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*

ヒプノシスマイクについて(4) 実際聴いてみての感想

      2020/03/31

ファッキューメーン!
Spotifyにあったヒプノシスマイクの音源、全部聴きましたよ!
感想を書きます!

前→ヒプノシスマイクについて(3) 日本でもヒップホップが面白くなってきているので……

・曲そのものに対するイメージ
トレイラー映像から特には変わりませんでした!
海外の流行に目くばせしているものもあるんですけど、基本的には普通……。
クオリティは高いと思うんですけど、やっぱりサウンドプロダクションがダメっす。
アニソンっぽい。
なんでアニソンは未だにギター偏重なんでしょうか……。
あとエイベックス系の曲もギター多いよなぁ。
ていうか、ラップメタルっぽい曲多いですよ……いつの時代のイメージやねん。
まぁ、ヒプノシスマイクはまだシリーズ展開がそんなに進んでいないみたいなので、ここから先、実験的な曲とかも作られるようになって面白くなる可能性もなくはないっすよね。

・ドラマ音源のタイトルが。。。
全然聴いてないんですけど、ドラマ音源にタイトルがついてるものがあります。
(スポティファイにも音声ドラマの音源が上がるんですよ……すごい時代ですよね)
今のところそれが3トラックあって、タイトルが
ノウ・ユア・エネミー
ジャスト・ア・フレンズ
ラウダー・ザン・ア・ボム
でした。
ジャスト・ア・フレンズの元ネタはわからなかったのですが、他の二つはわかります。
ただその引用の仕方が、これまた、私はすごく嫌いでした!
(ジャスト・ア・フレンズはビズ・マーキーというアーティストからの引用でしょうか。私は聴いたことないっす)

・Know Your Enemy(ノウ・ユア・エネミー)
ロックバンド、Rage Against The Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)の曲が元ネタですね。

レイジは『レッド・ツェッペリンとパブリック・エネミーの融合』と言われるようなバンドで、ヘヴィでファンクなバンドサウンドと、ボーカルのザックによるラップがめちゃくちゃかっこいいのです。
(↓レッドツェッペリンの『移民の歌』はめちゃくちゃ有名ですよね……?)

ボーカルのザックは「音楽は政治的なメッセージを発信するための手段」と言い切るくらいにガチな男でした。
彼らのセルフタイトルの1stアルバムは名作中の名作です。
未だに、ロックバンドがラップをしている音楽の中では最高峰です。
↓が1stの一曲目ですが、このイントロの緊張感ったらないですよ……。

ドラムの重さとベースの太さ……どうやって演奏しているのか全然わからないギター、ラップは上手くないけどシャウトがカッコイイボーカル……どの音をとっても最高です。
しかもそのアルバムジャケットには、仏教を弾圧する政府に抗議するための焼身自殺をした僧侶の写真が使われています。

また、3rdアルバムに収録されているSleep Now in the Fire(スリープ・ナウ・イン・ザ・ファイア)という楽曲のビデオでは、ウォール街の証券取引所の前でゲリラ撮影を敢行。
メンバーと、ビデオ監督のマイケル・ムーアが手錠を掛けられて、警察に連行されるシーンでビデオは終わります。
これはヤラセではなくて、ガチで連行されています。
このビデオについて、スヌーザーという音楽雑誌では『金≒悪というイメージを暴露した』といったことが書かれてしました。(何号に書いてあったか失念……)

目立ったエピソードを2つピックアップしただけでも、レイジがどれだけガチなバンドなのかおわかりいただけるかと思います。
スリープ~では、聴いてもらえればわかるとおり、「広島」「長崎」といったワードも出てきます。
レイジは来日時、広島の原爆ドームを訪問したことでも知られています。(ガセだったらごめんなさい…)
そういうガチな人たちをパロディに使うセンスは、醜悪としか言いようがありません……。
しかもレイジは、上記のように「金≒悪」という思想すら持っている人たちです。
そんな人たちの作品をパロディしながら、集金するためだけのシステムをコンテンツに導入しているというところ……ヒプノシスマイク、やっぱり好きにはなれませんでした。

ちなみになんですけど、このノウ・ユア・エネミーと別のCDに収録されている『Shinjuku Style~笑わすな~』という曲があります。
あいかわらずラップメタルで、いったい何十年前の音楽シーンで時代が止まってるの? と思わざるを得ないのですが……。
この曲って多分、Limp Bizkit(リンプ・ビズキット)のNookie(ヌーキー)という曲を元ネタにしていると思います。

「手加減なんざぬき!」の「ぬき」の部分が、「ヌーキー」のコーラス部分の掛け合いっぽいですね。
このリンプ・ビズキットというのは、レイジが完成させたロックとラップの融合というスタイルを、アホでもわかるようにしょうもなく作り替えて売れたバンドと言われています。(僕はリンプの大ファンなのですが……)
レイジのザックは、彼らが売れていることについて「俺たちがやってきたことが全部無駄になってしまった」とコメントしたそうです。
そんな関係性にある二つのバンドのパロディを、同じ作品に収録するかね(笑)。

あと、『DEATH RESPECT(デス・リスペクト)』(タイトルやばくないですか?(笑))もリンプっぽくて、『Phenomenon(フェノメノン)』という曲にイントロが似ているような……僕の気のせいなような。

・Louder Than a Bomb”(ラウダー・ザン・ア・ボム)
ヒップホップグループのPublic Enemy(パブリック・エネミー)の曲名だと思います。(エナミーと発音されることも多いです)

同じタイトルで、ザ・スミスのアルバムもありますが、文脈上PEかなと。
上記のレイジで例えに上げられているように、政治的メッセージと高い音楽性を両立させているグループとして名高い存在です。
この曲が収録されているアルバムはもう云わずと知れた伝説の一枚です……
当然政治的なメッセージも強いグループです。
そーいうガチな人たちの作品をパロ(以下略)。

なんか私、こういった、オタクコンテンツのクリエイターさんたちが、偉大な作品を気軽にパロディをするところが本当に好きじゃないです……。
ガチな人たちのことを茶化すようなパロディは好きじゃないっす……。
(書きたい思いが溜まってきたので、『オタクコンテンツクリエイターさん達の作品で嫌だったパロディ』については別に書きます)

・Illmatic(イルマティック)
入間銃兎というキャラクターがラップをする前に「イルマティック・入間銃兎」と言っていますね。
いろんなラッパーが参加する曲だと、自分のことを紹介することが多いのです。
自分の名前とか、所属レーベルとか、二つ名みたいなものをポポッと名乗るんですね。
あとは曲の始まりに、トラックメイカーの名前を言ったり。
トラックメイカ―の名前がスタンプみたいに入るようになったのがどうしてなのか、いつごろからされていることなのか、ちょっとわからないです……。
でもヒップホップは、仁義を重んじる文化があります。
だから、仕事をしてくれた人の名前が、リスナーにもちゃんと伝わるようにという計らいで、名前を覚えて帰ってほしいという想いからこうなっているのでしょうね。
ええ話やで……。

話がそれました!
ヒップホップでイルマティックというと、ラッパーのNASのデビュー作です。
逆に、それ以外に『イルマティック』という言葉を聞くことはないはずです。
ググるといろんな言葉が引っかかりますが、起源はNASです。
ヒップホップの文化圏、ビースティ・ボーイズが特に好んで『Ill(イル)』という言葉を使っていますが、そもそもこの言葉の意味は「悪い」です。
ヒップホップのコミュニティでは、ワルいことを褒め言葉にしたりしますね。
白人が黒人を差別する際に使う『ニガー』という言葉を、仲間内で使いあったり。
このイルマティックというアルバムも歴史的に重要な一枚とされていますね。
確かにすごいです……。
こういうヒップホップのアルバムなどを聴いていると、英語がわからないまま聴いているのがもったいなく思えてきますね。

またダメだしになってしまいますが、イルマティックって言葉を気軽に使うなって思います。
黒人が受ける差別や貧困、そこに端を発する暴力やドラッグなどの問題を扱ったアルバムのタイトルなんですからね。

『イルマティック』って言葉でググると、検索候補に「イルマティックイルマジュート」
が出てきます。
一番上の方にはヒプノシスマイクのファンのツイートが出てきますが……

『えっじゃあイルマティックイルマジュートインザビルディングって「最高にヤバい入間銃兎が登場だぜ!」て言ってんの?自分で?えっちょうかわいいじゃん』

これがリツイートが350以上、お気に入りが800以上ついています。
ヒプマイを聴く前に想像していた「キャラソンとして消費されている」については、
やっぱりその通りだったのかなと思いました。

ちなみに、「イルマティック」の検索候補としても、
上位3つは
「イルマティックイルマジュート」
「イルマティックヒプマイ」
「イルマティックirumaジュート」
となっています。
ヒプノシスマイクの勢い、おそるべしですね……。

やっぱり、オタクコンテンツクリエイターさんたちの、
「過去の遺産をマイルドに(時にコケにして)作り変えて消費していく」
感じがすごく嫌いです。
文豪をキャラ化しているコンテンツも多いですね(笑)。
聖☆お兄さんとかもほんとに好きじゃないんですよ……。

歌詞はちゃんと聞き取れないところはスル―してしまっているのですが、もしかしたらもっとこういう引用は多いかもしれないっすね。。。
ストレイト・アウタ・ヨコハマなんてフレーズもあるみたいですし。
しかしネタ元についての解説をいちいちしているわけにもいきますまい。。。
(いや、けど、ヒプノシスマイクWikiみたいなサイトとかそのうち作られそうですよね。
先んじて、自分にわかるヒプノシスマイクの歌詞元ネタを書きまくったら、ブログの広告収入を稼ぎまくれたりするかもしれないっすね。お金持ちになりたい)

・褒める
さんざん嫌なことばかり言ってきたので、褒めます!
好きになった曲は、
シャンパンゴールド
チグリジア
IKEBUKURO WEST GAME PARK
かなぁ。
What’s My Nameとかは好きになりそうで、そうでもありませんでした。
ドレーっぽいトラックは面白かったけど、ラッパを模したっぽい音の安さがビミョー……(笑)。
あと、キャラ設定がそんなにないのか、純粋にライムが面白かったです。
好きにならなかった曲のことを細かく書きはしませんけど、キャラソンっぽさ・説明っぽさが気になることが多かったです。
まぁシリーズ序盤なので仕方がないのかもしれないっすけど。
あと、やっぱりラウドなバンドサウンドで作ってるものが多いよなぁ……。
基本的にラップメタルは好きじゃない、という難点はありますね……(笑)。
いや、前述したように、リンプ・ビズキットとかは大好きなんですよ。
けど、こと日本オタクコンテンツにおけるラップメタルってなると、音がそもそも好きになれないです……(笑)。
こういうコンテンツに最先端のトレンドを追いかけほしいとは思わないですけど、せめて今のヒップホップの盛り上がりを少しくらい取り込んでほしいところ……。

・シャンパンゴールド
ホストというキャラ設定の男がホストをやってる歌ですね!
オリエンタルラジオの藤森さんが作詞したのだそうです。
普通にいいと思いました。
曲とラップの内容があってると思いましたよ。

・チグリジア
暗いですね(笑)。
けど僕は好きでした。
ブルーハーブの暗い曲っぽい感じがします。
ちょっと意識しているのでは? と思うところもありました。(具体的には?)
この曲はラップの内容と、曲調の変化がうまく噛み合っていて効果が出ていると思います。
でもこのキャラクター、他の歌ではネタっぽいキャラ付けがされているようで、すごく苦手な感じでした……(笑)。

・IKEBUKURO WEST GAME PARK
これはキャラのソロ曲ではなく、チームのメンバーがマイクリレーでラップしています。
そういえば説明していなかったかもしれませんが、ヒプノシスマイクは今のところソロのラッパーではなく、ラッパーが三人一組のチームを組んでラップしています。(それぞれのソロ曲ももちろんあります)
この曲は池袋のチームの曲ですね。
作詞は声優の木村さんがご本人で担当されているそうです。
木村さんはジャイアンの声優をやってる方なんですね。
多才だ……。
ナタリーのインタビューを読むと、木村さんはもともとヒップホップ好きで、ラップもやっていたとのことでした。
この曲は単純にトラックのクオリティが高いです。
さっきの曲ともつながりますけど、アゲるところがガチアガりできる構成になっているし、アレンジも面白いんですよ。
オーセンティックだけどちゃんと聴ける作りになってるとことか。
それと、他のチームの曲と比べても、マイクリレーしている感というか、チームワークの良さを感じます。
ふつーに好きになりました!

以上が、ヒプノシスマイクの曲を実際に聞いてみての感想です。
プロジェクト自体は好きになれませんでしたけど、面白いと思う曲は確かにありましたね。
特にIKEBUKURO WEST GAME PARKは、純粋に好きになりました。
僕は池袋ディヴィジョン推しということですね……。

なんかオチっぽいことを書ければよいのですが、特にないです!
なぜ好きじゃないことに対してこんなに長く文章を書いたのだろう……。
けど実際に聞いてみて、好きになれたものが一つでもあったのは良い収穫ですね。
ファッキューメーン!

 - ヒプノシスマイク, 音楽

Comment

  1. Orchid より:

    はじめまして。
    先日記事を読ませていただいて、もう少しだけヒプノシスマイクの世界に寄ってみてはいただけないかと思いこちらにコメントを書かせていただこうとしたのですが、惰性の上、文才が無い私に読みやすい簡潔な文章を作ることができませんでしたので、簡単なパワーポイントにしてみました。
    とはいってもそのページ数も多いものとなってしまったので、ギガファイルに落としてみました。記事に対する意見なんぞ求めていない、批判なら他所でやれ、と思われましたらスルーしてください。
    もし少しだけでも興味をお持ちいただけたら、ファイルをダウンロードしてご覧いただけると幸いです。
    (惰性とほんの軽い気持ちで作ったものなので、文字しかなくとても見辛いものになってしまいましたが流し見でいいので一読いただけると幸いです)

    • gntnk より:

      Orchidさん
      コメントと、パワーポイントの作成、ありがとうございました。
      パワーポイントの内容はとてもわかりやすかったです。
      すごく参考になる部分が多く、私だけが読ませていただいているのはもったいなく感じてしまったほどです。

      実はヒプノシスマイクについては、ブログを書いた後に、リリースされている楽曲は全て聴いているんです。
      この前出たアルバムも聴きました。

      そのうえでの印象なのですけど、やっぱりロック調の曲が多いのは解せないところです……。

      今後も定額配信サイトでリリースされる分については聴き続けてみようと思います。
      コメントいただけて本当にありがとうございます。
      機会があったら、また覗きに来てもらえると嬉しいです。

  2. 通りすがり より:

    初めまして通りすがりの者です
    私がヒプノシスマイクに感じていた違和感をすべて文章にかえて下さっており
    少し胸がすきました

    オタクコンテンツが過去の遺産を食い散らかす事について
    文豪の擬人化、聖おにいさん、これらは元ネタありきと消費者もわかった上で消費していますね
    だが、ヒプノシスマイクの楽曲に関しては、恐らくファン達は完全オリジナル曲と思って聴いていますね。これが私はとても嫌です。

    木村さんという声優さんだけは私も上手だなと思いました。あとは聴くに耐えません。私はヒップホップの専門家ではありませんが、耳が心地良いか、不快か、それだけでもじゅうぶんです

    長くなりました、また色々な考察お待ちしています。

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