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なんぴとも、これより先は曲名に『7empest(テンペスト)』と付けてはならぬ

      2020/03/19

トゥール、聴き直してみたら最高

半年前から、TOOLを聴き始めたんですよ。
十年以上前に、『10000Days』が出た時に聴いたような記憶はあったんですが、当時は全然ピンとこなかったんです。
『jambi(ジャンビ)』だけは気に入ったのですが、結局はあんまり聴かないままCDは売り払ってしまいました。

たしか、『Lateralus(ラタララス)』も中古で買って聴いた気がするのですが、これについては定かではないです。
あ、あと、ボーカルのメイナード氏がやっている別バンドのA Perfect Circle(パーフェクト・サークル)の『Emotive(イモーティヴ)』を買って聴いたけど、そんなでもなかったので、その印象が強いのかもしれないです。
微妙でした。。。
あれはカバーアルバムなので、氏のキャリアの中では変わった趣を持つ作品だということは、あとあと認識しました。

それが二十代に入ってから、出会う人出会う人に「トゥールはやばいっしょ」という話が出てくるではないですか。
私としてはやや意固地になって「いや、メタルとかハードロック好きな人が好きなだけでしょ……」と思って手を出さずにいたのです。
ただしかし、いろんな音楽を聴く人たちから、一様に「トゥールは聴かないの?」と言われるんです。
音楽が好きな人同士で話していても、お互いが好きなアーティスト全員を話題にあげるわけじゃないじゃないですか。
なのに、どんなタイプの音楽を聴く人でも、高確率でトゥールの話は出るんです。
これはすごいことですよ。
しかし、Spotifyに登録してから、トゥール関係の作品を探してみたのですが、アップされていなかったので、やっぱり接点がないまま今まで過ごしていました。

それが、19年の夏に、13年ぶりの最新作『FEAR INOCULUM(フィア・イノキュラム)』をリリースするタイミングで、過去の音源もサブスクリプションサービスで解禁されたではありませんか!
これ好機と思いまして、私もトゥールを聴き始めることにしたのですが、近年まれに見るほどハマりまくりました。

全アルバム大好きになる

一枚目の『Undertow(アンダートウ)』は、クオリティは高いもののまだ個性が確立されていない感があるので(というかこれ以降が個性的過ぎるんですが)、そんなに聴き返しませんが、それ以降のアルバムは全部激ヤバですね。

二枚目の『Ænima(アニマ)』は、プログレッシヴロックからの影響を露わにしたアルバムだと思います。
タイトルはアニマ=愛だけど、Eと読むならば「エニマ」なので、肛門のことなのかな(笑)。
楽曲は長過ぎないので(トゥールにしては)聴きやすいですし、何より個人的には最終曲の『Third Eye(サード・アイ)』が死ぬほど好きです。
曲のタイトルをシャウトし続けるパートで、楽器隊の鳴らす轟音とボーカルがどんどんズレていくところが、めちゃくちゃかっこいいんです……。

三枚目の『ラタララス』は、愛聴盤として挙げる人が多いのもうなずける、唯一無二の個性を見せつけた大傑作だと思います。
神秘主義的といいますか、キング・クリムゾンやPink Floyd(ピンク・フロイド)が踏み入れていた領域を表現し始めたのかなぁと。
『Schism(スキズム)』『Parabol(パラボル)』『Parabola(パラボラ)』が連なっているなんて奇跡のような構成ですよね。

あと、僕は詳しくは知らないのですが、「フィボナッチ数列」という理論を応用して作曲したものもあるようなので、2000年代後半に注目を集めた「マス・ロック」の先駆けといえるかもしれません。
マス・ロックは主にポスト・ロックの分野で提唱された、「数学的な感じでピピッと計算された音の差し引きや構成で作られるロック」みたいな感じだった気がします。
Battles(バトルス)はマス・ロックの筆頭格ですね。
彼らも、最初のアルバムを完成させるまでに長い年月を要しているので、その辺の指向性も通じるところはあるかも。

四枚目の『10,000 Days(いちまんでいず)』、ちょっとファンの間で芳しくない評価になることもあるようですが、ヘヴィなギターロックが大好きな僕としてはめちゃくちゃハマります。
あと、早口で歌われるロックソングに弱いので、『Rosetta Stoned(ロゼッタ・ストーンド)』とかヘビロテしちゃっていますねぇ。
なんなのこのリズム感(笑)。

最新作も好きだよ、最高傑作ではないかもしれないけど

で、四枚目から13年の時を経て完成させたフィア・イノキュラムですが、これまた、ファンからの評価は「まぁまぁ」な感じに落ち着いている気がします。
ファン暦の浅い僕からしても「まぁまぁ」な印象です……。
決して悪くはないのですが、
・新機軸がない
・昔の曲と同じフレーズ、リズムパターンがちょこちょこある
・奇想天外だが決して忘れられないフックがない
といった点は、TOOLを神格化してきた人にしたら物足りないはず。
そう、これまでのトゥールが凄すぎた、という前提がまずあるんですよね。
神が13年ぶりにリリースするわけだから、「それなり」なもののはずがない!
そんなふうに膨れ上がった期待感があったのかもしれません。
年取った老いぼれロッカーたちが、かつてのようなクリエイティヴィティなんてないのに新作をリリースして、往年のファンしか喜ばない、なんて図式があるじゃないですか。
トゥールはそんなことになるわけない!
と思って待ち望んでいたファンがほとんどなのでは。

最新作も、何度も聴き返しましたが、キャリア最高傑作に仕上がっているとは言いがたいかなぁという印象……。
上記したように、これまでのトゥールで既に表現してきた要素が多いところなどは、「集大成」と呼べるような出来になっています。
寡作ながらも、着実に新しい表現を探求してきた彼らだけに、すでに手を付けた要素をリバイバルさせているのは意図的なのではないかと思うんですよね。
しかし、欧米では「ロックバンド」というフォーマットが死に体になって久しい昨今、トゥールと、Vampire Weekend(ヴァンパイア・ウィークエンド)が長い年月を経てアルバムを発表し、ギターの存在感を見せつけてくれたのは嬉しいところ。

そうそう、トゥールって、ロックバンドというフォーマットでの音楽表現を追求している姿勢もすごく好きなんですよね。
安易に、メンバー以外が鳴らす音を入れることをヨシとしないストイックなスタンス、最高では?

アルバムとしてのトータリティは最高では?

とはいえ、最新作で「これまでで一番すごいな」と思うところもあるんです。
それは、アルバムとしての構成が完璧すぎるところ。
もちろんこれまでのアルバムも、曲の配置の仕方が上手いんですけど、「強い曲」があると、その曲が目立ちすぎて、アルバムとしてのトータリティに陰りが出てしまうことヶあると思うんですね。
フィア~は計算なのかそうでないのか、一部を尖らせるのではなく、一枚のアルバムとしての完成度を高めた作品なのではないかと思います。
多分トゥールの重要な参照点にはピンク・フロイドがいると思うんですけど、代表作の『The Dark Side of the Moon(狂気)』も、一枚のアルバムがひとつの曲に思えるような構成になっているコンセプトアルバムですね。
アルバムとしてのトータリティをとるか、ひとつの楽曲としての強度を取るかって、非常に難しい問題だとも思うんですけどね……。
そんなわけで、トゥールさんたちがどんなことを考えながらこのアルバムを作ったのか、僕は知らないのですが(インタビュー読みたい)、このアルバムは構成がとても美しいと思ったんです。
これがラストアルバムになっちゃうんですかね……どうなっちゃうんだトゥール。

もう誰も、テンペストと名付けるべきではない

とはいえ、このアルバム、ハイライトの作り方がすげー上手いと思うんです。
クライマックスは、『7empest(テンペスト)』だと思うのですが、この曲がトゥールで一番好きな曲になりましたよ……。
10分以上フックが繰り出され続けるし、どんどんかっこよくなっていくし、もうたまんないですよ……アヒィ。
これまでのトゥールがトライして、モノにしてきた要素全部乗せみたいな楽曲。
いつ聴いても、わけわからんくらい興奮します。

7とTが似てるから、テンペストって読んでいいんですよね?
何か意味があるのでしょうか……私にはわかりません。
メンバーみんな50歳を過ぎているのに、こんなに長くてカッコイイ曲を作れるなんてすごいですよね。

トゥールってほんとに唯一無二の存在になっちゃいましたよね。
メタルやハードロック方面ではプログレッシブな音楽性を追求する人たちもいますが、こういう風に遅くて、神秘主義的なところに迫っている人たちっていませんものね(いたらすみません)

もう、このテンペストっていう曲名が最高だし、それに恥じない、ヘヴィでエクストリームな音の雨あられですよ。
「テンペスト」とか「嵐」って名前の付いた曲ってよく見かけるのですが(特にアニソン界隈)、もう、この曲が一番テンペストなんのはわかりきったことなので、これ以降曲の名前にテンペストってつけたらだめじゃないですか? これ以上にテンペストな曲を作れる自信がある人、いますか?
安倍政権、そういう法律を閣議決定してほしいです!
そしたら僕もれいわ新撰組から乗り換えますよ!

もう、これは本当にしょっちゅう思うこと。
『Lovin’you(ラヴィン・ユー)』もいっぱいありそうだけど、Minnie Riperton(ミニー・リパートン)が一番良い曲を歌っているから、同じタイトルを付けちゃダメですよ。

『Holiday(ホリデイ)』もいっぱいありそうだけど、WEEZER(ウィーザー)が一番良い曲やってるから、もう曲名に使っちゃだめ!

『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』もしょっちゅう曲名になる言葉だけど、岡村靖幸さんが最高に決まっているので、もう曲名に使っちゃダメだよ。恥ずかしくないの?

『フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ』もみんなすぐに曲名にしたがるけど、P-MODELのふるへっへっっへっへっへっへへへっぷりを越えられます?
越えられる自信があるんだったら使っても良いけど、無理っしょ?

そんなわけで、テンペストも、もう誰も曲名にしちゃだめですからね!

(あの娘~とフルヘッヘッッヘッヘッヘヘは、「いや、もともと他の人は曲名にしねーだろ」という突っ込みをしてほしいです)

もう、トゥール来日してくれないのかなぁ……テンペスト、絶対にライブで聴きたいやん。
というかトゥールの曲、全部ライブで聴きたいやん。
でも一曲一曲が長いから、聴きたい曲の半分もやってくれないやん……。
5時間ぐらいライブやってほしい。
ところで、トゥールだと思っていますけど、実際にはツールと発音されるみたいですね。
昔は「トール神」から来ていると思っていたけど、「ツール(道具)」ですね。

 - 音楽

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