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アメリを観てない非モテ男が書くアメリの印象

      2014/12/14

ジャン=ピエール・ジュネ監督作品『天才スピヴェット』を観てきました。
広告に使われているメインヴィジュアルと、「泣き方だけがわからない」というキャッチコピーの組み合わせは、僕の心に強く訴えかけてくるものがあったんです。
多分、このピシッとタキシードを着こなして、髪も完ぺきに整えられた男の子は天才的な頭脳を持っていて、そこらの大人以上に学問に秀でているのだろうけど、「泣く」という感情の発露はうまくできない。
そしてそれをコピーに持ってくるということは、この少年が「泣き方を知る」という成長の物語なのではないかと思ったのです。
感情表現が乏しいまま成長していく物語だとしたら、おそらくそもそも「天才スピヴェット」なんていう親しみやすいシンプルな名前ではなく、もっと難しそうなタイトルになっていたのではないかと思う。
というわけで、成長物語、特に子どもの成長物語好きな僕としては、けっこう気になる映画だったのです。
だけど、『アメリ』の監督なので観に行くことに踏み切ることができずにいたのでした。
それが、『6才のボクが、大人になるまで』を観に新宿武蔵野館に行った時に(邦題がクソすぎる問題は今度書きます)、この作品の予告編が流れて、その内容があまりにも自分好みであったので、結局観に行きました。
(しかしあの予告編はかなりクライマックスにまで踏み込んでいるから、本当ならあれを観ない状態で本編を鑑賞したかったと今は思います)

なぜ、『アメリ』という作品にアレルギーが出るのか。
自分でも不思議なくらい、この作品を観ることに抵抗があったので、少し考えてみました。
映画本編の感想を先に書いた方がいいような気はするのですが、映画を観ている時も途中から「なんでアメリこんなに観たくないねん俺」という想いが何度もよぎったくらいなのです。
というわけで『天才スピヴェット』の感想等は後日書きます。

先に書いておくけれど、このエントリではアメリの内容に関する話は一切することができない。
なぜなら僕はアメリを観ていないし、むしろこれまでアメリを観ることを避けてきた男だからだ。
映画本編を観ていないが、しかしまだ観ていないからこそ書けるアメリという映画にまつわる事情もあると思うのだ。

まず、僕が『アメリ』という映画を知ったのは、中学生の頃に読んだ松本人志さん著の『シネマ坊主』にて触れられていたからだと記憶している。

文章の内容は曖昧にしか覚えていないが、「電波出てまっせ~って感じ丸出しですよね」「女の人はこういうの好きなんかな?」とい書かれていた気がするのだ。
当時の僕は松本人志さんの話す言葉は全てこの世の真理だと思っていたので、「なるほど、アメリは女が好きな映画なんだな」と強く刷り込まれた。
そしてまた個人的な話だけれど、当時僕は女性のことは嫌いだった(詳細省略)。
小学生の男子が、「女の子っぽいもの」「女の子とコミュニケーションを取ること」をバカにしたりするという風潮があると思うのだけど、それを中学生になっても引きずっていたのだ。(今もまだちょっと引きずってると思う)
僕の中には「アメリ=女が好きなものがいっぱい詰め込まれてる」「女が好きなもの=俺が嫌いなもの(嫌わなければいけないもの)」という図式が成立し、アメリは僕にとって仮想敵となったのだ。多分。

そして大人になってからの実感としても、アメリという作品は女性からの支持率が高いように思う。
女性と映画の話をした時に、「好きな映画」、それも「好きな海外映画」としてくくると、この作品の名前を挙げる女性はけっこうな割合で存在しているように思う。
それも、「サブカル女子」的な人にとっては必需品的な勢いで広まった作品ではないだろうか。
このことに関してはアンケートなどで数字を出したわけではないけれど、現在二十代以上の人であれば、けっこう肌で感じることではないだろうか?
僕が「ミニシアター系作品」という言葉を初めて聞いたのも、アメリが紹介されてた時の枕詞だったと思う。
つまり、「アメリ=サブカル女子ご用達」な作品だということだ。
サブカル女子の定義に関しては議論の必要があると思うが、いわゆるメインストリーム的なハリウッド映画や、日本のテレビ会社が制作する映画、安易なメディアミックス作品は観ずに、ミニシアター系映画や少しマイナーな映画を好む人、ということだと理解してもらいたい。(もちろん「は? 私ハリウッド映画も観るし。ゴダールも好きだけど」という人もいるだろうがその辺りも網羅しようとするとキリがなくなってしまう)

そして、僕が「女の子とコミュニケーションを取ること」が恥とされる文化圏で育ったということを前述したが、そこで養われた偏見をもとに考えると、アメリ(=サブカル女子ご用達作品)を男が観賞するということは、サブカル女子との話題調達に違いないのだ。
僕はもう本能レベルで「女と仲良くしようとしてる男」に敏感になってしまっている。
それはKGBかFBIばりに、常に、女の子とやりたがっている男を発見しようとしている(妄想ともいう)。
男が女の子と仲良くなろうとする時に、まず共通の好きなものがないかということを探るところから始めるという手法がある。もちろん、初対面の人と話す時全般で使われることでもあると思うが。
ここで、この『アメリ』という作品は、非常に強力なアイテムにならないだろうか。
まず、「フランス映画」というポジションであることから、かなりのオシャレ感を醸し出している。
そのうえ、『おんなのこ物語』とか『そんな彼なら捨てちゃえば?』といった「二十代女性をターゲットにしておりまんねん~」丸出しな映画ほどは女の子女の子していないので、男が観ていてもあまり違和感がない。これは非常に重要なポイントである。
そしてアカデミー賞にも他部門でノミネートされていたり、海外の映画ランキングでも上位に上がるっているし、日本ではコラムニストや芸能人も「好きな作品」として挙げることがある。
つまり、作品性の面でも評価が高いのだ。
「ミニシアター系」なのに「知名度があり」、かつ「女の子が大好きな作品なのに男が観ていても変に思われない」。
しかも、「評論家筋からも評価されている」という絶妙なポジションに『アメリ』はいるのだ。
僕は観てないけど、そうに違いないのだ。
これらの条件を兼ね備えた作品というのは、かなり数が限られてくると思う。
西川美和子監督の『ゆれる』も近いポジションにあるように思うが、あちらは僕が観ているので除外。(勝手な話なのは承知しているが、そもそもブログとは勝手な話をする場なはずだ)
つまり、アメリ一本押さえておけば、サブカル女子と会話をするうえで強力な起爆剤となりうるということだ。

そうして、自分の中には「アメリを観る≒サブカル女子と会話する時のネタ調達」という揺るがしがたい方程式が成立してしまっていたのだ。
そして当然、サブカル女子との会話のネタを調達しようとする男とは、つまり、サブカル女子とセ○クスしたがっている男のことに他ならない。
僕は今でもミソジニー(女性嫌悪)をこじらせているが、十代の頃のミソジニー具合ときたらとてつもないものがあった。
そしてその嫌悪の対象は女性だけにとどまらず、女性にモテようとしているあらゆる男に対しても向けられていた。(昔は「セッ○スしてる奴全員しね」くらいに思っていた)
つまり、アメリという女性に好まれる映画だけでなく、女性とのコミュニケーションを円滑に進めるためのツールとしてアメリを観る男とか愚の骨頂くらいに思っていたのだ。(そもそも僕はある時期まで「人と話すために作品に触れる」という行為を軽蔑していた)
ここまですべて偏見の塊でしかないけれど、悲劇と呼ぶにふさわしい偶然である。

ここまでアメリを観る女性に対する憎悪(アホな話だけど)、そしてそんな女性にすり寄るためにアメリを観る男に対する侮蔑など、「アメリを観る人」に対する印象を書いたが、少し作品そのものについてのイメージについても書きたい。
アメリ、まだ観ていないからわからないのだけど、いつかテレビか何かで流れた映像とか、松本人志さんが書いていたアメリの感想とか、アメリ好きな人から伝え聞いた内容や概要から推測すると、かなり前衛的というか雰囲気重視な作品なのではないのかという印象を抱いている。
僕はまた、「雰囲気映画」みたいなものもあまり好きではない(初投稿から嫌いなものを並べすぎてまずいと思うけど)。
いや、もちろん、僕が映画を鑑賞して「雰囲気映画だなーこれは」という感想を持ったとしても、それは僕がその映画をうまく理解できていないだけであって、製作者には明確な意図があったうえでセリフの配置や演出が行われているということもあるだろう。
タルコフスキー監督の『ストーカー』などは、ストーリーを理解できなくても映像と音だけで惹きつけられてしまったが、あれは町山智浩さんの解説を聴いて目から鱗がボロボロ落っこちた。
けれど、それは「難解な映画(理解されにくい映画)」の話だ。
そういったものとは別に、世の中には、「雰囲気をたのしんでほしい」ということをのたまう、頭の中がゆるゆるな創作家がプロ・アマ問わずけっこう存在しているように思う。
そんな人たちに作られた作品はどこまでも抽象的で、僕はそういう、制作者が一つの作品に一本の軸を通さずに気分だけで作ったような作品が好きじゃない。
自分自身が、創作物に触れて、「わかりにくいなぁこれ」と思ったりする性質なので、単純に好みの問題でもあるとは思うのだが、それにしても「受け手に何を伝えるか」ということを意識せずに作られているものがあまり好きじゃないのだ。
だいたいそういう映画を好きな側も好きな側で、映画を観て言う感想が「良かったよねぇ」くらいだったりするのだ。(偏見)

それが『天才スピヴェット』は、非常に物語の構造がしっかりしていた。(パンフレット読んだら小説が原作みたいですね)
悪役でありながら主人公を成長させるキャラクターなんて本当に良かった。
詳しくは作品の感想と一緒に書くことにします。

とりあえず僕が言いたかったことは、『アメリを観てる男なんてのはサブカル女子と○ックスしたくて仕方がない性獣だから気をつけろ』ということなのでした。
女性のみなさま、気になる男性が現れたらまずアメリの話題を振ってみるようにしましょう。
そして相手が嬉々としてアメリ語りを始めたなら、そいつはおそらくアメリを切り口に女性を口説いた経験が豊富だということです。
気をつけましょう。

(一応書いておきますけど冗談です。アメリ今度ちゃんと観ます)

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