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「高見え」という言葉、コスパ至上志向

      2022/05/22

「高見え」という言葉が存在することを最近知った。
アパレル系のインフルエンサーが使っていた言葉で、「安い商品だけど高級に見える」ことを指すようだ。
そのインフルエンサーは、ユニクロやGU等の低価格アパレルを紹介するときに、「高級ブランドと比べても遜色ないクオリティ」「高級に見える」と褒めてプッシュしていく。
そのインフルエンサー自身はファッションへの造形が深く、個人的に好感を持てる。
低価格アパレルを紹介するのは、そこがファッションに興味を持ってもらう入り口になって、お洒落になってもらい、徐々に低価格アパレル以外にも手を出していくようになってほしいからだそう。
戦略としては面白いと思う。

そのインフルエンサーが紹介していたジャケットを先日購入した。
これも低価格アパレルだけど、老舗の男性スーツブランドとコラボレーションして、その老舗が型を作ってデザインしたものなのだそうだ。
自分が買ったのは化学繊維のみで作られたもので、一万円程度の価格。
ジャケットを持っていなかったので、何か一着あってもよいなと思っていたところだった。

一着だけ購入するのもなんなので、違う型のジャケットを一着ずつ、計二着買ってしまった。
しかもそのジャケットはセットアップ(最近多いですよね)で販売されていたので、パンツも合わせて買ってしまった。
カジュアルスーツっぽい上下が二揃いになった。

一着目は、購入してから3回目の着用で、脇の下あたりに大きなほつれが出てきた。
目立たない場所だからいいだろうと思って放置していた。
二着目は、10回も着用していない段階で、ボタンが外れかけた。
ちゃんと外れた方がマシな気はしないでもない。

正直、ユニクロをはじめとして、低価格路線のアパレルで嫌なのって、長く着られないことである。
そのインフルエンサー曰く、服の流行は毎年変わっていくのだから、長く着ることよりもその時に流行っているものを着た方が楽しいと。
低価格のアパレルにはここ何年も手を出していなかったのだが、最近になり「ユニクロもクオリティが上がったので長く着られる服が増えた」といった話を聞くようにもなっていた。
けれど、やはり、このように、すぐに服がダメになってしまうのが現状のようだ。
買うべきではなかったな、というのが今の心境だ。
安物買いの銭失いの典型的な例。

そもそも、実際にお金がないから高いものを買うことができないのに、「高く見えるもの」が欲しいというのは、自分の実態とは異なる見せ方をしたがっているということであろうと思う。
そういった心理に、「高見え」という言葉は巧みに付けいっているように思う。
今高い物が買えないなら、無理して高いものを買わなくてもいいのにね。
けれど、自分自身も感じていたことではあるけど、年を重ねていくと、「年相応の格好」をすることが求められるものだろう。
年を重ねたのに安い服を着ていると、「だらしがないと思われそう」と思い込んでしまう。
少し前に、アパレルブランドが、「学生向けの低価格ライン」を作ったところ、実際に購入していくのは20代の社会人が中心だったという話を聞いた。
社会人もお金が無いのだろうなぁ。。。

そもそも「コスパ」という考え方があんまり好きじゃない。
それはアパレルに限ったことでは無く、嗜好品や食べ物についても思う。
お金の支出を抑えることに注力しすぎると、かえって損をしている、ということがよくある。当たり前の話だけど。

僕は音楽の定額配信はSpotifyを使っているけど、有料版は一ヶ月に千円で使用できる。
一年分をまとめて支払うと一万円で使用できる。
Spotifyを使うようになるまではCDを買っていた身としては、比較しようもないくらいに安い支出で、音楽を楽しむことができる。
しかしSpotifyには無料版もあるらしく、そちらでは曲と曲の間に広告が流れたり、好きな順番に楽曲を再生できずシャッフルでしか聴けなかったりするようだ。
そのわずらわしさを考えたら、有料版にしない手はないだろうが……。
まぁ、かく言う自分もYouTubeには課金していないので、毎日使っているけれど、CMに動画を中断され続けている。
便利なネットのサービスを無料で楽しめた時代は過去のものになりつつあるのかもしれない。

そもそもコスパ至上志向のようなものがもてはやされる背景には、日本が貧しくなっているという前提があるだろう。

3年前に、ジャネール・モネイが東京で単独来日公演を行った。
フジロックに参加することが決まっていたので、それにあわせて単独公演も開催されたという運びだったと記憶している。
チケット代はは8000円だった。たしか。
僕もその公演を見に行ったが、当然素晴らしいものだった。
おそらく彼女の最高傑作だった『ダーティ・コンピュータ』をメインにしたセットリストで、パフォーマンスも演出もぶっちぎりだった。
海外のミュージシャンはツアーを行うのは数年に一度のことなので、次に日本で公演を行う時には、セットリストはもちろん演出も参加するバンドのメンバーも、アーティスト自身のコンディションも全く違うものになっていることだってある。
そういった経験から、気になるアーティストのライブを見逃すことが、どれほど大きな後悔になるかを身に染みてわかっている。
そんなわけで、8000円は安い金額ではないけれど、僕としては観に行かない手はなかった。

そのライブを観た音楽や映画のジャーナリストが(敬愛している人です)、「若い女の子が少なかったな。東京の女の子、どうした?」とツイートして炎上していた。
「高くてチケット代払えない」「平日のライブなんて仕事休まないと行けないんだよ」「そもそもオッサンが、女の子の聴く音楽を選ぶな」などなど批判的なツイートが溢れていた。

でも、全盛期のジャネール・モネイを観ようと思ったときに、「まぁまぁ高いチケット代」「仕事を休まないと行けない」という障壁なら、頑張って乗り越えようとしてもいいと思うのだけど……とは思いました。
日本が経済的に貧しいのはもちろんだけど、文化に親しむ土壌を作れなかったのは悲劇的ですね。

あと、「外タレのライブって高いんだよなー」ってツイートも見かけた。そもそも外タレって言い方が小馬鹿にしたニュアンスを内包していて、とても嫌だったことを覚えている。
日本のミュージシャンのライブと比べたら高いチケット代設定かもしれないが、演出や舞台装置に掛かけられているお金の規模がそもそも違うことを考慮して欲しいとは思う……。
あと、「洋楽のミュージシャンって曲数が少ない。日本のミュージシャンなら2時間を超えるのが当たり前」というものもあった。
たしかにこの日のジャネール・モネイのセットは90分程度で終了するものだった。
これもコスパ至上志向が影響しているのかも知れないけど、日本のミュージシャンがやたらとライブを長くやりすぎという気がします。
構成をきっちり練っていて、演出も曲に合わせてきらびやかなものにしていたり、ミュージシャンの体力を要求するものだったりすれば、それは2時間以下でも全く問題がないと思う。
そもそもどうしても、「聴きたかったあの曲やってくれなかったなー」という名残惜しさもライブの醍醐味だと思うし、何度も観に行く動機にもなるものだと思う。
余裕が無いのだろうな、みんな。

こんなことを気にしている僕も余裕が無い。

オチはないですね……。

 - 文化, 日記

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