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【女製スピッツ】FINLANDS【10年代の日本のライオットガールの真打】

   

FINLANSDというバンドが好きなんです。
まだまだ存在を知らない人も多いと思うので、3分で紹介します。
女性二人組で活動していましたが、19年4月にベースのコシミズカヨさんが脱退、現在はサポートを交えながらギターボーカルの塩入冬湖さんのみが正式メンバー。
塩入さんが全ての作詞作曲を行っています。
音楽性はギターロックバンドというのがいいのでしょう。
アコギやピアノが鳴っている記憶がないです……エレキのみでアレンジされているはず。
配信されている曲は全部で47曲ありますが、どの曲もアレンジの被りがないし、曲の表情も全く違う。
エレキだけを鳴らして、こんなハイペースに発表しているのに、すごい引き出しの多さっす。
めっちゃエモいです。
歌声がめちゃくちゃすごいです……声がかすれるのを厭わないようなか細い叫び。
ゲスの極み乙女。の川谷絵音さんも褒めてらっしゃいました。
メロディもアレンジも歌声も良いのです。
なんかだいぶざっくりな紹介ですが、私の音楽ボキャブラリーではこれが限界です……死。

もしフィンランズをまだ聴いたことがない人がいるようでしたら、ぜひ、最初のEPから一枚一枚聴いていくのがもっとも楽しいかと思います。


創作家の変化を辿る楽しみ方ができるバンドなので、最初の作品から手に取っていくのがベストです。
ただ、聴いたことがない人へ、入門編として一枚だけ推すとするなら、19年3月に出た最新のEPがよいかなと思います。
コンパクトなサイズ感ながら、楽曲制作と演奏のプロフェッショナリズムがわかるはず。

ここから、フィンランズがどう面白いのか書きます。

・歌詞すごい
歌詞の抽象度がとても強く、一聴しただけでは何の歌なのかわからないです。
いや、何回も聴いたのですが、「こーゆーことやな」と確信に至ったものは一つもないです。
ただいくつか歌詞から見えてくる特徴はあります。
孤独感強い
相手への想い強い
相手との距離感からくる絶望・切望強い
けっこう性的
自嘲強い
というところかなと。
もちろん、作数を重ねていく中で変遷している部分はたくさんありますね。
一つ前のアルバムなんかは、「恋」からくる躁的な情動が高まってる気がしました。
しかし恋に浮かれたかと思えば、同じレコードで強い自己嫌悪も歌われる。
なんかすごいんです。
↑で自嘲と書きましたが、自虐をする人は多いんですよ。
自虐って、誰かに慰められたり、落ち込んでいる自分をアピールするところがあると思うんですが、自嘲って自分に呆れていたり、諦めていたりするような性質があると思うんですよね。
なんかフィンランズの曲って、ネガティヴなところが本質で、恋愛とかでアガってたり喜んでいたりする部分の方が人生における時間の割合としては短いということに自覚的な気がするのです。
刹那的というか。
だからこそ恋愛における高揚感を楽曲で表現するのが上手いのかもしれませんが、浮かれた分の責任というかツケが必ず回ってきちゃう……ということへの恐怖もある。
恋愛の責任って何だ?って感じもしなくないですが、感情とそれに伴う行動には良かれあしかれ責任はついてまわるじゃないですか。

・『インディーズロックの皮をかぶったラブロマンス拡散機』への全力のカウンター
塩入さんの言葉を聴いていると、世に数多ある優男風クズ恋愛ギターロッカーたちが歌うロマンスや、「キミとボク」的な世界観に、一人で渾身のパワーで打ち返してるような感じがします。
あと近年、セカイ系の次の波として、ミュージシャンが直接リスナーへの想いや、互いの連帯感を歌い上げるタイプのものも増えましたけど、そこに対してもカウンターを打っているような感じ。
僕の主観でしかないですけど、ああいう甘ったるい恋愛の歌とか、「世界は腐ってるけどキミとボクは違う」みたいな承認欲求満たしてあげるソングみたいなのって、僕は好きじゃないくて……。
というのも、僕からするとリアリティがないからなんでしょうね。
「恋愛が上手くいっていればオールオッケー」とか、「僕がこの世の腐敗を歌って君に大事なことを教えてあげます」的な考え方。
僕はあんまり恋愛がうまくいくことがない……というか恋愛関係を円滑に保とうという意志が弱いのかな。
まぁ僕のことはいいか……。
ここ十年くらいで、(というかラッドのブームが鏑矢になった感ある)インディーロックって恋愛の歌がほんとに増えた。
恋愛をしている最中の幸福感や、恋愛をしていない状態の欠乏感の歌が爆発的に増殖した。
ニコニコ動画でも、ボカロP出身のミュージシャンとかは同じ傾向だなって、すごく思います。
それって恋愛至上主義が、アングラ・サブカルだったはずの地場にまで侵入してきたってことだよなぁと。(だからandymoriはラブソングを歌うことに慎重だったんだと思う)
そういった「恋愛至上主義」的な思想が根幹にある作品って、ごくごく一部の人にとっては現実的なのかもしれないですけど、恋愛に恵まれない(あるいはファンタジーに染まれない)人からすると、追いかけ回しても届かないものだと思うんですね。
追いかけても本当はたどり着けない「坂の上の雲」的な。
で、ハードルが無駄に上がってしまっていると、そこに届かない自分に嫌悪感を覚えたりする。
そんな構造があるにもかかわらず、砂糖漬けの幻想は、さも「本当にある」かのように振りまかれ続ける。
フィンランズの楽曲を聴いていると、そうして無責任に拡散され続けるラブロマンスに、全力でカウンターを打っているように感じるんですね。
恋愛至上観を無責任に植え付けまくっている、ナイーヴで純情な振りしてファンを食いまくってるバンドマンたちを告発する拡声器のような歌。
僕の主観を、人が作ったものに押しつけるのってどうかと思うんですが(笑)。

・特にすごい曲『electro』
フィンランズ、捨て曲がないので全曲必聴なのですが、私が最も頻繁に聴くのアルバム『BI』です。
一枚のアルバムなのですが、構成が秀逸で、感情の流れがとてもビューティフル。
いいポップレコードって、最後の曲を聴き終ってしまうと、虚無感でそわそわしてしまうような、取り残されたような感覚になるような作りになっていると思うのですが、このアルバムは本当にそうっす……。
で、アルバムを一曲目から聴き返すと、とても高揚感がある。
『electro』はそんなアルバムの12曲中の8曲目、中盤のハイライトに収録されています。
5曲目あたりからミドルテンポ、歌の内容もけっこう暗くて重い(雑な言いよう)曲が続くのですが、electroは疾走感あふれる曲です。
曲のアレンジがめちゃくちゃいいのはもちろん、アルバム中最もエモいボーカルが壮絶です。
感情の爆発が、歌詞、声、音の全てに現れてるのがすごいです。
で、歌われる内容が本当にヤバくて、コーラス(サビ)部分がこれです。

あなたが居たなら それだけでいいとか
思ってしまう日が来たら怖くて
わたしを幸せにして欲しいなんて
こんな世界には一度も願っていない

ヤバくないっすか……?
で、後半にはこの歌詞がちょっと違った形で歌われて、それがまたすごい。
いや、もう書いちゃおう……。
ジャスラックどんとこい。

あなたが居たなら それだけでいいとか
思ってしまっただから可笑しくて
わたしを幸せにして欲しいなんて
馬鹿なあなたには一度も願っていない

「私を幸せにしてほしい」
「あなたがいたならそれだけでいい」
という、ラブロマンスの常とう句を真っ向から否定するすごいライン。
P-MODELのすごく好きな歌詞に、のこりギリギリの
「愛なんぞじゃありゃしない まして正義なんぞじゃありゃしない」
というものがあるのですが、そんなふうに、世間では素晴らしいとされるものに対して懐疑を投げかけるようなすごいもの。

ちょっと、すごいです。

後半での詞もすごくて、最初に聴いた時は、塩入さんは「世界」ってなんだと思っているんだろうって思ったんですね。
その謎自体は解けないんですけど、少なくとも、「あなた」がいたらそれだけでいいと思えるくらいに「あなた」を必要としているけど、「あなた」が自分の望み通りに関係してくれないことを、この歌の視点となる人物は知っている。
(もしくはそう思い込んでいる)
つらいっすね……。
なんで「あなたが居たらそれだけでいいとか思ってしまったら怖い」んだろう……。
この点だけで言うと僕も似たような感覚は持っているのですが……。
僕の場合は
「結局離別することになりそうなので相手に依存するとあとあとつらそう」
「自分みたいな人間がひとから愛されるとは思えないので、結局そのうち離れていきそう」
「自分が相手のことを好きじゃなくなっていったら、好きだった日々が嫌な思い出になりそう」
「一人が好き」
「一人が好きというスタンスを崩すのが嫌(固執してる)」
「共同体から疎外された経験があり、自分が他人とは相いれないのだと思い込んでいる」
「過去の恋愛で嫌な別れ方をしててトラウマになってる」
「家族のことが嫌いだから相手を紹介とかしたくない」
などなんですかね……いや、私の場合ですが。
いやーーーーこの歌好きっすね……。
過去の曲ももっと聴き返してみたら、もっと面白い発見などできそうな気はします。
強烈な歌です。

聴き手に直球で伝わるような言葉を避けてきた印象があるのですが、それが、この曲ではもう真っすぐに歌い上げている。
創作家を追いかけていると、こういう変化を感じる瞬間があります。
面白いですよねぇ……。

そんなわけで、フィンランズの作品の中で最も好きなアルバムを挙げるなら、到達点として『BI』を推します。
アルバムとしての完成度がクッソ高いので。

アルバムのクライマックス曲もほんとによい。

・性的
セックスを連想させる歌がけっこうあるんです、フィンランズ。
最新EPに収録されている『UTOPIA』もそうです。
PVはシーツの中で演奏するバンド……。
フィンランズのPVはユニークで、でも曲に合った美しい画になっているので、彼女たちのことが気になっている人はアップされている映像から入っていってもいいですよね。

ちなみに知人のくいしんさんのサイトで、塩入さんと、ビデオや楽曲の製作を手掛けている大川直也さんの鼎談のもようがアップされてます。
面白いですよ!

話を戻します……。
さらりとポエティックにえろいことを歌える女性って、あんまりいないですよね。
ていうか、全然いない気がする……。
ぶりっ子的になったり、過度に性的な方面に振り切ってしまう存在もいるけれど、そうはならずに、潔く等身大で性的なとこがいいですね。
それは男でも同じか。
なんかフィンランズのエロスは生の感覚がある。
私は最近セックスしてないんですけど、嬉しいセックスのあとってこんな気分になってた気がします(笑)。
というか、ここ数年でセックスに対してこんな「嬉しい」みたいな感情ってなかった気がする……(笑)。(年取ると性感が鈍ってきませんか……?)
それが音楽で表現できるなんて、瑞々しい感受性と確かな技術を持っているんだなー、と感心します。
スピッツも常に詩的で、エロスを歌い続けているので、そことフィンランズ(というかソングライターの塩入さん)は近いなって思います。
なので「女製スピッツ」というコピーを考えました!
「女製」というのは、「和製」みたいな感じで「にょせい」と呼んでいただければと。

フィンランズ、ばりおすすめです!!!
ちょっとこの下で、フィンランズが「ライオットガール」でもあるなと思ったので、そのことを書きます。

・日本のライオットガールの真打か?
ロックではよく使われるライオットガールという言葉があります。
語義についてちゃんと調べていないので、定義と矛盾するような部分がある気もしますが、フィンランズっていい感じのライオットガールだなと思ったんです。
社会が女性に要求することにNOと言い中指を突き立てるような存在を、ライオットガールと呼ぶのかなと思っているんです。
男から求められていることをかわして、挑発してみせる。
日本だと、なんかヘアメタルっぽい格好をしたり、過激なロックを歌ったりするだけ人たちにファッションだけ流用されていますけど、海外だともっとガチに「ライオット」なんですね。
自分の中で最もライオットガール的な存在って、ザ・スリッツとホールなんですね。

スリッツは、1stのジャケットでメンバーが上半身裸の半裸姿で、アフリカの部族っぽい格好をしています。
ここで彼女たちが槍を持っていることから、狩猟する側の存在……つまり守られる女ではないことを示しているのは面白いことですね。
ちなみにスリッツというのは割れ目のことなので、あえてあけすけに性的な名を付けているのも、思想の表明ですね。
女たるもの貞淑であれ的なキリスト圏では特に強烈だったはず。
演奏は下手でよれよれですが、魅力的なパンク・レゲエです。
ポストパンクは演奏が下手でもよいのです。

ホールというのはカート・コバーンの妻であってコートニー・ラブがフロントマンを務めるバンド。
アメリカで育った彼女は、バージンを奪ってもらうためにイギリスのミュージシャンであるジュリアン・コープの家に押し掛けたというエピソードがあります。
しかしジュリアンはセックスしてくれず、彼の家に居候をするうちに、彼の仲間たちに半ば強姦されるかたちで処女を失ったそうです。
そんなことをきっかけに、後にミュージシャンとしてライオット・ガールのアイコン的な存在になります。
ホールとはつまり穴……。
自分の初体験が、人として求められるのではなく、ただの穴として扱われたことを自虐したネーミングです。

ちょっと話題と逸れるのですが、ホールで一番好きな曲が『ノーザン・スター』です。
セレブリティ・スキンというアルバムに収録されているのですが、この一つ前のアルバム『リブ・スルー・ディス』という作品は夫のカートが自殺してから一週間後にリリースされた作品として物議をかもしました。
この曲は、コートニーいわく「カートのことを歌った唯一の曲」なのだそうです。
曲がめっちゃいいんです……。
アコースティックギターのアルペジオから始まるのですが、オーケストレーションも派手過ぎない形で導入されているロック。

ライオットガールとして鉄壁だから、こんな風に抒情を表現した時に強いエモーションが表れるんじゃないでしょうか。
で、悲劇の死を遂げた旦那のことを歌う時でも、女を武器に使わずに、ハスキーな声を枯らしながら力強く歌う。
めっちゃ好きだわぁ……。
なんか日本のメジャーでパンクとして出てくる人たちって、シングルを発表していくストーリーが最初から計画されてて「そろそろバラッドでしょ」ってタイミングで、そんなに溜めずに出してきますよね。
ちなみにライオットガールっぽいなと僕が感じる曲も貼ります。

この曲も、同じタイトルの曲がレコード会社から却下されたので、他の曲を持ってきてタイトルだけ挿げ替えたといういわくつきだったりはするのですが……。

私がライオットガールとして挙げた二つのバンドは、性についても開放的な存在なので、フィンランズとはちょっと離れてますね……すまん……ホールとスリッツが好きすぎて、書いてしまいました……。
でもどっちのバンドもヴィジュアルのインパクトはもちろんのことですが、曲も面白いですよ。

上記したような、インディーギターロッカーが垂れ流す恋愛至上主義って、結局は歌う側も恋愛に過大な期待をしているということ。
無意識か否かを問わず、そんな過大な期待が至上で真っ当な欲望である考えていると思うんです。
しかしそんな風に閉じた共依存関係って、あんまり長くは続かないと思っていて……わたしは。(それだとしても、恋愛を崇高なものを捉えていなければやっていけないくらい、切羽詰まった状況に立たされているのかもしれないですけど)
だからそんな恋愛をファンタジー化する連中をばっさり斬り捨てて、しかもセックスソングが男だけの牙城と化しているところに一矢報いているとすれば、フィンランズはまぎれもなくライオットガール!
ライオットガールの皮をかぶったただのビッチが多いシーンをひっくり返してくれるはずです。

自分の妄想の上に妄想を重ねてしまった感が強くて
自分でも困惑しています……(笑)
まぁ人生、いろいろありますからね。
フィンランズみんな聴きまくって、フィンランド国家に押し上げよう。
もしくは在日フィンランド大使館の公式ツイッターアカウントまで届けよう!

 - 音楽

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