんでしょ」と半ば高をくくりながら、夏川椎菜さんのアルバム『ログライン』を聴いてみたのです。
そしたら、めちゃめちゃ良かったんですよ!
僕みたいに、「声優の曲ってこんな感じでしょ?」と見下し気味な人にこそ聴いてほしい作品になっていました。
なので夏川椎菜さんの作品の良かったところなんかを、次のエントリで書いていきたいと思います。
ほんまによかったんやでぇ……。
椎菜ー!
俺だー!
結婚してくれー!!!!!!!!
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