てやんでい!!こちとら湘南ボーイでい!!

映画音楽本ごはんの話を、面白く書けるようにがんばります

*

桑田佳祐『飛べないモスキート』の考察

      2020/03/31

僕、湘南ボーイを自称しているだけあって、生まれも育ちも湘南なんですよ。
それも、キング・オブ・湘南の茅ヶ崎です。
その茅ヶ崎の中でも、海寄りの地域にずっと住んでいます。
海には三年に一回ぐらいしか行かないのですが……まぁそんなもんですよね。人生って。

出身地の話をすると「茅ヶ崎と言えばサザンだよね!」と言われることが多いです。
しかし僕にとって、サザンオールスターズは、長い間恥ずかしい存在だったんです。
サザンが初めて茅ヶ崎球場でライブをやったのが、僕が中学の頃。
それ以降、茅ヶ崎の街にはやたら「サザン」の名の付くものが湧いてきたんです……。
(今になって思うと、僕が意識し始めたきっかけが球場ライブであって、その前からサザンだらけだったのかな)
街の和菓子屋は「サザンまんじゅう」を売り出すわ、「サザンクリニック」なる町医者が出来るわ、駅の発着のメロディがサザンになるわ……激ダサじゃないですか。
サザンを標ぼうしていなくとも、店内BGMがサザンの曲という店の多いこと多いこと……。
そんなの、思春期で、自分を取り囲む環境すべてに悪態をつきまくるひねくれサブカル逃避野郎だった僕からしたら、もう反抗の対象ですよ。
それにその頃のサザンと言えば、TSUNAMIみたいな激売れラブバラッドを歌う年寄りバンドのイメージだったので、なんか癪にさわりまくるわけです。
そういうわけで僕は、サザンやビートルズみたいなオッサンが好きな音楽を忌避しながら、オアシスやニルヴァーナやウィーザーを聴く十代を過ごしました。

しかし最近になって、サザンをちゃんと聴くようになったんです。
サザンのCDも集めたし、桑田さんのインタビュー本にも手を出してしまいました。
まだすべての作品は聴けていないし、聴き込みも浅いと思うのですが、
「飛べないモスキート」
という超名曲について書きたくなったので見切り発車的に書き始めてみました。

ちなみの僕のサザンで好きな曲ランキング
1 真夏の果実
2 Bye Bye My Love (U are the one)
3 エロティカ・セブン
4 HAIR
5 愛の言霊

桑田さんの好きな曲ランキング
1 飛べないモスキート
2 JOURNEY
3 ROCK AND ROLL HERO
4 すべての歌に懺悔しな!!
5 鏡

桑田佳祐さんの作品の中で、僕が特に好きになったのは『孤独の太陽』というアルバムです。
94年発表された、二枚目のソロアルバム。
このアルバムを制作した時、桑田さんは、サザンというバンドで音楽活動を続ける意義について悩んでいたと言います。
「いつまでも百貨店やってるわけにもいかないし」だそうで、サザンの活動をいったん休止して、ソロ活動に入ったとのこと。
このアルバムは、僕の中でサザンのイメージとして強くあった、楽器がすげーいっぱい鳴ってるゴージャスなアレンジではないんですよ。
シンプルなバンド編成でレコーディングされていて、曲によってはアコギだけで録られていたりします。
音が研ぎ澄まされているんですよね。
ソロとサザンの一番の違いって、入っている音の多さなのかなと思います。
正直、サザンの「アルバム」には未だにあんまり惹かれないのですが、孤独の太陽はアルバム単位で聴きたくなる感じです。
内容も統一感がありますしね。
サザンの場合、よく言えばモチーフが幅広い……わるくいえば雑多な感じがします。
雑多、猥雑……というのも、サザンの場合、そこがコンセプトなのかなって感じがしますけどね。
孤独の太陽で垣間見えるシンガーソングライターとしての桑田佳祐さんの方が僕は好きですね。

で、僕が一番好きな飛べないモスキートなのですが、アルバムの中盤に収録されているアップテンポな楽曲です。
演奏はとてもベーシックというか堅実な作りで、特別素晴らしいというのもではないのですが、歌のメロディと桑田さんの歌唱がスゴいですね。
桑田さんは「ロックとはシャウト」って感じのことを発言していますが、その意味ではこの曲はめちゃくちゃロックな曲ですね。
しかし歌の内容がすごいんですよ。
いろんなテーマをぶち込んだ曲だと思うのですが、僕は、「十代の少年たちの苦悩」を、三十代の桑田さんの視点から歌っているものだと思います。
歌の主人公は苦悩の当事者ではなく、傍観者の立場ということですね。
タイトルのモスキートは、「蚊」の意味です。
ただ、歌詞の内容と「蚊」という生き物とはあまり関係ないです。
実際に蚊の生態を表す詞もあるのですが、そこと「いじめに悩む十代」はあんまりうまく繋がってはないですね。
それで思い出したのが、「モスキート音」というやつです。
高周波の音が、蚊の羽ばたきの「プーン」という音に似ていることからこう呼ばれるそうです。
こーいうやつ ↓

人間の耳は年を取るにしたがって高周波音が聞き取りにくくなってくるのだそうです。
で、この曲は苦悩にさいなまれる十代の少年たちが主題になっています。
彼らの悲痛な心の叫びが、まるでモスキート音のように「大人たちには聞こえない」ということを歌っているのではないでしょうか。
子ども達の悩みに、大人はあんまり関心を抱かないですよね?
僕はいま三十代ですけど、十代の頃はそれはもう苦悩しまくって自殺したがりまくっていました。
その時に悩んでいたことを、今冷静に考えてみると「何をそんなに悩むことがあるの」「こうこうこうすれば解決できるor気にならなくなる」って思えてしまうんですよね。
しかし悩める十代にとっては、命がけで立ち向かわねばならない重大事に思えている。
この曲で歌われる「彼」の抱える苦悩は、本当に解決不可能なようなことかもしれませんけど、やはり往々にして、大人はそもそも無関心だったりします。

追記
「葬式ごっこ」という、80年代に起こった中学生男子のいじめ自殺事件がありました。
亡くなった男子生徒は、サザンオールスターズの大ファンだったことが当時、報道されていました。
その事件の顛末を追った書籍の紹介文に
「亡くなった○○君の墓前には、桑田佳祐が供えた花が置かれていた」
とあります。


これが事実であれば、桑田さんは、この時からいじめ問題について、強く胸を痛めていたのだと思います。
哀しいですよね……。

と思っていたのですが、この曲の歌詞について調べていたら面白い情報がありました。
この歌はたんに「いじめ」を歌っているだけではなく、「差別」もモチーフの一つになっているようなんです。
やはり減ってきつつあるとはいえ、日本にはまだまだ差別があります。
部落などの出生差別の問題だってなくなっていません。
この曲を理解するうえで特に重要なのが、90年代に社会問題になっていた「薬害エイズ問題」です。
エイズという感染病があまり認知されていなかった時代、エイズに感染している人が献血などをして、その血液を輸血された人がエイズに感染してしまうという出来事があったのです。
今は治療法も見つかりましたが、当時のエイズは死に至る不治の病……感染もするということで、エイズに感染した人は差別を受けていたそうです。
たとえ輸血によって感染したのだとしても。
エイズの場合、特にコンドームを使用しないセックスによって感染するというイメージもあり、罹患者が批判されるような風潮もあったと思います。
桑田さんはエイズ問題に関心を持っており、アクト・アゲインスト・エイズ(AAA)というエイズ啓蒙のイベントをプロデュースし、自信も出演するなどしています。
この第1回が開催されたのが93年……この曲が発表される一年前の事です。
エイズは血液感染する病気であり、蚊は人間の血液を吸って生きる虫……ということで、「蚊」という血を吸う生き物が繋がってきたのかなぁと。
(HIVウイルスは蚊の体内で感染力を失うため、蚊を媒介した感染は起こらないようですが)http://www.osaka-aids-now.info/quiz/

ただやはり、一つの事象にスポットをしぼったというより、桑田さんが当時関心のあった、広い意味での差別問題への想いをつづっているのだろうなぁと思います。
とりあえず歌詞を引用しながら、考察していきたいと思います。

悲しい噂で飛べないモスキート
傷みを避けるため
生命をつなぐ赤い川の水
絵になる美談はどこ吹く風

この「悲しい噂」というのが、エイズ感染をしたことで周りが好き勝手に噂をするというニュアンスなのかと思います。
あるいはエイズにかかわりのない差別、いじめでも、ありもしないことを噂されてしまうということは多いですよね。
生命をつなぐ赤い川の水というのは、血液の流れる脈のことを指しているのだと思うのですが、具体的な意味はわからないですね……蚊が血を吸うというモチーフなのかなと思うのですが。
赤い川=脈なのは間違いないですが、赤い川の水というと人間の血液を指しますよね。
しかし歌にどうかかわるのかわからない!(笑)
絵になる美談はどこ吹く風……って、こんなに鋭い言葉、よく思いつきますよね!?
そうなんですよ、絵になるような美談なんて、ほんとは起こらないんですよ。
差別を止めさせる人って、やっぱり、現れないんですよね。
日本って、「空気」が出来上がっちゃえば、誰かが虐げられていても、みんな順応しちゃうんですよね。
悲しいことに……。
だからこそ、フィクションの世界では、いじめを止める人が参上したりするんでしょうね。
ほんとにすごいですよ……この歌詞。
また、このアルバムでは「風」というワードが頻出するのですが、ここではとても自然に使われていて、そこにも感心してしまいます。
桑田さんのメロディセンスと言葉を繋ぐセンスって、やっぱりやばい……。


現代(いま)では着れないガラスのタキシード
愛する女性のため
壊れて消えた夢のシャボン玉
結ばれたくとも運命は何故?

このセンテンスは多重の意味があるように思います。
ガラスのタキシードというのは、シンデレラのガラスの靴の男版のようなものではないでしょうか。
ガラスの靴は時計の針が十二時を指したら消えてしまうことで有名ですが、同じように、歌の主人公もけばけばしいけれどぱっと消えてしまうようなタキシードを着ていたのでしょう。
夢のシャボン玉が壊れて消えた……という部分をメインに読み解くと、バブル経済のはじけた日本を揶揄しているようにも思います。
今では着れない……というのは、昔の方が経済的に豊かだったので、金のかかった服を買ったりしてたって意味かも知れないです。
もう一つの視点としては、まさにこの曲を作った時の桑田さんの心境を歌っているというもの。
サザンがデビュー当時、楽曲づくりよりもTVやラジオなどの芸能活動を優先させられてしまい、メンバーが疲弊してしまっていたというのは有名な話。
しかも桑田さんのおちゃらけたキャラなどもあり、コミックバンドとして扱われてしまっていたのだとか。
そんな生活に嫌気がさして、今度は逆にTVに全く出ずにスタジオで曲を作りまくるようになったこともあるそうです。
テレビに出まくって、キャラを押しつけられていた日々を、「ガラスのタキシード」と例えているのかもですね。
で、もう一つ解釈があって、サザンは85年に発表した『kamakura』を持って一度活動休止に入っています。
原由子さんが桑田さんとの子どもを出産するために産休に入ったことが一番の理由です。
その後、桑田さんはKUWATABANDを結成して活動、他のメンバーもソロ活動を行うようになりました。
88年のシングルリリースを皮切りにサザンは活動再開しますが、85年までと比べると、リリースペースが落ちます。
85年までのサザンは年に一枚アルバムを出し、アルバムに収録されないシングル曲も多数制作し、ライブ活動も行っているのですから、むしろ第一期のサザンの活動が怒涛の如きハイスピードぶりだったのだと思うのですが(笑)。
張り詰めていたものが、一度放出されてしまうと、もう以前のような形に戻ることなどないのではないでしょうか。
それは桑田さんの敬愛するビートルズの歴史とも共通していることです。
活動再開後のサザンに対して、「なにか」物足りなさのようなものを感じていた桑田さんが、再度サザンの活動を止めてまで作ったアルバムなので、僕にはこのセンテンスは第一期のサザンを回想するニュアンスがあるように思います。
ビートルズ解散後のレノンも、ビートルズ時代を懐かしむような歌をたくさん書いていますしね。
いずれにしても「モスキート」とは関係のないセンテンスですね……(笑)。
バブルの崩壊と、薬害エイズや差別の問題ってかかわりがあるのでしょうか?
わからーん。

この街のどこかで同じ
星を見上げる人のために
そっと涙ぐむ

ちょっと全然意味の分からないセンテンスです!
苦しい時は「自分だけが苦しい」と思い込みがちだけれど、本当はどこかに自分と同じ苦しみを抱いている人がいるのだということでしょうか。
「どこかに自分に似た人がいる」という思いが苦境を乗り越えるために必要な時ってありますよね。
ここで「涙ぐむ」が出てきます。
桑田さんはやっぱり涙について歌うことが多い。


暗い教室の隅で彼は泣いてる
重い十字架を生きるために抱いてる
あらぬ良識で大人達は逃げてる
遠い世界のようだけど Feelin’ Blue

僕はこのセンテンスが一番好きですね……。
いや、やっぱりこの歌めちゃくちゃ良いですよ。
社会問題についてちゃんと歌うミュージシャンって、実は少ないです。
「セカイ系」とか「キミとボク」とか言いますけど、ほんとにそうで、ここでの桑田さんのように「遠い世界」のことを考えて、言葉にして、人々に発信するということは大事です。
「あらぬ良識」というのは、いじめという意味で考えると、「いじめられる側にも責任はある」みたいな論や「これぐらいのことは耐えるべきだ」というような論なんですかね。
教師も仕事ですからねー……自分の管轄でトラブルが起こっているなんて認めたくないですよね。ははは。
差別やエイズについてのメッセージとして捉えても、やはり「良識」ぶった意見が人を抑圧するということは往々にしてあるんでしょうねぇ。
日本って、「空気」さえそっちに向いていればなんでもやっていい国ですからね。
……こんな風に、いろいろなことを考えさせられる歌詞なんですけど、ここのところ、本当に歌が良いんですよ。
はぁ……最高だ。
孤独の太陽の頃の桑田さんの歌声ってほんといいですよ。

生まれた時代に飛べないモスキート
己を守るため
生命をつなぐ赤い川の水
無情という名の去りゆく影

ここは特に全然意味わからないです!


移りゆく世代を超えて同じ
雨に打たれる人はいつも
君のそばにいる

ここもよくわからないです……世代を超えるというのは、音楽とかのことを言っているんですかね。
昔の音楽を聴くと、自分と同じような悩み、幸せ、苦しさなどが歌われてたりするってことでしょうか。
もしくは、エイズのように、病気が次の世代にうつってしまうというニュアンスでしょうか……。
桑田さん自身が、自分が辛かった少年時代に、音楽を聴いて気分が救われていたようなので、そういうニュアンスなんですかね。
けど桑田さんの幼少期は、自分よりも前の世代の音楽を「掘る」という文化はなかったでしょうし。
小学生の時にまだビートルズいましたしね。
あ、けど、ビートルズよりもさらに前のプレスリーの「ブルー・スエード・シューズ」が大好きみたいなので、間違っていないかも。
「茅ヶ崎物語」という超つまんないドキュメンタリー映画の中で、桑田さんがカバーしてました。
映画の中にはドラマパートもありましたが超超つまらないので、ドキュメンタリー映画を呼ばざるをえません……。

いつか大空に架かる虹を待ってる
灯る蝋燭をかばいながら生きてる
沖へ遠ざかる希望の船を見ている
どんな答えがあるだろう?

前半2行は、感覚ではわかるのですが、具体的な意味はわからないです……。
沖へ遠ざかる希望の船というのは、バブル崩壊後の日本という意味合いであればよくわかりますね。
日本から金がどんどんなくなっていく。
また経済的な興隆が訪れることを待っているってことですかね。
それしかわかんないっす……。


暗い教室の隅で彼は泣いてる
重い十字架を生きるために抱いてる
あらぬ良識で大人達は逃げてる
どんな未来になるだろう Feelin’ Blue

という部分を繰り返して、曲は終わります。
ここでの歌が一番すごいです。
間奏を経て壮大なサビに入るという、シンプルながらめちゃめちゃ効果的な構成。
最高です。
「どんな未来になるだろう」のあとに ah uhというスキャットが入るのですが、そこの物悲しさもまた……。
「どんな未来になるだろう」ということで、解決策の提案などはないんでちょっと消化不良なんですけど、この曲はなんか、僕はいいんですよ!
「暗い教室の隅で彼は泣いてる 重い十字架を生きるために抱いてる」という言葉から思い浮かぶ場面が、もう、強烈すぎて……いいんですよ!
なんかそこだけで泣ける。

桑田さん自身がいじめを受けていたという記述は目にしたことはありませんが、
「大人が助けてくれない」「大人を頼ることができない」という状況は、桑田さん自身が抱えていた苦悩とリンクする部分があるのではないでしょうか。
また別項で振れますが、孤独の太陽に収録されている『僕のお父さん』という曲では桑田さんのご両親が飲食店を経営していたので、夜は家を留守にしていて寂しい想いをしていたことが歌われています。
インタビュー本を読んでいると「小さい頃は自分の頭の中の友だちと会話していた」という、記述すらありましたしね……。
桑田さんの歌って、「寂しい・悲しい気持ちを我慢している主人公」が本当に多いんですよ。
で「泣きたいのに我慢してる」って状態が本当に多いです……歌のほとんどに「泣く」「涙」が出てきます。
これはゴイスー。
また、桑田さんの息子さんも、このアルバムを制作している時は小学校に入っている頃なので、そういう意味でも「いじめ」「生徒に関心を持たない教師」という問題は身近なことだったのではないでしょうか。
これらのモチーフは『漫画ドリーム』でも歌われていますね。

そう、桑田さんの作品を聞いていて気になるのって、一つの事柄を短い言葉で表現するセンスが長けている……というか異常なレベルで上手いので、一つの曲の中にいろんなメッセージを込められるんですよね。
だから一つのアルバムの中で、同じことを何度も言ってることがあるので、そこはちょっと退屈に感じてしまう要因になってます。僕の場合。
別の尺度を与えたりという点の工夫は特にないので、そこはちょっとなぁ。うーん。
歌の中で、問題に対する答えを出すことを避けているフシがあります。
やっぱりサザンや桑田さんの曲って、問題の提起をしても、具体的な解決策やメッセージは提示されないですね。
まぁ、考えてみると、問題提起の段階で、具体的ではなくかなり抽象的な言葉ではあるのですが。
ポップソングの役割って、一つの考えるきっかけを歌にして、それを聴いた人たちに考えるように仕向けるというものなんですかね。
けどこの曲では、けっこう問題に対して踏み込んだことを歌っているので感動してしまうんですよね。

あらぬ良識で大人たちは逃げている

のところ……歌唱も壮絶です。

僕がこの歌を好きになったのって

重い十字架を生きるために抱いてる

ってところですね。
僕は、なんか自分自身に重いものを課してるなーって思う瞬間があったり、人から「その考え方つらくないの?」と言われることがあるんですよね。
ちょっとナルシスティックな考えで、嫌なんですけど。
で、やっぱりこういう言葉は聞いたことがなかったので、なんかこの曲がすげー好きなんです。

僕は学生時代にいじめをしたこともあるし、いじめを受けたこともあります。
大人になってからも人からイジられることがあります……僕の方も人をいじることがあるかも。
こう考えると自分ってめちゃくちゃ最低な人間だなって思います。うーん……。
まぁそのことを今深く考えてもしょうがないんですが、自分がいじめを受けてた時って、大人に頼れなかったんです。
頼っても解決してくれないんじゃないか? って思っていたし、大人に頼るのは弱いやつのすることだって思ってもいました。
当時はいじめを受けるって時点で、自分に悪いところがあるんだって思ってもいたので、「いじめを受けている」という声を上げる時点で、自分が他の人より劣っていることを認めることになってしまうと思っていたんですよね。
今考えると劣っているからいじめを受けるという認識は間違ってますけどね。
いじめをしている人間の性質に問題がある、ってことは非常に多いですし。
話が脱線しましたが、いじめのことで泣いたりしたことはなかったですけど、そういう学生生活を送っていたので、この歌は心に刺さりました。
その頃のことを思い出すことってほとんどないのですが、この歌を聴いて、「あー俺って自分で自分を追い込んでたんだなぁ」と思ったんですね。

そういうわけで、桑田さんのソロの中で一、二を争うほど好きな曲の考察&自分語りでした……。
ついでなので、『孤独の太陽』収録曲の考察もしたいと思います。

アルバム『孤独の太陽』の感想と考察

 - サザンや桑田佳祐, 音楽

Comment

  1. キッド より:

    最近、この曲について考える機会がありまして。
    自分とは視点は違うけれど、似たような考えを持っています。
    それにしてもこのモスキートってオスでしょうか?メスでしょうか?
    桑田さんが意識したかは知りませんが。。

  2. t.maruyama より:

    こんにちは
    私も高校生の時分に飛べないモスキート大好きでした。
    アルバムに入ってる他の曲は思い出せないのですが
    なんか桑田さんの声に哀愁のようなものがあってこの曲は大好きです。

    久しぶりに飛べないモスキートを聞きまして
    みなさんどんな感想を持ってるのか
    はたまた誰からも注目されてない曲かもしれないなと思いながら
    グーグルで検索したところこちらに辿り着きました

    それで考察拝見して大変勉強になりましたのでその御礼のご連絡です。

    考察で桑田さんのエイズ問題への関心を初めて知ったのですが
    その事を踏まえて私なりの考察が出来ましたので下記してみます。
    田中さんの考察の中でよくわからないと仰っている点がもしかしたら明確になるかも知れません。
    良ければご一読頂き、ご意見下さい。

    先ず大前提ですがこの曲は
    親父と息子(未婚の息子で、いわゆる出来ちゃった婚、ただし結果的に結婚はしてません)の歌詞だと考えます。
    (エイズ問題の歌であり、世間一般に今よりもエイズに対する知識がない時代だろうという事も前提です)

    悲しい噂で飛べないモスキート
    傷みを避けるため
    生命をつなぐ赤い川の水
    絵になる美談はどこ吹く風
    …悲しい噂は、親父がエイズで息子に伝染している事が広まっている事と私は捉えています。
    …モスキートは息子を意味すると考えます
    飛べないというのは、「痛みを避けるため」に噂が広まって欲しくないので
    飛べないというよりも、飛びたくない、今でいうひきこもり状態のイメージと思います
    …生命をつなぐ赤い川の水ですが
    血液という意味ではなく、血脈・血統という意味と考えています。
    モスキート(蚊)を意識すると、いのちをつなぐの部分が
    今日から明日への生きる糧としての血液を得るという解釈になってしまいますが
    モスキートを息子と捉えると、親から子へ命を継続して行く血脈・血統という意味になると思います
    …絵になる美談はどこ吹く風の部分は
    そんなエイズの息子も自分も、美談の様に助けてくれるような人はいないんだという意味と思います

    現代(いま)では着れないガラスのタキシード
    愛する女性のため
    壊れて消えた夢のシャボン玉
    結ばれたくとも運命は何故?
    …今ではなく現代と表現したのはエイズ問題が表面化する以前と
    表面化後の今(現代)という意味と思います
    …壊れて消えた夢のシャボン玉は
    結婚したかったが自分がエイズ患者と分かったので
    「愛する女性」が、エイズ患者の嫁と世間から言われない様に
    自分から身を引いて結婚しなかった事だと思います
    (ただし子供は既に出来ています)
    ガラスという表現は仰るようにシンデレラのイメージで結婚式が無くなったので
    衣装の一切合切が消えてしまったというイメージと思います

    この街のどこかで同じ
    星を見上げる人のために
    そっと涙ぐむ
    …「人」と他人行儀ですが
    この部分は自分(親父)と同じくエイズ被害で苦しんでいる息子という意味と思います

    暗い教室の隅で彼は泣いてる
    重い十字架を生きるために抱いてる
    あらぬ良識で大人達は逃げてる
    遠い世界のようだけど Feelin’ Blue
    …ここは息子の現状と思います
    エイズと虐められ、治らない病気・他人に伝染させる病気(=十字架)を抱えているという事と思います
    …あらぬ良識というのは風聞・伝聞のたぐいと思います
    当時の時代背景が分かりませんが
    エイズが一般的になったばかりで誰も詳しく感染方法等わからないはずなのに
    好き勝手言っている事のをあらぬ良識と表現していると思います
    (親父自身は自分の病気なので、感染・伝染の仕方等もある程度詳しく分かっている事と思います)

    生まれた時代に飛べないモスキート
    己を守るため
    生命をつなぐ赤い川の水
    無情という名の去りゆく影
    …飛べないというのは、この時代では雌(彼女)を捕まえて子作りができないという意味と思います
    自分の子供(血脈・血統)を作れない/遺せない事を無情と言っているのだと思います
    …己を守るためというのは
    もし彼女を作っても
    エイズという事が彼女にバレた時に拒絶され傷つきたくなという事と思います

    移りゆく世代を超えて同じ
    雨に打たれる人はいつも
    君のそばにいる
    …エイズは伝染しますから移りゆく世代となります
    …同じ雨に打たれる人の部分は
    自分(親父)、息子と同じく風聞・伝聞であらぬ虐めをうける人は
    ずっといるのだろう(息子お前一人じゃなく仲間はいるんだぞ!)という気持ちの表現と思います

    いつか大空に架かる虹を待ってる
    灯る蝋燭をかばいながら生きてる
    沖へ遠ざかる希望の船を見ている
    どんな答えがあるだろう?
    …虹は特効薬の意味で、いつか特効薬が出来る事を夢見ている事と思います
    …灯る蝋燭をかばいながら生きているのは
    いつ死ぬか分からない不治の病を患った病身の命を
    吹けば消える蝋燭と表現してると思います
    …沖へ遠ざかる希望の船は
    学者・研究者・医者が海原へ特効薬を探しに行くイメージと思います
    …最後が疑問形なのは、そんな特効薬が出来るのかどうか疑心暗鬼なのだと思います

    以上です
    簡潔ですがご意見頂ければ幸いです

  3. 澤津隆 より:

    いっそ、アルバムタイトルもモスキート関連にすれば?善かったかなぁ?

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