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映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

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カリオストロの城はコメディ映画。クラリスはその後どうなる?

   

宮崎駿監督の、カリオストロの城を観ました。
感想や考察を書きます。

・脚本がすげー美しい
まず、宮崎駿監督の脚本っていつもおそろしいぐらいに綺麗だということ。
映画の脚本は、通常「三幕構成」で作られると言います。
序破急とも言いますね。
起承転結とも言います。
映画の序盤……物語の世界観や人物紹介を行う序盤部分に、作品全体の25%が費やされます。
これが「序」や「起」にあたる部分。
この部分の終わりに、物語の転機が訪れて「破」や「承転」に突入していきます。
「突入する」のが大事なのであって、序盤と何も変わらない流れがずっと続いていくわけではありません。
主人公が自分の意思で「新しい世界」に入っていったり、もしくは主人公は変わりたくないけど周囲が主人公を別の世界へ運んでいきます。
「破」や「承転」の序盤では、主人公が足を踏み入れた新しい世界の紹介が行われます。
主人公はそんな世界で、ある程度うまくやっていきます。
そして「破」や「転」の終わりの方で、死にかけます。
肉体的に死にかけることもあれば、精神的に死ぬこともあります。
概して、主人公の何らかの選択や決断が原因で、大きな失敗を引き起こしてしまうのです。
これがだいたい、作品全体の75%辺りで起こるのです。
そして「急」や「結」にあたるパートは、主人公が再生していくところから始まります。
再生し、体勢を整えてから、最後の戦いに赴きます。
この「急」「結」のパートが、作品全体の25%で描かれます。
これらの時間配分にはエンドクレジットも含まれるので、傾向としてはこのラストパートがやや短くなることが多いですね。

こういった「序破急」や「起承転結」の構成があることは有名な話です。
が、美しい脚本構成というのは、バランスが均等になっているんですね。
上でもちょろっと書きましたが、1:2:1の配分が理想的。
「そんなにうまくいくもんじゃないだろう」と思いがちなのですが、綺麗な映画って本当に上記の配分で整えています。
好きな映画を見てみる時に、チェックしてみることをお勧めします。
本当に綺麗になっています。

カリオストロの城で言うと、「序」の最後の部分は、ルパンと次元がカリオストロの影の軍団からの襲撃を逃れるシーンです。
二人は車に乗って逃走しながら、「この事件の裏は深いぜぇ」と言います。
自分たちがこれから踏み込んでいくのが、解決困難な事件であることを示唆したところで、「破」に入っていくのです。
で、「急」に入るのは、ルパンが狙撃されて生死の境をさまようけど、飯を食いまくって寝たら復活するあたりです。
僕の感覚だと、「再生」は急に入ってから描かれるものなのですが、この映画では急に入る前に再生も描かれます。

宮崎さんの映画はトトロもすごく綺麗な構成になっています。
なんでこんなに綺麗にぴっちりとした構成で作ることができるのでしょう……ほんとうにすげぇ。

・ルパンは名乗らない
ルパンはクラリスに名乗らないんですよ!
ルパンは自分のことを「泥棒」としか紹介しない。
だからクラリスは彼のことを「おじさま」としか呼ばない。
主人公がヒロインに名乗らないラブストーリー、ということは何か定石のようなものがあるんですかね?
ララランドでも、セブはミアに名乗りません。
それどころかセブは、ミアに名前を聞くだけ聞いて、自分は名乗らないというかなり無礼な男です。
主人公が名乗るか名乗らないか、という点に着目して映画を観たことはあまりありませんが、そういうセオリーがあるのかもしれませんね。
この映画とララランドの共通点を挙げるとすれば、どちらも、男が女と一緒になることを諦めるところ。
面白い共通点ですねー。

しかし、クラリスは映画の最後の最後で、「ルパン」と呼びます。
一緒に連れていってほしいと懇願するクラリスに対して、ルパンは連れていくことはできないと拒絶して、次元たちと一緒に去って行きます。
その後、クラリスは「ルパン」と呼びます。
本人には言わないけど、去って行った彼を見てささやく。
クラリスの中でルパンは特別な存在になったのだろうな……と思うと同時に、再会すら予感させます。

なんかこの別れのシーン、実はちょっと煮え切らないところがあるんですよね。
ルパンは抱き付いてきたクラリスを抱き返すことこそしないものの、キスをせがむ彼女のおでこには口づけます。

するんかい!?!?!

って思いませんか(笑)。
で、その後も「何かあったらいつでも呼んで。地球の裏側からでも駆け付けちゃう」と告げます。

いや、また会う気はあるんかい!?!?!?!

って思いませんか(笑)。
だって、一緒に居られない理由として、泥棒である自分のことを「汚れた存在」と卑下したりしているのに……。
なんかこの辺の「煮え切らないけどエンディングなので別れっぽく描いてる」感って、もののけ姫と一緒な気がします。
草原での別れっていうのも、シチュエーションとしてはかなり似てる。
あと、けっこうなカタストロフが訪れた後のエンディングという点も近いかも。

ルパンは自らを「汚れている」と言うけれど、映画の序盤でクラリスと一緒に崖を降りていったシーンで、クラリスは気絶しているルパンの顔の汚れを丁寧に落としているんですね。
これって、クラリスはルパンを浄化してくれる存在だということを示していると思うんです。
まさに「汚れを落とす」わけですから。
クラリスと別れた後、次元はルパンに「残ってもよかったんだぜ」と言いますが、選択肢としては本当にアリだったはず。

なぜルパンはクラリスのもとに残らなかったんでしょう。
映画を観ていて思うのは、「ルパンは自分を汚れた(陰)存在だから、美しいクラリスを汚したくなかった」というところですかね。
もう一つ、この先の宮崎監督作品を観ていて思うのは「ルパンが仕事大好き人間」だから。
特に「風立ちぬ」と同じ。
この映画を観ていると、ルパンって意外なほど「仕事」の話をしています。
クラリスと出会ったシーンを回想する時も「仕事を始めたばかりで、早く認められたかった」という話と共に語られます。
もう一つ「仕事を取った」説の根拠としては、クラリスと別れたすぐ後に、不二子ちゃんの持つ偽札の原板を見て目を輝かせてしまうところですね。
振ったばかりの女の子を想って物憂げな表情をしていたかと思えば、すぐにまた仕事に夢中になってしまう。
これも、風立ちぬにかなり近いシーンがあります。
主人公の二郎が、菜穂子と結婚の約束をして、彼女との時間を確保するために仕事を減らそうと思って仕事場へ行くものの、同僚と話したりしているうちにあれよあれよと仕事に夢中になっていってしまうシーンです。
なぜこんなに「仕事に夢中になる男」ばかりを描き続けるのかと言えば、宮崎駿さんがそういう人だからなんですよね(笑)。
だから、クラリスのもとを去ったのは「汚れているオッサンが純情可憐な美少女と一緒にいていいわけがない」からであり、「俺やっぱり仕事めちゃくちゃ好きだから辞める気がないし」という諦観でもある。

とは言いつつ、もののけ姫のエンディングの後、おそらくサンとアシタカは会い続けます。
映画がほとんど完成したころに宮崎監督が、音楽の久石譲さんにそのことを語っているシーンがあります。
「アシタカはタタラ場にいて、エボシから『木がこれこれこのくらい必要だ』と言われる。アシタカは山に行って、サンに「これこれこのくらいの木が必要なんだけど、刈ってもいい?」なんて聞きに行って、サンに怒られる。そんな板挟みになる」
やっぱり、あのラストシーンは決して今生の別れではないんですよね(笑)。
だから多分、カリオストロの最後も、「また会いそうな感じ」で終わらせているんですよね。

・コメディの終わり方
ところでこの映画の終わりの終わりで、偽札の原板を見て、ルパンは目を輝かせますが、こういう終わり方ってコメディ映画の定番のラストなのです。
普通の映画って、「何かしらの問題が発生する」のあとに「成長することでその問題を解決する」というハッピーエンドで構成されます。
問題を解決した後のエピローグでも、成長を果たした姿であることが明示されて、エンディングに入ります。
ですが、コメディとホラーは少し違います。
最後に大きな問題と立ち向かう点は変わらないのですが、エピローグ部分でまた問題が発生するのです。
ホラー映画で言うなら、「モンスターをやっつけることができた」のあとに、「そのモンスターがまだ生きていた」のような出来事で幕が下りる感じです。
結局恐怖から抜け出ることができていなかった! って展開、よくありますよね。
コメディ映画で言うと、だいたい登場人物がおバカですよね。
で、最後の方でヒューマンドラマっぽくなっても、また冒頭と同じようなドジをやらかす場面で締めくくって「結局おバカのまんまかよ(笑)」という笑いを見せる。

だからこの映画も、この最後の最後の描き方はコメディなんですよね。
いろいろカッコつけたことも言ってきたけど、最後にコメディのオチがつくことで、ずっこけ感が出る。
結局三枚目の泥棒をやめられていない。
それにしてもこんなに綺麗なオチのつけ方もなかなかないですよ。

・メシの食べ方
ジブリ映画って、自分たちで作ったご飯を食べることが多いじゃないですか。
トトロなんて出てくる全ての食べものが、誰が作ったのかわかるものです。
そんなわけなので、「宮崎映画ってもしかして手作りメシしか出てこないのか!?」って思ったのですが、この映画では手作りメシがほぼありませんでした。
まずルパン一味は、カリオストロ国内のレストランで食事をとる。
その後、城を見張りながらカップ麺を食います。そして次元はカップをポイ捨て(笑)。
最後に、死にかけたルパンが飯をガバガバとかっ込んでいきます。
これは多分、彼らをかくまってくれたおじいさんが作った料理なのかなと思います。
手作り料理だからこそパワーの源になるのかもしれませんね。

ほか、食事のシーンは2つあります。
銭形と、部下の警察隊が、城の外でカップヌードルをすすっているシーン。
城内では絢爛なパーティが開かれているところと比べると、粗食です。
ルパンいわく「さすが昭和一桁、熱心だねぇ」。
昭和一桁という概念が、もはやあんまり伝わってこないですね(笑)。

あと、カリオストロ伯爵が優雅に朝食を食っているところ。
ゆで卵を食べていますが、白身のところを捨てて黄身だけを掬っています。
食べものを粗末にする人物は、だいたい悪いやつですね。
彼の人柄が現れているシーンになっています。
自分にとって必要のないものにはきわめて冷徹。
食事のシーンはそこで終わりますが、カリオストロ伯爵はけっこう横に大きい体型なので、テーブルの上に並ぶフルーツなんかもたくさん食うのでしょう。

ジブリ映画は、食事を作るシーンはもちろん、食べものを入手してくる様も丹念に描かれているイメージだったんです。
私の中で。
なのでこの映画に料理のシーンがないことや、けっこうがさつに食事をとる様にはあっけをとられました。

そういう、食事をおろそかにしているルパン一味を「汚れててガサツな野郎ども」として表現しているんですかね……。
カップ麺はまだしも、ポイ捨てはけっこう深刻な気がします。
ただ、仕事熱心な銭形と繋げて考えてみると、ルパンと次元も「仕事一筋」な男たちだということなのかもしれませんね。
食事に気を遣っている余裕がないくらい、仕事の達成に情熱を傾けているという話。
ましてや料理なんてやってる暇はない。

宮崎監督が手掛けたテレビシリーズのルパンでは、次元とルパンがスキヤキを作って食べているシーンもあるので、男が料理をしない方針で描いたわけではないはずですが……。
「宮崎監督と料理・食べものの描き方」についてはもっと時系列にそって考察してみても面白いかもしれないです。

いろいろ書きましたが、特にオチはないですね……。
しかし宮崎監督の作品の構成の美しさには、あらためて驚かされました。
そういえば、この映画のルパンとクラリスの関係「ヒロインが幼いころに会っていた」って、風立ちぬでも繰り返されてるな。
やっぱりこの映画と「風立ちぬ」は対比して見てみるとわかりやすいのかもしれませんね。

そう考えてみると、草原での別れというのも同じだな。
風立ちぬのラストの菜穂子の台詞が「きてー」から「生きてー」に変更されたというのは有名な話。
「きてー」であれば、仕事もひと段落付いただろうしあんたもこっち側にきなさい、というニュアンスになるはず。
しかし「生きて」だと、まだまだ仕事がんばってね♥のニュアンスになりますよね……仕事のピークの十年は過ぎたかもだけど、がんばってね! っていう……。
パートナーと一緒にゆっくり過ごそうという話から、いややっぱり俺はまだまだ仕事してぇわ! という決意表明になってしまっている(笑)。
とはいえ、パートナーと完全な決別をするわけではない。
あのシーンでは菜穂子はすでに死んでいるけど、多分いつか二郎が死んで煉獄に来るまで待っているはず。
カリオストロからもののけを経て、風立ちぬにまで至っているということになりますね(笑)。

いや、けど、風立ちぬでは菜穂子の姿は消えていっていますよね……。
「君はもういないけど、もう会うことはできないけど、俺は仕事するわ!」という表明なのかな。
少なくともどっちつかず状態ではなくて、「やっぱり仕事大好きだわごめん!」っていう懺悔になっているのか。

オチっぽくなりましたね!
煮え切らない態度、中途半端な決断ばかりをしてきた宮崎さんですが、風立ちぬでやっと「俺仕事大好きクズ人間! ごめん! 会いに行けないわ!」
と言い切ったと。
そういえば紅の豚も「会いに行くのか行かないのか」ってオチでしたね。
同じことばっかりやってるな宮崎さんは……。
ポニョも千と千尋も同じやん。
「一緒にいられるのか無理なのか」。
千と千尋ではハクが「仕事辞めて会いに行くよ!」って言うけど、仕事辞めたかはわからない。
ポニョは「二人が一緒にいるためには、ここを出たらキスをしなさい」と言われるけど、宗介は忘れちゃってるからポニョからキスをすることになる。

うーん……ふしぎ……。

 - ジブリ作品, 映画

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