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映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

*

お料理映画として美しすぎる 祝宴!シェフ 

      2019/05/21

チェン・ユーシュンという方をご存知でしょうか。
台湾国の映画監督ですが、知らない人も多いはず……。
というのも、監督は90年代に『熱帯魚』『ラブゴーゴー』の二作を発表し、日本でも高い評価を得ました。
しかし00年代は完全に沈黙……。
なんでも台湾映画業界は大不況に陥っていたそうで、映画を作るチャンスすら与えられていなかったのだそうです。
80年代から90年代にかけての「台湾ニューシネマ」ムーブメントの大躍進があったことを考えると、作品を世に発信できないのは非常に惜しいことだと言わざるを得ませんが……。
その間、漫画原作の乱発や、TV局製作による大作映画の増加などによって日本映画のダメ化はどんどん進行していったことを考えると、申し訳がないですね……(´;ω;`)

そんなチェン監督の、16年ぶりの新作が2013年に公開されました。(日本では翌14年公開)
それが『祝宴!シェフ』です。

私は2010年前後に熱帯魚を観たことで、チェン監督のファンになっていました。
コメディ描写が天才的に面白いんですよ……。
変なキャラとか変な展開を作らせたらアジア一じゃないかと思ってます。すげーのよ。
そのうち書きたいです。
しかもドラマがおろそかになっていないという、稀有な方。
人物たちのおかしさが、物語としっかり有機的に絡んでいるんですよね。
物語展開と不可分になっているというか。
ほら、コメディばっかりだったのに、最後になると真面目な展開に切り替わってくものとかあるじゃないですか。
そういうのがまったくなくて、ダメ人間がほんとにダメ人間で、ダメ人間ゆえの視点での物語が貫かれているんです。

その後はネット上で監督の動向を調べていたのですが、音沙汰がなく、とても寂しい想いをしていました。
しかし、久しぶりに監督のことを調べてみたら、なんと祝宴!シェフが日本で公開されたとの情報が……。
映画館で観たかったぜ……。

この映画、なぜかDVDのレンタルはツタヤ限定になっています。
私がメインで使うのはツタヤなので不便はしませんが、この「レンタルはツタヤ限定!」って、なんのためにやっていることなんだろう……。
もちろん、近くにゲオとツタヤがあるとして、ゲオの方が安いのでゲオを使うという人もいる。
そういった人々を誘引する要素にはなると思うのですが、そうまでしてお客さんに来てほしいのですかね……。
競合店を潰すための策としては相当下劣だと思うのですが……。
昔と比べてビデオショップって減ってて、それは映画や映像コンテンツにお金を払う人が減った&そういうコンテンツを鑑賞する習慣が減ったということなのだとは思うのですが、そういう根本的な部分を解決するのが仕事なのでは……。
それを、もともとあるパイを奪い合うためだけに知恵と金を使うのであれば、それは縮小していく一方な気がしますが……。

まぁいいや。
作品の概要を説明します!
途中まではネタバレなしで書くので、作品を未鑑賞の方にも読んでほしいです。
素敵な作品なので……。
(今見てみると、YouTubeで動画の有料配信やっているみたいですね)

・あらすじ(記憶を頼りに書いているのでちょっと違うかも……大筋は間違いないです)
都会で売れないモデルをしている女の子・シャオワン。
彼女は亡き父が伝説的な台湾料理人だったが、自身は料理への関心ゼロ。
ある日恋人が借金を残して失踪し、借金を肩代わりさせられてしまい、義母の暮らす田舎の実家へと夜逃げする。
シャオワンと同じく義母も料理ができず、父のなき跡を継いだ弟子に裏切られてしまい、実家は差し押さえられていた。
義母は料理ができないなりにも料理店を切り盛りしていて、シャオワンは彼女を手伝うようになる。
そんな時に、二人のもとに高齢のカップルが訪ねてきます。
50年前に、そのカップルが出会った宴会の席で食べたシャオワンのお父さんの料理が忘れられず、同じ料理を自分たちの結婚式で作ってほしいというのです。
しかし義母は、その料理のレシピはすでに失われていて、作ることができないと告げるのです。
残念そうに立ち去ろうとするカップルに、シャオワンは、自分たちがその料理を再現してみせると約束してしまいます。
カップルは感謝を言って去って行きますが、料理ができない二人は頭を悩ませます。
そんな二人のもとに、シャオワンにべた惚れのオタク大学生三人組や、どんな料理の悩みも解決できるという「料理ドクター」を名乗る好青年が現れます。
彼らの協力を得て、伝説の料理の再現を目指す母娘。
そこに、シャオワンを追ってきた借金取り二人組も現れますが、なぜか彼らも料理を手伝うことに。

その後、母娘とお料理ドクターは、全国宴席料理大会へと出場することに……。

というのが映画のあらすじです。

・主人公が料理を始めるきっかけが秀逸
主人公は老カップルの頼みを承諾して、料理を始めることになりますが……この流れがちょっと最高すぎませんか?
主人公は同棲していた恋人のことが大好きで、彼が失踪する日もケーキを注文して帰宅を待ち望んでいたのでした。
しかし彼の代わりにやって来たのは、借金取りたち。
振られるどころではなくて、別れも告げられないままなのです。
映画では彼女の傷心を深くは描きませんが、かわいそうです……。
そんな彼女だったから、老カップルたちが愛し合っている姿を見て、放っておけななかったのでしょう。
まるで自分が望んでいた幸せな結婚を、彼らに仮託するかのように。
この流れを観て、主人公の行動に共感しない人って、ほとんどいないと思うんです。
こういう、誰が観てもわかるように、登場人物の感情的な行動を話に組み込めるのって、本当に技術が巧み。
これは彼女たちが料理の道に踏み込んでいく、物語が動き始めるきっかけになっている。
いわゆる、物語が動き始め、主人公がこれまでとは違う世界へと入っていく部分。
映画では時間の三分の一頃に起こる、第一幕から第二幕へと突入するポイントです。
そこに、こんなにかわいらしいエピソードを配置できるのは本当にすごい……。
チェン監督、やっぱりすさまじい才能の持ち主です。

・シナリオライター志望が書くシナリオあるある、不動のトップ2
宮崎駿さんの発言集を読んでいたところ、映画監督の三宅隆太さんの著書・スクリプトドクターの脚本教室で書かれていたのと同じことが書いてありました(笑)。
要約すると、
「スタジオの若手に脚本のアイデアを出させてみると、二つのパターンしか出てこない。『ある日突然死神が現れる』
『仕事に疲れた人が田舎に帰って自分探しをする』」
ちょっと手元のインタビュー本の中から探しきれなかったので曖昧なのですが、おおむねこんな感じでした。
年齢の全然違う二人がこんなことを言っているのだから、本当にあるあるなのでしょう……(笑)。
ライター志望といわず、実際に作品になってるものでもこういうの多いですよね……特に、邦画。
で、祝宴!も、この後者のフォーマットに当てはまると思うんです。
まぁ、細かいことを言うと、三宅監督が指摘することには、若い人が書く田舎帰郷モノは「親のからだの不調」が帰郷の理由になるようなので、祝宴!のように都会を追い出されるような描き方ができてる時点で一線を画するわけですが……。
こういうあるある的な流れではあるのに、ちゃんと観る者が共感する要素を入れられているのが、やっぱり腕のある監督の仕事ですよね。

ちなみに三宅隆太監督はもう2パターンをあるあるとして挙げていて、
リストラされたサラリーマンが風変わりな女子高生と出会って旅をする『中年と女子高生系』
自衛隊化架空の防衛軍に属する主人公が、道の生命体や架空の国と戦う、人間ドラマがやたら薄い『陸幕系』
といったものがあるようです。
確かにどこかで聞いたことがあるものばかり……。
いやぁ……私も十代から二十代にかけて妄想していた内容ですね……身につまされます。
いや、最近も、自分探しモノを書いたことをここに告白します……。

その三宅監督が指摘する点としては、田舎に帰ってくる主人公は、だいたい平坦な日常を送るだけの都会の生活に疲れていることが冒頭で描写されるそうなのですが、シャオワンちゃんはそんなに都会に疲れた感じはありませんでしたね。
考えてみると都市的な喧騒も描かれなかった。

・お料理を通じてみんなが救われていく
この映画の登場人物は、忘れられない料理があります。
また、料理を作るようになることで、みんな大切なことに気付き始めます。
主人公が自分に向き合っていく過程の描き方が丁寧で、どんどん惹き込まれます。
美味しいものを食べたいというのは人間の根源的な欲求。
なのでせっかくお料理を作るなら、美味しく作れるようになりたい。
そこに、「誰かに美味しいものを食べてもらいたい」という想いはつまり、人を喜ばせたいということ。
そんな気持ちが加わってくるなら、それは利他的な行為になります。
利他的な行いをすることで、自分自身も幸せになれる。
お料理ドクターがお料理の道を究めようとする理由も描かれるのですが、それがまた泣ける……。

・トリッキーな撮影、美しい画面
画面がずっときれいなんですよ。
食べものに限らず。
部屋の中もいろいろな模様が施されていたりするのですが、台湾はそういった装飾を随所に施す文化があるのかもしれないですね……カラフルです。
で、お料理シーンを筆頭に、すごくトリッキーな手法で撮影される部分があります。
一番驚いたのは、中華鍋でお米を炒めるところで、鍋を回して中の食材が鍋の円周を回っていくのをカメラが追っているんですよ!
これはすごいなーと思いました……カメラを鍋に近付けて撮ったのだろうか。
他、完成したお料理の見せ方もユニークなものが多いです。
なんでもチェン監督は、映画を撮っていない間はCM撮影の仕事をして食いつないでいたとのことで、ユニークでトリッキーな撮影の技術が身に付いたのだそうです。
すごい……。

また、料理を食べた人のリアクションもすごいです。
感動のあまり宇宙に飛んで行ったりします。
これって、日本の漫画の中華一番の影響なのかなと思ったり……。
中華一番は本場の中国でも人気を得ていて、なんと中国で実写ドラマ化もしてしまったほど……。
言うてもそれは中国の話なので、台湾とは無縁の作品かもしれませんが、僕はそんなことを思ったりしました。どうなんでしょ。

・衰退しつつある食文化
日本でも日本食文化が衰退しつつありますけど、それはおそらく台湾も同じ。
この映画は衰退しつつある台湾料理文化へのノスタルジーなのだと思います。
ある種続的な主人公と義母は、ファストフードのポテト美味しいって言って共感し合います。
スーパーやコンビニで安くておいしい総菜が食べられるようになったことが食文化衰退の要因でしょうね。
あと一人暮らしの人間も増えているので、手の込んだ料理をすることが減ってる。
専業主婦も減っているので、家庭でも料理にかけられる手間ひまは減っていくのでは……。
核家族化も進行しているので、子どもがおじいちゃんおばあちゃんを介して昔ながらの文化に触れることも減ってるはず。難儀やで。
そんな二人が、台湾の伝統料理を作るようになっていく様は素敵です。
そして料理をするようになってから、いろんなことを学んでいく過程をコミカルで軽妙に描いているところは上手いですよね。
日本食文化でもこういう映画ってあるのでしょうか。
ラーメンガールとかって聞いたことあるけど……。
若い子が、料理を作る映画がもっとあっても面白い気がします。
この映画のすごくいいところは、主演の女の子が爆発的にかわいいところですね。
この子が売れないモデル役をやるのは無理があんじゃね!? と思うレベル。
二階堂ふみさんに似ていますね。
彼女を長身にして、女の子っぽいファッションにした感じ。
二階堂さんは沖縄出身……沖縄の人ってやっぱり、台湾や中国の人と顔立ちが近いですよね。
地理的にも近いし、血統が交わってきた歴史があるのかもしれないっすね。
(差別発言にはならないよね……?)

・ちょっと詰め込み過ぎかも……
ちょっとシナリオに、いろんな要素を詰め込み過ぎて、消化不良や無理やりな展開が見受けられる部分もあります……。
あと、逆に、もうちょっと深く書いた方がいいんじゃないか?という点もあったり。
詳しくは、下の方でネタバレ込みで書きます。
やりたいこと詰まりすぎなんでしょうね……映画を撮れなかった時期が長かったという話なので、溜まってたんですかね。
才能ある監督なんだから、もっと映画撮らせてやってくれよ!!
けど、テンポ良く進んでいく映画なので、基本的には気になりません。
良い映画なので、未見の方はぜひとも観てほしいです。

・監督のその後
ちなみに監督はこの後『健忘村』という映画を製作。
日本では映画祭でのみ公開されて、その後ソフト化されていません。
アジアの映画監督の中ではトップ5に入るぐらい好きなので、もっと公開されてほしい……。
というかなにより、もっと製作させてやってくれ!
こういう時に、英語がわかればいいなぁと思わされます。
英語がわかれば映画鑑賞趣味って、死ぬほど幅が広がりますからね。
日本未公開映画でも、英語化されていないものなんてほぼないわけだから。
それにネット上にある資料にも目が通せるわけですしねぇ。
はぁ……。

以下ネタバレ。
特に好きなところについて語ります。
ただただ語ります(笑)。
ネタバレ覚悟で興味のある人は読んでもよいかもしれません。

・お料理ドクターのコメントが……
この映画で一番好きなのが、お料理大会で、ドクターがマイク越しに母にメッセージを送るところです。
何回観ても涙がぼろぼろに流れます……。

シャオワンとお料理ドクターは、どんどん距離を縮めていきます。
お互いに惹かれ合っている。
お料理ドクター、料理に対してひたむきで純真な情熱を向けていて、同性の僕から見てもとても素敵な人なんですよ。(もうちょっと欠点が描かれてても良かったかなという気もしますが)
お料理ドクターは、台湾の家庭料理「トマトの卵炒め」について特に熱を入れて研究しており、いろんなお家でどう料理の作り方を取材しています。
家庭料理ゆえ、お家によってアレンジの仕方が様々で、味も全然違うのだそうです。
ある時に、二人で話している際に、ドクターは「刑務所のみんなも、幼い頃に食べたトマトの卵炒めの味が忘れられないんだ」とこぼしてしまう。
つまり、彼も前科があって刑務所にいたことがあるのです。
ドクターも「言ってしまった……」って顔をしますが、シャオワンはショックを受けます。
その後、二人の間には気まずい空気が流れるようになる。
そしてドクターは、刑務所にいた頃に自分に料理を仕込んでくれた料理人から引き合いを受けて、シャオワンたちとは別のチームでお料理大会に出場することになります。
二人はライバルになるのです。

で、紆余曲折あって、二人のチームが決勝戦でぶつかります。
試合ではいくつかの料理を審査員に食べてもらうのですが、ドクターのチームが最後に出した料理が「トマトの卵炒め」です。
大会のもようはテレビで中継されているのですが、お料理を舞台の上の審査員に出したさいに、ドクターは司会者のマイクを取って、こんな話をします。
以下、そのシーンのドクターの台詞の文字起こしです。
()内は字幕の文面。

あなたはこれを見ているでしょうか。(この放送を見ているでしょうか)

僕を6歳で捨てたあなたですが(僕が6歳の時にあなたは出て行きました)

最後に食べた「トマトの卵炒め」はまだ覚えています(最後に食べたトマトの卵炒めを忘れられません)

今はただ、こう伝えたい(あなたに伝えたいんです)

もう恨んでません(恨んでないと)

幸せです。安心して。(僕は幸せです。安心して)

わたし、このコメントのシーンはホントに何度観ても泣かされます。
なんなんだ、このすごい言葉は……。
すごいのは、ドクターにそんな過去があったなんて、映画を観ているだけではわからないんですよ。
伏線も張っていなかったはず。
なのに、すごく心の中にすとんと落ちてくるというか。
彼のこの言葉を聞いて、シャオワンちゃんも笑みを浮かべます。
前科持ちの彼ではありますが、今は改心していることが伝わってきたからでしょう。
というかシャオワンちゃんも、前科があると聞いたからって、彼に嫌悪感を持ったということではなかったはず。
もしかしたら、自分に借金を背負わせて逃げた元カレへの恨みつらみのはけ口になってしまったのかもしれません。
違法行為をする人間への憎悪として。
で、観ている人は、おそらくドクターがお母さんが自分を捨てたことへの恨みだったり、あるいはお母さんがいないという環境の苦しさから犯罪に走ったのだろうということが読み取れるわけです。
すげーいいシーンなんですよ……。
それにしても、この言葉の削ぎ落としっぷりですよ!!!!
こんなに削ぎ落とした言葉をつづれる人なのだから、内容ももうちょっとまとまっていると、なおよかった……!
このあとに主人公がマイク越しに「ありがとう」と伝えるけど、ドクターが聴いてないところも泣けるわ……。
きっと、ドクターの言葉もお母さんには届いていないんじゃないでしょうか。
でも、彼にとっては、その言葉を口にすることで贖罪となっているに違いない。
食材映画の贖罪。

僕がこのシーンを好きなのは、多分、昔付き合っていた人への想いとすごく近いからな気がする。
振られて、相手のことを恨んで、でも時間が経ってみると、一緒にいる間に教えてくれたことが自分の人生でどれだけ糧になってきたかに気付く。
ありがとうって伝えたいけど、伝えられない……みたいなもやもやした気持ち。
まぁありがとうって伝えたいってことは、「成長できた僕を見て! できたらやりなおす機会をちょうだい!」と思っているだけなのかな……。
嗚呼。
なんかそういう、伝いたいのに伝えられない感情を持つ人間にとって、この言葉ってど真ん中に響いてきたんですよね。すごい。
友人関係でも離別を繰り返しているので、なんか……こんなことを思っていたりする気もする。
謝ったり感謝したりを、伝えられないのって苦しいですよね。
忘れられればいいのかもしれないけど、その人について想ったことが自分の根幹になっていたりもするし。
親にもそういう想いを持っているのかなー……。
私はあんまりよろしくない家庭に育っているので、十代から二十代にかけてのずいぶん長い間、親のことがほんとに嫌いでした。
今も嫌いだけど……。
でも若い頃よりは許せているので、そういう気持ちが代弁されたように感じたのかも。

いずれにしても、様々な感情が入り混じるシーン。
最後の「安心して」がほんとにいい……。
簡単な言葉で、こんなに人(僕)を泣かせることができるなんて、やっぱりすごい。
素晴らしい……。

・ドクターとシャオワンが惹かれ合ったわけは?
ドクターの出自はわかったのですが、シャオワンも実のお母さんに育てられていません。
映画の中ではさらっと「義理の母」とだけ語られているだけだし、義理の母とシャオワンはめちゃくちゃ仲良しなので忘れがちですが、シャオワンには本当の母がいたってことですよね。
「本当のお母さんに会えない悲しみ」を抱いて育ったという共通点がある、という惹かれ合い方だったってことかなぁ。
そう考えると、ドクターがお母さんへの想いを話している時に、シャオワンが彼を許す気になったのは、親近感を覚えたからというのも一つあるのかもしれない。

・シャオワンが段ボールをかぶる理由がわからん!
主人公が段ボールをかぶって、別のどこかを夢想していたのは、お母さんに会えないからなんじゃないかと思うんです。
寂しかったんでしょうね。
それは後半に出てくる、段ボールをかぶる幼いシャオワンを、父が抱き上げるシーンを観て思ったことなのですが……。
彼女のお母さんが亡くなっているのか、離婚をしただけなのかわからないんですよね……。
それは物語上、語られません。
「本当のお母さん」というワードすら出てこなかったはず。
お母さんのことがわからないから、主人公が段ボールに入りたがる理由わからない。
ちょっとそこの部分は描写が明確に不足していましたよね……。
あそこまで削ってしまうんだったら、段ボールをかぶるという描写自体なくしてもよかったんじゃないかと思いました。

そう考えると、はじまりとおわりに入っていた、師匠と弟子のお話……。
あれって、弟子は幼いながらも親元を離れた子どもですよね?
主人公と、料理ドクターと同じ心境なのかな。
あのお弟子って誰だったんだろ……主人公のパパではないはず。
地下鉄で暮らしてた仙人みたいな料理人さんだったのかな。

・老カップルの結婚式どこいった?
老カップルが途中から全然出てこなくなって、お料理大会がメインになっていくんですよ。
老カップルどうした!? と思っていると、大会の決勝戦に登場して、ここで食べるみたいな話になってる。
無理やり過ぎないか……(笑)。
そもそも主人公が料理に向き合う動機は老カップルだったんだから、もっと有効に活用しないといけないんですよ。
この存在を。
主人公が料理をする動機が2つになっている必要がない。
いや、主人公に動機を持たせてから、賞金狙ってお料理大会に出たんでしょうけど、本筋は「老カップルに料理を出して幸せな結婚式にしてあげたい」だったはずなんですよ。
大会の話が出るのはその後なので……。
妥協点としては、カップルの前に料理大会の話を出しておいて、カップルの結婚式に食事を出すことに決めた後「大会に出て料理修行を積むことで、カップルの料理も作れるようになる」みたいな展開に持っていくなどかなぁ……。
あと、数秒でいいから、老カップルの結婚式はやらせてやってくれ!(笑)
多分それはそれでとても美しいシーンになるはずだから……。
いや、物語のピークをお料理大会に持って来たかったのだろうし、結婚式という祝祭的なシーンを作っちゃったらだめなのかもだけど……。
でもできるよなぁ。
ドクターとの再会を、結婚式場ってことにすればいいんだし。
で、幸せそうな結婚式を見ていて、シャオワンちゃんはドクターのことを思い出す……あのとき自分がスピーチをしているときに、振り返らず会場を去っていったドクター……。
その寂しさから、シャオワンちゃんはまた段ボールをかぶる……そこにドクター!
これでいけるんじゃないっすか!?

・やっぱ詰め込みすぎ
いや、大好きなので、こんなこと言いたくないんですけど!
本当に好きなんですよ。
一番好きなシーンなんて10回は観返しました。
毎回泣きました。
でも観返してみての不満点としては、要素を詰め込み過ぎて破綻している部分があるということ、逆に描写が不足していて面白さに気付けない部分があるというところですね……。
あと、国柄の違いもあると思うのですが、ギャグで笑えないとこもいくつかありました……(笑)。
熱帯魚やラブゴーゴーはギャグが死ぬほど面白かったのですが、ちょっと地味に笑わせてくるものだったので、本作のように分かりやすくコミカルで明るい作風だとチェン監督は本領を出せないのかもしれませんね。

いろいろ文句も言うてしまったのですが、全体で言えば全然面白いです。
ふつうに傑作の部類。
なので必見です……。
100点中で言えば90点は全然いくんで!

 - 映画

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