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『君たちはどう生きるか』作中年表

      2024/07/18

『君たちはどう生きるか』の作品内で、出来事の「時期」が特定できる場面があるので、それを時系列にまとめました。


・隕石落下 1868年(明治元年)から1889年(明治22年)のちょっと前
正確に聞き取りにくいのですが、「御一新のちょっと前」に空から石が落ちてきたと語られていました。
御一新とは明治維新のことなのですが、明治維新が「いつ」起こったのかは諸説あるようで、年代特定が難しいです。
ただおばあちゃんも「ちょっと前」と言っているし、歴史を後から振り返って「いつだったか」と特定することと、その時代を来ていた人の感覚がずれていることもありますよね。

・大叔父が隕石に到着 1898年(明治31年)から1919年(大正8年)
隕石落下から30年くらい経った頃とのことなので、このくらいの時期です。
大叔父さんはシルエットで登場しますが、紳士服を着用していますね。
この頃に隕石を建造物で覆う計画を立てますが、組んでいた足場が揺れて倒壊します。
1923年(大正12年)に関東大震災が発生しているので、これか?とも思ったのですが、それっぽい描写がないので私の邪推だと思う。

・おばあちゃんの一人が屋敷に務め始める 1884年(明治17年)頃
おばあちゃんも正確に年数を数えたわけではないかもしれませんが、「屋敷に勤め始めて60年が経つ」そうなので、だいたいこのくらいの時期のもよう。
ただ、大叔父の隕石周りの建造計画での事故は伝聞したような物言いだったので、居合わせたわけじゃないんじゃないかなと思われます。
だからこのおばあちゃんのお勤め開始は、建造計画の後なんじゃないかなぁ。

・夏子誕生
夏子は、夏子の母が存命中に誕生していないとおかしいので、ここに位置することになるかと。
また、夏子は大叔父が消えたのが「私が生まれるずっと前のこと」と、伝聞の情報として語っています。
ここは推測ですが、多分夏子と久子はまぁまぁ年が離れているのではないだろうか…。
おそらく久子も大叔父と直接会ったことはなく、塔の中の世界で初めて会ったんじゃないかな。

・久子と夏子の母死去
久子は眞人の「母さんは死んだ」に「私と同じだ」と同調します。
久子が塔に入る前に、母は亡くなっていたと判断できます。
母から見たら大叔父は叔父で、大叔父から見たら久子の母は姪にあたる存在。

・ひさこが行方不明になる
具体的な時期がわかる情報がないですね…。
ただ、おばあちゃん達は当然自分たちが実際に見た事件として語っているし、ひさこが眞人を産む前の出来事なので、これらの出来事の間の出来事と判断します。
ヒミと眞人の身長が同じくらいなので、多分同じくらいの年齢なのかなーと推測します。
あと「ニコニコして帰ってきた」と言っているので、ひさこも向こうでの記憶を覚えてるんじゃないかと思うんですよね。
なつこも帰還してから楽しそうに笑ってるけど、インコがかわいいから笑っていたわけだし。

・眞人の誕生 1932年(昭和7年)
眞人の誕生については、ストーリーの開始から11年から12年前になるので、このあたりの時期になるかと…。
勝一と久子の結婚時期については考察できる要素がなかったので、特定できません。
ただ、久子が失踪した(異世界に来た)時点で、久子は勝一を知らないようだし、勝一も久子が誰なのかわからないようだったので、
久子が異世界から帰還してからだいぶ経って二人は知り合ったのだろうと推察できます。
久子が年端もいかぬうちに二人が結婚したのであれば、勝一も多少は久子の幼少期の姿を見てピンときそうなものだし。

・『君たちはどう生きるか』が出版される 1937年8月(昭和12年)
作中で、お母さんが「大きくなった眞人君へ 昭和12年 秋」と書き記した本がこれです。
この本の出版は1937年8月なので、昭和12年です。
となると、出版してからすぐに読んで、眞人に送りたいと思ったんでしょうね。すごい。
これを考えると、ひさこも、自分が死ぬということを予期していたんじゃないかと思いますよねぇ。
だって、大きくなったら自分で直接渡せばいいのだから。
そう考えるとやっぱりひさこも、向こうでの記憶が残っているっぽいんですよね…ひさこが何か向こうの世界のアイテムを持ち帰ったって描写はなかったが…「着たものもそのまま」とばあちゃんが語っていたので、衣服は向こうの世界のものってことではないっぽい。考察対象の一つでしょう。
向こうの世界で眞人から「火事で死ぬ」ことを聞かされていたわけで、まだ10代前半くらいの眞人がすでに母を亡くして、「お父さんの好きな人」が母親(自分)以外にいることを知っているとなると、自分の死期を推察できる。

・ひさこが家事で死ぬ 1943年(昭和18年)
第二次大戦が1941年(昭和16年)12月8日から1945年(昭和20年)8月15日の期間の出来事。
戦争が始まって3年目にひさこが死んだことが語られるので、彼女の死はこの年の出来事です。
具体的な時期は推察できませんが、真夏でも真冬でもないような時期だったのではないでしょうか…。
ただ昔の日本は真夏でもそこまで暑くなかったようだし、あんまり半袖を着る文化がなかったかもしれないので、夏だったかもしれない…。
あと、眞人は屋敷に着いた時期が夏なのに長袖を着ているので、やはり夏の可能性は全然ありますね。
最初に鑑賞した時は空襲による火災かと思ったのですが、第二次大戦の本土空襲は1944年末期頃から本格化されたとのことなので、病院の火事は本当に火事っぽいですね。

・父となつこがいい仲になる 1943年(昭和18年)から1944年(昭和19年)初頭
映画を観た誰もが思ったことでしょう…「再婚早くね!?」と…。
しかし昔の日本では、既婚者が亡くなった後、その兄弟姉妹が後釜に入る形で再婚することはよくあったことのようです。特に戦時中・戦後。
とは言え、翌年にもう再婚…しかももう子ども作ってるのは早くないか!? とは思いますよねぇ。
下世話ですが、いい仲になった時期を確認できる事実から推察します。
下に書きましたが、眞人となつこが対面したのは1944年6月です。
この時すでに妊娠しているようなのですが、妊娠でつわりがひどい時期というのは5週目から20週頃までだそうです。
また、赤ちゃんの胎動を感じるのは一般的に4か月から5か月頃だそうです。
もちろんこれらは一般的なものなので人によって誤差はあるし、フィクションなので実際とは異なる部分もあると思われます。
ただつわりと胎動どっちもある時期と考えると、6月の時点で4か月から5か月くらいなのかなーという感じです。
そうなると着床(下世話オブ下世話)は2月から3月くらいってことになるのでしょうか。
その間、眞人はなつこと会っていないようなので、親父だけがなつこの元に通っていた可能性が高い。
思うに、父親は「新しい工場」の建設のためになつこの近くで過ごす時間があり、その中で再婚話が進んでいったのではないでしょうか。
ちなみに、宮崎駿さんの父が宮崎航空機製作所という飛行機の部品工場を営んでいたことは有名ですが、この工場も戦時中は栃木の宇都宮に移転していたそうです。

・眞人と父が疎開する 1944年(昭和19年)6月
眞人が屋敷に到着したシーンで、カレンダーの下半分が写っている場面がありますが、日付が30日の金曜日までのものでした。
1944年の6月30日は金曜日なので、眞人の到着は6月のことと判断できます。
この後サイパン陥落の話が出ますが、そことも一致します。

・眞人が初登校する日 1944年(昭和19年)7月9日以降
初登校の前に朝食を食べるシーンで、父が「サイパンは一年は持つって威張っていたもんな」と語っています。
サイパン陥落は1944年7月9日のことです。
サイパンでの戦闘は6月15日から行われていたようであり、父も陥落という言葉を使っているわけではありませんが、父の口ぶりでは戦局が絶望的であるか陥落済みであることが伺えます。
また、眞人の父に情報が入ってきたのもすぐのことではないと思われるので、このシーンは7月のことだと思われます。
いや、でも、直人が引っ越してきてから初登校まで日にちが開いているといった描写はないので、陥落ではなく戦局が悪化を極めていることを指しているだけで、7月初頭とかのことかもしれませんね。

・なつこが行方不明になる 1944年(昭和19年)7月か8月
二人が行方不明になっている間に蝉が鳴き始めている気がするんですよね…次に見たら確認してみます。

・眞人が東京に戻る 1947年(昭和22年)
戦争が終わって2年後と語られるので、1945年(昭和20年)の終戦から2年後の1947年(昭和22年)と思われます。
現在の日本国憲法が施行された年のようですね。
名前の出てこない眞人の弟はすでに立って歩けるようになっているようです。
44年にお腹にいた子なので、44年中に生まれていたようであればすでに2ちゃいでしょうか。
となると眞人は中学生になっている頃なのかなー、と思われます。
この構成にしていることで、東京から「往きて帰し物語」の構造になっていますね。

作中から確認できる年表はこんな感じかと思います。
こうして見てみると、宮崎作品の中でも特に「時期」への言及が多いように思いますね。
現実を舞台にしているのだし当然と言えば当然か。
再度鑑賞して他に気づいたことがあれば書き足していきます。

 - ジブリ作品, 君たちはどう生きるか

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